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第一話 出逢い

 ※この作品は更新を停止しています。この作品に興味を持っていただいたのならば、別作品として『ドラゴンさんと一緒』を執筆していますのでそちらを読んで頂ければ嬉しいです。URLはこちら→http://ncode.syosetu.com/n7015cm/





 今日は大晦日。とはいってもあと数分もすれば今年も終わり、新年がやってくる。一人寂しく実家の居間で餅を食べながら、この時期になるといつもやっている歌番組を観ていた。ちなみに今歌っているのは最近人気が出てきた、俺も気に入っているアイドルバンドグループだ。


  はぁ、今年は散々な一年だったなぁ。来年は、なんかいいことあるといいなぁ。


 テレビから流れるそのアイドルグループのヒット曲を背景に、俺はそんなことを思っていた。


 人生で初めてできた彼女には浮気され、電車では痴漢に間違われて大騒ぎして、裁判寸前まで行きかけた。大枚叩いてバイクを買ったはいいが、乗った初日に事故に遭い即廃車。その時の大怪我で3ヶ月も入院した。おかげで大学の出席日数が足りず、単位を落として来年の留年は確定する始末だ。


 人生の不幸を一年で起こすとこうなる、ってのは言い過ぎだろうけどなかなかに酷い一年だった。

 

  ああ神様よ、俺になんの恨みがあったんだ。.....いや、待てよ?そういえば俺、今年の始めに初詣って行ったっけ?いや行ってないな。まさか、それのせいなのか?初詣に行ってないからあんなことに?

  よし!なら初詣に行こう!でも家族はもう出掛けてしまったし...。......うん、そうだ!明日朝イチで行こう!そうしよう!


 突然ひらめいた、妙案とも言えないごく一般的な習慣を新年の最初の目標に定めた俺は、既に別の歌手グループが歌っている番組を変えようとリモコンに手を伸ばしたそのとき、違和感に気付いた。

 息ができない。

 何でだ?何がどうなっている?少しパニックになりかけた俺は落ち着こうと、深呼吸しようとするが、やはり息ができない。焦る気持ちを抑えつつ、この状況を打開しようと必死に頭を回転させる。そこでふと、自分が食べていたものが何なのかを思い出す。


  .....餅、なのか?餅が喉に詰まって?.......あ、やばい、意識が朦朧としてきた.....。.......嘘だろ.......?まさか、最後の最後でこんなことって......。


 もうどうにもならないことを悟った俺は、その瞬間いやに冷静になった頭で、脳裏に哀しみで顔を歪める家族たちを思い浮かべ、感謝と謝罪、そして別れを告げた。



  いままでありがとう父さん、母さん、桜。ごめん、さよならだ。



 そして次の瞬間、俺の意識は真っ黒な闇に押し潰された。














 




























  『・・・・・・ろ!、おー・・き・!』  

   

   うん?なんだ、この声は?


  『おーい・・・!、おーい起きろ!』

  

   しつこいな、俺は今寝てるんだ。


  『うーん。これではダメなのか?』


   そうだそうだ、早く諦めてどこかへ行ってしまえ。

   

  『仕方ないなぁ、ならこれでどうだ。』


  ギギギギギィ~~~~、ギギギギギィ~~~~、ギギギギギィ~~~~


  「あー、うるせえ!!」

  『お、やっと起きたか。おはよう』


 人が苦手な効果音ベスト3に入るであろうあの、黒板を引っ掻くような音に耐えかねて目を覚ます。

  

  ここは、どこだ?たしか俺は......。

 

 そこまで考えて思い出す。


  そういえば俺、死んじまったんだったな。ん?それならここは天国か?それとも地獄?はぁ、どうせなら天国がいいなぁ.....。


  『おーい、聞こえてるかい?』


 声が聞こえた方に顔を向ける。そこには、まばゆい光を放つ球体が存在していた。

 俺はその光を直視してしまったわけで。


  「ぐわ!目が!目がぁ!」

  『おっと、ごめんごめん。いま調節するから』

 

 光が弱くなったのを確認した俺は、改めて光球に目を向ける。光がおさまったので、ぼんやりと何かの輪郭をとっているのが分かった。


  『やあ、はじめまして』

  「あ、ああ」

  『じゃあ、早速で悪いんだけど、君は何者かな?』 

  「.....え?」 


  うん?どういうことだ?


  『ここはそう簡単に来れるような場所じゃないんだよ。いくらわたしが転生後で弱体化しているといってもね』

  

  転生?弱体化?

  あれ?ここって死後の世界じゃないの?

 

  『そもそもわたしに精神干渉なんて仕掛けること自体が無謀なんだよ。成功するわけないのにね』

 

  精神干渉?


  『それに、ここら一帯には防御と隠蔽の結界が張ってある。近づくことはおろか、気付くことすらできない筈だ』

 

  防御と隠蔽の結界?


  『遠隔からの干渉も無いことはないが、それだって非現実的だ』


  えっと~…?


  『改めて問おう。君は何者なんだい?』

  「あの~、ちょっといいっすか?」

  『うん?』

  「俺の名前は、相模原伸治といいます。先程から転生とか、結界とか聞き慣れない言葉がいくつかあったんですけど....。あの、貴方は神様か閻魔様ではないのですか?」

  『えんまさま?なんだいそれは。神はいるけど、わたしじゃないよ』


  ......ふぅ。なんだ、違ったのか。でもそしたら目の前の存在はなんなんだ?いや、それよりまず確認しないといけないことがある。


  「えっと、じゃあここは死後の世界とか......」

  『何を言ってるんだい?そんなわけないじゃないか。』


  つまり、俺は生きているのか。


 その事実に少しほっとする。


  ならここはどこだ?


  「じゃあ貴方は誰なんだ?そしてここはどこなんだ?」


  『............』


 目がどこにあるかは知らないが、観察するような視線を感じる。


  『............』


  「............」


 しばらくの沈黙.....。なんか気まずい.....。


  『......やはりか』


 そうしてやっと聞こえてきた、ぼそりとした呟き。


  『最初に視たときからおかしいとは思っていたんだ。だが、実際にこうして話してみて確信が持てた。話には聞いていたが、まさか私の身に起きるとは....』

  「あのぅ…」

  『ああ、いや、すまないね。少し驚いてしまってね。』

  「はぁ」

  『それと、私の自己紹介がまだだったね。私の名はタルナート=サジェンタ=アルギリオンという。アルと呼んでくれ。君のことはどう呼べばいい?それと言葉使いも気楽にしてくれていいよ』

  「分かった。伸治で頼む。よろしく、アル」

  『ふふっ、こちらこそよろしくシンジ。じゃあ先ずは、この状況の説明だ。君も早く知りたいだろう?』

  「ああ、何がなんだかさっぱりだよ」

  『ふふっ、だろうね。

   まずここがどこかなんだけどね。簡単に言えば、ここは私の精神世界なんだよ』

  「精神世界?」

  『そう。この世界の生き物は皆、それぞれの、その生き物だけの世界を身体の中に持っている。そしてその大きさは、その生き物の存在の大きさや、精神の強さに比例するんだ』

  

  おいおい、この空間とてつもなく広いんだが。

  

  「なあアル、ここの広さって平均的なのか?」

  『そんなわけないだろう。わたしを誰だと思っている?これでも誇り高き竜なんだからね』

  

  ちょっ、ちょっと待て!いまなんかすごい単語があったような.....?


  「お、おい、いま竜とかいってなかったか?」

  『ああ、そういえば言ってなかったね。まあ、それも含めて後で話すから待ってて』


  もしかして俺、とんでもない存在と話してる?....なんか不安になってきた。

  

  『話を戻すが、だからここはわたしが支配していた空間でもあったんだ』

  

  まあ、いっか。あっちも気にしてないみたいだし。

  それにしても、していた?何故過去形なんだ?


  『だけどね。今日ここにシンジ、君がやって来たんだ。実を言うとね、この世界の広さだって本当はいまの半分くらいだったんだよ。だけど君が来てから倍以上に膨れ上がったんだ』 


  といいますと?


  『つまり、最初の結論を言えば君の存在と精神が、この竜のわたしと同等以上である、ということなんだ。そして今、この世界の支配権は八割がた君が持っている。さっきはわたしのものだと言ったけど、もうほとんど君のものなんだ』

  「じゃあ、俺がアルの世界を奪ったってことなのか?」

  『それとはちょっと違うね。強いて言うなら、引っ張られたって感じかな』


  まあ、よくわからないがそういうことなのだろう。


  『それと、君は今自分がどういう状態かも分かっていないらしいね』

  「どういうことだ?」

  『鏡を出してごらんよ』

  「は?どうやって....」

  『念じてごらん』


  念じる?まあいい、やってみるか。

  鏡よ、出ろ!

 

 試しに念じてみたらポンッと音がして、目の前に豪華な装飾の施された大きな鏡が出てきた。

  

  「うわっ!本当に出た.....」

  『わたしが嘘をつくわけないじゃないか。

  それは真実の鏡といってね、それを覗いたもののありのままの姿を写すのさ。ほら、早く覗いてごらんよ』


 そう急かされて、恐る恐る鏡を覗く。

 

 そこに写っていたのは、最初に見たあの光よりも激しく輝く、光の球だった。


  「うお!なんだこりゃ。これが今の俺の姿だっていうのか?」

  『そうだよ、それが今の君のありのままの姿さ』

  「.....まじかよ。でもなんでこんなんになってしまったんだ?」

  『それはね、シンジ。君は最初にここのことを死後の世界かなにかと勘違いしていたようだね』


  確かに、俺は死んだと思っていたな。


  『その事から推測するに、君はここに来る以前に死んでしまうと思えるほどに、命を危険にさらす経験をしているはずだ。』  

  「そうだな」


  あんな死に方は二度とごめんだ。いや、死んでないのか。


  『君にとっては残酷な事実かもしれないけど、ここで言わせてもらうよ。シンジ、君は実際に一度死んでいるんだ。』


  .....そうか、俺、やっぱり死んでたんだな.....。


 改めて認識させられたその事実に、驚きはすれど悲しくはなかった。やはり、心の奥底では気付いていたんだろう。ただ、認めたくなくて、目を背けていただけだったんだ。


  『そしてなんの因果か、君の魂だけが世界を越えて私の中に入り込んできたんだ』

  「ちょっと待て、今、世界を越えてって言わなかったか?」

  『そうだよ。今君がいるこの世界は、君が生まれて死んだ世界とは別のものだよ?』

  「......そうか」

  『あれ?えらくあっさりしてるね。さっきみたいに慌てないの?』

  「まあな。結界とか、竜とか出てきた時点で予想はしてたからな。でもなんでそんなことが分かったんだ?」

  『ああ、それはね。君の魂を視させてもらったんだけど、大分その波長がずれているんだよね』

  「魂の波長?」

  『そう。この世に生きているものは皆、魂を持っている。そして、それの発する波はその世界の発する波に同調するようになっているんだ。だけど君の波長はそれから大きくズレているんだよ。まるで、別の世界から突然現れたかのようにね』

  「.......そのずれっていうのは、あると何か問題があるのか?」  

  『いいや、特にはないよ。強いて言うなら、少しダルく感じるはずなんだけど.....、君は平気のようだし。それに、時間が経てばちゃんとズレも小さくなっていくだろう』

  「.....なるほど、今の俺の状態は分かった。なら、俺は何をすればいい?」

  『...逆に聞くよ。シンジ、君は何がしたいんだい?』

  「おれは......」


  できることなら生き返りたい。だけどそれは、もう無理なんだろう。なんとなく分かってしまう俺がいる。

  

  「生き返るのは、無理なんだろう?」


 ダメ元で聞いてみる。


  『この世界でなら出来なくもないけど、元の世界でっていうのは不可能だね』


  やっぱ無理か.....。っていうか生き返ることは出来るのかよ!すげえな異世界。


  「なら、こっちの世界で生き返ってそのあとに元の世界に戻るっていうのは....」

  『それも無理だね。そもそもこの世界の蘇生術というのはね、蘇生したい対象に自らの存在、つまりはこの精神世界を分け与えることが必要になってくるんだよ。今あるわたしたちの精神世界でも、ギリギリ足りるかどうかだと思うよ。それに、そうやって蘇生された生き物は蘇生の行われた世界に、その存在が固定されてしまうんだ。だから、もし生き返れたとしても世界を渡るのは不可能なのさ』

  「そうか......」


  もともと分かりきっていたことだ。今更ショックを受けることもない。だけど少し、寂しいと感じる自分がいる。もう、家族達には逢えないんだな....。

 だけど、落ち込んでばかりもいられない。後戻りはもう出来ないと知った以上は、これからどうするかが重要になってくるはずだ。だから俺は再び、アルに問うた。


  「アル、俺はこれからどうすればいい?」

  『あー、決意を新たにしているところ悪いんだけどね。わたしたちにはひとつ大きな問題があってね。それが中々に深刻であるわけなんだ』

  「なんだ、その問題って?」

  『さっき君にこの精神世界の支配権が殆んど移ってしまったと言ったよね』

  「ああ、確かに聞いた」


  鏡とか出せたしな。


  『それのことなんだけどね。支配権が移ってしまったと同時に、君とわたしの精神、いや、魂が同じくらい同化してしまったんだよ。』

  

  魂が同化?そんな感じは全くしなかったんだが....。 


  『まあ、同化といってもわたしのものがシンジの魂に吸収される形だけどなんだけどね。だから君はあまり違和感を感じていないはずだよ』

  「アル!じゃあアルの魂はどうなるんだ!?」

  『一応、吸収されるのは今のところは食い止めることができてるから心配しないでいい。まあ、どうなるかだけ言っておくと、完全に吸収された魂は消滅してしまうんだ。その自我と共にね』

  「そんなの全然大丈夫じゃないじゃないか!!なんでそんなに落ち着いていられるんだよ!?....俺の、俺のせいなのか!?俺が死ななければ!俺がここに来なければ、こんなことにはならなかったのに!!」


  今更ながら、自分が死んだことが悔やまれる。俺みたいに、突然異世界から来て精神を乗っ取るような、訳のわからないやつにも優しいアルが、俺のせいで消えてしまうなんて認めたくなかったし、それを引き起こした自分が許せなかった。


  「俺に!俺に何かできることはないのか!?」

  『落ち着くんだ、シンジ』

  「だって、だって俺のせいでアルが!」

  『落ち着けと言っているだろう!!』

  「っ!!」


  初めて聞いたアルの怒声。それは、まさに王者の風格というものを備えていて、その声に頼もしさを感じずにはいられなかった。


  『いいかい?シンジ。わたしも結構無理をしているんだ。まあ、元の二割の精神で十割の力を維持して、君の吸収にも対抗しているんだから当たり前だとは思うんだけど。だから、わたしにはあまり時間がないんだ。よく聞いてくれ。』

  「分かった。ごめん、アル。それとありがとう」


  俺はこの時決めた。アルを救えるのなら。その方法が在るのなら。どんなことでもしてやると。

 

  『わたしはこれから、精神を安定させるために眠りにつく。そのときには魂の消滅も緩やかになるだろう。だから君にはわたしの代わりに、竜として生きてもらおうと思う。もちろん、その間は自由に生きてくれて構わない。世界を滅ぼしたりとか、あまり好き放題されては困るんだけどね。そして、出来れば今のこの現状を解決する方法を見つけてほしい。一応、わたしの知識のなかで、可能性の高い方法はチェックしてあるから、後でみるといい』 

  「知識っていうのは?」

  『ああ、それはね。わたしたちは魂が繋がっていると言っていいだろう?だから分かったことなんだけど、これはお互いの知識の共有ができるんだよ。もちろん任意でだけど。だからね、こんな風に......』

  「......ぐっ!?」



  次の瞬間、俺の頭の中に膨大な量の知識が流れ込んできた。 ううっ、頭がパンクしそうだ。


  『さすがだね。わたしの知識を全て受け入れられるなんて。少し辛いだろうけど、すぐに慣れるよ。これで生きるのには困らないだろう』

  「うっ....、ああ」


  確かに、これはきつい.....。


  『....そろそろ時間だ。わたしは眠りに就くよ』

  「アル.....」

  『シンジ。気負うな、とは言わない。でも、どれだけ時間がかかってもいい。焦らなくてもいい。



 だから、必ず



   わたしを救ってくれ              



 わたしは信じているからね.......』

  

  その言葉を最後に、アルはその体を周囲に溶け込ますかのように消えていった。その顔が微笑んでいたように感じたのは、気のせいではないはずだ。


  「アル..... 」


  アイツは最後の最後まで優しかった。...俺を信じてるとも言ってくれた。なら、それに報いなければ俺の気が済まない。


  ...絶対に、絶対に助けてやるからな!待ってろよ、アル!


  そんな決意を胸に刻んで、俺はまずそのための最初の一歩を踏み出すためにアルの知識から、ここから出る方法を探し出す。


 

  




  ......そして、俺の意識は再び闇へと沈み込んだ......







 ありがとうございまーす!

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