第二話 再会?
こんにちは
よろしくお願いします!
俺のの意識は急速に浮上した。
瞑っていた、目を開く。
目の前は真っ暗だ。
体を動かそうとしても上手くいかない。
というより、何かに閉じ込められている?
不思議に思った俺は、早速アルの知識を検索する。
ちなみに、アルから貰った知識はネットで検索してそれを本のように閲覧する感覚で活用でき、一度検索した知識は記憶に定着するようになっている。
.........なるほど、そういうことか。
どうやら俺は、卵の中で目覚めたようだ。
この卵というのは、竜が転生する際、生まれたてで弱っている身体を保護するために、魔力で周りを覆って作られるもので、下手な防御結界など比べ物にならないほどの硬度をもっているらしい。
つまり、ここから物理的に出るのは不可能だということだな。じゃあどうやって出るんだ?
今度は、殻から出る方法を検索する。
.........なるほどね。
身動きのできない体を器用に動かして、手を殻に触れさせる。
よし、消えろ!!
そう念じたとたん、殻は消え去り、暖かい何かが体の中に入ってくる感覚がする。
「...ふう、やっと出れたな。それにしても、今のはなんだったんだ?」
またまたここで検索君の出番だ。
ふむふむ、なるほど、そういうことか。
どうやらあの殻は、消え去ったわけではなく俺に吸収されたようだ。というのも、あれは身体を保護する役割と同時に、それを構成した魔力を吸収することで身体の成長を促進、強化するためのものでもあるらしい。
そう言われてみればなんか力が湧いてくるような気が.......。
「へえ、なかなか効率がいいな」
一石二鳥な考えに、エコ精神万歳!!などと少しばかり感心していたが、そこでふと、思い至ることがあった。
「なんか、当たり前のように魔力とか結界とか知識にあったな......」
そうなのだ。他にも聞き慣れない単語があった。 この世界は元の世界とは根本的に違っているのかもしれない。
まあ、竜なんてのがいる時点で分かりきっていたな。
そう思い、自分の身体に視線を向ける。
白い艶やかな鱗を持つ身体に、長い尻尾、黒く輝く鋭く尖った爪。背中には、身体を覆い隠すぐらいの大きな翼が生えている。
それが、今の俺の身体だ。
「すげえな」
思わず呟く。だが、俺の今の心情を表すのはまさにその一言だった。
おっと、見とれている場合じゃなかった。やらなくちゃならないことがあるからな。
とりあえず、周囲の状況確認をする。ここはどこかの洞穴のようで、危険は存在しないようだ。
まあそもそも、生まれてからいきなり襲いかかられるような場所で転生なんてしないんだろうけど。
それに、何かに守られているっていう感覚もする。そういえばアルが結界とか言ってたっけな。なるほど、今の俺はそういうのも感じ取れるってことか。
そして、周囲の状況を一通り確認し終えた俺は、早速アルを救うための知識を検索し閲覧しようとした。だが、
「閲覧できない?」
何かエラーがあったのかと思いもう一度試すが、やはり無理だった。
「どういうことだ.....?」
ならば、と思いこの状況を解決するための他の知識を検索しようとしたその時、脳内に聞き覚えのある声が響いた。
『やあ、シンジ。さっきぶりだね。』
「......アルなのか!?」
『そうとも言えるし、違うとも言える』
「...どういうことだ?眠りに就いたんじゃなかったのか?」
『その通りだよ。でもね、これは残留思念みたいなものだから驚くことはないよ。こういうときのために残しておいたのさ』
いやいや、最近驚くことばかりだよ。竜ってそんなことも出来るんだな....。
まあ、それよりも、
「どうしたんだ、一体?」
このタイミングで出てくるってことは、今のことに関してなんだろうけど。
『ああ、それはね。シンジ、今君はあの知識を見ようとしたね』
「そうだけど....」
『それについてもね、言っておかなくちゃならないことがあるんだ』
なんだ?
『わたしがチェックしておいた知識なんだけどね、それは今の君には使えないんだよ。』
どういうことだ?
『正確に言うと、使えはするんだけどね。それじゃ君の体が持たないのさ。君は生まれたばかりだろう?そんな状態で大きな力を使えば、体が壊れてしまう。そのまま死んでしまったら、元の子もないんだよ。わたしも一緒に死んでしまうからね。だからこうして、制限をかけさせてもらったんだ』
うわぁ、確かに俺は、方法を知ればそのまま使っていたかもしれない。それじゃ、やばかったんだな.....。
初っ端からの命の危機に少しぞっとした。
『別に、全く使ってはいけないなんてことはないんだよ?でもね、君にはまだ力もないし、圧倒的に経験が不足しているんだよ。わたしだって数万年と生きているんだ、君が前の世界でどんな生き方をしたかは知らないけど、それと比べたら君なんて赤子も同然なんだよね』
うっ、確かにアルと比べたら俺なんて未だに赤ん坊だな。まあ、今の俺は生まれたてのホヤホヤなんだけどな。
『.......。まあ、そういうわけだからシンジにはまず経験を積んでもらわないといけないんだよ』
はあ、もしかして数万年生きろとかなのか?アルを救えるなら別にいいけど。
『とはいっても、特にやるべきこととかはないよ。成長すれば自然と力はついてくるし、自由気ままにこの世界を楽しんで生きてくれればいい。でも、力の使い方は確実にしておいた方がいいね。経験っていうのもそういう意味合いが強いから』
「つまり、今のままじゃ俺は役立たずだから経験を積めということか?」
『そういうことだね』
「でもいいのか?さっきから自由にとか、楽しんでとか、そんなふうに生きて。もともとは俺のせいでこうなったんだろ?アルは大丈夫なのか?」
『ふふっ、ならシンジ、君は君の好きに生きたとして、わたしのことを忘れてしまうのかい?』
「そんなわけはない!!」
それだけは言える。アルは俺の命の恩人だと云えるし、短い付き合いだけど俺は友達だと思っている。そんな奴を見捨てて、自分勝手に生きるなんて真似が出来る筈がない。
『なら、心配する必要はないじゃないか。それにわたしは別にこの状況を嫌っているわけではないんだよ?わたしであった、わたしでない存在がどう生きるのか気になるじゃないか。目覚めたときには、代わりに君が経験してきたことを話してもらおうかな』
なんだよ、そんなことなら
「お安い御用だ!!」
『ふふっ、なるべく面白い体験をしてわたしを楽しませておくれよ』
「ああ、約束するよ」
『......そろそろ、時間のようだね』
「......そうか」
『しばらくは話せないだろうから、何か聞きたいことはあるかい?』
ん~、そうだなあ。アルの知識もあるしこれといって聞きたいことは......あっ、そうだ!!
「なあアル。貰った知識の見方なんだけどさ、もうちょっと便利にできないか?」
『どういうことだい?』
「あれさ、一つのことを調べてもそれだけなんだよ。その関連事項とかも一緒に出るようにして欲しいんだ」
『なるほどね。分かったよ。少し待つといい。........。』
すぐに頭の中にチクっときた。
『これで、変わったと思うよ』
どれどれ?とりあえず『魔力』っと.....。
おお!そうそうこんな感じだ。
「ありがとうアル。だいぶ分かりやすくなったよ」
『ふふっ、ならよかった。じゃあわたしはもう消えてしまうから、あとはよろしくね』
「ああ、分かってる。またな、アル」
『ふふっ、そうだね。また会おう。......シンジに会えるのを楽しみにしているよ.......』
そうやってアルの残留思念とやらは消えていった。ていうか、普通に会話できてたな......。
まあいっか、みたいなものとか言ってたし。何て言うか、ファンタジーだよな...。
「よし、ならまずは情報収集だ!!」
そうやって、俺の新たな生は始まったのだった。
こんばんは