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59_壮大な物語もその種を見据えると、シンプルな成り立ちであることに気づきます。

 「端的に言いますと、アレスさんが騙されたのではないかと言う予想ができますね」

「騙されたのですか?私」

「外連味がありすぎます、まるで作り話のような筋書きですから、印象が。まあ、それを言うならば、私の方もそうではあるのですが」

「いや確かに、出来過ぎというか、まるでコミックのような展開ではありましたけども、現実感というか、こうもうどうしてもここにあるような、手ごたえはこれは、やはり本物であったと思うのです」

「結果として異世界へ転生したというところは本当ではありそうですが、交通事故からこっち、実は死ぬ運命ではなくて、というお話には、信ぴょう性がありませんね」

「ではどうして私がこんなことになっているのでしょうか?」

「リソースを得るための手段とされたのか、それともリソースそのものであるのか?そもそも神様が求めようとする利益というものは何であるのか、という問いかけから始まらなければならないわけでして」

「それは、人の理解の及ぶところであるのでしょうか?」

「推測くらいはできると思いますけどもね、それに意味があるのかどうかという、本質に迫るような質問は横に置いておいてのお話でありますけど」



 「私のテーブルトークRPGを司る神様がおっしゃるには、神様としての力とか色々と好きに振る舞うためのリソースを得るために、神々どうしが切磋琢磨したり、縄張り争いをしているそうです」

「人間みあふれる神様像ですね、トムさん」

「実際、こちらに漏れ聴こえてくるお話では、広域暴力団の縄張り争いとか、地球でも国家間での利益の分捕り愛とか、結構仁義なき戦いの様相がかいま見えるわけですが」

「そうなのですか?」

「前にも少し言いましたが、他の神様の後頭部をバールのようなもので殴って、その縄張りを物理的に分捕っているようですよ」

「それですが、何かの比喩なのでしょうか?」

「おそらくはそうかもしれませんが、目に見えて、理解しやすいように、そのようなビジュアルにして闘争しているのかもしれませんね」

「誰に対してのサービスなのでしょうか?」

「さあ?」



 「神様が求めているのは、やはり魂的な何かなのでしょうか。トムさんは魂とかええと、人間の根幹をなすものを改造されて、異能力とか神様から頂いたりしたのですよね?」

「そういう記憶はありませんね、こちらは、世界のシステムごと何やら設定したようで、キャベツを収穫してレベルが上がったりしてましたね?」

「キャベツを収穫?それは何らかの隠語なのですか?」

「そのまま、畑からキャベツをこうやって採ったという意味ですね。ちなみに、その時に2レベルになって、魔法も覚えました」

「冗談のようなお話ですね?つまりそのようなシステムを利用できるという、能力を手に入れたと?」

「どうなのでしょうね?確かに勇者という職業と、経験点でのレベルアップとか、魔法の習得とか、地球ではありえなかったような、能力をもらったということになるのでしょうか?」

「そうなのではないですか?私も、魔法強化とか習熟速度増加とか、成長に関わる神のご加護のようなものをもらっていますよ。こちらのミスで亡くなったので、その補填にとかいう理由でしたが」

「何らかの理由をつけて、手駒を強化したかったのかもしれませんね」

「どういう理由でも、結構その能力に助けられましたから、よかったですけどもね」


 「前に話したかもしれませんが、アレスさんの神様は、私のテーブルトークRPGを司る神様の縄張りで、リソースをつまみ食いしていたので、討伐というか、駆除?排除されました」

「うん、なんだかどう言い繕ってもひどい表現になるというのはわかりました」

「ただ、それまでに横取りされたリソースというのが、まだアレスさんにあるわけなのですよね?」

「ええと、なんだか不穏当な発言?」

「回収するなら、こうざっくりと、ずんばらりんとして、こちらの経験点にした方がよろしいのですが、……あ、青ざめて逃げないでください、別にする気はありません」

「ほ、本当ですか?こう契約によって、逆らえないので、非常に強いのですが」

「本当です、今更、そんなわずかなリソースをもらってもなー、と言うのが本音ですが」

「わ、わずかなんですか?」

「いろいろありまして、神様一柱の移し身分くらいはさっくりと手に入れてしまいましてね。もう、そっちを取り込んでも誤差の範囲でして」

「何をどうしたらそうなるのでしょうかね?」



 「このリソースと言う概念もまたはっきりとはいたしませんで、単純に信者の数なのかな、とか思っていた時期もありましたが、どうも違うようですね」

「そうなんですかトムさん?」

「そもそも信者を増やすなら、もっとテーブルトークRPGの宣伝をしなければならないと思います、が、それをこの世界でしているとは思えないのですよね。まあ、そもそもこの世界に私の神様が関わろうとしたのは、他の多くの神様が悪くて強い魔王関係で収益を得ようと、出張った時に合わせて、隅っこの方で、自分の新しい世界の創造をテストしてみたいから、というものだったわけですが」

「そうなのですか!?」

「そうなのですね、別に魔王を倒すために私が選ばれたのではなくて、ただ単にテストプレイヤーとして呼ばれたわけです。残念ながら、他の神様がちょっかいを出した影響で、テストプレイ自体は頓挫しているわけですが」

「では、そのテーブルトークRPGの神様はもうこの世界での目的がなくなっているのでしょうか?」

「最初の目的は、まあ、見失ってますね、これからどう動くのでしょうかね?」

「そんな他人事みたいに」

「こちらはこちらで、最低限神様への対抗手段というか、すり抜ける手段とかも手に入りましたから、それほど深刻ではないわけです。まあ、そこそこ私も楽しめてますし、とりあえずキリがついたら、帰ろうかなとかは思っているのではありますが」

「帰れるっていいなぁ」

「帰りたいですか?」

「そうですね、選択肢が多いのはいいことではありませんかね?」

「問答無用というか、退路を断たれて選択肢を出されても困りますものねー」


 「帰れるかどうかというと、帰れそうな気もしますけどね?」

「そうなのですか?!」

「ええと、どのような状態でとか、どの時点でとか、その辺りの設定というか、環境を整えなければなりませんが、まあ、今の私なら不可能ではないというか、可能な道筋が見えているという感じでしょうか?」

「なんというか、ええと、あなたは人間なのですか?」

「メンタリティは人間だと思うのですけどねー、こう因果律を制御するという能力に引っ張られているような気がしますね。なんというか、認識のしかたが変わってきたような気がしますね」

「どのような感覚なのでしょうか」

「言語化するのは難しいのですが、そうですね、時間の前後をある程度意識して操作できるとか言えばいいですかね?この会話とかも結果が判明した後で言葉を選んでいる、というイメージですかね?」

「そ、想像しづらいですね」

「結果から過程を選択するというような、といえばわかりやすいですかね?この大陸だと、まだテーブルトークRPGの神様の権能が満ちていますので、揺らぎが大きくて、遠い未来とか逆に過去とかの因果律は操作できないようですけど、まあ、外付けの装備ですからね、まだまだ強化する余地があるわけですので、未来において強化済みの、因果律制御装置の影響が、過去に遡って、この場合は未来において過去ということですから、現在ということですが、それを操作している

のが認識できるわけですね」

「うわあ、聞いているだけでややこしいような気がしてきました」

「正直ややこしいですよ?その時系列がこんがらがっているような、センサからの情報を、これもまた強化された知能で処理しているというイメージでありましょうか?普通の人間の脳みそでは、まず対応できないのではないでありましょうかと思うのですよ。この辺りは自慢ですが」

「自慢なのですか?」


 「で、この因果律の制御を突き進めていきますと、他人の運命というか、関係性を修正することも可能ではあるわけですね、本人が目の前にいますので、ルートの選択もまた、それほどの労力がなくなるような気もしますし。つまりは、過去に遡って、あなたの転生をなかったことにしてしまうとか、ええと、事故ですかね?交通事故?それのタイミングを少しずらして、被害者がいないような時間軸を設定するとか?できそうではありませんかね?」

「うわあ、ええと、神様ですね。それもご利益が直接的にあるタイプですか。すごくないですか?」

「そもそも、アレスさんに関わっている神様が、ちょっと因果律とか運命?とかを操作しているようですので、それを正すというか、元に戻すという建前もありそうですので、こう世界の復元力とか理由をつければ、補強も可能なような気がしますね?ええとどうされます?私てきには、この時点で帰還したような形にして、事故とかなかったことにして、その時点へ戻したりできますよ」

「この世界へ転生した後の記憶とかどうなるのでしょうか?」

「残せますし、消せますし、まあそのあたりは、どうにでもなりそうですね。こちらで行ったことに関する影響とか人間関係はそのままの方がよろしいでしょうかね?そこまで弄ると、修正の反動というか、つじつまあわせが大変なことになりそうですし、他の神様からの干渉もありそうですし。ええと、この世界のアレスさんという個体は、消えて、前の世界での転生時の個体、パーソナリティのデータに融合するような、イメージになるのでありましょうかね?」

「なるほど……ええと、考えさせてもらっていいですかね?」

「別に構いませんよ、あー、一応、見えた未来の選択肢としては、この世界で寿命を全うして、その瞬間に、転生時のパーソナリティに融合するとかというものもありますね。ええと、なるほど、私不老にはなっているようですね、完全な不死というかどうかは微妙ですが、まあ、まっとうな神様とやり合わなければ、まあ、そう簡単には滅せられることは無いでしょうかね、あると無いがどのような確率でも等価であるような視界というのは、確かに処理するのが大変ではありますね」

「よく平気で話ができますね?」

「ちょっと因果律の視野に酔っているだけですから、まあ、そのうち慣れそうです。結局は、自分をどこに置いておくかというか、そもそも自我というものの、存在を明確にしない精神のあり方というか、刹那と永遠が等価であるという認識が不自然でなくなるように持っていくような。なるほど、これは世界に顕現するとか意思疎通をしようとすると、第三者的な目で見ると間抜けにならざるをえないわけでありますか?」

「ええと、暴走しておられますかねトム様?」

「大丈夫です、それこそ、因果律を制御することで、なんとでもなるからでありましょう、つまりは無限に思考錯誤ができるわけでありましょう」

「あ、それはなんだかずるっこいような気がしますね」

「てにいれた力が、大きすぎるような気もしますが、それを制御することが可能な知性もまた同時に手に入っている、と傲慢な思考になっていますね、発言をしつつ修正をしながら、対応を計算して、さらに未来から結果を観測して近い過去から修正するわけですね」

「発言から推測するのですが、かなり疲れるようなことになっていませんかね?」

「大丈夫です、ノープログレムです、何か問題があってもやり直していますので、認識した世界は常に正しいのですよ」

「発言が痛いような気がしますが」

「認識はしていますが、言語化すると、このような発言になるわけでありまして。そしてこの言語化するという行為は、あのテーブルトークRPGの神様の影響というか、権能であるのでありますから、止められないとまらないわけでありまして、どうしたものでありましょうか?」

「いや、尋ねられても困るのですがトム様?というか、ええと何の話でしたか?」


 「本当になんの話をしていたのでしょうかね?神様の視点を持ち始めたと同時にその権能で習熟したはずであるのに、その、未熟さが未だ発露しているという感じなのでしょうかね?」

「む、矛盾しているような?」

「時間というファクターを無視したら、そうでもありませんが。ええと、とりあえず、アレスさんは、今元の世界に戻るのはなしということですよね、では様子見でいきましょうかね?」

「あ、なんだかまとまってしまいました、あれ、まだ聞きたいことがあったような気がするのですけど?」


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