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04_シンプルに、成しとげよう。

 「仕事を解決するための、あの変形サイコロを振る行為にも基準があるんでしょうね」

「そうですね勇者さま、ただ、異世界から渡ってない私たちにはそのサイコロが転がる現象は見えないのですけども」

「なるほど、あのビジョンは世界を異動した者特有の能力なわけですね、巫女さま」

「あ、そうそう私のことは あかね とお呼びくださってもいいですよ?」

「和名もあるんだ。ええと王様はアレックスでしたよね?」

「ああ、田吾作王の、ソウルネームですね」

「あの王様、そういう系列の、こう、心が痛い人だったんですか!?」

「もちろん冗談ですよ。名前つけあたりは特に、勇者さまが来られた世界での、どの特定の文化に縛られないようになっています。それどころか逆に全てに対応するようになってるのです。その方が簡単ですから」

「いいんですか、名前ってその固有の文化的には結構大事なものなような気がするのですけど?」

「そもそも、大元の言語とか、風俗とかが、勇者さま世界ナイズされてますから、今更なような。もう、諦めました」

「うわぁ、文化侵略が完了してるんですか?なんだか、どうもすいません、巫女さま」

「いいえ?ジャンクフード美味しいですし、漫画とかも面白いです。こんな田舎の王国ですけど、コンビニとか進出しませんかね?」

「侵略文化、満喫してますね。いやさすがに人口100人を切りそうな限界集落にコンビニは来ないとは思いますけど?」

「郊外型のショッピングモールでもバッチコイなのですが……」

「そうすればうちの国にも、ワンチャンあるかのう」

「あ、田吾作王が黄昏ていますね」

「勇者さま、私の名前はアレックスだからね」



 「ええと、仕事を成し遂げる時の行為についてのお話でしたね、目標となる値が%で表記されて、それ以下の出目を、あの宙に浮かぶダイスで出せば成功。で良いんですよね、あかね巫女さま」

「そうですね、まあ、私にはダイスとかは見えないのですけど」


「神様のメモ帳によると、


 ・できるかできないか、はっきりしない時の目標値の基本は50%です。

 ・その50%に、仕事に関わる能力値を加えたものが、目標値になります。

 ・何かの要因で、障害があるときには、その分目標値から引かれます。

 ・最終的に決定した目標値でそれ以下の出目ならばその仕事は成功します


 だ、そうですね。」

「一見簡単そうに見えますね、勇者トムさま」

「実際に簡単ではないのでしょうか、巫女の あかね さん」

「判定に移る前の判断が大変そうですよ?」

「ああ、なるほど、その判定をする人物が、一般的に五分五分できるかどうかをどのように判断するのかですね。そこのところどうなんでしょうか?神様、と書き書き質問です、


 ・そこは感覚ニュアンスで?


 神のメモ帳地面に叩きつけますよ、いえ結構真面目な話」

「さすが我が神かっこわらい」

「笑っている場合ですか、あかね巫女さん」

「呆れてるだけです、笑うしかありません」

「ああ、それは、笑えばいいと思いますね」


 「次のページに、さらに詳しく設定が書かれているようですね」

「先ほどの茶番はなんだったのでしょうか勇者トムさま」

「神の業とでも言っておけば、あまり惨めではなくなるかもしれませんよ巫女あかね、


 ・一般的にできそうな日々の行為(その延長も含む)の基本が50%です。

 ・これを一般技能:50% と表記します。

 ・これとは別に、一般的ではない、専門的な技能も存在します。

 ・何を持って一般的なのか、というのは、神様が判断します。

 ・異論反論は、受け付けません。たぶん、きっと?

 ・明らかに設定をミスったと思った時は、次の機会にそっと修正します。

 ・暖かく見守ってください。

 


 技能という、概念を数値化するわけですね、というか、解説の後半はただのお願いじゃありませんかね?」

「さすが我が神様 かっこわらい ですね、その存在感に揺るぎないものを感じます」

「その信頼の仕方もどうかとは思いますけど」


 「戦闘に関わる判定も、専門的な技能が関わるようですね。


 ・戦闘(殴る蹴るの暴行など)技能を、勇者さまは、現在、50%で持っています。

 ・対象に攻撃を命中させる基準となる目標値はそれに すばやさ を足した%です。

 ・そこから、相手の すばやさ を引いた数が、最終的な目標値になります。


 なるほど、基本的に肉体で、殴ったり、蹴ったりして戦う技能はこれで全て表すようですね」


「おや、メモ帳が光りましたね。新しい神からのお仕事のようです。


 『お仕事:巫女 あかね と模擬戦をしてみよう。 彼女に素手で触れることができたら成功です。(報酬:精神的満足 取得経験値:2)』


 だそうです」

「あ、こちらにも頭に呼びかけがありました、いいですよ、受けて立ちましょう。先に言っておきますよ、『私は、かーなーりっ、強い』ですから」

「たぶんそれも元ネタがあるんでしょうね、いやもう突っ込みませんけど」


 「適度に間合いを取りまして、というか、国 かっこわらい の広場を使わせてもらってますけど、なぜか結構なギャラリーが?」

「田舎は娯楽が少ないので、こういうイベントみたいなものには、ささいなものでも興味を示すのですよ、あと、美人巫女さまの人気もありますから」

「自分で言う、その精神の太さは感心します。まあ、美人なのは確かですけど」

「ありがとうございますね、勇者さま、でも手加減はしませんよ?」

「いりません、と言いますか、手加減とかできるシステムなんでしょうかね?」




 「では、例のごとく、セピアな世界になりましたね。私を含めて周囲の時間が停止して、クリスタルのようなダイスが一対、宙に浮かんでいます。 

 では、判定をしていきましょうか?


私の近接戦闘技能が50、はやさが4ですから、加えて、54ですね。巫女のあかねさんのはやさが、そこから引かれるわけですけど、て、32も引かれるんですか!? 絶対私が旅に出るより、話が早いでしょう。……ええとつまり結局、


50+4-32=22 ですね。


 まあ、まったくのぞみが無い値とかでは無い分現実的な値ではないでしょうか?

 ダイスを振りましょう。ええと、1の位の数字は”1”ですね、コロコロと転がっている10の位は、と、”00”でございますね。運が良いですね、成功したようです。


 と、ええ、なんでしょう、この全てを見通したような全能感といいますか、ミリ単位で制御できそうな肉体とか、相手との間合いとかが繊細なまでに把握できます、まるで時が止まったかのようにも見えます、これなら、確実に心臓を貫けますね、 と、 ヒョイっと、軽く掌で、 ぽふん ?なんでしょうこの感触は?」

「うにゃ?!」

「あー、そうですね、心臓(急所)を狙って軽く素手で攻撃したらば、そうなりますよねー」

「うにゃやちゅーって、動かさないで、揉まないで、と云うかどうやったら服の下に入るんですかー、わざとですかそうですね勇者さまというかトム野郎!」

「なるほど、この世界、ラブコメ要素も入るのですね?」


 「うむ、まさしく勇者じゃな」

「王様、そんな腕組みしてもっともらしく頷いていても、しっかりとスケベーな目で見ているのはわかりますよ?後で王妃さまに叱られても知らんよ?というか彼は元から勇者では?」

「むむ、村人ヨハンよ、それは違うぞ、断じて違う。これは、我が国最強である巫女さまへ、あれほどまでに大胆にアプローチを仕掛けたという、その行為によって、奴は今真に勇者になったのだ!」

「その真の勇者さま、巫女のあかねさまに、顎にいいものを食らって宙を舞ってますが?」

「……さらば、勇者よ。我々は君の勇姿を忘れない」

「そんなんでいいんかいな」



 「もちろんよろしくない。というか痛いではありませんか巫女さま」

「どやかましい。このセクハラ勇者」

「言葉遣い言葉遣い、ほら、皆さん見ていますよ?」

「は!こほん、うん、まあ、なかなかの動きでございましたよ、勇者 かっこ変態 さま」

「まだ完全には戻っていないようですね。しかし、自分で言うのもなんですが、出来過ぎな動きでしたね。 と、仕事が完遂して、経験点が入りましたね。レベルアップです。振り分けは、すばやさ と がんじょう にしておきましょう。


 職業:勇者

 レベル:3

 累積経験値:4 (次は8でレベルアップします)

 ・ちから 7

 ・はやさ 7

 ・かしこさ 7

 ・がんじょう 7


 ・HP:8/14(/の左側が現在値です、右側が最大値です、負傷により減少)

 ・MP:7


 巫女さま、なんだかレベルアップ前に、HPが0になりかけているのですが?」

「そうですね、惜しかったです」

「この人本気だ、本気でやるきだ」



 「メモの行動記録も見ておきますか。


 神様をバカにしている生意気な巫女が現れた

 勇者トムの選択 たたかう


 勇者トムの攻撃

 大成功!

 勇者トムは、生意気な巫女に致命的な攻撃を与えた。

 生意気な巫女は、ちょっといい気持ちと社会的ダメージを受けた。


 生意気な巫女の攻撃。

 勇者トムは甘んじてそれを受けた。

 勇者トムは8ポイントのダメージを受けた。


 生意気な巫女との模擬戦が終わった。


 勇者トムは神の仕事(巫女との模擬戦)を成功させた。

 勇者トムは経験点2を手に入れた。

 勇者トムはレベルが1上がった

 勇者トムはレベルが3になった。

 ちから2上がった。

 すばやさが2上がった。

 かしこさが2上がった。

 がんじょうが2上がった。

 能力に自由に2点割振れます、神のメモ帳に書き込んでください。

 

 すばやさが1上がった。

 がんじょうが1上がった。


 勇者トムは、生意気な巫女の胸の柔らかさなどを記憶した。


 あ、はい」


「忘れてくださいね?勇者さま」

「そんな、それを忘れるなんてとんでもない。というか、気持ちよかったんですね、巫女さま」

「……知りません」

「このメモの記録、巫女さまの表記を見るに、神様、結構根に持っていたようですね。たぶん、お仕置きとかそういうニュアンスもあったんでしょうねー今回のお仕事」

「ううう、衆人環視の下で辱められてしまいました。……美味しいですね」

「さすが、この国最強巫女。恐ろしい人」



 「と、今回、すごく体が滑らかに、動いたのはこの設定のせいみたいですね。


 ・判定をするときにダイスの目が”01”の時、その行為は劇的な効果を得る。


 なるほど、確かに劇的でした。


 ・普通は急所への一撃で大ダメージとかなんですけどね。今回の風に、周囲へ与える効果が大きくなるようなことにもなります。うん、少しスッキリしました。


 あ、やっぱり、悪口とか言われたから、うっぷんばらしだったんですね今回。そういうことをしているから残念な神様とか言われるんだと思いますが。


 ・反省はしてない。ただ後悔はしている。


 いやそれ、ダメな方ですよね?」


 「ええと勇者さま、とりあえず、傷も深そうですので、治療しますね」

「砕いたのは巫女さまですけどもね、はいありがとうございます、素直に治療を受けますので、そういう目で上目遣いに見ないでください、惚れますよ?」

「え?すごい趣味ですね。 魔法 ちょっとした治癒(痛いの痛いの飛んでいけ) を使用しました。 私の かしこさ 分回復しますから、47点回復しますね」

「どこが、わずかな治癒なんでしょう?私なら、楽に3人分全快しますよ」

「まあ、私、レベル自体が高めですし、職業の恩恵で能力値も高いですから、これは自慢ですけど」

「すごいなー。さすが王国最強巫女さまです」

「……ええと勇者さまできればその呼び方はちょっと」

「ああそうですね、ちょっと物騒ですものね、巫女さま」

「できれば名前で呼んでいただくと」

「じゃあ、あかねさん、で、私も名前で呼んでくださると嬉しいですね」

「はい、トムさん」


 「巫女さま、ギラリと、肉食獣の笑みを、勇者の視界外で浮かべおったぞ」

「そうですね、王様。まあ、巫女さま、強すぎて今まで恋愛とかのお相手とか、いなかったですしねえ。今回、曲がりなりにも巫女さまに一撃を入れることに成功して、なおかつ、反撃されて気絶しなかった、勇者さまをロックオンしたんではないかなぁ」

「お前もそう思うか、村人ヨハンよ!」

「これで、巫女さまに、無謀にも言い寄ってくる、我らが国の、数少ない青年男子のプライドを、物理的に、へし折られて、彼らが、失意にのまれて、都会へと逃げる案件がへるだーなー」

「まさか、我が国の若者離れにそのような原因があったとは!王様今日一番の驚愕である」

「……勇者さまの方も、うまくいけば、旅の仲間(肉の盾)をゲットできるかも、とかいう笑みを浮かべてるだな。でも、巫女さまが国から離れてもらうとそれはそれで困るだな」

「そうだな、村人ヨハン、良き知恵はないか?」

「大臣にでも相談すれよ?」

「……給料が払えなくなってなあ、今奴は、出稼ぎに出ておるのじゃよ」

「この国も、もうおしまいかもしれんなぁ」



 「強くて悪い魔王とか関係なくて国の危機が差し迫ってますね」

「何のことでしょうか、トムさま?」

「いいえ、まあ、ほっといても滅びる国なら、最強戦力をもらっちゃっても、別にいいですよね?」

「よくわかりませんけど、あの、よろしかったら今日のお宿、私のところに泊まりませんか?私一人で切り盛りしている小さな神殿なのですけども、チラチラ」

「喜んで。ふっふっふ」

「うっふっふっふ」


 「王様、勇者と巫女さまの笑みが怖いですや」

「……まあ、なるようにしかならないじゃろう」

「あきらめやがったよ、この王様」


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