46_シンプルに行くためには、複雑な人間関係が邪魔になるわけですが、その辺りが面白みのあるとろこなので、如何ともしがたく。
「悪役令嬢や、ヒロインの周囲で、目立っているような一般人はいませんかね?」
「ううむ、そもそも目立っている一般人というのが矛盾しておるような?」
「確かにそうですね。では、シンシアさんとよく一緒に見られるような生徒とか教師は他にいませんでしょうか?」
「新聞部のエースからは報告が上がっておらんの、基本一般生徒は、距離をとって、眺めている感じじゃの」
「伯爵令嬢で、しかも実家の勢力も大きいとなるなら、利害関係から近く者も多いのでは?」
「まあ、その伯爵家に黒い噂があるのと、シンシア嬢そのものに対しての畏怖の念があるようじゃの、こう、触らぬ神に祟りなしという感じじゃな」
「人望がないのですか?」
「安全第一、いのちだいじに、が、モットーの生徒が多いからのう」
「では、ヒロイン枠のフローラさんはどうでしょう、こちらは人気があるのでは?」
「平民出身ということで、貴族組からは疎まれておるぞ、さらには、生徒会へ入ったことで、平民組も少し距離を置いているような感じじゃな」
「あれ、意外と孤立している?」
「伯爵令嬢の婚約者である王子に色目を使っているということで、他の貴族に連なる連中からは白い目で見られておるし、平民からは貴族におもねる、とかうまくとり入りやがって問いうやっかみがその根底にあるのか、それほど人気はないの」
「美人なのでしょう?男性人気とかはないのですか?」
「一般生徒の中には純粋に顔とかスタイルがいいので好みという男子とか、一部女子とかはおるが、生徒会メンバーを押しのけてまで、アプローチをしようとはしていないじゃろうな、労力に結果が追いつかんじゃろう、普通に考えて」
「生徒会の中でも立ち位置が気になりますね、フローラさん」
「前にも行ったが、各人のトラウマとかトラブルとかをシューテイングした結果、彼らからの好意度は結構高いぞ。
生徒会長のセイバー王子は、ほのかな恋心から、ちょっと王族としてはどうだろう、というくらいの情熱を感じさせる行動をとることもあるようじゃな」
「平民出身の王妃とか、狙っている感じですか?それは混乱する国の未来しか想像できませんね」
「まあ、フローラ嬢は結構度胸があるし、頭も並よりは上じゃから、努力次第では及第点をあげられる王妃になりかねんし、血筋がはっきりとしたならば、身分の差も問題なくなるじゃろうな、うまくいけば、王子様エンドじゃろう」
「なんですかそのなんとかエンドって?」
「”ぎゃるげー”の”えんでぃんぐ”の種類らしいぞ?特定の対象キャラと懇ろになった結果、その対象と結ばれて、幸せに暮らしましたとさ、で物語が閉じられる様式らしい」
「はあ、毒されていますね、世界が」
「そうじゃの。もっともフローラ嬢の方は、あまりその気はないようじゃぞ?王妃になっても窮屈であるから、忌避しているのか、別に本命がいるからなのかはわからぬがな」
「権力に興味がないのですかね?」
「そうかもしれんな。ちなみにユニットがプリンセスになれば、味方を鼓舞して、行動回数を1つ増やすことができるし、聖属性の全体攻撃も優秀なユニットになるぞ?」
「それは、妄言だとわかります。元ネタは相変わらず分かりませんが」
「騎士の息子である、ブライアンとも仲は良好じゃ、どちらかというと、個人同士のつながりというよりは、二人で王子を盛り立てようという、同盟者のような立ち位置じゃの。将来一緒になって、夫婦で、王子をお守りする、という展開もアリかもしれない、くらいにはブライアン君ん好感度は高そうじゃ。女騎士エンドかの?」
「あれ、結構フローラさんって、戦闘的な分野で実力が高いのかな?」
「魔王に対抗する若者を育成する学園じゃからな。実践形式の実習も充実しておるよ。回復魔法で前衛の援護から、各種属性の魔法での援護、威力もそこそこ高い魔法での制圧力、肉体的にも、接近戦ができるくらいの体術があるのでの、鎧とか盾とかを装備して、自身の傷を自ら癒したりすれば、十分最前線を任せられるくらいの固さになるの。マルチで装備次第ではどこにでも配備できる、便利なユニットじゃ」
「……何か他のゲームが混ざっている気がしてきましたね」
「豪商人の緑ちびっこ坊やのグーリエ君は、彼女の庇護欲とか母性本能を刺激するようじゃの。守られているばかりじゃないぞと、反発するちっこい少年にさらに、メロメロになるという悪循環?腐のスパイラルが発生しておる、最近の流行りでいうと、お姉さんとショタ枠じゃな」
「いやわからないので。この場合わからないから、幸せなのでしょうかね?」
「大量の資金と、広いコネクションを駆使して、とにかく数で勝負するユニットと思われがちじゃが、各種の魔法のアイテムを湯水のように消費した上での盤面の制圧力は、実は生徒会一の破壊力を秘めておるかもしれんな。しっかりとした準備は必要じゃが。魔王軍相手には今ひとつじゃが、経済戦を仕掛けたならば、圧倒的な優位差を見せつけて、相手を戦場に立たせる前に勝負を決めてしまうなどという、違う戦場を構築することのできるユニットでもあるぞ。彼が味方に入れば、武器弾薬食料が不足するという事態はまず起こらんな。ここは、豪商夫人エンドじゃな」
「いや、だから何の話ですか?」
「教会の切り札、聖女の男の娘であるところのデイライトじゃが、同じ回復魔法の使い手というところでシンパシーを感じているようじゃな。あと、美容と健康についての深い会話をなすことのできる盟友という感じの立ち位置でもある。デイライトの女装とかメイクは、そもそもはフローラの思いつきから始まったものじゃからな。今では、二人してメイクを極めて、まるで姉妹のように振舞って、遊んでいたりもするようじゃぞ、純粋に怪しい雰囲気には、一定のファンがついておるな、片方が男なのに百合の香りがするコンビじゃな」
「教会は何も入ってこないのですかね?倫理観的にはアウトのような気がしますが」
「宗教組織は結構閉鎖的じゃからの、その手の趣味は意外と容認されておるようじゃぞ?一説には教皇も二人が写ったブロマイドを所望するほどのファンであるという噂が、まことしやかに流れて、それを流したと言われる対象者に粛清の嵐が吹き荒れているとかなんとか」
「……ええと、理解が追いつきませんが、大丈夫ですかね、人類」
「確かに、この国は未来に行きすぎているのかもしれんの。ユニットとしてな複合的な全体回復魔法が盤面を覆って、死者すら蘇るような継続戦闘が可能となるのう。敵方に、不浄のもの、つまりは、動く死体やら、踊るガイコツやら、歌う幽霊やら、血湧き肉躍る吸血鬼やらが、おると、一方的に聖なる力で駆逐することができるので、戦闘が楽になるぞ。聖女と、聖騎士エンドじゃな。ちなみに聖女が男じゃからな」
「言葉の意味が崩壊していませんかね?」
「優秀な炎冒険者バーン君とは、体術の訓練において、師匠と弟子の関係かの?結構怪我の多いバーン君を優しく癒したりもしておるぞ。戦闘実習も兼ねて、王都のダンジョンにも一緒に潜ったりしておるようじゃが、この時にはよくシンシア嬢がわの、撲殺令嬢のオーリンとも一緒になることが多いな。バーンもオーリンも性格が快活でサバサバしているので雰囲気も悪くないな。脳みそまで筋肉な二人を後方から制御して、突っ込みすぎる二人を適度に引き戻しつつ、稀に三人で特攻とかもかけながら、楽しくダンジョン攻略をしているようじゃ」
「かなりアクティブですね、フローラさん」
「ストレス発散にもなっておるのかの?人間関係が結構複雑じゃしの。最近は、バーンのことを気になる男の子認定しつつあるオーリンが、フローラに対してモヤモヤとした思いを抱いているようであるが、バーン、フローラ双方の様子を見ると、恋愛関係だとは確定できないので、思いつめたりはしておらんようじゃな。まあ、その胸のうちのモヤモヤの正体すらわかっとらんようじゃが」
「乙女の心の動きを正確に語ってみせる老人とか、ちょっと気持ち悪いのですが?」
「大概ひどいぞ君。この辺りは、シンシア嬢からの相談もあって、詳しいだけじゃぞ!」
「あ、やはりシンシアさん気にしてられるのですね」
「オーリンは親友枠じゃからな。フローラとバーンが仮にくっついたとしたら、英雄エンドじゃな。魔王を退治するために旅立っていくスチルで締めじゃろう」
「スチルって静止画ですよね、何か他の意味があるのですか」
「”ビデオゲーム”なので、印象的な出来事を描写したものじゃな、コレクションする楽しみもあるようじゃぞ?」
「退治して世界を救うスチルじゃないのですかね、そこまでは干渉できないということでしょうかね?」
「紫毒舌眼鏡君ことルーフェンくんは、魔術理論とかの話で盛り上がっておるの。禁呪である、精神に働きかける魔術についてたまたま知識を得られる機会を得て、シンシア嬢の伯爵家にまつわる黒い噂の真相にたどり着きそうになっておるな。ルーフェン君にとっては、同じレベルで魔法の理論を戦わせることのできる女性ということで、かなり評価が高くなっておるぞ」
「知的な会話に飢えていたのですね」
「まあ、理論とかがとっぴじゃからな、まさしく時代を先取りしているというか、本来そこまでたどり着くはずのない知識から、発想を得れると、フローラ嬢の独特な知識体系に興味深々という形じゃな」
「異世界転生による、現代知識の影響ですかね?」
「なんじゃそれは?」
「あ、その辺りはテーブルトークRPGの神様からの再汚染はないのですね」
「?」
「こちらのお話です」
「そうか?で、このルートだと大規模破壊が可能な盤面の敵ユニットを一掃できるほどの、禁呪を手に入れて運用できるユニットが形成されるな。魔導王ルートとでも言っておこうかの?」
「だから何のゲームなのですかね?」
「フローラ嬢は、彼ら生徒会の面々と適度な距離感を保ちつつ、特定の誰かと一緒になりたいとかいう言動をすることは控えておるの。ハーレムエンド狙いか、もしくは隠しキャラ狙いではないかと予想しているわけであるが」
「ハーレムって、王様が複数の女性をお嫁さんにするものですよね?」
「だから、正確には逆ハーレムエンドじゃな」
「それって、女性の倫理観的にダメなんじゃないですかね?」
「偏見かもしれんぞ?男がハーレムを作ってよくて、女がダメというのはこれは、男女同権の社会では通らんじゃろう?」
「確かにそうかもしれませんね。子孫を確実に残す手段としての、男女比の偏りという点では、矛盾が生まれそうですが」
「不自然であるから、文化なのであろうよ」
「含蓄があるような、そうでもないような?」
「隠しキャラ狙いというと?」
「定番では、某国の王子とかかの?2週目から攻略が可能になるエキゾチックなキャラクターとかじゃな」
「2週目というのはよくわかりませんが。ええと、つまり今その方が、学園にいるのですか?」
「おらんな、さらに言うと、くる予定も今の所ないのう」
「それは完全に妄想じゃないですかね?」
「もう一つのパターンは教師ルートじゃな、都合の良いことに、シンシア嬢の腹違いの兄が教員をしていて、適度に絡んでおるからのう」
「ええと、ギルガメッシュ教諭でしたっけ?たれ目の、優男。で、シンシア嬢の抹殺ドジっ子メイドといい感じになりそうな?」
「そちらのルートじゃと、結構派手にシンシア側とやりあうことになるかの?まあ、他のルートでも、シンシア側の妨害はある、はずじゃがな」
「?自分のメイドの恋を応援するような展開ですかね?」
「より直接的に、フローラ嬢を排除するような、アグレッシブで殺意溢れる展開じゃな。メイドがヒロインの暗殺を成功させるかどうかが、ルート選択の大きな山場じゃろう」
「アグレッシブすぎませんかね?」
「貴族社会で暗殺騒ぎやら刺客のやり取りなぞ、時候の挨拶とセットのような、季節ごとの風物詩じゃぞ?」
「いやな風物詩ですね」
「どのルートでもシンシア嬢とフローラ嬢は対立するからのう。王子ルートは真正面から、婚約者簒奪レースじゃし、騎士ルートはその派生系で、平民を王族のそばに近づけてなるものか、という執念めいた気持ちから、豪商ルートは、伯爵家の既得権益を守るためにちょっかいを出すし、聖女聖騎士ルートは配下の呪殺令嬢メグレアを庇うために、冒険者英雄ルートはバーン君とオーリン嬢をくっつけるために、紫毒舌眼鏡ルートなら、伯爵家の秘密を守るために、教員ルートは、さっきも言った通りじゃな」
「でも現状それほど物騒にはなっていませんよね?いえただの勘ですが」
「その通りじゃな、フローラ嬢がターゲットから均等に距離を取っているせいかどうかは、わからぬが、うまいところでバランスが取れておる。また、シンシア嬢も冷静じゃしな」
「……何か変ではありますね?」