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10、追憶

街は、驚くほど静かだった。だが、あちこちガラスは割れているし、煙が出ている家もある、車は道のど真ん中に乗り捨てられているのが沢山あった。まさに、現代ゴーストタウン。

急いだ方がよさそうだ。

さて、学校の外に出ると、ムカデの量は格段に少なくなった。更に道のりが割と長いことも重なって、気づまりな沈黙が流れた。

こうなってしまうと、越えてはいけない境界が見切れないのが眞希の癖。

「あの・・・」と話しかけ、単刀直入にこう問いかけた。

「どうして・・・ここに来たんですか、何か理由がありますよね」

「・・・」

谷が表情を暗くし、下を向く。

やはり聞き出せないか。

そう思い、歩調を速めた時、不意に谷が口を開いた。

「僕が学生の時、両親が蒸発した・・・」


彼はその時、まだ中学二年生だった。

一緒にいたはずだったのに。どうして気づかなかったのだろう?お父さんもお母さんもすごく深刻な顔をしていることがあったじゃないか・・・少年、悠人は自分を責めた。

残ったものは、何もなかった。

せめて子供だけは酷い目にあわせないように・・・そういうつもりの最後の愛情だったことは分かっていた。でも、やはり苦しかった。

そんな時、支えてくれたのはやはり、友人たちだった。

少し前から仲良くなった木更津君、小学校から凸凹コンビでずっと友達の竜宮君、一学期にやっと慣れあいだした吹石君、にのまえ君、らクラスのみんな。

竜宮君はしばらく家に住まわせてくれた。

木更津君もいろいろ手伝ってくれたし、なにより、みんな暖かかった。

でも、そこに容赦のない運命は追い打ちをかけてきた。

木更津君が、引っ越したのだ。

表向きの理由は、父の転勤だった。

木更津の父が勤めている会社、「ハクレイ株式会社」が買収されたらしいこと。

その買収会社の裏にCWが隠れているらしいこと。

谷らが中一の時、ハクレイは森林を破壊し無意味なマンションを建てようとした

それを止めたのが木更津と谷である。

実際使命感で動いた彼らに罪はないのだが、それをマスコミが嗅ぎつけ、多方面からハクレイをバッシングした。

このままでは会社は周りと取引することができない・・・。味方が消えてしまったハクレイは、CWに助けを求めた、不思議とバッシングが収まった、代償としてハクレイは都合のいい貯金箱になった・・・

そんないきさつがあって、ハクレイはCWと同義として見られるようになってしまった。

そんな成り行きに不満を感じた木更津の父は、突然転職した。

木更津家に、激震が走っただろうと思う。

その後、木更津の父は自由に仕事を始めた。

だが、環境を守る、ということを最優先にしていた息子と、亀裂が生じた。

一度閉じた亀裂が再び開き、今度は戻らなかった。息子はCWに、父は新しい仕事にひきずられ、溝は深まった。

学校でも、木更津が突然熱く環境について語りだすことがよくあった。そしてその話が、いつの間にか恐ろしい方向へ向かいつつあるのではないかと谷は嫌な予感がしていた。

そんな頃の別れ。ろくに挨拶もできず、木更津は旅だってしまった。

その後彼と連絡は付いていない。

竜宮が世話をしてくれ、谷は友人を奪ったCWを調べていった。

過去のもみけされた恐喝事件・・・

裏で近くの国と密約し信者を集めようとしていること・・・

マスコミとの関係・・・

インターネットを洗い出していれば、胡散臭くてもそれらしい情報はいくらでも入ってきた。

木更津に送りたい。どうしても、あいつを狂った宗教から出したい・・・

そんな思いは、洗脳で自己完結した木更津の脳みそに届くはずはなかった。

そんな沸々としたCWへの感情を持っていた彼は、竜宮らを集め、CWを調べることに。

そして、違法スレスレ、否、違法の調査の結果、ムカデの作戦を読み取り、ここへ飛んできた・・・

もしかしたら、木更津に会えるかもしれない、でもあったらどうしよう・・・そんな思いに苦しみながら。

「・・・気が付いたら、やっぱり『行こう』って・・・ね」

たまに現れるムカデを斬り潰しながら、谷は断続的に語ってくれた。

それを手伝っている時、こんな話があった。

学校を巣窟にしてメスはこもっているらしく、大きいムカデ状のバケモノ、つまりオスしか出てこなかったのだが。

三回目にそれに遭遇したとき、それを倒すことができた。

その時、眞希と谷は前へ出て、やっと慣れてきた感じで谷は拳銃を、眞希は曲尺を二つ両手に構えた。

谷が先ほど分かった弱点、口に鉛玉をブチ込む、その隙に逃げる、という手段を使っていたのだが、眞希はそこにさらに近づき、鉋刃の二枚目を投げつけた。喉の裏に刺さったそれから、深緑色の血が噴き出した。

あのムカデの巨体が、どさり、と横に倒れた。

「すげぇな・・・弱点は喉か、よく気づいた」谷の称賛の言葉が、何よりの自信になった。

刃を抜き取りながら、思わずニヤリとする眞希だった。

その後は喉と口を狙って石を投げつけることで、更に素早く逃げられるようになった。

病院に着くまでに、ムカデはあまり見かけなくなった。元の数が一番多いのは学校だったらしい。


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