宿泊研修まであと少し3
「なににやにやしているの?いやらしいねスオーは……ま、まぁ思春期男子なのだから、放課後、男女二人っきりというシチュエーションにうれしくて、ついつい笑みをこぼしているのだとしたら、それはもううれしいのだけど、ダメよ。私は先生なのだから学校にいる間はちゃんとわきまえないといけないのよ。だから、学校が終わった後なら問題ナシってことだからね」
ドアの方に目をやる。そこにはしっかりとしまっているドアがふたつあった。ぼくは、前と後ろ、両方の入り口を確認出来る位置に座っていたというのに、まるで諌早先生がこの教室に足をふみいれていたことに気付かなかった。そしてヘビに睨まれてしまったカエルの如く、全く身動きがとれなくなってしまった。ホホに冷たい汗がたらーっと流れ落ちていくのを感じる。諌早先生に目だけをもどすと、片目をつぶりながら、食指を唇の上にのせる。諌早先生のつけていると思われる甘い香りの香水がぼくの鼻へと届いた。その香りのする花の名前を思い出すことが出来なかったが、確かに一度かいだことのある懐かし気がした。
「ふふっ、どういう意味で言ったか分るかなスオー」
「………」
閉じていた目を開き、口を軽く歪め、不敵な笑みを向けながらぼくのうなじを愛でるように撫でてきた。指先がぎりぎり離れないようななんとも言い難いところで、優しくゆっくりと動くので、鳥肌が全身に広がった。諌早先生の手は獲物を前にした白蛇の如く、肌の上を這いずりまわり、ぼくの胸にまで到達しようとする。
「あれ~、スオーはなんで無抵抗なのかなぁ?もしかして先生にこういうことされるのに期待とかしちゃっているのかな?イケナイ事って分っている分、どきどきしているのかなぁ?このスケベめ!」
先生は1度舌でうすいピンク色の唇を舐め、言葉を紡いだ。