49_シンプルと云う言葉は、強引にごり押しをして事態を治めなさいということではないのではないでしょうかね?
「気配を殺して、影に潜んで、忍びよって。あらかじめ、能力値を強化してのちに、密かに魔法で口封じ。そして、次の踏み込みで、体の中心を背後から一刺しです、食堂の中央付近で、行われていたお芝居のような口論に、皆さん注視していたので、比較的簡単でしたね?」
「きゃあああああああ」
「さすがに気がつかれますよねー。と、刺し貫かれた小柄に見える女性徒が、激しく動きますね。よいしょと、床に縫い付けてしまいましょうか。やったとこはないのですが、虫をピンで留めるような感じでしょうかね?」
「お、お前、何してる!」
「結構マヌケな質問のようですね。見ての通り怪物を駆除していますよ?しかし流れ出ている血?というか体液は白いのですね、一応ポンプに近いところを刺したつもりですが、構造が人間と違うのかな?擬態しているなら、そっくりに作成したほうが、有利だと思うのですけどねぇ……何かの様式美でしょうか?」
「も、怪物だと?!」
「そうですよ、証拠に人間だと即死間違いないような損傷でも、元気に動いているでしょう?あ、危ないから近寄らないようにしてくださいね」
「危ない、剣のあなた、早く離れなさい!」
「いや、危ないのは近づいてくる生徒さんの方でして、?私に言いましたかね、ええとシンシア嬢?」
「そうよ!それは、怪物などの単純なものではないの!それよりもよほど悍ましくて、醜悪な存在よ!」
「結構酷い評価をされているようですけど、ご感想は?ああ、口を封じているので会話がままなりませんか」
「シンシアの言う通りよ、早く離れて!」
「フローラ嬢ですかね?大丈夫ですよ?こう、ゴンって、足で色々なところを、踏み壊して、抵抗する手段も消してますから?」
「そうじゃなくて、そういう次元じゃなくて!ええと、それは、そんな概念で語られるものじゃないの、その程度で無力化出来るなら、私たちがとうにやっているのよ!」
「あーなるほど、そういう展開でしたか、っと、女性徒の形を何かから、灰色の光が噴き出してきましたね!」
「今回のは無効よ!想定外のトラブルなのだから私達に非を求めないでください!」
「そうよ!完全に私たちの干渉を外れたところでシナリオが崩壊しているのよ!こちらの意図ではないわ、異常事態よ!だから、罰は与えないで!お願いよ!」
「……あー、必死になって発言している所悪いですが、この怪物、魔法で口を封じていますので、回答は返らないかと?筆談をさせようにも、腕とっちゃったしねー」
「「!!」」
「コミニケーションが取れる手段を確保するためにも、片手ぐらいは確保しておくべきでしたかね?足で筆談とか可能なのかな?まあどっちにしても四肢がすでにないわけですから、無理な話なわけですが」
「えと、どうして?」
「?反撃されたら危ないでしょう?結構力が強いようですし。でも魔法は封じておかないと、ほら、危ないじゃないですか?」
「そうではありません、なぜ貴方は動けるのですか?」
「そういえば、やけに静かですね、まるでみんな時間が止まったような感じで、灰色に染まった世界の中、静止していますよ?」
「いや、実際時間が止まってるんだってば……、本当貴方何者?」
「通りすがりの勇者です」
「「勇者!?」」
「あ、ようやく勇者を勇者と認識してくる方を発見しましたね、地味に嬉しい、のでしょうか?」
「と、光になって消えましたね、結構しぶとい怪物でした、素材水晶も落ちますね、回収です、というかなんですかこのコイン?表記がおかしくないですかね?」
「油断しないでください!それは所詮、移し身です、本体はこの次元にはいません!」
「そうよ、あれはすぐに復活するのよ!残念なことに人間じゃあ、まともやっても滅ぼすことはできないの!」
「一応聞いておきましょうか?あれは何ですか?」
「「神よ」」
「なるほど」
「何でそんなに、冷静なのよ!」
「奥の手とかあるから、大丈夫とか思っていたら大間違いよ!異世界へ転生してかなり強い力を手に入れたとしても、それは所詮神からの借り物なの!貴方自身の力じゃないの、簡単に無効化されてしまうのよ」
「そうです、一度は不意を打てたかもしれませんが、二度とは通じないでしょう、今のうちに逃げましょう」
「逃げるのも無理だとは思うけど、このままでお仕置きは嫌よ!」
「なるほど、怪物の肉体が再構成されていくみたいですねー、神族ですか、言われてみると禍々神々しいですね」
「逃げれませんでしたわね」
「わ、私は今回悪くないわよね!そうよね!」
「どうせ八つ当たりで酷い目にあうわよ、きっと。いつもそう」
「あ、諦めないで、シンシア、きっと話せばわかってくれる……あ、無理ぽい、何このプレッシャー……」
「意識がなくなれば楽になるのに、それすらさせてもらえませんのね……」
「いっそ、消滅したい……」
「?貴方この後に及んで何にを読んでるのです?」
「ちょっと、気になる記述がありましてねー、あ、ライブで書き込んでますね」
「神様、悪いのはみんなこいつなんです、私は全く悪くないんです」
「さすがに、見苦しいわよ、フローラさん?」
「シンシアだってそう思うわよね!」
「まあ、そうですけど、でも、あれが、あそこまでズタボロになった瞬間は、胸がすく思いでしたから」
「あ、笑みが透明だ、やめてよ!諦めないでよ!同士でしょう!」
「次のループはさすがに心が持たないと思うわ、ごめんなさい、一人にさせてしまうわね……」
「ひー!!」
「神が顕現仕掛けてますねー。どうですか、そろそろしゃべれますかね?もう一太刀行きましょうか?」
「何であんたは全くプレッシャーを受けていないのよ!」
「たかが神でしょう?それもマイナーな?なぜに畏れ敬うことがあるのです?そもそもですね、私の神じゃありませんし、っとさすがに受け止めますか?」
「うわああああ、死んだ、これみんな死んだよ、しんちゃん!」
「その呼び方はやめていただけます?」
『ズガン!!』
「おー、次元を超えて響き渡る鈍器の音だねー」
「「へ??」」
「どれどれ?
『くくく、下の次元に夢中になりすぎておって、完全に背後がお留守じゃったぞ。わしの手にある、今宵の、神バールなようなものは血に飢えておったわ、カカカカカ!』
ですってよ。いやですね、神界の連中は野蛮で」
「「へ??」」
「追記がきましたね。
『囮役ご苦労、うまいこと逆ハーレム転生者、悪役令嬢、ループ恋愛学園、などをつかさどる小説神を、ぬっ転ばしたわい。くくくわしのシマで好き勝手しおった上に、直接的な世界への干渉やら、次元保護条例違反やら、てんこ盛りじゃな。これは報奨金ものかもしれんの、ウハウハじゃ。こちらはこれから事後処理やら、転がっている邪神を埋める穴を掘ったりで忙しくなるので、そっちは適当に任せるぞい』
相変わらず、無茶振りしてきますね。
まあ、いつものことですか?
と、時間が動き出す前に、私は消えますので、後で学園長室に来てくださいね、説明とかこちら側での事後処理と諸々必要でしょうから」
「あ、もしかして後始末を押し付けられた?!」
「今更お気づきになったのですの?とりあえず、一般生徒には、軽く暗示をかけて、解散させますわ、あなたのハーレムは任せますわよ」
「好きでハーレム作っているじゃないわよ!」
「最初は貴女、ノリノリでしたでしょうに」
「く、黒歴史だわ……ねえ、もう記憶を無理やり保つ必要なないのよ、シーちゃん」
「いやよ、貴女をおちょくれる貴重なネタ……じゃありませんでした、大切な友情の記憶ではございませんか?ふーちゃん」
「というわけで、黒幕の神(邪悪な?)を狩ってきました」
「さらっと、何してくれとんねん……」
「口調がおかしくなってますよ、学園長。彼は、こういう人です、慣れてください」
「いや、これは慣れちゃダメな部類じゃろ!神殺しじゃぞ、まかり間違って教会に知られたら、聖戦が起こるぞ!」
「相手は多分邪神ですよ、まあ、まっとうな神様ってまだ一柱もあったことがないのですが」
「神様をどうにかできる存在というのがおるというのがそもそも問題なのじゃが、まあよくはないけど、いいわい、話を進るぞ」
「結局私何もしませんでしたわね」
「狩れる位置にうかつにも相手が出てきてましたからね」
「ふむ、あれは確か第三新聞部のエースじゃったの、あれが黒幕じゃったか、どおりで神がかり的な事情通であったわけじゃ」
「からかわれていたんじゃないでしょうかね」
「腹立たしいの!」
「まあ、神殺しと言っても、やったのは現世に来るための仮のボディだったようですけどね」
「いやそれでも異常なことなぞじゃぞ?」
「相手が油断して背後から先手が取れるなら、あんなものですよ。さすがに硬すぎるとダメですけどね」
「普通は無理なんじゃがのう」
「学園長、シンシアです。フローラも一緒です」
「おう、入ってくれ給え」
「学園長、彼は何者です?先ほどは通りすがりの勇者ですなどとふざけたことを言われたのですが」
「ふざけてないよ、事実だからね、ええと、とりあえず、改めて説明しようかな?エリザベス嬢は、ロビン辺境伯から何か聞いているのでしたっけ?」
「魔王を倒すために異世界から神様に呼ばれたテロリストとだけは聞いていますわよ?」
「よし、あとでしっかり辺境伯には言い聞かせておこう、物理的に……やってることはそれほど遠くないのか?まあ、魔王軍側にとってはテロリストと言うよりは、暗殺者だろうか?」
「ええとつまりどういうことなのでしょうかねフローラ?」
「さあ、それよりも今回はどこまで学園長に話してるのシンシア?」
「そのあたりは心配ないぞ、細かいところまでは覚えていないが、だいたいの周回は把握しておる」
「!、すごいですね、自力で記憶の封印解除から、精神の保全まで行えたのですか」
「つい先ほど、トムさんの指摘があってのことじゃがの」
「そうです、つまり彼はどういう方なのでしょうか?」
「簡単に言うと、先ほどのエリザベス嬢の話になるな。この世界の強くて悪い魔王を退治するために、呼ばれた勇者ですね」
「よくあった昔のRPGのゲームみたい」
「確かにそうですわね」
「そういう話が通じるということは、シンシアさんもフローラさんも、私と同じような世界観の異世界から、こちらに転生とか転移とかされた方々ですかね?」
「そうね、私は、最初の6歳の時に、前の体が無くなる前にやっていたゲームの、悪役令嬢へ転生していたことに気づいたわ」
「私も同じ同じ、こっちは、主人公だったけど」
「それで、この世界に呼ばれたり、転生したり転移した勇者は、私一人ではないのですね、それぞれ違う神様が、その権能に見合った勇者を転生とか転移させて、悪くて強い魔王を討伐させようとしているのです」
「質問よろしいかしら?」
「はいエリザベス様」
「その神様サイドですが、協力して事態に当たっいるようには見えませんですわ、そのあたりどうなっているのでしょう?」
「既得権益の確保やら、縄張りの維持やら、メンツの問題やらで、基本神さま同士協力しようとかいう発想になってません、とのことですよ、ええと、弱肉強食っぽい世界観ですね、神界は」
「うわ、それは迷惑ですわね。まあ、完全にほおって置かれるよりはよろしいかもしれません」
「転生とか転移された勇者は、その能力を育てるために、その対象の神ごとにある程度の領域を確保して、他の神の干渉を遮断して、育てるわけなのですが、今回、うちのテーブルトークRPGを司る神様への領域に結構たくさんの他の神が相乗りしてきたようでして、リソースが削られている、のだそうです。ですので、その現状を改善するために、私が動いていたわけですね」
「なるほど、ということは、私の辺境伯領でもそのような動きがあったのですね」
「はい、そちらはすでに解決済みです、で、王都にも怪しげな影あるとのことで、行って来いと飛ばされまして」
「それで、私たちのループを断ち切っていただけたと」
「はい、うちのテーブルトークの神様が言うには、周囲と世界軸がズレまくっているループ物は、そのままだと世界を破断させて壊してしまうので、早くになんとかするようにとの命でしたね」
「おかげで助かりました、ありがとうございます」
「ありがとう、本当にしんどかったので助かりました」