第5話 知略を駆使して大逆転 ~水の底は見えずして、足もとを掬われる~
「あ、開かない、どうして!」
アリスは目を閉じ、全神経を集中させ、ドアノブを下げ、何度も押し、引いた。
「ウフフ、馬鹿ね。目を開けなさい。」
女が不気味に笑った。
(あれ、なんだかお腹から下が冷たい。これは、もしかして!)
アリスが目を開けると、部屋に水が溜まり、下腹部まで水位が上がっていた。
そして、溜まった水の水圧によって、ドアは開かなくなっていたのである。
(これだけの水を、一瞬で!)
女は、水の流れを操りやすいように、部屋の中心に移動した。
「私達だって、伊達にAランクパーティ名乗っていないわ。」
そういうと、女は魔法で水を操り、アリスに水の弾を撃った。
(こう見えて、私ドッチボールと水泳は得意なのよ。)
アリスは大きく息を吸うと、勢いよく水中に潜り、水の弾を避けた。
「そう来ると、思ったわ。」
そう言うと、女は詠唱を始めた。
「大海に空く大穴は、何れ大地をも食らい、全ては無に帰る・・・。」
詠唱を完了すると、女を中心に部屋の水が渦を描き始める。
(うぅ、目が回る。早く、水から出ないと、い、息が・・・。)
水中にいたアリスは、これ以上、流されないように後ろに回している手で部屋の隅の三角木馬につかまり、ゆっくりと水面から顔出し、力なく立ち上がった。詠唱の効果が切れたのか、水面は穏やかだった。
「ハァ、ハァ、ハァ」
「苦しそうね、今楽にしてあげる。」
女がアリスに近づこうとした。
しかし、
「足が動かない!」
女が足に気を取られている隙に、アリスは、腕を振り彼女に全力疾走で近づいてきた。
(どうして、彼女縄で縛られていたはずじゃ!)
アリスの手には女の無くした魔法の杖が握られていた。
それを見て、女は気づいた。
(あらかじめ、私からすり取った魔法の杖を袖の下に隠して、腕を縛られても、杖を抜けば、縄から簡単に抜けられるようにしたのね!)
(じゃぁ、その縄はどこに?・・・まさか!)
女がすべてに気づいたときには、もう遅かった。
アリスは渾身の一撃を彼女の顎にお見舞いし、女は倒れ大きな水しぶきが上がった。
「ハァ、ハァ、そうよ、ドアノブに解いた縄を結んで、あなたが渦を巻いているのを利用して、あなたの足に縄を巻き付け、それをドアから見て、対角の位置にある固定された三角木馬の脚に結んだのよ。一か八かのぶっつけ本番だったけど、上手くいったわ。って、言っても聞こえてないかぁ?」
アリスはそう言うと、疲労で足がふらついた。
「マズイ、溺れちゃ・・・う。」
アリスは水に沈みながら、倒れこむ。
その時、大きな音をたてドアが粉砕され、水位がみるみるうちに下がっていった。
「アリス!」
ロックがアリスに駆け寄り、抱きかかえた。
「アリス!おい、大丈夫か?」
「ロ・・ックさん」
アリスはロックに手を伸ばした。
「なんだ、アリス?」
「し・じ・・・た」
「え、なんて?」
「信じてましたよ、ロックさん。」
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