40_異世界転生物のお話では引退することもシンプルにいかないのか、大変だなと肩をすくめ。
「調子に乗ってきまいたので、辺境伯領を走り回ってきました、コツをつかむと一種類の強化はそれほど無理なく持続することができますね。
およそ、1時間から2時間は持ちそうです。訓練次第では、半日とか持ちそうな気配ですね、これは楽しみです。
戦闘になってしまうと、その前後で集中力が切れやすいのが難点ですが、上手に使うと、能力値上昇系列の魔法はとてつもなく便利に使えそうです」
「森の中はさすがに走りにくいですが、魔法で探索を併用すると、いい感じで飛び回れますね。木から木へと飛びまわることで、かなりのショートカットすら行えそうであります。と、さすがに木に衝突すると、少し痛いですね。まあ、防御点がひどいほどありますので、HPは減らないわけですが」
「というわけで、野山を駆け回って帰宅しました。ただいまです、巫女さま」
「お帰りなさいです、勇者さま」
「新しく手に入れて魔法がとても面白いので色々と試してみたくなってきましたよ、巫女さま」
「相変わらず、テーブルトークRPGの神様はお忙しいそうでございますので、確認はこちらに任されているようですね、勇者さま」
「バランスを崩しているのではないか?という問いには、今更なにをと返したくなるような、魔法でございますが、ずるいくらい便利そうではありますので、こちらとしてはこのままの方がいいですね、巫女さま」
「そうなのですか?でもそれだと面白く無くなるのではありませんか?強すぎて」
「個人の集中力次第で持続時間が続くというのが、鍛える価値があって面白いのですよね、魔法を重ねてかけると、途端に制御が難しくなるのが面白いですし、多種の強化だとその難易度が跳ね上がるのも、攻略のしがいがあります。ゲームとしては、シンプルなのかどうか、わかりかねますが、巫女さま」
「まあ、ゲームに落とし込むときにまた、調整するのではありませんかね?こう効果時間を区切るとか、その代わりに集中しなくてもよろしとか、シンプルになるように。ただ、現在、他の神様の影響が世界に蔓延しておりますので、その辺りの調整が難しそうではありそうですね、勇者さま」
「今のところ、テーブルトークRPGの神様が優勢ではないのですかね?結構私からの影響力が世界に強そうですし、巫女さま」
「実質、一人にしか加護を与えていないという現状で、他の神様の影響が、トムさまへ逆侵攻する方が、難しいでしょうね。一点集中型のスタイルを貫いた、テーブルトークRPGの神様の作戦勝ちでありましょうか?」
「転生冒険者成り上り系の小説の神様も、迷宮主人暗躍系の小説の神様も、核となるキャラクターは一人ではありませんでしたかね?」
「あちらは、微細に各種設定を相互の干渉させたり、準主人公格の行動もシナリオで縛ったりしているので、結構力が分散しているのです、勇者さま」
「それはつまり、テーブルトークRPGの神様が、中心に勇者を添えるという大前提以外は、全く何も考えていなくて、アドリブでお話を進めているだけということではないでしょうか?巫女さま」
「寡聞にしてそのようなものかと?まあ、基本的なシステムとか勇者に見せる世界とかは、ぼんやりと設定はしていましてでしょうけど、先のことは最後に悪くて強い魔王と決戦できたらいいな、くらいの軽いノリで進めている、気配は致しますね、勇者様」
「その臨機応変さに感心すればよろしいのか、いい加減さに眉をひそめればいいのか、判断に迷いますね」
「笑えばいいと思いますよ、指をさして、腹を抱えて。勇者さま」
「ははははは」
「素直な勇者さまも大好きです」
「55日目の朝です。
累積経験点:1,059,024点
所持コイン:503,725枚
ですね、今日も今日とて、領都へおもむきましょう、結論が出ているといいのですが」
「アレスさんを連れてくるのは確定なのですよね、勇者さま」
「その通りですね、では行ってきます」
「いってらしゃいませ」
「おはようございます若女将さん」
「おはようございます、ご主人様」
「それで、アレスさんたちはどうなりましたか?」
「後で、面会した時にわかると思いますが、全員で、そちらに移住することにするようですよ」
「なるほど、それは面倒がなくてよかったですね」
「冒険者組合の方からは、完全に引退するのを、惜しむ声もありましたが、まあ、適齢期ではありますし、それはそれで仕方ないですかね?という雰囲気だそうです。ただ、冒険者仲間からは、離れると寂しくなるな、から下心満載なアプローチまで多様の、別れがたい方々の行動やら、意見表明やらが見られますね」
「それにひかれるメンバーはいなかったのかな?
「借金をほぼ無効にしてくれる条件がよほどよかったのでしょうね、ありませんでしたよ」
「なるほど、ではちょっとアレスさんたちに会ってきますね」
「そちらが、終わりまして、時間がありましたら辺境伯爵のところへ顔を出しておいてくださいませんか、何やら頼みごとがあるようですので。急ぎではないようではありますが」
「了解しました、ではそちらにも寄ることにしますね」
「というわけで、全員揃って、そちらの場所?地方へ移住することになりました」
「はい、了解しました、アレスさん。しかし全員とは意外ではありました」
「借金の実際的な棒引きというのが、やはりよすぎる条件であったし、何より、そろそろ切ったはったの人生に疲れてきましので。実家の方は、腐っても元貴族ですから、借金さえなくなれば、生きていく手段がありますので、問題なさそうですし」
「別れとか済ませてきましたか?そう滅多には里帰りとかできないとは思いますし?」
「むしろ里帰りの可能性があるのですか、とか言ってしましそうですが。あれこれと事後処理がしたいので、その提案は嬉しいです。まあ、子供は、いつかは独り立ちするものでありますから、むしろ両親と離れられてホッとしている、とも言えそうです」
「男爵家の再興とか、言われないのですか?」
「そこまで、夢見がちな両親ではありませんし、さらには、弟もいますから、家の方はまあ、なんとかなると思います」
「それならよろしいですね、事後処理にはどのくらい時間が必要そうですか?」
「2日もあれば、問題ないですね」
「早いですね?では余裕を持って4日としましょうか?事後処理案件が終了しましたら、軽く装備を整えて、とりあえず、ニチの村へ来てください、場所はわかりますか?」
「大丈夫、北へ3日ほど行った村だね、その辺りは少し土地勘があるよ、でもそこからどこへ向かうのですか?」
「ニチ村から、西へ2日か3日行ったところに、集落がありましてね」
「あの歩くブドウと、幽霊の森を越えるのですか。そんなところに集落があったとは驚きです」
「それほど遠い場所ではないはずなのですけどねぇ?なぜか、孤立しているのですよその国は」
「”国”なのですか!ますます驚きです。まあ、怪物がうろつく森しかないと思っていましたから、そちらの方向には誰も進んで行こうとしていなかったのでしょうけれども」
「そうなのですか?」
「ええ、結構強めの怪物が暗い森で不意打ちを仕掛けてくるので、あまり奥まで冒険者もいかないはずです」
「なるほど、ちなみに南の湿地帯からも北上していけるようでが?」
「ええと、地図では、あのあたりの湿地帯ですか?多頭蛇龍の縄張りですので、そこへ踏み込むのは自殺行為ですね。さらにそこを越えて行こうという、冒険者とかはいそうにないですね」
「うん、孤立するわけがよくわかりました。ええと、とりあえず皆さんは、ニチの村に向かってください、そちらで合流しましょう、そうですね、今日から、7日後、2、3日前後余裕を持って、私が滞在してきますので、そこで合流後、東の森を抜けましょう」
「大丈夫ですかね?いや私たちの実力なら問題ないとは思いますが」
「道案内は任せてください、何度か往復していますから。後、森の中で安全に野営できる場所も確保できます」
「それは、助かりますね」
「では、そういうことで、次に会うのは、ニチ村ですね」
「はい、よろしくお願いします」
「さっくりと、商談も成立しましたし、ちょっとペンタのダンジョンに潜ってみましょう。
管理者権限で、管理室までおりまして、ダンジョンの現状を確認します。ダンジョンポイントは、順調に増えていますね、冒険者の攻略状況は、とこれは深層まで来ている方はいないようです。まあ、資源採掘用と割り切っている状態で、わざわざ最深部に来る方はおられない、ということでしょうかね?
罠とかで、強制的に最深部に送っていたのはなんででしょうね?ある程度、深部に冒険者を引き込まないと、いけない縛りとかでもあるのでしょうかね?
設定は特にいじる必要はありませんね。
貨幣とかを適当に懐へ補充して、おきましょう。
素材も、赤字にならないようにというか、少しだけ作り出して回収してと、次はっと」
「経験点にはなりませんが、ちょっとドラゴン戦をしてきましょうかね?
まずはスニークして、一撃を急所へ。ずんばらりんと。一撃で撃破ですか?武器の性能、すごいですね。竜種特攻は伊達じゃありませんね。
次は、わざと、吐息を浴びてみましょうか?
うん、これはすごいですね、半透明の幕で攻撃を弱めているようです、所持している他の荷物も、燃え出す気配がありませんね、なるほど、こういう見た目になるのですね、返す剣で攻撃して、ゴリっと、はい、正面からも一撃ですか、正直経験点が入るなら、ここで稼ぐが一番でありましたね、残念です」
「竜種相手でもスニーク行動は有効なわけですね、気がつきませんでしたが、消臭の効果もあるのでしょうか?同じくらいの強さで、竜種以外の怪物とも戦っておく必要がありますかね?確か、魔法の巨人とか、岩でできた人造巨人とか、鉱石でできた巨人とかも、このダンジョンにはいたはずですけど、最深部で出てきましたかね?」
「おっと、あの歯が尖った兎は、稀に防御点を無視してくる攻撃をしてくるので、注意ですね。潜んで、魔法を唱えて、魔法の快速、ではやさをあげておいて、と、攻撃です、自慢のはやさも、同じ土俵くらいには立っていますね。先制してずんばらりんと、防御点自体は少ないので、問題なく一撃死ですね。このあたりの敵だと、ほぼ一撃で倒せるのでしょうかね?まあ、硬い敵はどうなるかわかりませんが?」
「虹色に輝く金属系の怪物ですね。人型で大型です、硬そうですね。
さすがに一撃ではやれませんね、では、魔法の怪力で力をあげます。はい、ずんばらりんですね。一撃でいけるか、2撃必要か、と言うレベルですね。怪物の攻撃自体は、肉弾戦中心でありますので、全くダメージを受けませんね、がんじょうさと、ドラゴンメイルの防御点が強すぎるのでしょうね。
これなら、魔王の本拠地近くでも戦えるかもしれません。
さて、このくらいですかね?
お?神のメモ帳で確認しますと、魔法の怪力で、 ちから を伸ばすと、その分HPも上昇しているようですね、とすると がんじょう も同じ仕様ですかね?
その通りですね、で、魔法の効果が切れるとHPが元に戻りますね。
これ、増えているHPの状態で、HPが減少すると、どうなるのでしょうかね?
どこかで、試しておく必要がありそうです」
「さて、一通り試しましたし、素材と貨幣も補充しましたので、辺境伯の所にでも行きますか」
「呼ばれましたので、参上しましたトムですが?」
「おおよく来た、トムさん。呼んだのは他でもない」
「?今日は夫人の格好なのですね?ええと辺境伯?」
「おう、ちょっとしたお茶会の準備があるからな」
「それで、そこのソファーで、力尽きている、エリザベスさんは如何したのですか?」
「うるさい能面勇者、お前に、目の前で、父が義母に変身するシーンを見せつけられた娘の気持ちがわかる!?しかも一瞬全裸になったので、みたくなものまでしっかり見ちゃったのよ!」
「それは、お気の毒に。辺境伯さま、いささか趣味が悪いですよ?あんな大惨事を愛娘に見せるとは?」
「そこまでか!?まあ、多少悪ノリがあったのは認めるが」
「それで辺境伯さま、何か依頼があるとのことですが?」
「それだ、実は夫人の実家にも関わる話なのだが、トムさん、あなた、ちょっと王都へ行って状況を偵察してくれないだろうか?」