14、対峙
三人は、小さなムカデを追い、地下へと走っていく。
後ろからバケモノが後を追うが、『陸上部の快足』がペースを作っているまともな人間の集団に、よたよたした動きをせざるを得ないムカデたちは追いつけるはずもなかった。
だが、どんなに速い人間も、真っすぐ走ったのなら、正面からの攻撃をすり抜けることはできない。
正面から、ムカデたちが襲いかかってくる。
だが、谷が無表情でヒト型のものの脊椎を撃ち、ムカデ型のものの喉を撃つ。
速度と威力を兼ね備えた三人に、死角はなかった。
だが。
「おい!上から来るぞ!上だ!!」眞希が叫ぶ。
ムカデが上から這ってきて、襲いかかる。
「クッ!!」谷が飛びいたところが、・・・焼けただれた。
「ハァ・・・!?」眞希が驚く
「酸・・・だと!?」
ムカデは、酸を吐きかけてくるようになったらしい。どうやら中心部に行けばいくほど、強くなっているようだ。
「なんだよ・・・これじゃあ倒せないじゃ・・・」眞希が呆然とする。
「早く走れ!奥へ行くんだ!奥へ!!」谷が叫んでいる。
「うぁっ!!」
再び走り出した。
それにしても、どれくらい続くのだろうか、この階段は。多分四階くらい降りた気がする。
その頃、地下八階では、先ほど会話していた男が冷静に考え事をしていた。
来たのは、間違いなく谷。ということは、自分を探しに来るのを兼ねているはず。それなら・・・
そこまで考えたとき、ありふれた着信音が鳴った。
「ああ、私だ」
先ほどと同じ、若い男と落ち着いた声。
「連中はあなたの近くにいるみたいですね、もう中に入り込んじゃってます」
「・・・やはりそうか、外が騒がしいからそうだと思っていたよ」
「生憎、CWの中には防御用の物しか置いていないのですが・・・どうします?私が、その、処理をしましょうか?」
「いや、その必要はない、私が処分する」
含みのある会話が展開される。
「分かりました」
そこまで喋ったとき、突然、その部屋のドアが開いた。
若い男は、「また掛けなおすよ」と言い、電話を切った。
「・・・来たのか」若い男はそう話しかける。
「ああ、来た」谷が答えた。
「久しぶりだね、木更津くん」