一撃
俺は非常に力が強い。
足も速いし跳躍力もすごい。
ゴリラと喧嘩したときはあばら骨を3本ほど折られてしまったが、代わりに身体中擦り傷だらけにしてやった。
クロコダイルとかけっこしたときは5秒ほどのハンディキャップをものともせず引き分けに持ち込んだ。
ゾウガメと走り幅跳び一本勝負をしたときは彼の記録の6倍は跳んだのではないだろうか。
なに? 凄いのか凄くないのかよくわからない?
ハッハッハッ。
そうか君は頭があまりよろしくないようだな。
理解力の乏しい君は俺の言っていることがちんぷんかんぷんなわけだ。
これならかつての戦友ゴリラくんのほうがよっぽど頭が良さそうだ。
なに? 自分は大学を卒業しているからゴリラなんかより頭が良いって?
ハッハッハッ。君は本当に愚かだな。ゴリラくんがどれ程の頭脳を有しているかも知らないでよくそんなことが言える。
言っておくがゴリラくんは生まれて6ヶ月で微積分を理解したほどの天才だぞ。
もっと言うと、彼は博士号を4つも取得している。
さて、頭が悪いのはゴリラくんと君のどちらかな?
「うるさい」
「おいおい、うるさいはないだろう。何のために体には口がついているんだ。何のための声帯だ。何のための言語だ。言葉による喧嘩は我々人間の特権だぞ。言葉を交わすことを放棄したら、それは獣のすることだ」
ちょっと、言いすぎたかな?
まあ、調子こいた人間にはこれくらい言っておかないとって、おいおい、なんてもん取り出してんだてめえは。
ありゃ、拳銃じゃねーか。
「ま、待て、早まるな。よく考えるんだ。生きてりゃ沢山いいことあるぞ。ちょっと口喧嘩に負けたからって、命を粗末にするもんじゃない」
「もう、お仕舞いだよ」
バン。
……何故俺は膝をついているんだ?
アイツ、自分じゃなくて俺のこと撃ったのか。
馬鹿だなあ俺。なんできづかなかったんだろ。
今日は巨大アシナガバチと一戦するから防弾チョッキきてたんだった。
俺は素早く立ち上がり、目の前で起こったことを未だに理解していないおバカさんの顔面に勢いよく拳をめり込ませた。
完璧な一撃だった。
ところで、なんて俺はさっき膝をついたんだ?
それだけが最後まで謎だった。