38_信用を得るという行為は、シンプルにいってしまうと、逆に不安になるほどのことであり。
「どこできいた、のですか?」
「まあ、伝手がいろいろありまして。あまり積極的に隠している様子でもなかったようですし?それで、まあたまたま手元に在庫がありましたので、ご入用では?と声をかけさせていただきました」
「うん、胡散臭いですね」
「結構、人の警戒心を解く顔立ちだと自負しているのですけど」
「詐欺師って、見た目が胡散臭ければなりたたない商売だと思うんだ」
「なるほど、確かに。まあ、今回は詐欺ではありませんので、とりあえずどうでしょう?人目につかない個室とかで、商談の続きとか?」
「……話だけは聞こうか」
「冒険者組合って、個室とか会議室の貸し出しもしてくれるのですね」
「妙なところで感心しているな?それでどうするんだ?」
「ええ、別に持って回ったことはしません、現物を見せて、確認してもらって、から商売のお話でしょうかね?とりあえず、これが、すべての呪いを解除する丸薬です、鑑定のできる方はおられるでしょうかね?なるほど、大きな杖を持っておられる幼女の方がおできになると」
「幼女いうなや、これでも成人しておる」
「そういう種族のお方で?」
「そんなもんじゃ、まあ、ちっといろいろあってな……。ううむ信じられん、本物じゃ」
「それじゃあ、ジジは助かるのか!」
「おそらく、鑑定の結果が正しければ。そして、わしの鑑定はまず間違えん!」
「ゆ、譲ってくださるのでしょうか?ええと、それほどの対価が支払えるかどうか、不安なのですが?」
「アレスさん、まずはそれが本当に効果があるか、お試しくださいな。料金とかはまあ、相場の物を予想してくださればよろしいので」
「……すべての呪いを解除する薬の相場って、天井があるかどうか不安なレベルのものなのですが?」
「まあ、最悪体で支払ってもらいますから、問題ありません」
「あ、そういうことですか。……対象は僕だけでいいですか?」
「結構あっさりしてますね、まあ、それはそちらの友情度合いとか信頼度合いとか、一蓮托生具合によると思いますけど、最低アレスさんが確保できればこちらは構いませんね」
「「「「アレス、それはダメ」」」」
「別れを告げる時間とか、事後のゴタゴタを片付ける時間は欲しいかな?とりあえず、ジジ、飲んでください」
「うう、新しい借金を返す時には私も一緒ですからぁ、離れないでくださいね」
「うん、ジジは僕の所有物だから、もともと離す気はないよ?」
「アレスさまぁ♪」
「というわけで、見事に呪いは消えたわけですね」
「はい!胸元まで迫っていた呪いの蜂は消えました、神官さんのニケさんの魔法でも確認してもらいました、呪いは消えました!」
「「「「やったー!」」」
「では具体的な、返済プランを考えましょうか?相場では最低落札価格が、200ソルほどの丸薬でしたね」
「人生が一回買える値段です……それも、結構高めのです」
「まあ、アレスさんたちには、商人からの借金返済義務もあるわけでして、それがもろもろ含めて、1,000ソルでしたか?……何やらかしたのですか?」
「僕はまあ、両親が領地経営に失敗した煽りを受けて……」
「ジジは、アレス様の所有物ですので!」
「魔法の触媒相場に手を出したのが失敗の始まりじゃったなぁ」
「部族全体の危機に、身売りを」
「教会でちょっとやらかしまして、命とお金を天秤にかける事態に」
「波乱万丈ですね、で、借金の返済は利息を削るだけか、さらに微増するかぐらいに止めるのが精一杯で、元本は減らず、ダンジョン探索の上前をはねられ続けていると?」
「おっしゃる通りで、ふふふ、人生がすでに詰んでいるパーティです、笑ってやってください」
「ははははは」
「本当に笑われるとは……」
「冗談はさておき、借金は一本化しておきましょう。商人へはこちらから元本利息含めて、金銭的な処理をしておきますので」
「えと?トム、さん。お金持ちなのですか」
「つい最近、使い道のない大金を手に入れまして、これから身を持ち崩す道一直線の冒険者です」
「いやそれはダメなのでは?後、結構がめついですよ、僕らの首根っこを掴んでいる商人は?」
「まあ、何やかんや言ってきてもこちらが対処しますので。とりあえず連絡が取れるようにしておいてください、私の連絡先は、ペンタの3番街、小料理屋の、<風の吹くまま亭>の若女将がつなぎになってますので、そちらまでですね、ではまた」
「あのちょっと待ってください、君は一体何者なのですか?」
「通りすがりの勇者です、ではまた後日」
「というわけで、若女将さん、アレスの首根っこを押さえている商人から、債権を買い取ってください。危なそうなら相手ならこちらに連絡を、資金はとりあえず3,000ソルほど預けてますね」
「大丈夫ですわご主人様、ごたごた抜かすようなら、辺境伯さまのご意向をそれとなくかざしますから、まあ、商人でしたら現金を前に屈してしまいそうではありますけど」
「若女将さんは、大金に驚きませんね?」
「ご主人様のなさることですから。それで、あの、そのこれから時間がございますか?ご褒美がほしいです」
「1時間でいいですか?」
「そんなにですか!♪」
「少し遅くなりましたかね?ただいまです巫女さま」
「お帰りなさいです勇者さま。それで、なぜか今、テーブルトークRPGの神様が大喜びのあまり、神託を下したのですが?」
「あー結構進展がありまして、私も神のメモ帳で確認してみましょう、どれどれ、
『異世界転移系の小説を司どる神様、ジャンル的には冒険者成り上がり者、の神を、地に沈めましたぞ!嬉しいです、思わず踊りだしたくなるくらい』
なるほど浮かれていますね。
『さすがは我が勇者、よくぞやってくれた!綺麗にフラグをたたき折ってくれたので、あのアレスと中心とした物語は、魔王退治のルートからは大きく外れたぞ、横取りされていたリソースもだいぶ取り戻したので、これからの展開がやりやすくなった、やったね!』
それはよろしゅうございましたが、強くて悪い魔王を倒すなら、アレスさんたちにも活躍してもらった方がよろしいのでは?
『リソースの取り合いになるので、アレスたちの成長はこの辺りで止めておきたい、むしろ、ヤッたら経験点が入るように細工をしておくから、ずんばらりんと、闇討ちをしても良いくらいだぞ、おそらく経験点的には美味しいはず!』
それは、ぐらっときますね。しかし全年齢版を目指すには、少し過激ではないでしょうかね?ふむ、でもまあ考慮には入れておきましょう」
「その展開も考慮に入れておくんですね、さすが、私の勇者さま」
「まあ、そこまでしなくても、かなりもう十分に強くなりましたし。それにそうやって安易に強くなると、今度はバランス調整という面で、不具合が出てきそうでありますからね」
「根拠が倫理観に根ざしていないところが、素敵です勇者さま」
「倫理観くらい理解していますよ、表面を取り繕うのは、これでも得意なのですよ、巫女さま?」
「取り繕うと言ってる時点で最高ですね、勇者さま」
「ありがとうございます」
「どうもおばんでやす」
「どういう挨拶だ、ガハハ」
「スミスさん、新しい凶悪な素材を手に入れてきましたので、装備一式をよろしくお願いします」
「これはすごいなガハハ、竜の素材水晶か、それも結構年季の入った竜の部類だな、ガハハ。これなら、ドラゴンメイル一式と、ドラゴンスレイヤーが作れるぞ、ガハハ、しかも魔法金属のミスリルまであるとくれば、単純な武器防具じゃなく、魔法の力を秘めたものも作成できるぞ、ガハハ」
「では作成をお願いします、コインはこのくらいあれば足りますか?」
「素材が高いだけだからな、10,000枚もあれば、一通り作成できるぞ、ガハハ」
「できたぞ、ガハハ」
「相変わらず魔法のような手際ですね」
「褒めるなガハハ、これが、ミスリル+のドラゴンスレイヤーだ、刀身に牙やら爪やらのそざいを合成してさらに魔法の要素を付け加えてみた。命中力強化に切れ味強化の、破壊不能、自己再生の、竜種特攻撃、所有者固定だな、シンプルに強いぞ、ガハハ」
「なるほど、性能はと、
ドラゴンスレイヤー ミスリル+
命中確率+10%
攻撃点の決定% 攻撃点 ( )は対竜種
1~10% 128点 (255点)
11~50% 120点 (240点)
51~90% 115点 (230点)
91~100% 108点 (216点)
ですか、うんもう能力値とか関係ないですよね?この強さ」
「こちらが、鎧だな、ミスリル+ドラゴンメイルだぞ、ガハハ。対魔法防御と、対ブレス防御、消音化、軽量化に自己再生、完全破壊不能、軽微な着用者向けの持続的な回復、そして所有者固定が魔法的な効果だな」
「こちらも大概な性能ですね、ほとんど決戦兵装ではないでしょうか?
ドラゴンメイル ミスリル+
防護点 128点
竜種のブレスに対する防御点 128点
他種のブレスなど特殊攻撃に対する防御点 64点
魔法に対する防御点 64点
……自分が無敵じゃないかとか、勘違いするレベルの装備ですね、これは、かなりの慣らし運転が必要な気がします」
「正直神話の中に登場するような武装だからな、竜種素材の装備は、ガハハ」
「盗まれたりすると大損害というか、世界の危機ではありませんかね?」
「所有者をトムさんに固定しているから、盗まれる心配はないぞ、ガハハ」
「便利ですねぇ」
「こんばんはー、ビルさんまだお仕事しています」
「シャヨ国道具屋は24時間営業だーよ」
「本当ですか?」
「冗談だーよ、店主の気まぐれ時間営業だーよ」
「ブラックな職場かと心配しましたよ」
「経営者と労働者が同じだから、その辺りはかなり自由だーよ」
「ということで、結構いろいろな素材と、現物を持ってきてみたのですが?」
「この寿命を延ばす霊薬は、ユグドラシルの雫とか、アムリタと云う神様のお酒とか、そっち系列の素材からできるだーよ。不死鳥とかの羽とかも必要だーよ」
「作れるんですか?」
「素材が揃えば、道具屋のビルさんに作れないものはないだーよ」
「達人がいました、いや、鍛冶屋のスミスさんもそうでしたか?」
「素材自体を集めるのが大変だーよ、ユグドラシルの雫は北方大陸にでしか取れないし、アムリタは次元を超える必要があるだーよ、不死鳥の羽は、逆に時間を超える必要があるだーよ」
「まあ、行けそうなら、集めてみます」
「こっちの、万病を治すほうの秘薬は、ちょっと面倒臭いけれど、全部この大陸で揃う素材だーよ、一番集め難いのは竜の内臓だーよ」
「ある意味それが一番今は集めやすいかもしれませんね」
「MPとHPを全回復する上に、呪い以外の状態異常を回復する霊薬は、世界樹の名前を冠する植物の葉っぱが必要だーよ、あとは、人魚の秘薬が素材に必要だーな」
「人魚っているのですね」
「そういう、人のフォルムに何かが混ざった種族は結構多いだーよ、むしろ、そうしう種族から特徴をなくしたのが、劣化した人類だと言われたりも、してるだーよ?」
「そのような概念って普通なのでしょうかね?」
「シャヨ国では一般的なお話だーよ、まあ、実際に見た国民はいないと思うだーよ?」
「呪いを除去できる丸薬はどうですん?」
「死霊系の上級素材が必要だーよ、吸血種の上位か、幽霊でも怨霊ほどの濃いいのが、必須だーな」
「ううん、なるほど高くなるわけですね」
「売りに出せば、人生が二回ほど買える値段が付くだーよ?
ちなみに、寿命を延ばすので10回ほどの人生が買えれば安い方で、MPHP状態異常回復霊薬なら、人生一回分くらいだーよ」
「単位が人生というのが、聞き慣れませんね」
「とりあえず、これらの素材でなにができますかね?」
「これは、MP回復の上級だーよ、ひと瓶で128点のMPが回復するだーよ」
「全快と変わりませんね、どれだけ作れますか?」
「6本だーな、1日の摂取量が、3本であるところは変わらないだーよ?」
「まあ、これを複数飲むような状態なんて、あまりありそうな事態ではありませんが、では作っておいてください」
「ほいほいほい、っと、トイトイトイっと。完成だーよ」
「王妃様ー、ドラゴンのステーキって作れますかー」
「素材があれば、問題ないよ!というか、よく狩ってこれたね?」
「あ、予想してましたけど、この国、達人だらけですね。いや、ちょっとした裏技で手に入れまして、では調理をお願いします。依頼料は、残りのお肉で打ち消してくださればよろしいですか?」
「貰いすぎではあるね、好きな時におかわりにきな、腹一杯食べさせてやるよ」
「ありがとうございます」
「サクッと作るから、いつもの通り、巫女さまを呼んできな」
「了解です、王妃さま」
「うむ、舌の上から、天上の調べが聞こえるぞ。勇者よ、なんというものを持ってきてしまったのじゃ、ありがとう」
「王様、食べすぎでは?」
「巫女よ、これを前にして、食べずしてどうするよ?胃がはちきれるほど、頰張るのが、美味しいものを食べるマナーというものであろう」
「……確かにそうですね、私が間違っていました。では、参ります」
「いや、そこまで気合いを入れるようなものでも?美味しいのは確かではありますが」
「「「ガツガツガツ」」」
「……細い打ち合わせは、食事の後にした方が良さそうでございますね」