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01_シンプルに始めました。

 「よくぞ参られた選ばれし勇者よ」

「お髭が立派なおじいさんが、目の前にいますね?よく分からないことを言っているみたいですが、これが徘徊老人というものでありましょうか?」

「私は神様です」

「いいえあなたは神様ではありません。いやこういう場合は肯定して、話を合わせるのが良かったのでしょうか?」

「認知機能に障害が出始めた老人ではありませんので、そこのところは大丈夫です」

「その手の方は、自分では認めることがないと言いますから、逆に怪しいわけですね」

「話が進みません。ええと、タイラ トム 君、平良 富夢 君、16歳、日本のとある政令指定都市に在住、同地区の公立高校2年生、部活動には所属しておらず、目立った賞罰なし。特技は算盤で、珠算一級所持、でよろしいですかね?」

「個人情報がダダ漏れています。は、あなたは反社会的な一団の財源を担う部署、その一員な非合法な方ですか!」

「神様を特定詐欺の一員のように言わないでください。まずは私が神様であることを理解してくださいませんか?」

「なるほどそれがあなたの組織の特色なわけですね。それで霊験あらたかな、持っているだけで幸せになるという、原価2千円ほどで、200万くらいで売りつけようとする怪しげなツボはどこですか?購入する気はありませんが、正直ちょっと見てみたい気はしてきました」

「そんなものはありません」

「では、悪霊を寄せ付けない壺という設定でしょうか?」

「壺お好きですね」

「実はかなり、どうでもいいです」


 「いいかげん現実を見つめてくださいませんか」

「そういえばここはどこでしょうか?」

「あなたの夢の世界です」

「現実じゃないじゃないですか。とすると、あなたは私の生み出した妄想、いけませんね、知らないうちにストレスが溜まっていたようです。早くゆっくり休まないと」

「だから、富夢さん、あなたは今自室のベッドで寝ているのです、これはその時に見ている夢でありますけど、ただの夢ではないのです」

「お幾らですか?」

「税込で324円というところでしょうか、て、ちゃうわ」

「安いですね、というかノリツッコミをする神様とか、ないですね」

「トム君の認識に引っ張られているようですね。ええと仕切り直しましょうか」

「全くふざけた夢ですね」

「君に言われると、なんとも釈然としませんが」


 「とりあえずそれっぽい空間を作成してみました」

「おお、近所の神社みたいですね。屋台ありませんか?」

「もう少し荘厳な神様がいてもおかしくない雰囲気にするつもりでしたのに、なぜにお囃子とかが聞こえてくるテイストに?」

「私の夢なら、りんご飴くらい出てきてほしいですね。欲をいえばたまにタコの入っていないたこ焼きと、具の少ない焼きそばも希望します。なるほど出てくるものですね、これは確かに夢のようです」

「わかっていただきましたか」

「もぐもぐ」

「こちらを無視して、食べることに集中していただきたくないのですが?」


 「お腹も膨れた気がします。ごちそうさまでした、それではまた」

「ちょっと待ってください、話の途中どころか始まってもいないわけなんですが?自由な人ですねトム君は」

「よく糸の切れた凧のようですねと褒められます」

「その人は褒めたわけではないとは思いますけどれど。ちょっとお話しを聞いてくださいませんか?」

「すいません、私宗教には興味ないもので」

「リアル神を前にしてよくそういうことが言えますね」

「神様と宗教は別でしょう?」

「あ、まあそうですね。あれ、それなら、神様のお話を聞いてくださいますか?」

「純粋にあなたに興味がないだけですね」

「いいかげんにしないとバチあてるどこら」


 「なるほど、つまり私が生活している世界とは別の世界、仮に異世界と命名しましょうか?そこでとても悪くて強い者が、魔王と名乗って、私と同じような生き物である人間を支配したり、食物にしたりしているので、退治して欲しいと?」

「シンプルに言うとそうですね、すいませんこちらの希望を押し付けることになるわけですが、ご無理をしていただく代わりに色々と特典とかお礼とかご用意さしていただいています。さらには今だけのキャンペーン特別プレゼンントとかですね」

「あるんですか?」

「粗品ですが」

「神様の粗品というと結構すごそうですけれど?」

「タオルの詰め合わせです」

「ふざけるな?」

「今治産ですよ」

「ならばよし」

「いいんだ!」


 「異世界に行く素質というか、行くことを了承して一定の戦果をあげられそうな存在を、結果から遡って探し当てて、スカウトとしているわけでして」

「確かに、話を聞いたら面白そうだから行ってもいい気がしてきました。詐欺みたいですね」

「肯定しているのか否定しているのかよくわかりませんが、それでは勇者としていってくれるわけですね?」

「勇者と云うものの定義がよくわかりませんので、まずはそのあたりからの認識のすり合わせが必要でしょうか?後は、諸条件の細かいところを詰めていくのと、中立的な組織などを中立にして契約書を3通作成しましょうか?」

「うわ、意外と面倒臭い人に当たった気がします」


 「なるほど、つまりは、夢の延長であるのですね」

「そうですね、あちら、つまりトム君が言うところの異世界でいくら過ごしても、ことが収まりまして、帰還すると、次の日の朝に目が覚めるという形をとります」

「そして必ずしも私が魔王という悪くて強い存在を、討ち果たさなくてもいいと」

「そうです、私と同じように他の神様が、他にも複数の勇者候補たちを、いわゆる異世界へと送っていますので、そのうちの誰かが、状況を平穏側にと傾ければ、トムくんは帰ることができます。あと、途中でどうにもならなくなった時、精神が壊れるとか、向こうで無限回廊のような脱出不能な罠に引っかかった時などに、リタイアすることもできます。この場合は、依頼をクリアできなかったので報酬の方はかなり差っ引かれてしまいますけども、最低限、異世界でのダメージをなかったことにして現状の復帰はさせていただきますので」

「で、その依頼の達成度の判断はこの悪魔さんがしてくれると」

「はい左様で、先ほどの契約書に基づいて公正に判断することを、我が偉大なるマックスウェル様に誓います」

「それ存在しないことを意味する語句じゃなかったっけ?悪魔さん?目をそらさないで頂けますか?というか、なぜに第三者が悪魔なのでしょう?」

「これほど契約に忠実な存在はいませんよ、ええ、そこらの気まぐれな神様よりよっぽど信頼がおけます」

「神様がそれを言ってはいけないと思いますよ?」


 「そういえば貴方は何の神様なのですか?」

「はい、私はテーブルトークRPGの神様です」

「?なんですか?それ?」

「いいんですよ、わかってましたから、マイナーなゲームの神様だという認識でよろしいです。シェアが少なくて、信者も少ない稀な神様です。そのせいで、力も少なくて、割り当てられている勇者も一人だけのちっぽけな存在なのですよ、誰も期待してない小さな小さな神さまなんですよ」

「髭面のじい様がいじけても可愛くありませんね。まあ、私はゲームとか小説とかしたことも読んだこともほとんどないので、知っている人は知っているんじゃないですかね?」

「わずかな希望を持たせて、私をどうするつもりですか?」

「いや、どうもしませんよ、興味もないですし」

「やっぱり興味ないんですね」

「うわ、めんどくさい神さまですね」


 「はい立ち直りました」

「意外とタフですね」

「タフでなければ、マイナーな神様なんてやっていけないんすよ。でこちらが、私と意見をやり取りする特別な神様道具です」

「ただのメモ帳に見えますが?」

「よく見てください、ちゃんと鉛筆も付いています。あ、痛いので角で殴るのはやめていただきたい」

「それで?』

「冷たい目ですね、既に何人かやってしまった感じがしますよ?」

「最初の一柱になるか?」

「にこやかなのが、逆に怖い。ええと、そのメモ帳は内容量が無限大に近いです。どこまでも、何ページでも書き込めます。そこに神様あてに言いたいことを書いてくれれば、近日中に返事がそのメモ帳にいつの間にか書かれています。あと、忘れたくない内容やら覚えておいてほしい情報を自動的に筆記してまとめてくれる能力がありますので、冒険の途中で何をしていたのか忘れるのを防げますよ」

「いや、どれだけ物忘れがひどい人を想定しているんですか?まあ、一度調べたことをまとめてくれるのは助かりますね」

「その他、こちらの都合で仕様が変更になった時の連絡にも便利に使われます」

「御都合主義全開で行く気満々ですね」

「神様ですから。結果から先に用意しておいて、そこにつなげる道筋を後で創造するような存在ですよ?」

「その力で世界を救ったらいいんじゃないですかね?」

「~♪」

「口笛でごまかす神様って初めて見たかもしれません」

「冗談はさておき、それをやろうとすると、世界を一つ滅してもう一度作るくらいの規模になってしまうので、現在の生き物とか世界全体に出る被害が大きすぎるのですよね。あと、疲れるし面倒臭いです」

「おい、本音が最後に出てるぞ?」

「はっ、いやまあ、そもそもマイナーな小な無力な神様ですのでそこまでの力がないんですよね。あと神様たちにも色々事情があるわけです」

「詳しく」

「縄張り争いとか、利権のぶつかり合いとか」

「せちがらいというか、夢がないというか……」


 「ともかく、この夢から覚めたら、王様の城に出現するんですね、私」

「そうです。そこからは、まあ成り行きに沿っていっていただけると。一応、訪れる先の異世界での立ち位置とか安全は、ちょっと細工をして保証されていますから安心してください」

「なるほどさすが神様」

「洗脳とか意識誘導とかは、神様にとっては日常茶飯事、息をするようなものですから」

「いい笑顔で、ひどいことを言ってますね」

「?宗教関係者からは重宝されていると聞きましたが?」

「間違いでは無い、間違いでは無いのですが、いろいろと語弊があるような」


 「勇者とは何でありましょうか?」

「勇気ある者である」

「いや、言葉の意味を噛み砕けということではなく」

「接近戦と遠距離戦にバランス良く調整された闘う職業です」

「強襲兵?」

「国家には所属していないので、カテゴライズするなら戦士ですな」

「テロリスト?」

「いやそれは違う……違わないのか?まあ、それは主義とか思想とか趣味でのジャンル分けであるでしょうね」

「つまり勇者は趣味的なカテゴライズ?」

「そう言うと語弊があるような、そのものずばりのような」


 「世界を渡ったものには特殊な力が授かるのである」

「へえ、それは便利ですね」

「具体的に言うと私という私という神の、加護ですが」

「タオルがいつでも使えるとかですか?」

「バカにするなよ、今に見てろや」

「意外とメンタル弱いですね、泣きなが怒らないでください」

「ううう、具体的にはその力が発動した時に知らせることにします」

「では、期待せずに待っています」

「私神様なんだけどなあ」



 「それでは良い朝を迎えられますように、行ってらっしゃいませ」

「なんとなく悪夢を見始めるんじゃ無いかと心配ですが、気を確かにして行ってきます」


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