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第八話 理由と企み

こんにちは!


かなり短いです






 おはよう諸君。いや、こんにちはか?それともこんばんはか?まあ、どちらでもいいや。


 挨拶はとっとと済ますとして、只今絶賛困惑中の俺である。


 というのも、今目の前にいる、使える魔法の規模から言って、かなり高位な水の精霊族であるマリーに、土下座までされてお願いをされている。


 彼女の要求は、俺の隠れ家兼修行場所でもあるこの洞窟に、暫く住まわせてほしい、ということ。

 対価は、魔法の使い方のレクチャーだ。


 別に、マリーがここに住むのは良いのだ。対価も悪くない。


 俺を困惑させているのは、当の本人が必死にお願いする姿。そして、マリーをそこまでさせる原因とはなんなのかということである。


 いつまで、そのままでいるのかマリーよ。このままじゃ、俺の方がなんとなく嫌な気分になってくる。顔を上げておくれよ、マリー。


 しかし、そんな俺の心の声は届くはずもなく、未だにマリーはお願いを続けている。

 仕方無いので、俺はマリーにちゃんと声をかけ、顔を上げてもらう。


 顔を上げたマリー。だけどその、美しかった顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃだ。そしてまた、ずざざっと素早く移動して、俺の足にすがり付いてくる。その時に、涙とかが俺の身体に付着する。


 うわっ、汚ねえ!と失礼なことを思う俺。

 まあ、その成分は、元は俺の涙と鼻水と涎だけども。


 しかし、ここまでするとは。


 おいおいマリー。何が君をそこまでさせるんだい。泣いてまでお願いするなんて、ホントに何があったんだ。


 割とマジで原因が気になってきた。


 なんかこう、あれなんだよね。姿形は全く違うんだけども、こういうところを見せられると、妹と被るんだよ。構いたくなってしまうというか。


 まあ、とにかく、原因が気になってきたのは本当なので、マリーに聞くことに────したいのではあるが、この様子じゃ満足に話せそうもないので、落ち着くのを待ってから、話を聞くことにしよう。


 俺は願う。


 どうか面倒事じゃありませんように。.....まあ、そんな願いは通じないとは思うけどね。






 


 暫く経った。マリーもようやく落ち着いたようなので、話を聞くとしよう。


 「なあ、マリー。一体どうしてそこまで必死なんだよ」

 「…ズビッ……それはね………………」


 マリーは、鼻水を啜りながらも話してくれた。



 彼女の話を要約するとこういうことになる。


 まず、この世界は人間の国同士で戦争したり、魔法を使う生き物、総じて魔物と呼ばれる生き物との生存競争が激しい。つい最近だと、強力な魔物が″魔王″を名乗り、他の魔物達を従えて人間の国と戦争をしている。今も継続中らしいのだが、その煮え切らない戦況に痺れを切らした、ある人間の国が異世界から勇者を呼ぶという、"勇者召喚の儀″なるものを実行に移し、成功させてしまったらしい。そして、ここからが重要なところなのだが、″勇者″と呼ばれる者は複数いて、それぞれが特殊能力を持っているらしい。そしてその中には、精霊との相性というか、親和性が抜群に高い奴がいたらしいのだ。そこで、人間とは敵対していない、寧ろ仲の良い、世界に散らばる精霊族達や、精霊族が住む里に話が行った。


 勇者と契約をしてくれないか、と。


 その話を聞いた精霊族達は色めきたった。今までも、勇者と契約した精霊は相応の名誉と強さを手に入れていたからだ。そしてその精霊を輩出した里も、精霊族の中での地位を確かなものにする。精霊達は、我こそは、と立候補に次ぐ立候補でお祭り騒ぎだったのだが、精霊族の中でも地位の高い奴がこう言った。


 強いものこそが、勇者の契約精霊に相応しい、と。


 そこで、精霊族の力比べのトーナメントの勃発だ。弱い奴は負け、強い奴は勝ち残っていく。そして、勇者の契約精霊候補は決まっていった。しかし、その中に例外がいた。それが彼女(マリー)だ。彼女は強かった。それはもう、誰もが認めるほどに。だから、精霊族達は彼女だけは戦わせることなく、契約精霊候補に白羽の矢を立てたのだ。彼女の意思とは関係なしに。彼女は勇者と契約(ゆうしゃのもの)になりたくなかった。契約とは、言い換えれば、魂を縛ること。すなわち、自由を捨てること。彼女はそれが、嫌だった。しかし、そんなことを考えている間にも、勇者の訪問の日は、刻一刻と近づいてくる。だから、里を逃げ出した。勇者との契約を避けるために。遠くへ来た。そして今、ここにいる。


 というわけだ。


 なんか、勇者召喚とか魔王とか、突っ込みたいところはあるのだが、マリーもなかなか辛い思いをしていたようだ。


 今度からは、優しく接してあげようと思う。


 しかし、マジで面倒事じゃないか。匿ってるのがばれたら、俺まで巻き込まれそうなんだけど。


 まあ、男に二言はないっていうし、一度決めたことなんだ。覚悟は決めておこう。




 シンジは、マリーの話を全て丸っと信じてしまっていた。


 だから、俯いた顔に、ニヤリと笑顔を浮かべるマリーには気づけなかったのだ。



 

 

 その後、今後の事を話し合ったシンジとマリーは、この洞窟で共同生活を送っていくことになる。





 その結果、色々とやらかしてしまうのだが、それはまた先の話だ。









  



 ~~数日前~~




 お兄ちゃんが死んでしまった。あの、優しかったお兄ちゃんが死んだ。


 家に戻ったときには、もう遅かった。死因は、餅を喉に詰まらせた事による窒息死。病院の先生が言っていた。


 葬式では、沢山泣いた。身体中の水分が無くなって、干からびてしまうんじゃないかってくらいに、涙が出た。


 あの日、もっと早く家に帰っていれば。私が、携帯を落とさなければ。


 お兄ちゃんは助かったかも、知れないのに。


 後悔が尽きない。


 だけど、後悔なんてしても、お兄ちゃんはもう戻ってこない。


 それが、一層私を悲しませる。


 これから、どうすれば良いのか分からない。


 悲しい。



 お兄ちゃんと一緒に、よく遊びに行った公園。


 私はそこにあるブランコに、一人寂しく腰掛けていた。

  

 ギィギィと鎖の擦れる音が、辺りに響く。


 ブランコは、いつも、お兄ちゃんが背中を押してくれていたな。


 そんな思い出が、虚しい心を締め付ける。



 ずっと、ぼぅっとしていた。どれだけ時間が経っただろうか。



 ─────つ!!



 声が聞こえた、気がする。


 何となく、お兄ちゃんの声に似ていたなあ。


 そう思うだけで、少し心が暖まる。


 よし、今日はもう、帰ろう。


 

 私はブランコから立ち上がり、家に帰ろうと足を踏み出した。



 だけど



 ピカッーーー



 辺りを目映い光が包んだ。


 まるで、私を覆っているようだ。



 って言うか、私が光ってる!?


 ようやくその事に気付くも、時既に遅し。




 そのまま逃げる間も無く、頭は混乱したまま、私の意識は白い光に呑み込まれた。








 









ありがとうございます!

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