宿泊研修まであと少し
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宿泊研修が近づくにつれ、代表委員が呼ばれることが多くなった。当日の仕事の内容や班員への指示、施設へのお礼の言葉など……ぼくが本当に代表委員なんだなぁ、と自覚させられる連続だった。
「ねぇねぇスオー、ちゃんと話訊いてるの?」
クラス委員長の相方、副委員長の笹神沙紀だ。少し心配した顔つきでぼくのことを見ていた。
今は放課後の教室で沙紀と二人、宿泊研修の名簿を作成している、と言っても名前を書くだけなので、すぐに終わる。この状況は照がすぐにでも飛んできそうなシチュエーションだ。「破廉恥だ!」とか言いながら。
「うん、大丈夫だ。ちょっぴり緊張してるだけ……やっぱりぼくが代表委員なんだなーって改めて思ったんだ」
「スオーも緊張とかするんだー、なんかちょっと安心したかも」
「え、どういうこと?」
ゲームで難しい面をノーミスでクリアした時にでるようなため息を、沙紀はついていた。
「いやースオーってさ、なんかたまーに、大人びてカッコ良く見える時があってね、だけどやっぱり緊張とかもちゃんとするんだなーって」
「なに言ってるの、ぼくもまだまだ子どもだよ。人に誇れるようなことがなくて、ちょっぴり自己嫌悪したりするんだけどね……」
人に自慢出来ることが、一つや二つ、あってもいいのになぁ。もしあったら、……もしあったらどうなのだろう?なにか、したいのだろうか?
「そんなことないよ!スオーはすっごくカッコいいよ!」
「お世辞でもそう言っていただけると、助かるよ」
やっぱり女子から言われると、なんか恥ずかしいな・・・