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17_シンプルに次の村へ到着します。

 「なるほど、そちらの認識では、魔法が使える存在は、支配階級である貴族のみということなのですね、それにしては 魔法の矢 の時はそう驚いていませんでしたが?スプリングさん」

「何かの見間違えかと思ったのです、一瞬でしたし、トムさま、気がつかずに、誠に申し訳ありませんでした!罰するなら私までで、年老いた両親と幼い妹はどうぞ見逃してくれませんでありましょうか!」

「どれだけ非道だと思われているのでしょう?貴族って?別にどうもしませんよ、そもそも私は貴族ではありませ……あれ?一応シャヨ国では貴族の位をもらったことになっているのでしたっけ?後で確認しておきましょう、ともあれ、その辺り自分でも意識したことはありませんから」

「ええと?事情はよくわかりませんが、この首一つで満足してもらえると?」

「いりません」

「もしかすると、私の体で、十分であるということでしょうか」

「そういう展開も結構です、私はただ、この先の村に、ストレスなく案内してくれればそれでいいのです」

「……村の聴衆の前で、断罪を」

「しません、むしろ何か罪を犯しているんですかね、あなたたちは」

「……」

「目をそらされると、むしろ気になりますが。村の狩人ということでしたね、普通にお仕事をしていただけでしょう?なるほど、何か反応しましたね、それは普通のお仕事ではないのですね、と、すると、非合法?」

「ビクク!」

「土下座したまま、震えている上に、すごい冷汗ですね。支配階級に対するテロ活動を準備するために、何か素材とか資金になりそうなものを、こっそりと狩りに来たとか?」

「ええと、そこまででは?そんなことが発覚したら、生きていることを後悔するような手段で村ごと擦り潰されます!」

「とすると、単純に密猟でしょうか?あ、当たりのようですね」

「誠に、誠に、申し訳なく。貧しい村が、どうにかして、税を支払うために、副収入が必要で。すでに事態は、飢えて死ぬか、税おおさめられずに、見せしめとして滅ぼされるかの2択な状態なのであります!どうかどうか、お目こぼしを!なんでもいたしますので!」

「だから落ち着きなさい。私はあなた方を直接管理する貴族でもありませんし、ゆえにそのような権限もありませんから」



 「どうにかして納得していただきました、勇者トムです」

「勇者ってなんなのでしょうか?トムさま」

「職業です、狩人みたいなものです、国家に所属していない武力行使的が可能な職業でして、ええと思想的なカテゴリーだそうですよ?スプリングさん」

「テロリストとかですか?」

「そのくだりは随分前にやりました。スプリングさん」


 「貴族さまでもないのにどうして、魔法が使えるのでしょう?」

「私が勇者という職業だからです。職業が、魔法使いとか村にいないのですか?」

「そんな、異端者がいたら、宗教裁判で裁かれてしまいます、村ごと」

「認識のズレがありますねー」


 「アンドレさんと、ジェットさんも目を覚ましましたね、おはようございます、体の調子はどうですか?」

「あれ、私たち、ブドウにやられて死んだはずでは?」

「HP0で気絶していましたので、治癒しただけです、骨とかに異常はありませんか?自分で立って歩けますか?」

「大丈夫っぽいですね、ええと、あなたは誰でしょうか?スプリングさんのお知り合いですか?」

「名前はトムと言います。旅人です。ところで職業としての勇者とかご存じですか?アンドレさん?」

「はい私がアンドレです。勇気ある者ですか、なんだか恥ずかしい名称ですね?いいえ知りませんけど?」

「そうですか」


 「え、魔法が使用できるのですか!?ではあなた様は貴族様であらせられたりして!命ばかりはおたすけください!」

「そのくだりも先ほどスプリングさんとやりました。命なんていりませんから」

「ではもしかして私の体が目当てですか?」

「勘弁してください。うっかり消しとばしてしまいそうになりましたよ?マイノリティを一方的に差別する気はありませんが、時と場合を選ぶ知恵くらいは、来世に期待しましょうかね?」

「あれ、今世が終わること前提?」


 「なるほど、わかりません!」

「分かれよ、いや、もういいです。とにかく村まで案内してください、別に危害とか加える気はありませんですから」

「そうですね、その気になれば私たちの首なんて、一瞬で飛んでいきそうですし」

「いやですから、そういう物騒な性格ではないのですからね、スプリングさん」


 「村に到着しましたね、日が落ちる前につけたのは僥倖でありました」

「ここが私たちのニチ村です、トムさま」

「……魔法の定期パスの移動地点に記録されましたね。今度からは一飛びですね」

「それでですね、トムさま、実はうちらの村長に会っていただきたいのですが?」

「情報収集的にはありの気がしますね、と、神のメモ帳が光りましたね。


 『お仕事:ニチ村を救ってみよう。 

 (報酬:村人の感謝と有益かもしれない情報 取得経験点:256点)』


 ですか、大盤振る舞いすぎませんかね?

 いや、小さいとはいえ村一つ救うのでしたら、少ないくらいなのでしょうか?」

「なんなのですか?その手帳は、トムさま」

「気にしないでください、単なる神器です、スプリングさん」

「いや、それ、ものすごく、大事のような?」


 「ニチ村の村長です、名前はニッチです」

「そのままから少しひねりましたね。結構若いですか?」

「これでも今年で45になります。ええと、貴族さまではなくて魔法を使用できる不思議な方でございますところの、トムさまですね?」

「その認識の仕方もどうかとは思いますけど、はい、私がトムです」

「実はこの村は、ちょっとした、そう、かるーく致命的な問題を現在、抱えていまして」

「この村長もちょっと変だな」


 「つまり臨時の税の取り立てで、村が存亡の危機と?」

「そうなのです、麦なのどの備蓄を根こそぎ要求されておりまして。それを支払いますと、明日の食事にも困る有様で」

「なるほど、つまりは、その税を取り立てに来る支配階級を打ち倒す手伝いをして欲しいと?」

「いやそうじゃなくて、というかそれじゃ反乱とかになってまう、総員打ち首が結構慈悲ある行為とかになる顛末まで、まっさかさまに落ちていくじゃありませんか?」

「まずは、敵味方の戦力を比較して、何、ゲリラ戦へ移行すれば何とでもなりますよ?」

「ちょっと何かな、この怖い生き物?!」


 「冗談はさておきまして、税として備蓄されている麦やらを渡す代わりに、現金での納税をまあ、企んでおりまして。今、法律にギリギリ触れるか触れないかの線を見極めつつ、金策に励んでおりまして」

「密猟って、そのまま違法じゃないのですかね?村長さん」

「森で散策していて、たまたま落ちていたブドウを拾うのは違法じゃありませんから、トムさま」

「まあ、その散策者が返り討ちにあっていたわけですが」


 「狙い目は、少量でも大きく稼げる、怪物モンスターの素材であるところの、ブドウシリーズからはぎとれる、酸っぱいブドウなわけです。これはご存じかもしれませんが、一流に近い味のワインの原料となるわけです。これを、行商人を通じて現金化してですね、今回の特別税に当てようとしているのです」

「はあ」

「もちろん、並行していろいろと金策に走ったりですね、主食の代用品になるものの作付けやらも行っているわけですが、村社会を維持するには、少し間に合いそうにないのです」

「なるほど、それで」

「ここからが依頼となるのでありますが、トムさまはかなりお強いようでございますので、そのですね、お金になる主要な怪物モンスター狩りにご協力お願いでないでしょうかと、報酬は、次の収穫時期までに待ってもらわないといけないかもしれませんが、なんとか用意いたしますので」

「端的に言いますと、必要なのは当座の現金なわけですね?」

「そうです、お恥ずかしい限りですが、貧乏な村ゆえに貯蓄とか、ほとんどありませんので」

「どのくらい必要なのでしょうか?」

「それはまあ、ちょとすごい額ですので、驚かないでいただきたいのですが、実は10ソルほど必要なのでありますよ」

「あ、知らない単位ですね。具体的にはどのくらいのものが買えるのですかそれは?」

「え?ええとですね、村全体で1年に収める例年の税金額と同じくらいです。小麦なら、50世帯が一年で消費するパンを作成するくらいの量ほどになりますか?」

「ええと、1世帯あたりの年間消費量が500kgとすると、25tくらいですかね?1キロ100円くらいが販売価格として、250万円くらいですか?確かに多いですね」

「エン?どこの国の単位ですか?ええと共通の認識に齟齬があるようですね」


 「ええと、少し考えさせてください。いろいろと調べないといけないこともありますし。あと少し気になったのですが、素材を剥ぐとおっしゃいましたか?村長さん」

「そうですよトムさま」

「素材水晶という言葉を聞いたことは?」

「なんでしょうかそれは?」

「なるほど。とりあえず、前向きに検討していこうかと思う所存でございます」

「あ、それ見捨てる時の文言じゃありませんか?ええと、恩に着せたいので、泊まっていってください、歓待します」

「そういう本音で語るのは嫌いじゃありませんが、村長としては腹芸の一つも出来ないというのはどうなのでしょう?」

「腹踊りなら得意なのですが、余興にご覧になりますか?」

「絶対に断ります」



 「というようなことがありまして、とりあえず、意見は保留して、魔法の定期パスで帰宅した勇者トムです。

 36日目の収支報告は、


 ・コイン +40_クロオビブドウからです。 +32_ロゼオビブドウ2匹からです。

 ・経験点 +40_同上。 +32_同じく同上。

 ・お仕事達成 村娘を助けよう で +32点。


 素材水晶は

 

 ・貴く腐敗したブドウ 1個。

 ・すっぱいブドウ 2個。


 ですね、コインを半分国庫に入れまして、手取りが+36枚。


 所持コイン数:1,186枚

 累積経験点:2,404点


 ですね。

 さてこれからどうしましょうか?」

「とりあえず、王様も交えて、情報のすり合わせでしょうか?勇者様?」

「そうですね、なんだか、シャヨ国と常識とか前提が変わっているようですし、ええとニチの村界隈では。並行して、神様のメモ帳にも質問を書いておきますね」



 「おお、勇者よ、何か悩んでいるのか、青春だのう」

「王様、別に青春している人が全員悩んでいるわけでも、悩み事を持っている方が全員青春しているわけではないのですが、食事時に失礼します。これは手土産のお肉です、王妃様どうぞ、お納めください」

「ありがとうございます、一品増やしましょうかね?披露宴の時に確保しておいたワインがまだありますし、開けてしまいましょう、王様」

「うむ、そのところは王妃の裁量に任せるぞ。して今日は何用であるかな?」

「実はですね……」



 「なんと、外界から閉ざされたいた間にそのような変化が外では起こっていたであったか、王様驚きである」

「いや、そいういうレベルを超えているような感じですね。いっそ、森を抜けると別の世界につながっていたといった方が、しっくりくるような感じでございまして、王様」

「じゃが、魔法の定期パスは問題なく使用できたのじゃろう?まあ、次元を超えて、疾走しそうなフォルムというか様式ではあるから、もしかすると、もしかするかもしれんが?」

「その前に、別に違和感なく地続きで移動してますからね、魔法で探索も継続してかけてましたから、いつの間にかさらに異世界へ、ということはなさそうですよ、王様。あと、そのネタを掘り下げると、危険な気がします、本能的な何かが警告を発している段階ですが」

「左様か?」


 「100年では効かない単位で、外界からの情報が途絶しておる国だからのう、このシャヨ国は。強くて悪い魔王どころか、主要な国々にまで存在が知られていない辺境とか秘境とか、そういう存在ではあるから、常識がかなりずれてしまっているの可能性はあるがなぁ」

「法則とかが、違っているのは、さすがに何か違うと思うのですよ。まあ、独自の貨幣単位が生まれるとかは普通にありそうです。あと農業のレベルが、かなり古い?稚拙?なのも見て取れました。むしろ、あちらが本流で、こちらが、異常なのではないかとか思うレベルですが」

「神の御技に、どっぷり浸かっておるからなぁ、この国は。独自の進化をしているという自覚は、王様も持っておるよ。じゃがしかし、勇者が違和感を持つしかないような外界と言うのは、これは、ちょっとおかしいような気はするのう?」

「少し慎重に調査をしていくべきでしょうかね?」

「そうじゃの、まあ、ワシらには神がついておるから大丈夫だろう」

「なんだか狂信者のセリフに聞こえますし、あの神様ですから返って心配になりますね」

「大丈夫だろう、多分なあ、巫女さまよ?」

「ここでしっかりと肯定できるようなお方でしたらよかったのですが、王様」

「おいおい」


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