13、運命
また、場所をCWの拠点へ戻す。
地下室へ歩いて行く三人の後ろから、物凄い爆発音がした。
「何だ!?」谷が振り向く。
入口の近くで、何かが燃え上がっていた。
「おい・・・まさか・・・」眞希が、最悪の瞬間を想起した。
「莉音っ!!!!」柑奈の引き攣るような叫びがその場を支配する。
駆け戻ろうとする柑奈。
ホールを一直線に駆け抜ける。
入り口のガラス越しに見たのは、間違いようもない、さっきの軍用ヘリの残骸。
「莉音っ!!莉音っ!!」
甲高い否定の叫び。炎の中へ半狂乱で駆け込もうとする柑奈。
「やめろ!!落ち着けって!!」
バーベキューになった死肉をあさろうと、ワラワラと『ピード』がオスメス問わず出てきた。
「落ち着け!そっちに行くな!!!」谷が叫んでいる。
「・・・っ!!!」
眞希は駆け出すと、問答無用で柑奈を捕まえ、後ろへ引きずっていった。
「落ち着け!!落ち着けって!!!」
とりあえず、再びCWの中へ。
「莉音は生きてるよ」勝手に、口が動いた。
「へ?でも・・・」柑奈の顔は浮かないままだ。
「生きてる、どっかで飛び降りてぎりぎりで逃げ出したはずだよ、あの第六感が働く莉音だもの」
そう、信じたかった。
自分たちだけギリギリで逃げ出して、置いてきぼりにした莉音だけが死んだなどと、考えたくはなかった。
ムカデが死肉をあさっている汚い音がする。
しばらく心を落ち着かせるために時間をとった。
その間、柑奈はずっと泣き続けていた。
ただ、見続けることしかできなかった。
「っおい!!」突然、谷が切迫した声を上げる。
反射的に顔をあげると、死肉を食べつくしたムカデたちが、こちらにその醜い顔を向けたところだった。
「うぁっ!!」柑奈の悲鳴が聞こえる。
「早く!!地下に!!」駆け出す谷。
「柑奈!!」
呼びかけても、柑奈は動かない
「まどろっこしい!!」
一言吐き捨てると、手を繋いで走りはじめた。
「ちょっ・・・ちょっ・・・ちょっと!!」
傍目から見ればただのバカップルである。
しかし、状況が状況、見ているモノもバケモノだけ。
なにより、眞希自身に全く自覚がなかった。
気にしたのは、柑奈だけ。
「ほら、走れるなら早くしろ」眞希が急かし、手を離した。
もしも、まともな世界でこんなことができたなら。
それが叶わなくても、共にただ無邪気に笑い合ったあのころに戻ることができたなら。
それからこの場に、莉音がいてくれたのなら。
走りながら、記憶がよみがえった。
「ねぇ・・・柑奈?」莉音が問う。
「何?」
「あんた・・・北沿君のこと好きでしょ」
「え?ちょっ・・・なんでそうなるの?」
「何でって言われても、親友じゃん、分かるよ」いたずらっぽい莉音の笑み。
「分かってなーい」
じっさい、莉音の読みは当たりつつある。
世界がまともだったなら。
きっと、今の瞬間は幸せだったのだろう。
そんな思いが、柑奈の頭をよぎった。