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ポートランド・ルーキーズ  作者: 帆影眠(ぽやしみ仙人)
5月編

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23試合目 月間MVP



「――喜べ、同時受賞だぞ」



 ある日の試合前、監督室に呼ばれていきなりそんな事を言われた。

 何のことか分からず首を傾げると「月間MVPの話だ」と補足してくれた。

 どうもウェストリーグ投手部門と月間最優秀新人の同時受賞らしい。

 3・4月の成績は43と2/3イニングを投げて防御率0.63。

 規定投球回に達した投手としては全体一位の防御率らしい。

 まるで他人事のような感じだが、勝敗みたいに分かりやすいものと違って防御率っていまいち実感しにくいんだよな……。

 だが、5月に入ってから直近の登板では5回4失点しているのでだいぶ防御率は悪化しているはずだ。

 マジでホームでの試合だったらこんな失点していなかった。

 ロッカーズのホーム球場が全て悪い。

 あの球場での深い外野フライは全部スタンドに入るからな。

 高地で空気が薄いため打球の飛距離が伸びるのに、スタンドまでの距離が全球場の平均より短いとかマジで欠陥球場だろ。

 こっちはホームランダービーやっている訳じゃ無いんだぞ……。


「我がルーキーズから月間MVPが出る日が来るとは。しかも同時受賞なんて夢みたいだ」


 監督はサングラスを外して涙を拭う。


「そんな月間MVPくらいで大袈裟ですよ」


「大袈裟なんかじゃないさ。何せルーキーズが始まって以来の快挙だからな」


「……え?」


 まさか球団史上初の受賞者とは思わなかった。

 創設から十年もあったのだから一度くらいは――そう思っていたが、まさか初めてとはな……。


「ミッツーも先月に週間MVPを獲得したし、今年はなんて素晴らしいシーズンなんだ! チームも三度のスイープ、貯金5で地区2位なんて出来すぎじゃないか! まるで夢のようだ」


 今知ったのだが打神も打神でちゃっかり週間MVPを獲得していたらしい。

 結構ホームランを打っていたし、それが評価されたのだろう。

 それにしても、だ。

 今シーズンのルーキーズは昨年までとは異なり、4月を終えた時点で地区2位につけている。

 しかも1位までは僅か2ゲーム差と万年最下位球団としては異例の事態だ。

 昨年の今頃早くも20連敗で大失速していたチームとは思えない。


「七月には我らが球場で行われるオールスターゲームもあるし今から待ち遠しい限りだ」


 スター選手が一同に集う球宴ことオールスターゲーム。

 今年は初めてルーキーズの本拠地で開催されることが決まった。

 開催地の監督がチームの所属するリーグ代表チームを率いることになるので、監督はそれが楽しみで楽しみで仕方がないのだろう。

 現にサングラスで分かりにくいが、口許には笑みを浮かべ小さく鼻唄を口ずさんでいる。

 実力はもちろん人気の高い選手が集まったドリームチームで指揮を取る――全ての監督が一度は夢見る憧れのシチュエーションだろう。

 ちなみに対戦相手の代表チームは昨年のリーグ優勝チームから選出されるので、ルーキーズの監督である以上、本拠地開催以外で代表チームの監督に選出されるのは最初で最後になるだろう。

 リーグ優勝ではなく逆――リーグ最下位だったら毎年シード確定なんだけどな……。

 まあ、最弱チーム同士の戦いなぞ面白くもあるまい。

 それはレギュラーシーズンの対戦カードでも証明されていて、不人気球団もしくは弱小球団とのカードは集客率が低くなる傾向にある。

 特にルーキーズ戦は超人気球団とのカード以外は集客率が平均一割らしい。

 だが、最近は意外とそうではなく。

 俺や打神が加入してから観客は微増しているらしい。

 今まで蚊帳の外だった日本市場を取り込めたことで、徐々に人気が出始めているようだ。

 その一助になれたのであれば幸いだな。

 そういえば、日本市場で思い出したがルーキーズ傘下のマイナーには日本人がいるらしい。

 確か名前は――。


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