宿泊研修まであと少し4
バンッ!
と、いきなりのことだった。僕の認識を遥かに越える理解不能な動きが起こった、
いや、無理矢理起こされた、と言った方がより適切だろう。
まんがや小説とかだったら『スローモーションに景色が見える』みたいな感じで、周囲の出来事をハイスピードで知覚すべきところを、ぼくは全てが終了してからもなお 10秒近く経過しているのに、いまだなにが起こったのか飲み込むことが出来なかった。というより拒否していた。
だって、ぼくは、ふっ飛ばされていたんだぜ?
一番後ろの席に座り、諌早先生からのセクハラまがいのボディタッチを受けていたはずなのに、瞬きする間もなく、夏に大量に出現して人様の血を奪って行く蚊の如く、ぺちゃんと黒板にたたきつけられていた。
気付いたらたたきつけられていたのだから、当然背中には衝撃を緩和してくれるようなクッションなんて便利ものは装着されておらず、ただ暴力的なまでの痛みが全身をかけめぐってきた。
「が、はっ……!」
肺にためこまれていた息は真夏に黒いコートを着ているアヤシイオジサンの息遣いように放出された。
頑張って生命維持活動を再開し、やっとのことで顔を上げるとぼくの瞳に映ったのは、重力を完全に無視するように髪の毛を逆立て、口から白い息を出す(※今は春です)修羅と化した照(?)だった。
「なぁ~にやっっっているぅのかなぁ~?」