無双
ゲームセンターでひとしきり遊んだあと。
「腹減った~」
「ね、なに食べようかな」
そのまま近くのフードコートで各自テイクアウトを買い込み、研修用宿泊施設の共有ラウンジへ戻る流れになった。
テーブルの上には唐揚げ弁当、牛丼、マック、ピザ、ポテト。
ソファには戦利品が山と積まれている。
「この景品の量バグってるよね」
「店員さん途中から完全にマークしてたもん」
前田が笑う。
「ほんと凄すぎた」
「取る時さ、三手先まで読んでたよね?」
「いえ、たまたまです」
割り箸を手にとり、返す。
そんな訳ないでしょと周囲が笑う。
【“たまたま”説:信用度12%】
(低っ)
体育施設の男性が、共有スペースのテレビ裏を確認し始める。
「あ、接続できるコレ」
聞くと、こういう施設の設備は一昔前のものも多いらしい。
「ラッキーラッキー」
「これから繋ごうぜ!」
男性陣が手際良くゲームをセッティングしていく。
ご飯を食べながら、自然な流れで対戦が始まった。
「石村さん絶対ゲームも上手いでしょ」
「UFOキャッチャーのやりこみようから分かる」
「いや、そんな」
半ば押しつけるようにコントローラーを渡される。
テト◯ス開始。
画面を見た瞬間。
【落下予測開始】
【最適配置ルート表示】
【三手先まで予測可能】
【勝利確率:99%】
(えー)
ブロックが落ちてくる。
反射的に指を動かす。
半透明のボードとテレビ画面が重なって、その指示通りに動かしていく。
カチ、カチ、カチ。
綺麗に積み上がる。
「えっ」
「速」
さらに。
T字。 I字。 L字。
迷いなく配置。
気づけば四列四縦同時消し。
「うお!?」
「無駄なさすぎ!」
(えー右、左、ボタン2回、右、右)
【最適解を表示中】
次に場所が、“見える”。
結果、圧勝。
「いや強っ!」
「迷わなさ過ぎでしょ」
二戦目。
さらに指示速度が上がる。
【処理最適化】
【上達補助】
(補助ってテトリスにも使えるんだ……)
相手側の画面がどんどん埋まる。
「ちょ、待っ」
「早い早い早い!」
また勝った。
(なんか私だけ別のゲームしてるみたいなんですけど)
三戦目。 四戦目。
誰も勝てない。
「石村さん何者なん!?」
「図書館職員じゃなくてプロゲーマーだろ」
「達人の動きじゃん」
笑い声が広がる。
気づけば、他の人たちまでラウンジに集まり始めていた。
「なになに」
「何やってんの?」
「え、石村さんが無双?」
負けた前田が転げ回って悔しがってる。
場所を交代し、唐揚げ弁当に戻る。
以前なら、 こうやって人の中心にいるだけで疲弊していた。
けれど、今はまぁ。
「前田も上手いじゃん」
「そうなんだよ、俺結構強いんだよ」
自然に人が集まる。
笑い声が広まる。
その輪の中に、自分がいる。
【集団適応状態:良好】
【現在の感情:充足】
(楽しいな)
100%能力のおかげだけど。
「石村さん、リベンジ!」
コントローラーを手に迫る前田に笑みが溢れた。




