19_シンプルに、人助けです。
「38日目です、夜に色々ありまして、経験点を4点取得しました。結果、
累積経験点:2,410点
と、なりました。
今は、ニチ村へ 魔法の定期で、移動した後、整備がやや不十分な街道を、南へ向かって行軍中です。
現在MP:22/30( 魔法の定期+ 魔法で探索 )
ですね。
行軍速度は、時速12㎞という、ちょっとしたジョギングなみですか?それでいて、のんびり歩いているくらいの疲労度というのもデタラメですね」
「魔法で探索に、怪物の反応がありますね。街道沿いの草むらですか、今まで出会ったものとは気配のパターンが違いますね。
そして、そこにさしかかろうとしている、馬車が見えますね。幌馬車ですね。一頭立ての小さめの馬車でしょうか?あちらに、つまりは街道を南下しているようです。
一応、護衛として馬車の後ろに一人、おそらくは、もう一人前に、人員がいるようですが、草むらに潜んでいる怪物に気がついている様子がありませんね」
「このままだと、不意打ちを受けそうですので、少し走って、割り込みましょうか。
おせっかいですかね?
『お仕事:行商人を助けよう。
(報酬:この地方の昨今の情勢 取得経験点:64点)』
あ、明確な動機も出来ましたね。
こんにちは、いいお天気ですね」
「おわっ、なんだいきなり近づいてきて、強盗か!」
「まあ、そう思われても仕方がないような急接近でしたけど、ここまで近づかれてくる前に、もう少し反応をしておいた方がよろしいかと?護衛の方」
「いや、もう少し出会うには、時間がかかる距離であったと思ったのですが?」
「少々事情がありまして、来ましたね、というか出ましたね?
あれは、大きなカニでしょうか?」
「うわ、テツハサミカニだ!しまった、水場から離れていたから油断した!」
「油断だらけのようにも見えましたが、どうでしょう、私、これ狩ってもいいですかね?」
「やめとけよ!硬くて力が強くて、そこそこ結構早いぞ!」
「まあ、無理そうなら、逃げますから、そちらは離れておいてくだされば?」
「大きさは、見上げるほどではないですが、全高が大人くらいありますかね?攻撃を仕掛けてみましょう。相手の はやさ は 10 ですか。それほど速い方ではないような?攻撃は、通用しますね、防御点 は18くらいでしょうか?とするとHPは30から40ですね。2撃くらいで倒せそうです。
と、何か特殊能力と使いましたね、カニの甲羅が、鈍色に光ります。防御点、増強ですか。
気にせず殴ってみましょう。と、防御点が26点になっていますね、ですがまだ通る部類ですね、既に満身創痍という部類です。
もう一度、硬くなりましたが、構いません。叩き斬りましょう。
倒れましたね。思考ルーチンが守備よりでしたから、思ったより安全に狩れました。
一般的な戦士職では、ダメージが抜けるかどうか微妙ですから、確かに脅威なのかもしれません」
「うわああ、あっという間に切り倒しちまったよ、お強いですね、ええと戦士さま?」
「私の名前はトムと言います。旅人です、ええと、このテツハサミカニ、もらっていですか?」
「いやもう、もちろんですよ、ええと私は、馬車の護衛をしている、ハンソンと言います」
「どうもハンソンさん、ええと、ちょっと確認して。
・勇者トムはテツハサミカニを倒した。
・勇者トムは経験点 40点 を手に入れた。
・勇者トムはコイン 40枚 をてにいれた。
・テツハサミカニは、鉄の甲羅の素材水晶を落とした。
あ、これ美味しい。ほぼ2撃で倒せる上に、装備用の素材らしきものを落としますね、
ハンソンさん、このテツハサミカニ、どのあたりに出没しますかね?」
「あれ、なんで、怪物の死体が、光の粉みたいになって消えるんですかね?あれ、うん、普通のことなのかな?あ、もしかして、トムさんの固有能力とか固有技能ですかね?」
「もしもし、ハンソンさん?しっかりしてください、何も不思議なことはありませんから、自分で納得しておいてくださいね?」
「は、何やらぼんやりしていたみたいだな、おう、トムさん。ええと、あのテツハサミカニは、このそばの川辺やら、沼地近くによく出没する怪物だが、見ての通りに硬くて、強い上に、普通の速さを持っているので、出会ったら逃げるのが選択しの上位に上がる奴だ」
「なるほど、水辺が狙い目なのですね。ありがとうございます。あと、次の村まではどのくらいですか?」
「えと、逃げる話が華麗にスルーされたな。次の村は街道沿いの宿場街で、トモの町というぞ、徒歩で行けば、夕方には着くな」
「ありがとうございます。ああ、名前があるのですねえ」
「いや町に名前があるのは普通だろう?トムさん」
「ええと、なんだかわからないうちでしたが、助かりました、私行商人のルーコンと言います。新鋭気鋭の若手ナンバーワンといわれて今年で15年になりますベテランです」
「どこから突っ込んでいいのかわかりませんが、ええとまあ、成り行きですので別にお礼とかはいいですよ?ルーコンさん」
「いえいえ、強そうな戦士とか将来有望な若者とかは、いいカモでございますので、ぜひともつなぎをしておきたいのです、なので、お礼をさせておいてください、こう、私利私欲的な?ですトム様」
「この辺りの人物は自分の欲望とかを隠さないのがデフォルトなんでしょうか?よくそんな欲望丸出しで、商人とかやっていけますね、ルーコンさん」
「正直な商人として、一部ではかなり好評を博しております、トム様」
「それは、逆にいい鴨にされているだけではありませんでしょうか?他人事ながら、少し心配になりますよ、ルーコンさん」
「そんなに褒めないでください」
「褒めてませんよ、そうですね、ちょっと辺鄙なところから出てきましたので、昨今のこの辺りの情勢とか、聞かせてくれば、十分なお礼になりますよ?」
「お安いご用でございますね」
「なるほど、ではまとめますね。
・古来からの魔王軍との戦争が、昨今激化する気配がある。
・この辺りを収める辺境伯はそれに備えて、戦力の拡充を進めている。
・かなりの重税など、無理を領民に求めていて、結構不満が出ている。
ですか。
あと、
・6年前に、先立たれた妻の後添えを、中央の貴族筋からもらった。
・その頃から、人が変わったように辺境伯が、厳しく尊大になった。
・それに意見した、一人息子を、放逐した。
・側に残った娘は美人で、基本引きこもっている。
ですね。なんともきな臭い感じがします。
と言いますか、辺境伯、容疑で真っ黒な感じですね?」
「そうですね、おそらくは、後添えに迎えた、奥方さまの影響ではないか、という噂ではありますが、しがない、正直なだけが武器である行商人には、これ以上はわかりませんなぁ」
「十分だとは思います。とりあえず、シンプルにその辺境伯夫妻を、排除してみれば、状況は動きそうですね?ルーコンさん」
「発想が物騒すぎますよ、トムさん。テロリストですか!」
「いえ、勇者ですけどもね」
「あ、町が見えてきましたね、トモの町ですか。ああ、やっぱり、魔法の定期に移動可能な地点として登録されましたね」
「何のことでしょうか?」
「いえ、こちらのお話で、ちなみに、その辺境伯の領都までは、後どのくらいかかるのでしょうか?」
「ええと、ここと同じような宿場町に後、1泊すればたどり着きますよ、トムさん」
「だいたい予想通りの行軍速度ですね、多分私の足なら、明日中に辿り着きそうです」
「ところで、よろしければ、この町での宿とか紹介しますよ。トムさん」
「いえ、お嫁さんに会いたいので、今日はここで失礼しますね」
「へ?」
「というわけで、途中の宿場町にも、魔法の定期が記録されましたので、今日も戻ってきました、巫女さま」
「嬉しいです、勇者さま」
「……口を塞がれると、話ができませんよ、巫女さま」
「言葉とか必要ですか、勇者さま」
「しばらくは必要ありませんかね?巫女さま」
「この国随一の武器防具屋にして卓越した技術を持つ鍛冶職人であるところのスミスさん、おられますか?」
「やけに説明的なセリフだな勇者さま、ガハハ」
「なんとなく説明をしておいたほうがいい気がしまして、ただの勘ですが」
「なんだそれは、ガハハ」
「というわけで、このようなものを手に入れました。
・鉄の甲羅 素材水晶が一個。
です」
「おお、これはいい素材だな、加工したら、鋼系列の装備が作れるぞ、ガハハ」
「あと、どのくらい必要ですか?スミスさん」
「この甲羅が2個と、炭系列の素材水晶が1つあれば、鋼の剣ができるぞ、ガハハ。
さらに、甲羅が6個と、炭系列の素材が3つあれば、鋼の鎧ができるそ、ガハハ」
「意外に鎧にかかる素材水晶が少ないですね、スミスさん」
「甲羅そのものの形状を利用したりできるからな、ガハハ」
「カニっぽくなりませんかね?」
「カニアーマーだな、ガハハ。残念ながら、光線技は出ないぞ、ガハハ」
「あ、何かのオマージュなんですね、わかりませんけど」
「39日目です。今日は、領都に到着することを第一目標にするので、軽装のランナーです。青銅の鎧すら着込んでいませんね、例のごとく魔法の定期でトモの町まで一飛びして、夜明けと共にランナウェイです、別に何かから逃げているわけではありませんが」
「体感ですが、時速20キロくらい出てますね。これで巡航して疲れがほとんどでないとか、私の身体能力も人離れしてきましたね。確かに、巫女さまとの野戦程度では疲れなくなったわけです」
「すれ違ったり、追い抜いたりする人たちが驚いた顔をしていますね。まあ、ちょっとした伝令兵なみですからね、やはり、『きた、みた、勝った』とか言いながらゴールする必要があるのでしょうか?」
「と、何事もなく辺境伯領都に到着ですね、北部辺境伯領都、というのが正式名称で、ペンタというのが、愛称ですか。空から見ると五角形なのですね、毎回思いますけど、言語の歴史とか遍歴とかどうなっているのでしょうか?
魔法の定期の位置情報記録もできましたし、今日はさすがに走りすぎたので、帰るとしましょう」
「ただいまです巫女さま」
「あら、今日はお早いお帰りで勇者さま」
「領都まで走りきって、キリが良かったので帰宅しました。明日からは、途中の宿場町を起点にして、テツハサミカニを狩ろうと思います、巫女さま」
「それはお疲れ様です、レモンの蜂蜜漬けとか食べられますか?勇者様」
「そろそろ色々な農作物の植生とか気になってきましたよ、巫女様?」
「まあ、農業系に関しては、とっても優秀ですからねえ、うちの王様」
「これだけの食糧事情で、どうして、ここは過疎っているんでしょうかね?巫女様」
「刺激が少ないからでしょうかね?そもそも外界からの、人的流入とか交換とか、無いというのが問題なのでしょうが、勇者様」
「食糧自給率とかすごいことになってそうですが、巫女様」
「まあ、人手が少ない分技術で、下駄を履かせているような状態でありますよ、勇者様」
「昨日今日での収穫は、
経験点 +106点 (行商人を助けた仕事分も入っています)
コイン +20枚(国庫入金済み)
累積経験点:2,452 点
所持コイン:1,169枚
ですね」
「走っていただけにしては多いのではないでしょうか?勇者様」
「通りすがりに、人助けをしている分少し儲かりましたかね?巫女様」
「勇者らしいですね、勇者様」
「私もちょっと驚いています、巫女様」
「さて、忘れていましたが、実は、戦闘の技能が5ポイントほど、成長しているみたいなのですよ?巫女様」
「それは、普段からよく使っていた技能でしたから、自然に成長したのではないでしょうか?私もそういう覚えはありますから、勇者様」
「隠し要素というものでしょうか?巫女様」
「どちらかというと、システムの圏外での成長かもしれません。何か法則があるのかもしれませんが、使えば使うほど成長するシステムとか?勇者様」
「仕組みとか割合とか不明なのは、少しスッキリしませんが。一応神様にお伺いを立てておきましょう」
「そうですね、勇者さま」
「一応すぐに回答がありましたね、ええと
『冒険の区切りとか、十分にそれを使用し続けたと神様が判断した時に、増えていくとしておいてください、増加量は、100パーセントに近づくにつれて鈍くなるということで、一つ宜しくです。
まあ、ぶっちゃけ、本人の努力を数値化しただけとも言えますので、それほど気にしなくてもよろしいですよ。システムによらない成長ですので、あまり気にしないでください』
前後で意見が違いますが、前が建前で、後が本音ですかね?ということは、練習とか実戦での経験次第では、実力を大きく伸ばすことができるということですか?
成長の余地が生まれたというのは朗報ですね。
相手の実力がレベルとかで測りにくくなるのが、困りますが」
「製品版では、きちんとルール化される部分だと思いますよ、勇者トム様」
「製品版ってなんのことでしょうかね?巫女あかね様」
「それは世界の秘密です、勇者様」
「それなら仕方ないですね、巫女様」