44_シンプルにしようとしても、謎の転校生というのはそれだけで、裏の事情が複雑そうですよね。
「というわけですので、よくわからないかもしれませんが、編入をよろしくお願いします、サブマーリン学園長」
「よくわからないが、なぜかよくわかった。世界改変系の魔法を何者かが使用しているようじゃな?」
「話が早いですね、現在進行形で、多数の神様がこの世界で縄張り争いをしているようでして、この学園も現場になっているようですよ?」
「事件は神界で起こっているのではないのじゃ、教育現場で起こっているのじゃ、じゃな」
「たぶん何かのパロディなのでしょうけど、ネタが古いのかどうなのか、私には通じないようですよ?」
「ネタ?何のことじゃ?」
「あー、順調にテーブルトークRPGの神様の再侵食が始まっていますようですね」
「改めて認識してみると、いろいろおかしいからのう。人の髪の色とかが、青とかピンクとかありえんじゃろ?どのような色素が働いているんじゃ?」
「キャラクターの見分けがつきやすいように記号化しているのでしょうね、予想ですけど。ちなみに、ここらあたりでは、私の黒髪も珍しいみたいですけど」
「その色は、東にある島国に住む人種には出やすい色ではあるぞ?最近までの認識だと、闇の力に親和性が高い不吉な色とかいう設定もあるが、これはあれじゃな、その”学園逆ハー物”を司る神が作った独自の設定じゃろうな」
「そんな設定も作ってたのですか?これは他にもいろいろありそうですね、その辺り確かめながら、誰が、物語の核になっているのか確認しないといけませんね」
「端で見ている分には、とても面白い出し物なんじゃけどのう。さすがに、魔王関連が関わってくると、命の危険があるので問題じゃが」
「人生を謳歌している老人ですね、どこかの神様を彷彿させます」
「そんなに神々しいかの?」
「禍々しい方ですね」
「怪しそうな生徒とか関係者はどんな感じですかね?」
「お、キャラクター紹介じゃな」
「目線が変ですね、ゲームみたいな感じになってますが、学園長としての認識はどうなっているのでしょう?」
「神の目線が維持できないような者が、優秀な魔法遣いになれるわけがないじゃろう?この辺りの客観性は、なんだ、”ぎゃるげー”の世界に勝るとも劣らないぞ?」
「私はやったことがないので、それほど強くは言えませんが、魔法の達人が”ぎゃるげー”のシステムと比べられる世界はどこかずれている気がしますよ?」
「むしろ神の目線は、魔法使いとか経営者とかには必須じゃぞ?ほれ”エンディングが見えた”とか言いながら、精緻な計画を立てて実行するとかはありそうじゃろ?」
「それも何かのパロディですよね?いやわからないので説明はいいですけど、もう少しテーブルトークRPGの神様の影響を抑えた方が良いような気がしてきましたね」
「わしも自然に口から妄言が出おるのでな、発言の後で、首をひねることがあるぞ?」
「ええとですね、メモを読みますと。
『基本は、学園を舞台とした恋愛シミュレーションゲーム、に相似性がかなりある世界に転生した主人公が、なんやかんやする世界観のようではありますから、まずは、中心となる人気のある女性、多数の男性を惑わしているというか、疑似恋愛関係にあるような人物がいる、はずじゃ』と、テーブルトークRPGの神様が言っておられましたから、そこからでしょうか?」
「ならば、それは、フローラさんですな。桃色の髪の毛少女で、平民枠であるが、類い稀ない魔力を誇り、強い癒しの力を中心に基本とされる属性の魔法を全て使用できることができるという、まあ、かなり素質がある生徒じゃ。血筋が今ひとつはっきりしないので、何代か前の王族の落としご系譜か、それに近しい貴族の落としごではないかという設定まで盛られておるな」
「盛られているんですね、いや凄いですね」
「最初に知った時は、なんとも物語の主人公みたいじゃな、と疑わしく思っておったが、だんだんと違和感を感じなくなってきている自分の心の動きが怖いのう。性格は素直で明るくて、誰に対しても平等に接する、優しい娘、ということになっておるな。今のところ特に親しくしている特定の男子はおらんが、生徒会の手伝いを通して、うちのイケメンどもと、交流があるようじゃな、まあ、男を手玉に取っているという見方もできるかもしれんが、悪意は見えんぞ、上手に隠しているだけかもしれんが」
「そういえば、属性って何なのでしょうかね?」
「古代の哲学者が起源での、現象をカテゴライズしたものじゃな、地水火風が基本となっておる、それに木とか、金とか、陰や陽、闇とか光とか、影とか、まあ、魔法の効果によって属性が設定されておるな。珍しい属性としては雷とか、情報とか、電子とか。あと概念そのものが属性となっているものもあるの、歴史とか、生命とか?まあ、言うなら、結構、なんでもありじゃの。属性によって効果が関連づけられているのではなくて、魔法でできること、現象を基にして属性を与えているような感覚じゃろう。属性なしというカテゴリもあるぞ、あまり特徴もなく、強力で派手な魔法にはならないので迫害されてはおるが」
「分類とかいい加減なのですかね?」
「むしろ、博物学の類ではないかの?とりあえず、集めて分類してみましたとかいう段階じゃ。属性ごとの傾向が多少わかるくらいかのう?」
「生徒は皆さん魔法が使用できるのですか?」
「純粋な平民枠は無理じゃなあ。まあ、過去に貴族の血が入っているような場合なら魔法を使用できる可能性はあるし、在野の魔法使いも教会から逃れたものがいたりするから、その血を引いていたり、教会そのものの所属か入学したり、あと冒険者組合関係の人材が入学したり、そのような感じの生徒が多いので、結構魔法を使える人材は多いかの?
まあ、魔王と戦う方法は魔法だけではないので、それだけを見て教育しておるわけではないぞ?」
「へえ、そうなのですね」
「むしろ、魔法に関わらずに、知識とか技能の習得に時間をかけた人材の方が、官僚とか、役人とか、商売人とか、兵站に関わる、組織を維持する人材として優秀になりやすいという傾向もあるからの、まあ、そこは、個人の才能を見極めて、伸ばす技術がものをいうのじゃよ」
「意外と教育者をしていますね、驚きです」
「意外は余計じゃぞ?」
「『学園逆ハーレム物の敵役である、意地悪な令嬢とかライバルとかの配役である者に転生しておって、逆に元の常識知らずのヒロインを叩き潰したり、自由闊達に生きるために自立したりする、”悪役令嬢者”というジャンルも、あるのじゃからして、そのようなキャラクターが存在するかも調査が必要じゃ』とのことですが?」
「それならば、シンシア嬢じゃな、家は伯爵家で、次代の王であることが、求められている王子の婚約者。きつい目つきやら、取り巻きの行動やら、伯爵家にある黒い噂やら、わがままで冷酷な人格とされておるが、本人はそれほどの悪人ではないぞ?冷たい視線がたまらないという、結構あれなファンも多いしの。
ちなみに婚約者である王子は、この学園の生徒会長も務めておる、名前はセイバーとおっしゃられてな、文武両道、公明正大、明朗快活、元気爆破な好青年じゃよ」
「金髪でイケメンでしたねー」
「まあ、王家というか、貴族は血の配合が見事じゃからな。見目麗しい同士が血をつないできた努力の証とも言える。たまに能力主体で入った血が仕事をして、顔面偏差値が低い存在が生まれたりもするが、健康面でかなりのリードが平民と比べてあるからの、最低限の容姿は確保されておる」
「身も蓋もないですね」
「貴族とかそれに準ずる立場は、ハッタリも大事な武器じゃからな。美しさは武器じゃ」
「『ヒロインに関係する、攻略対象の中に、核がある可能性もある』のだそうですよ?」
「まずは先ほどもちらりと言ったが、我が国の第一王位継承権を持ちつつ、生徒会長をしているセイバー君だな。彼はシンシア嬢と婚約関係にあるが、それほど親密な仲であるというアピールはしておらんな、どちらが遠慮しているのか、何かの作戦なのかは不明じゃが。髪の毛は金髪で、美丈夫、後学科は魔法を含めて、基本何でも優秀な部類だな」
「金髪完璧王子さまですね」
「それの腹心であるのが、青い髪の騎士、ブライアン君だな。質実剛健、有言実行、滅私奉公といった感じじゃな。基本無口じゃが、常に幼馴染であり、仕える対象であるセイバー王子に寄り添っておるな、生徒会での役職は特になく、会長の補佐に徹底しておる。」
「忠犬青騎士と」
「生徒会の会計担当は、平民だが、当代一の豪商である商家の孫、グーリエくんじゃな、享楽刹那、金満豪遊、豪華絢爛、金にものを言わせての力技が得意な緑の髪の少年だね。お金で買えるなら、身長が欲しいというくらいのちびっこじゃがの。一見無邪気に見えて、結構悪辣な思考体系をしておるぞ。まあ、成績を金で買うといいつつ、最高級の家庭教師を莫大な報酬で、複数人確保するというくらいじゃから、根は真面目っぽいがの」
「緑の成金坊やかな?」
「生徒会では渉外を担当しておるのは、教会の秘蔵っ子である、デイライトじゃな。白一色のアルピノ体質。気鬱病弱、大和撫子、女装男子、根本腹黒、まあ、宗教家らしいとは言えるじゃろうかな?ちょっと目を潤ませて、上目遣いに頼みごとをすると、大抵の男女がその願いを叶えてくれるという、自分魅力を十分に生かすこと知っている、意外としたたかな性格をしておる」
「男の娘白聖女ですね」
「庶務担当が、燃えるような赤髪の少年じゃな、こちらは、親が有名な冒険者で、本人も冒険者ギルドに所属しておる、筋肉第一、中央突破、迷宮踏破、呵々大笑、の熱い大男じゃな。名前はバーンくんという、たまに意味もなく、炎を上げながら構内を走り回っているぞ。じっとしているのが嫌いなのじゃろうな、基本頭は弱いが、肉体的なことなら、この国の5本の指に入るかの?気は優しくて、力もち、かのう?」
「赤い筋肉バカ、ですかねー」
「最後が書記じゃの、紫の髪の毛をしておって、非常に頭が良い。冷静沈着、冷酷非情、本体眼鏡、毒舌吹雪、線が細いように見えるが、脱ぐと結構筋肉質じゃよ。宮廷魔導師の孫にして、将来の筆頭魔道士、魔法の構築は精緻にしてその独創性は、他に追従を許さない。軍師にして、生徒会最恐戦力ともよばれているな、名前はルーフェン君じゃ」
「紫毒舌眼鏡で仮決定ですね」
「あとは、生徒会のメンバーではないが、教職の中で一人、銀髪の若い新任教師で、フローラ嬢の成績とか魔法の素質に待つわるトラブルに巻き込まれつつ、なんやかんやと解決のてだすけをしてしまっておった青年がおるな。名前は、ギルガメッシュじゃな。顔立ちは結構整っておるが、糸目で、タレ目なので、気弱な印象があるのう。で、実は彼には秘密があっての、なんと悪役令嬢の腹違いの兄でな、双方表向きは秘密にしておるようじゃが、妹の、悪役令嬢役のシンシア嬢とは連絡を要所要所で取り合ってとる中じゃ」
「銀髪兄さん教師ですかね、また面倒臭い立ち位置のキャラクターですね」
「でそれら全員のトラウマとか、過去の血縁関係がやらかしたトラブルとか、学園での恋愛関係とか、もしくは恋愛に関わらない種々のトラブルとか、フローラ嬢が綺麗に解決してきたので、皆彼女に向けられる好感度はかなり高くなっておるな、ちなみにフローラ嬢は生徒会のメンバーに見習い枠で加入済みじゃ」
「学園長とはいえ、詳しく知りすぎのように思います、正直少し引いているのですが?」
「学園一の情報通と名高い、第3新聞部のエースを高額で雇っておる上に、わしの学園じゃぞ、いろいろ監視、じゃなかった、可愛い生徒を安全に見守る仕組みくらい構築しておるわ」
「犯罪ギリギリというか、すでに大事な線を踏み越えている奴が目の前にいますね、討伐するべきじゃないでしょうか?」
「生徒のプライベートいは配慮しているので大丈夫じゃ、情報の流出には十分注意しておるぞ」
「……まあ今回は役に立ってるので不問にいたしますが、ほどほどにしてくださると、嬉しいですね」
「うむ、自身の趣味とか興味を満たすためにしか、いや、生徒の安全を確保することを主題にしか使用しておらんから、安心せい」
「所々に漏れる本音が危なく感じますが、まあ、私が被害にあわないなら良いか」
「次は悪役令嬢側かの」
「いやしかし、関係する人物が多いですね」
「そうじゃの、物語が一遍紡がれるほどには、関わる人物は存在するじゃろうなあ、まあ主要な分だけ抜粋しておくぞ?」
「『モブと呼ばれるゲーム本編では活躍しないとか空気であった存在に転生している存在が、核の可能性も大きいので注意が必要じゃ』とかテーブルトークRPGの神様にも言われているので、一応主要でなくとも、ちょっときになる程度のレベルのものも、知らせてください」
「……むちゃくちゃ範囲が広くなるぞ?」
「まあ、物語の核ですから、目立っているとは思いますので、その辺りを加味して、知らせてください」
「左様か」