35_小説の主人公が送る人生とか、シンプルではいけないわけでありまして。
「きっちり踏みにじってみましたら、満足されたようです。若女将さん」
「おはずかし所をお見せしました。また今度、やってくださいませんか?」
「今回のようにきっちりと、部屋を確保してくださるなら、私も楽しいので問題ありません」
「♩〜」
「いろいろと盛りだくさんでありましたが、帰宅しました。ただいまです巫女さま」
「お帰りなさい勇者さま、なんだか別の女の匂いがしますね?」
「それは、一緒に迷宮に潜ったトバリという探索者の匂いですね、というかよくわかりますね?」
「鎌をかけただけですけど、それだけの関係なのですか?そのトバリという方とは?」
「ええ、割り切った関係ですよ?」
「なるほど、そうなのですか。いやわかってはいましたけど、なんだかぞくぞく来ますね、勇者さま」
「そういう状況も好きそうですよね、あかねさんは」
「ペンタの迷宮での成果報告です。
取得経験点:975点 累積経験点:10,489点
ですね、若女将を縛って踏んでも経験点が入ってきましたが、あれは討伐扱いではなくて、単純に初めてのことをしたからの経験点ですかね?」
「なにそれ、羨ましいのですが、勇者さま?私もしたいです」
「巫女さまには、家を守って欲しいので、一緒にはいけません、代わりに、ここでしてあげますからね?」
「約束ですよ?」
「でコインとかですが、
取得コイン:975枚
+素材水晶の売却と、素材水晶の加工費を差し引いたもの=320枚
で、国庫に半分ほど入庫しまして、結果、
取得コイン:645枚 所持コイン数:3,625枚
ですね、たまに所持コインを大量に使うことがないので、集めてどうなるのでしょうか?とか思ったりもしますが?」
「コイン100枚で残機が1機増えるというものでもないですしねぇ」
「それはなにのリスペクトなんでしょうかね?」
「道具屋のビルさんのところで、幸運のお守りを作ってもらいました。ダンジョンに生息していたクラヤミツノウサギからうさぎの後ろ足を手に入れられたのが、嬉しいですね」
「それは宜しかったですね、確か同時に複数は持てない、のでしたかしら?」
「そのようですね、100の目が出た瞬間に所持している幸運のお守り全てがダメになるそうですから、予備はこの神殿に置いておきますよ、そうそう、巫女さまも遠慮なく使ってくださいね、これからも、結構作れると思いますから」
「了解しました、ではこれを持ってちょといろいろ狩ってきますね。戦力の増強はしておいて損はありませんし」
「そいういえば、国の人たちの装備とか、私が回収してきた素材水晶とコインで増強しているのでしたっけ?」
「ええ、地味に国力が増してきていますね、そろそろ人口が増えてもいいかもしれません」
「隣のニチ村から何人か東の森を引率して連れてくるのも手ですかね?そういえば、ゴタゴタが続いて、身体で払ってもらう報酬を回収していませんでしたし」
「それもいいかもしれません。新旧国民に、軋轢とか産まれそうでしたら、物理的な仲裁をすればいいですしね、勇者さま」
「巫女さまによる独裁政治とか、結構、胸が熱くなる人もいそうではありますね。少なくとも国の青年団とかは熱烈に支持をしそうでありますね」
「その為にも、自身の実力を付け直さないといけませんね。薙刀もバージョンアップしましたし、たまには草原でひと狩りしてみましょう」
「嫁さんが、どんどん物騒な方向へ行こうとしています。もともとでしたね。
とにかく、今は、異世界物の小説を司どる神様の、中心となっている核であるところの、主人公格のアレス少年を発見して、対策しなければならないのが、先決でありますから、そっちがひと段落したら、本格的に人口を増やすことを考えますか」
「そうですね、それに、一年もすれば、確実に一人国民が増えるとは思いますし、ねえ、勇者さま」
「私たちの間に子供ってできるのですかね?」
「古人云く、やればできる、そうですよ?」
「52日目の朝です。やったので経験点が入ります。しかし、遺伝情報とか、取り込むことができるのでしょうかね?見たとかはあまり変わりないような気もしますけど、そのあたり、テーブルトークRPGの神様に尋ねておきましょう。できてもできなくても責任を取る気はないわけですが」
「そのセリフは鬼畜なのですが?」
「好きでしょう?そういうの?」
「悔しいけど、好物ですね、勇者さま」
「今日も今日とて、領都ペンタです。魔法の定期で消費するMPが、MP回復のブレスレットで回復してくれるので、使用が気安くなってよろしいですね」
「おはようございますご主人様」
「ええと、若女将さん、私はそういうものになった覚えはないのですが?」
「是非になってください、ご主人様、私はご主人様のしもべでございますので」
「ああ、そういう方向ですか。それなら、使い倒すまでですが、よろしいですね」
「嬉しいです。と、今日はまずご報告が、くだんの冒険者、所在が判明しました」
「それは朗報ですね、どこですか?」
「ここ、領都ペンタです」
「灯台下暗しですね、さっそくこっそり見に行ってみましょう」
「それが、ここ数日、行方が不明で」
「行方不明なのに、領都にいることが確定できたのですか?」
「ペンタのダンジョンにて行方不明ということでありまして」
「ああ、なるほど、ええと生死不明なレベルで行方不明ですか?」
「詳しい情報が、レポートとして上がってます。
云く、5日前に3日分ほどの予定で、ダンジョンの深部まで潜りますという報告をして、くだんの冒険者は仲間とともに潜ったそうです。
そして、最後に30層にあるベースキャンプで彼らを見たのが最新にして最後の目撃証言でありまして、以降、姿が消えて、足取りも追えなくなっているとのことです」
「救出部隊とか出るのですか?」
「基本的には、ダンジョン探索は冒険者の自己責任でありますのでそういうものは、組合側からは出ません。ただ、冒険者を所有していたオーナー側の商人が、最低限の利益を確保するために稀に、救出部隊とも壊滅した部隊の装備回収部隊とも言えないものを出すことがありますね」
「今回はそのオーナー側は出すのかな?」
「借金をかたにコントロールしていましたからね、ある程度の階層までは損を少なくするために動くかもしれません。結構良い装備を行方不明になった冒険者が持っていたようでありますし」
「なるほど、これは一度私も、迷宮の深部へ潜る必要が出てきましたか?勝手にお亡くなりになってくだされば、面倒はないのでありましょうが。どちらにせよ、今の装備だと、少し心もとないですね。主に、竜の吐息に対してですが。回避すれば行けますかね、意外に鈍かったですし?」
「いえ、あれを避けられるのは、トム様くらいだとは思いますけど」
「テーブルトークRPGの神様に尋ねてみますか、今後の指針を。とりあえずは、迷宮を徐々に潜っていって、ドラゴンの息吹とか、物理的な防御が役に立たない攻撃への対策を練りながら、確実にいくしかありませんかね?若女将には対策とかございますか?」
「竜の息吹を防ぐ防具とかですか?いくつかありますけれども、そのものの在庫は領都にはないと思います。魔王軍との最前線とは離れていますし、そもそも竜型の怪物が出現するのは、魔王の城とか、敵のお膝元でありますから、この辺りでは本来需要がなかったわけです」
「過去形なのは、ペンタのダンジョン、その最下層で竜種が発見されたからですね、とすると、素材から集めないといけませんね、この辺り、スミスやビルさんに尋ねてみるのが良いかもしれません」
「誰ですかその方々?」
「私の冒険をバックアップしてくれています、腕の良い鍛冶屋と、道具屋……というか、技術者ですね」
「と、テーブルトークRPGの神様から返信がきましたね。
『巫女との子供は、できる時にはできますが、シナリオに影響が無いようにしようと思います。どうなるかは、作った後で無いとわかりませんが、勇者の血筋が続くというのも、続編を作るにあたって、利用可能なソースでありますから』
なるほど、確かにそういう特別な血統とかは、物語にありそうですね。まあ、できた時に考えましょう。
『異世界物の小説を司る神が駒にしている冒険者アレスの行方不明は、放置しておくとまずいですね』
なぜなのでしょう?
『そのような展開は、迷宮で危機に陥った後、その深部で強大な力を手に入れて、パワーアップを図り、容易に手をだせない存在になるというのが、王道であるからです。ですので、そうなる前に、さっくり救出するべき、もしくは、ダンジョンの闇に紛れて、ぬっころすのもアリでしょう』
同じ強くて魔王を倒すと云う目的を持っているのですから、共闘も視野に入れるべきではないでしょうかね?
『私ことテーブルトークRPGの神が影響力を発揮する範囲であるはずの、辺境伯領で、そのリソースを横取りされてしまっている状況なので、遠慮は要りません。というかほっておいたら、こちらのリソースを消費されて、勇者トムの成長が阻害されてしまいます。それだと困りますので、ガツンとやっちゃってください』
なるほど。
しかし、当面はやはり素材集めて、レベルアップですかね?10層の特別な怪物を連続で狩って、レベルを上げるとか、竜の吐息対策を充実させるとか、やっていくのが、遠回りに見えて、手堅く早い気がしますね」
「というわけで、10層の特別な怪物周回です。幸い、再出現待ちの方々もおられないようですので、集中して狩れますね」
「そうですね、ここで稼ぐよりは、11層以降で稼いだ方が、効率が良いと思いますからね、ご主人様」
「稀に現れる、特別褒賞目当てではあるのですよ、入り口から入り直すと現れるので、わざわざ探しに行く必要もありませんしね」
「こんなに頻繁に復活るす仕様でしたかね?」
「おそらくは、2柱の神様が干渉しあっっている結果でありましょうね、と、11体目を撃破しましたよ。肉弾戦が中心ですので、ここまで無傷ですね」
「24体目で、魔法を使ってくるミノタウロスが出現しましたね、やはりランダムに出現するのですかね?と、今回もまた宝箱が出現しましたよ」
「鑑定しますねご主人様。ええと罠の種類は最下層への瞬間移動だそうですね」
「……ちょっと美味しいですね、トバリ、ここで一度あなたは戻ってくださいね。私はちょっと、最下層を覗いてきます」
「大丈夫ですか?というか、大丈夫そうですよね」
「はい、一人なら隠れて進むのが容易ですし、罠とかは、魔法で探索を使用すれば、ほとんど丸裸ですので、さらには、死亡するくらいならどうにかなりますし」
「改めて聞かされると、すごい加護ですね」
「ほぼ私だけの、専用の神様ですからね。テーブルトークRPGの神様は」
「一応お気をつけください」
「ありがとう、その気持ちは受け取っておきますね」
「拘束されて運ばれないのは残念ですが」
「その気持ちも後で埋め合わせをしておきますね」
「♫」
「というわけで、わざと罠に引っかかって最下層です。魔法で探索と、忍び足を駆使して、戦闘を避けつつ調査中です。
隠し通路を発見しました、どうやら、迷宮側のメンテナンス通路のようですね。
魔法で探索によると、監視用の感覚機とかあるようですが、結構隙が大きいのと、認識阻害のマントが良い仕事をしているようで、未だ発見されていないようです。
下層になると、監視装置もグレードがアップしているのでしょうか?低層にはなかったシステムですね。
というか、誰が監視しているのでしょうか?ダンジョンの管理人なのでしょうかね?」
「忍び足とか、隠蔽、隠密の基本パーセントが上がってきている気がします。システム外の成長ですかね?確かにこのような行動ばかりしていますし。とすると、夜の戦闘とかも補正が入ったりしていたりするのでしょうかね?一度神様のメモ帳で、確認してみましょうか?
ちから が増しているので些細な出っ張りだけでも、自重を支えられるのが良いですね。きちんと監視様の感覚機を避けられます。基本光学的なものの様ですね。ちょっと複雑な形状の通路ですけど、魔法で探索にかかれば、ガラス張りと変わりません。
魔法の質が違うからでしょうかね?魔法事態を感知されるということもなさそうです。全く反応がありませんね。ちょっとした怪盗気分です、鍵開けも、それほど苦労しませんね、これは道具の力もありそうですが」
「さて、なんだか、物々しい様な、貴重なものがある様な部屋にたどり着きましたね、モニターの様なものの前に座って熱心に何かをそうさしている、人影って、どなたなのでしょうかね?魔法での探索によると、怪物の気配には違いない様ですが、さてどうしましょうか?」