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29_武器や防具は装備していないと役に立たないぜ、という忠告は、もしかするとシンプルではなかったのかもしれません。

 「というわけで、明日以降は侵食しようとしている、異世界物小説を司る神様が、その力の核としているであろう、主人公格な人材を、探索することになりました、いや、面倒臭いですね、巫女様」

「本道からは外れていっているような気がしますが、どこまでが神の事前に用意していたシナリオだか、わかりませんからね。まあ、あの神様のやることですから、完全にアドリブということもありそうではありますが、勇者様」

「アドリブ?即興劇というやつですか、行き当たりばったりにされると、困りますね。……何が困るのでしょうかね?巫女様」

「振り回される周囲の人々が困るだけで、実は私たちとか、勇者様はさほど困らないかもしれませんね」

「私たちは、主に周囲の人たちを振り回す側の様な気がしますからねぇ、巫女様」


 「それでもまあ、認識阻害ができるマントは欲しいので、まずは、ヌマオオカトンボを狩るという、前提は変わらないわけです。合わせて、レベルアップもしておきたいですし。


 累積経験点:7,012点

 所持コイン:2,194枚


 です。ヌマオオナマズだけでなくて、いくらか、ヌマオオカトンボを狩っていましたので、少し増えていますね


 素材水晶:虹色の羽 12個


 ですので、後12個ほど手に入れられれば、認識阻害のマントゲットですね」


 「王妃様ー、ヌマオオナマズの肉を手に入れたのですが」

「こいつはいい魚肉だね。揚げてもいいし、塩焼きもいい、煮込むのも悪くないし、アライにして酢味噌で食べてもいい、売ってくれるんなら、コイン100枚だね」

「意外といい値段ですね、コインは要らないですから、夕食におすそ分けしてください。ええと、天ぷらで」

「任せときな、至高の逸品に仕上げてやるよ」

「楽しみですね」


 「というわけで、今日はナマズの天ぷらです。いいお塩とか、天つゆとか頂いてきました、巫女様」

「米のお酒もありますよ、冷やしてあります、勇者さま」

「いいですね、まあ、私は飲みませんが。というか、どうやって冷やしているのです?」

「生活に関わる魔法道具ですね。冷蔵庫と言います、勇者さま。冷やしたラムネもありますよ?」

「そのままの名称ですね冷蔵庫、というか、ラムネってどこで作ってるんですか?巫女様」

「ここは神殿ですから、つまりは、冷蔵庫は、三種の神器の一つというわけですです、あと、ラムネは、素材水晶の組み合わせで作れますね。勇者様」

「それは何か違うような気がしますが、まあ、いいです、気にしません、便利ですから。ラムネの素材水晶についてはあとで知らせてください、好物ですので」


 「身自体は淡白でありますね、ゆえに、菜種油と合うのでありましょう。風味がよろしいです、上品な味と言えばよろしいでしょうか?白身の魚の良い部類でありますね、巫女様」

「ええ、お酒に合いますわ。トム様」

「あらまあ、なんとも色っぽい酔い方をしておられますね、あかねさん」

「ふふふ、今日はいつも以上に大胆にいけそうですよ?旦那さま」

「それは、なんとも楽しみですね」


 「48日目の朝ですが、太陽がきいろい気がしますね。まあ、体力的には消耗していないので、気のせいであるわけですが、濃厚な夜を過ごしたので、経験点が2点増えていますね。


 累積経験点:7,014点


 です。あと1,000点ほどでレベルアップですね。

 今日は、それを兼ねて、冒険者組合で人探しをしてみましょう」

「いってらっしゃいませ勇者さま」

「行ってきます巫女さま」



 「武器と防具が良い仕事をしていますね。沼の死霊だけは、魔法のダメージをくらってしまうので、避けるようにして、ザクサクいきます。

 そして、夕方あたりで最寄りの冒険者組合支部へ顔を出して、情報収集して帰る、というのでとりあえずはルーチンを組んでしまいましょう」


 「今日は、情報収集としては、あまり捗りませんでしたね。その反動というか当然の帰結として、経験点とコインと、素材水晶がかなり集まりました。ヌマオオカトンボを集中して狩っていましたが、それでもおおよそ20体くらいは狩れましたね。


 取得経験点:578点 累積経験点:7,592点

 取得コイン:578枚 所持コイン:2,772枚


 素材水晶:虹色の羽 13個

 他、ガマの油、大鯰の肉など、多数


 ですね」


 「一度、シャヨ国に戻ってきました。道具屋のビルさん、買取と、加工をお願いします」

「いらっしゃいでだーよ、ザクザク買い取りの、認識阻害のマントの作成だーよ。加工費は、買い取り金額から差し引くだーよ」

「それでお願いします」

「トイトイトイだーよ。認識阻害のマント、作成しただーよ。受け取るだーよ。ちゃんと装備しないと使えないだーよ?」

「装備というと?」

「畳んで手に持っていても効果はないだーよ。全身を包むように、着込むだーよ」

「当たり前では?」

「稀に、持っているだけで効果があると勘違いする人いるだーよ。その辺り常識だと思われていても説明する義務があるだーよ」

「そうなのですか?」

「PL法というだーよ」

「本当に、一体どこから知識が流入してくるのでしょうかね?」

「基本的には、神様からのお告げだーよ」

「なんというか、知識の流出にはもう少し、気をつけた方がよろしいのではないですかね?テーブルトークPRGの神様」



 「ちょっと、近くの草原で、認識阻害のマントを試してみましょう。

 なるほど、隠れている時に見つかり難くなる効果があるのですね。完全に透明になるということではなくて、周囲の風景に溶け込むようなもののようです。

 ますます、会敵を避けることが容易になりましたね。屋外でも屋内でも使えそうですが、あまり近づかれすぎると効果が薄いですし、明るいところでは、隠れる効果も薄くなりそうです、どこでも使える迷彩とでも位置付けておけばよろしいでしょうか?」



 「さて、残りの道具屋で売却できなかった素材を鍛冶屋のスミスさんへと売りにいきます」

「ようきたなガハハ、買い取りだなガハハ、素材水晶の鉱物系統は、怪物モンスター相手に効果的だから、いくらあっても困らないぞ、ガハハ」

「そういえば、よく買い取りのコイン尽きませんね?」

「長年溜め込んできたしな。最近はコインの総数そのものが市場に増えてきたので、経済も活発になってきたぞ、ガハハ」

「穏やかなインフレが起こっていると?へえ、こんな狭いところでですか?」

「勇者のおかげだな、ガハハ、若い働き手が戻ってきたり、魔法使いが仕事をしたり、兵士に止められたりして、状況が結構動き出しているからな、ガハハ」

「へえ、そうなのですか」

「コインの総数が増えているのは、勇者が外で稼いできているコインが、国に入っているからでもあるからな、ガハハ」

「自分でコインを増やして、払って、そして素材を売って戻ってきて、ううん、なんだか形が変わっているだけで、通り過ぎて行っているみたいな?」

「自分では加工できな道具やら、武器防具やらの技術料だと思えば良いのだな、ガハハ」

「そんなものですかね?確かに、私はこの素材水晶で料理とかは作れませんからね」

「適材適所だな、ガハハ」


 「適材適所ということだそうですよ、王妃様。これが今日の大鯰の肉です」

「お、ありがたいね、勇者様。国民からの希望以上の量は、食料の備蓄に回させてもらうよ。食事処のメニューが増えるのは、嬉しいねぇ」

「食堂までしていたのですか?」

「王城の半分くらいは、大衆食堂に使ってるね」

「狭い王城ですね、というか、食堂が大きのか?」

「会議室も兼ねるからね。スペースの有効利用ってわけさ。話し合いの後の打ち上げも、距離を全く移動せずに行えるから便利って寸法さ」

「よく知りませんが、王国の行政とかがそういう調子でいいのでしょうか?」

「アルコール片手に気楽にやるくらいが丁度いいのさ」

「いやさすがにそれはいかんでしょう?」

 


 「というわけで、当面の目標である、認識阻害のマントは手に入れました、素材も適度に売却しましたので、コインも増えましたね、端数を余分に国庫に納めて、


 所持コイン:2,800枚


 になりました」

「マントの効果はどうでしたか、勇者様」

「周囲の環境次第ですけど、やり過ごしからの不意打ちとか、前より簡単になりそうですね、巫女さま」

「それは役に立ちそうですね。異世界物の小説を司る神様の、主人公格は発見できそうですか?」

「軽く聞き込みをしてみましたけど、あまり悪目立ちをしている冒険者はいなさそうですね、まだ、台頭する前なのでしょうかね?

 さすがに有象無象の中に紛れ込まれると、特定が難しいのですが」

「どうされるのですか?」

「時を待ちます。きっと何かしらやらかすとは思いますので、その間に、辺境伯爵領の格主要街とかに一度行ってみて、魔法の定期パスの利便性を上げておくのと、一度領都に行って、辺境伯爵の協力も得ておこうかと思います、巫女さま」

「それでよろしいかと、後、辺境伯爵令嬢のエリザベスさんに、聞き取り調査をするべきでは?」

「ああ、忘れていましたね。過去に何やら主人公格と繋がりがあるような気配がありましたね、ありがとうございます巫女さま」

「お役に立てて幸いです、勇者さま」

「お礼に、優しく可愛がってあげますね」

「激しい方が好みですよ」


 「49日目です。今日はまずは領都ですね。経験点はいつもの通り2点増えています

 累積経験点:7,594点

 です」

「行ってらっしゃいませ」

「行ってきます」



 「来ました」

「あ、トムさま。いらっしゃいませ、本日も伯爵さまへご用がおありですか?」

「若女将のトバリさん、その通りですが、少しエリザベスさまにも聞きたいことがありまして」

「そうですか、そうですね、トムさまは結構エリザベスさまの好みに近いと思いますよ?」

「いや、そういうことではなくて」

「実は、私の好みにも近いです」

「念と為に行っておきますが、私既婚者ですよ?」

「……エリザベスさまは気にしそうですね。私は別に気にしませんが」

「どこで、私に惚れたのはかは知りませんが、今は遠慮しておきます。別に拒みませんけど、ちょっと時間がありませんから」

「あ、やっぱりそういう方向では、淡白というか、こだわらないのですね?」

「そういう性格なので。それはともかく、先ほどの件、頼まれますか?」

「承りました、トムさま」


 「やってきましたいつもの執務室です。今日は、辺境伯爵だけでなくて、エリザベスさまもおられますね」

「うむ、何やら娘に尋ねたいことがあるとのことだな、トムよ」

「何事でありましょう?トムさま?」

「少々古い話になりますが、エリザベスさまが幼少の砌、懇意にしていた少年か少女がおられませんでしょうか?こう印象深いというか、直接的に言うと恋愛感情が芽生えるかどうかというくらいに感情が揺さぶられた相手ですが」

「トムよ?少年はともかく少女相手に恋愛感情とか芽生えると、いろいろとまずいような気がするが?」

「その場合は友情でしょうかね?どうですかエリザベスさま?」

「何か試されているのでしょうか?いいえ、あのですね、その、昔は結構いいかもとか思った相手は確かにいましたけれども、それは幼い時の未熟だった時の一時の気の迷いであってですね」

「いや別にその相手との関係がどうこうとかは、ほとんど興味はないわけですが」

「それはそれで、私に興味が全くないみたいで気にくわないですが」

「エリザベスさまは、綺麗で魅了的な女性ですので、興味がないわけではありませんけども。それとは別に、お仕事で、探さなければならない、人がいるのですよ」

「綺麗で魅力的……照れますわ、トムさま」

「父やの前で、娘を自然に口説かないでくれないだろうか?そなたが、やってのけたことを鑑みるに、碇代わりに娘を一緒にさせるという手もないではないとか、悪いことを考えてしまうぞ?」

「先ほど若女将にも告げましたが、私は既婚者ですので」

「?別に問題あるまい?」

「そういう倫理観なのですね。別に拒みませんけど、それほど強靭な鎖と碇にはなりませんよ?立場的にも性格的にも」

「ええと?わたくしの意思とか、淡い憧れとか、恋心とかへの斟酌はないのです?」

「権力者の娘なんてそんなものだぞ?親としてはもちろん娘に幸せになって欲しいが、それを込みにして、強い男に添い遂げさせるのも、親の愛ではある、と思うぞ?」


 「話が少し脱線してきましたが」

「脱線とはどういう意味なのであろうか?」

「ああ、線路はないのですよね。ええと、脇道にそれたで、意味は通じますか?」

「わたくしの去就が脇道ですか、ええ、別によろしくてよ。負けませんわ」

「つまりは、エリザベスさまの幼少時、印象に残っている子供はいませんでしたか?という話ですが」

「いましたわ、今は没落しましたが、一応男爵位を持っていた家系の男の子よ、ええと名前は確か、そう、アレスと言いましたわ」

「なるほど、アー坊か。確か、エクスポーン家だったな。10年ほど前に、領地経営に失敗して、多額の借金をこさえて、夜逃げしたはずだ」

「結構あることなのですか?貴族が夜逃げって?」

「まあ、滅多にはないが、それほど珍しくはないぞ?大体はそのまま、借金取に捕まって、身体で返すようなことになるはずだが」

「それはええと?」

「腐っても貴族だからな、魔法が使えるので、いいように使いたおされると思うぞ?典型的なのは、どこぞのダンジョンに放り込まれて、命をかけて手に入れた財宝とかの上前をはねられるとかだな」

「ダンジョンですか?」

「簡単に言うと、命懸けの宝探しが日常化している職場だな。リスクは大きいが、実入りもそれなりにある」

「最初からそこで稼いで、借金を返せばよろしいのでは?」

「大金を短い時間で稼ごうとすると、損耗率が凄まじくてなぁ」

「左様ですか」


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