第10話 塔の最上部、死闘の幕開け ~地獄に生かされる者~
ロックは町の外れに来ていた。
「ここか、天国に最も近い塔ってのは。」
ロックは、まるで空を突くように、天高くそびえたつ塔の前に立ち、襟の裏にある金の針を確認した。
「よし、金の針のストックは大丈夫だな。準備万端、レッツゴーだぜ。」
そういって、先の見えない塔の中に入っていった。
そして、何もない一階層、ゴブリンの群れが集う二階層、罠が張り巡らされた三階層を順調に抜け、頂上の五十階層に到達する。
「はぁ、はぁ、空気薄いな。・・・ん、あれは、ガキ?」
ドーム状の五十階層の中心に、薄汚れたフードをかぶり、包帯を体中に巻き付けている少年が立っている。
(んだ?迷子ってわけじゃねぇよな。まさか、今回の討伐対象は・・・。)
ロックが逡巡しているうちに、その少年はロックの後ろに回っていた。
(は、速い。)
「ナァ、オマエ、クエスト、キタ?」
ロックは振り返らずに答える。
「あぁ、クエストを受けてここに来た。」
「ソウカ、ワカッタ。」
そういうと、少年はカンフーのような独特の構え方から、掌底を繰り出す。
(マ、マズイ)
ロックは咄嗟にしゃがみ、彼の攻撃を避ける。そして、しゃがんだ姿勢のまま右足で少年を蹴り、吹き飛ばした。
「なんか、掌がヤバそうだな。」
少年は難なく起き上がる。
「ヨク、ワカッタ、オマエ、カシコイ。」
「そりゃ、どうも」
(なんか、今までにないタイプの敵だぜ。)
「ちょっと、待ってろ。」
そういうと、ロックは襟に仕込んでいた金の針を目いっぱい口に入れた。
「よし、準備完了だ。いつでも、かかってこい。」
そういうと、ロックはボクシングのように、頭にガードを固めて構えた。
「ワカッタ、オマエ、タオス」
そういうと、少年の両手の掌から刀身が飛び出した。
「なるほど、それが掌から刀身を出すのが、お前の能力か。」
「ハンブン、セイカイ、ハンブン、ダメダ」
そういうと、少年はロックにまっすぐ向かっていった。
「っく、『部分石化』」
ロックは関節の可動に支障が出ないように、腕の前腕と脚の脛を石化させる。
「ハッ、テリャ、オラ」
少年は掌から出た刀身を好き勝手に振り回す。
ロックはその攻撃すべてを石化した腕や脚で捌きつつ、反撃の機会をうかがっていた。
(こいつ、パワーは弱いし、動きも素人丸出しだが、速すぎる。こうなったら・・・)
ロックは右足の踵を石化させ、地面にめり込ませ深さ二センチほどの穴を作り、すぐに引き下がった。
「ア、ニゲルナ」
少年はすぐにロックに近づこうとした。
しかし、
「アッ、」
先ほど、ロックの作った穴につまずき転んでしまう。そして、ロックは転んで動けなくなった後頭部に石化した踵で踵落としを繰り出す。
ガキン
火花が少年の頭上で散り、金属音がドーム内に響いた。ロックはその音で気づいた、少年は踵落としを食らう直前、後頭部から刀身を出し、威力を相殺していたのだと。
「ショウブアッタナ」
少年は首を曲げ、体をねじらせ、起き上がり、ロックに首元めがけて掌を突き出した。
「オワリダ」
ロックが死を覚悟した、その時、
「待って」
アリスがドームの入り口で叫んだ。
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