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26_残敵を掃討しつつ後片付けは、まあシンプルでなく。

 「47日目の朝です、私たちは大人ですので、経験点が2点増えています。

 

 累積経験点:6,922点


 です」

「そうです、私たちは大人ですので。ちょっと腰が抜けても問題ないのです、勇者さま」

「そうなてっているのは巫女さまだけですが」

「少し鍛える必要がありそうです」


 「今日は、まず辺境伯の領都であるペンタへ飛びまして、事態の経過を彼らに説明しておきます」

「それは必要でしょうね」

「その後に、ニチ村との間で、怪物モンスターを狩ります。狙いは、ヌマオオカトンボです。認識阻害のマントは地味に欲しい装備です」

「いろいろ悪いことに使えそうですものね、勇者さま」

「正義の悪事に使用させてもらいます。巫女さま。では行ってきます。夕方には帰宅する予定ですけど、領都での対応次第では一泊するかもしれません」

「行ってらっしゃいませ、勇者さま、王様への報告はこちらからしておきます」

「そういうものもありましたね、お願いします、巫女さま」



 「と、いうわけで、辺境伯との繋ぎをおねがしたいのですが、若女将のトバリさん」

「あぁっー!」

「人の顔を見て、大声をあげて、指差すのではありませんよ、失礼ですよ、エリザベスさま。あ、なるほど忘れていたのは彼女でしたか」

「夜通し、必死になって馬を飛ばして、領都に帰還して、悲壮な覚悟で立ち向かおうと、若女将のところへ合流したら、もうかなりのことが終わっていたとか聞いてしまいましたわ!あの時の、私の脱力感とか、無力感とか何かやるせない気持ちとか、どうしてくれるのよ!この素面超人!」

「素面超人って何なのでしょうかね?すいませんね、魔王の手下である、悪魔の使いたちに隙が多かったのと、思った以上に若女将の伝が優秀でしたので、さっくりと、排除してしまったのですよ、まあ、勢いって大事ですよね?」

「勢いで、辺境伯支配下の、領民270万人を、さらっと救わないで頂けますかね!いや、助かりますけれども!」

「何を怒っているのでしょうかね、あ、エリザベスさまの兄上の方も片付けてきました、悪魔の使いはきっちり無力化してきましたよ、これでまず反乱は起きません」

「うわ、これですわよ、昨日の今日ですわよね!それでいてしれっとしてるのですわ!この能面超人!」

「能面?この世界にも能があるのですか?驚きですね」

「仮面劇くらいどこにでもあるでしょう!ではなくて!移動だけでも3日はかかるでしょう!どうやったのです!」

「そこはまあ、あれですよ、以前申しました梱包案件ですね」

「……その方法をこの目で確かめる為だけでも、手荷物扱いを許容するべきでしょうかしら?」


 「それにしても、兄上は残念な結果になったしまいました」

「えっ?嘘でしょう、もう手遅れでしたの?」

「残念ながら、彼の初めてはすでに奪われていました……」

「そう、残念だけども、仕方ないわね……?え?初めて?」

「そう、私が行った時には、すでに彼は清い身体ではなくなっていたのですよ」

「は?」

「あらまあ、トムさま、それではもしかしてJrさまは?」

「そうです、トバリさん。つまり、エリザベスさまに、義理の姉ができるかもしれませんね、向こうがうまく立ち回れば」

「それは喜ばしいですね、これでお領の世継ぎも万全でございますね」

「そこのところは微妙かもしれませんが?」

「え、なに?つまりどういうことなの?誰か説明しなさい!」



 「以上がことのあらましでして、辺境伯様」

「うむ、ご苦労であった。非常に助かったが、またスキャンダラスなことをやりおったなぁ、Jrは」

「まあ、非常に役に立つ手駒が増えたと考えれば、それほど問題はないかと?これで、内調系は完璧になりそうですし、魔王軍への対抗策も練りやすくなるのでは?」

「Jrの嫁の正体が、ばれないようにしなければな」

「まあ、あの方自体の能力があれば、どのようにもごまかせますでしょうしね」

「そうだな、消えた辺境伯夫人のこともごまかすのが楽になりそうだな」

「……息子から取り上げたら、それこそ内紛が起きそうですけど?」

「ちょっと協力してもらうだけだよ、こちらにも負い目があるというか、負い目しかないわけだしな」



 「消えた妻の方もどうにかつじつまを合わせなくてはならんのだよ」

「はあ、いや、聞きませんよ、そんなどう考えても権力争いにどっぷりとハマり込むような話題」

「いいから、ここまできたら手伝ってくれないか。言うだろう、毒をくらわば皿まで、とか」

「この場合、皿どころか食卓やら、更には食堂すべてを喰らい尽くさないといけなくなる展開じゃーないですかね?」

「相応の礼は出すぞ、うちが所蔵している魔法のアイテムとかも、融通してやる。魔王とやり合うのなら、あっても困るものじゃなかろう?」

「太っ腹ですね。でもまあ、そういう内省関係とか諜報関係で手伝えることはあまりありませんけど」

「その移動力だけでも破格だと、自覚して欲しいのだが?さらには、何らかの方法での探知能力による敵陣への潜入やら、単独で囲みを突破できるような戦闘力とか。無手で侵入しても可能な破壊工作員とか、いろいろ規格外であるしな」

「言われてみれば、すごくテロリスト向きですね、私。本人が死なない自爆しない神出鬼没なテロ仕放題マンとか、どれだけ厄介な存在なのでしょうか。いやしませんけど、多分」

「敵に回したくな相手の筆頭だと思うぞ?少なくとも私は、敵対したくない。大きな恩もあるから、心情的にもするつもりはないけどもな」



 「妻の名前はローザ・トルクマンと言ってな、国の中央でそこそこの勢力を誇っているトルクマン家の次女であったのだよ。

 トルクマン家は、純粋王家主義、まあ、王家の血統第一主義を掲げる派閥の一員でな、地方勢力である貴族の力を制御することをよしとする方向性で動いているのだ。

 でまあ、牽制とかを兼ねて、こちらに後妻としてローザをよこしたわけだ」

「ああ、ロビン様は王家寄りではないのですね」

「私は、実務派だな。貴族派でもないぞ、魔王の脅威の前にそのような国内での啀み合いをしていてどうするという、立場だ」

「あ、結構立派なような?」

「問題の先送りであるとか、コウモリのように派閥間を飛び回る不誠実なやつとか、そういう風にも言われているぞ。まあ、それほど気にしないが。そもそも辺境の防衛のために滅多に中央に行かないから、文句も遠くから言ってくるだけだしな」

「へえ、では財政も独立採算なのですか?」

「中央からの補助金なんぞ、先先代のさらに先代あたりにちょろっともらっただけで、償還も済んでおる。さらには、王国へ納める税も魔王軍との対策費で大半打ち消しておるから、こちらから中央へ送る税など微々たるものじゃ」

「それは、まあ、中央としては不安になりますわな、別の国が遮るものもなくすぐそばに、あるようなものだものなぁ」

「幸い、中央との仲は、マントの下でナイフを用意するくらいには良好な状態を保っているぞ、この6年の間でも表向きは、平穏なものであった、ようだ」

「なるほど、油断させて、致命的な一撃を与えようと、魔王軍が秘密裏に画策していたのが、逆に功をそうしたわけですか」

「まあ、領内の反発はその分水面下でかなり緊張していたようだがな。さらには、軍備も反乱を激化させるためにそこそこ充実している」

「あ、まさか、油断している中央へその軍を向けて、国取りでもする気です?ある意味チャンスですよ?」

「物騒な発想をするなぁ。そんなことはしないぞ、というか、それをすると反乱を起こすのと変わらないくらい、消耗してしまうわ。大義もないしの。軍も、混乱が少ないように徐々に解体して、資金を幾らかでも取り戻しとおかんとなぁ」

「魔王軍の進撃が予定されているのでは?」

「それにしても、維持できなほどの兵士はいらんよ。領の体力が持たん」


 「大義ですか……。そういえば、後妻さんはどこで悪魔の使いと入れ替わったのでしょかね?」

「おそらくは、辺境に来る途中であろうとは思うが、調査中だな。その時の随員にもさらに1匹、悪魔の使いがいたからな」

「実は、入れ替わっていたのは、旅を始める前からだったとか。つまり、王家派のトルクマン家はすでに魔王の支配下にあり、そこから、独立採算制の高い、つまり王国が滅びても、新たな足場になりかねない辺境伯領を潰すために、手を伸ばしてきていた、とか?」

「恐ろしいことを考えるな君は」

「トルクマン家だけでなくて、王国中央部そのものがすでに魔王の手の中にあるとか。そこを足がかりに、他国の人類連合を調略中であったなんかすると、かなり怖いですよねえ」

「……ありえないと、言い切れないところがなんともであるな。まあそれでも、中央には魔法の使える貴族が山ほど存在するので、それほど簡単には、行かないだろう」

「ところで、辺境伯さま、私が魔王の手下で、人間に化けていた悪魔の使いという怪物モンスターを見分けていた方法なのですが、これは魔法なのですね、こんな感じのものです、 魔法で探索 。いかかです?この魔法は貴族さまに使用できるのでありましょうかね?」

「”鑑定”の魔法に近いような感触かな?いや魔法を使われたこともよくわからないかったぞ?」

「魔法の系統が違うのかもしれませんね。私の国ではポピュラーな魔法のようですが。もしかすると、そちらの貴族様が使用する魔法に対して、何らかの対策をしている可能性がありますね、悪魔の使いは」

「ウムム、Jrの嫁に確認することが増えたな」


 「そういえば、辺境伯様も魔法が使えるのですね」

「うむ、まあ主に戦闘に特化した魔法だがな。巨大な炎を撃ち放ったり、炎を纏った拳で、相手を滅殺したり」

「意外に武闘派でした、いや、鍛えられた筋肉を見るにそれほど不思議はないわけですか」

「逆に魔法の力を探知したり、何かを調べたりする方は苦手でな。まあ、我が国の貴族魔法は、基本的には、破壊したり、逆に傷を治したりに偏っているとも言える」

「それはまた何でですかね?」

「何かを隠したり、こそこそと探ったり、という魔法系列のものを所持していると、教会の異端審問に目をつけられるからな」

「何ですかそれ?」

「効果が第三者にわかりづらい魔法は、人心を惑わし、社会の安寧を脅かすものである、という理由だったかな?」

「はあ、それは建前として、本音は?」

「何かを探ったり秘密を明らかにする魔法は、権力者側に不利益をもたらすことがあるので、単純に規制しているのだろう。つまりは、宗教組織を利用して、管理体制の維持を楽にしようとしている政策、だったのだろうな」

「あ、過去形にしたのはわかります、管理の手法としての宗教が独立した力を持ってしまったので、制御しづらくなったか、できなくなっているのですね?」

「その通りだな。現存する悪の大家である魔王がいて、それに対する拠り所として神が存在するので、実際的な説得力が半端なくてなこう市民受けがよろしいわけだ。

 また、そういう探索とか、調べる系列だけでなくて、教会独自の魔法殺しとも言える魔法を独占しているので、貴族派も王党派も、うかつに手を出せなくなっておる」


 「貴族側では、どう対抗してるのですかね?

 まあ、ちょと思いつくのは、教会の包囲をかいくぐって、独自の魔法研究集団を維持するとか、市井の隠れた魔法使いをこっそり保護するとか?中央との距離を防壁にして、影響を少なくしてみるとか?

 ああ、領都の若女将さんのところをひとつ噛ませているわけですかね、ここでは?

 ……だから、情報局員が死んだふりをしていて抜けたのですかね?まあ、それは偶然のような気がしますが」

「……6年の間に、そちらに被害が及ばなかったのは、僥倖であったなあ」



 「最悪なのは、その教会そのものに魔王の手が伸びていることですかね?」

「いやさすがにそれは無い。と思うぞ?そこそこ歴史も長いしな、教会」

「魔王ってどのくらい生きるのですかね?寿命とかどうなっているのでしょう、代替わりとかあれば、歴史的なスケールは安全を保証しないですよね。まあ、そこまでは手が長く無いですかね?」

「そう言われると不安になるな、まあどちらにせよ、独自の機関は維持するぞ。だいたい、正直すぐに対応するにはは手にあまる。まずは領内の魔王軍調略部隊の残党を叩かねばなあ」



 「後妻のローザは、不慮の病で伏せっておくことにして、のちにからの棺を用意することにしようかと思う」

「下手に人気がありましたからね、知り合いや領民の悲しみとか結構あるでしょうね」

「なので、近いものには、きっちりと事情を話しておくつもりだ」

「いいのですか?」

「自身の意思ではないとはいえ、6年ローザをやっていたからなあぁ、それなりに周囲に情も移っているのだよ」

「いや、あのお綺麗なご婦人が、実は正体がマッチョなおじさまであったことを明かして、ショックではないのかなぁと」

「……内向きには、悪魔の使いによって、死亡したことにするか」

「それが優しさのような気もしますね、まあ、相手にもよりますでしょうが」

「何、ガールズトークをした仲とかも、結構おるからなで、だいたい皆の傾向は把握しておる」

「それはそれで、ショックが大きいような気がしますが?」


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