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蜻蛉の三題噺

誘い子

作者: 尻切レ蜻蛉
掲載日:2011/08/06


初めてあの子に会ったのは、友達と喧嘩した帰り道。

授業参観に一人だけきた父親の悪口を言われて、殴り合いになった木曜日。

辻に佇む不思議なこども。

ぐるぐると包帯に隠れた左目と、不思議な光を放つ右目に惹かれて。

目が合ったら、逸らせなくなっていた。


「こんにちは」

「こんにちは」


風鈴のような聲が、空気を震わせる。


「誰か、待ってるの?」


尋ねると少しだけ首を傾げて、それから小さく小さく頷く。


「トモダチ?」

「マイゴ」


それが、迷子だと気付くのに随分かかった。


「迷子?」


答えずに手を差し出すから、反射的に手を出せば両手にはカラフルなゼリービーンズ。


「わっ。え?」


顔をあげたら、そこには誰もいなかった。




次に見つけたのは、日曜日。

ペットショップの角だった。

あの子の後をぞろぞろと、5人のこどもがついていく。

年も背格好もばらばらのこども達。

誰も気に留めない奇妙な行列は、路地を曲がって消えてった。




あの子のことを思い出したのは、水曜日。

朝食の支度をしながら、父親のめくる新聞が目に入った時。

そこに載った写真はあの子ではなく、あの子の後をついていったこどもの一人。

現代の神隠し。

そう銘打たれた、社会面の記事だった。

お前も気をつけろよ―そう言った父親の言葉に、苦笑して頷いておく。




そして金曜日の黄昏に、橋の上であの子に出会った。


「こんにちは」

「こんばんは」


変わらず風鈴のような聲が響く。


「ボクを、待っててくれたの?」


尋ねると、あの時と同じように少しだけ首を傾げて、けれど、小さく小さく首を振る。


「オレンジの口紅の女の人が睨むから」


すっと伸びた指が指すのは、何もない背後。

オレンジの口紅は、あの人の好んだもの。

泣きそうなボクの手の中にゼリービーンズを残して、あの子はくるりと踵を返した。


顔をあげれば、橋の上には一人きり。

黄緑のカラービーンズを口に入れて、ボクもくるりと踵を返した。


【三題噺】ゼリービーンズ、口紅、ペットショップ

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