セブンレイディアント
その日、静かな郊外の街に、突如として“怪人”が現れた。
真っ黒な体躯に、ガス灯のように揺れる仮面。手には鋼鉄のハンマーを持ち、地面に打ち下ろすたびにアスファルトが裂け、車が跳ね飛ぶ。
人々は逃げ惑い、警報が鳴り響き、ニュース速報が空を飛ぶドローンを通じて繰り返される。
> 「――速報です。ただいま、Cブロック工業地帯に正体不明の怪人が出現。現在、警察は現場からの退避を呼びかけております」
そんな喧騒の中、空に七色のきらめきが走った。
光の尾を引いて、空から滑るように降り立ったのは――
「街の平和は、私たち《セブンレイディアント》が守る!」
堂々と名乗りを上げたのは、中央の少女。赤の衣をまとい、燃えるような夕日の瞳を持つリーダー――クリムゾンレッド。
青き双子、広がる海と高き空――
オーシャンブルー「心の波に揺られて」
スカイブルー「空高く、正義を掲げて」
大地に立ち、穏やかな微笑を浮かべる
ーーグラウンドブラウン「落ち着いて、お茶でもどう?」
森を見つめる優しい瞳、だが芯は強くーー
フォレストグリーン「帰るべき場所はここよ」
日陰に立ちながらも仲間を守る影――
シャドウブラック「居場所は……ここでいいから」
そして、すべてを照らす白き光――
レイホワイト「輝くって、意外と地味なんだよ?」
七人の魔法少女たちは、それぞれ異なる輝きを放ち、円陣のように街を包囲する。
「来るよ、あの怪人……鉄骨振り回してる!」
「避難は終わってる。全力でいけるわね」
「夕日と一緒に……燃えなさいっ!」
クリムゾンレッドが変身杖を掲げると、炎が彼女の周囲を包み、杖が剣のように変化する。火の刃を纏い、まっすぐ怪人へと飛びかかる!
怪人は呻き声のような、意味をなさない咆哮を上げてハンマーを振るうが――
「っはぁぁぁっ!!」
斬撃が火の十字を描き、怪人の腕から武器が弾け飛ぶ。
続いて――
「水圧集中、20%でいくよっ」
「こちらも補助するわ。風の流れ、整えて!」
オーシャンブルーとスカイブルーが魔法陣を空中に展開し、轟音とともに水の弾丸と真空の槍が撃ち込まれる。
「地ならし、完了です」
「森の怒りも、見せてあげよう」
グラウンドブラウンが地面を隆起させ、怪人の足元を封じると、フォレストグリーンが伸びる蔦でその体を巻きつけ、動きを止める。
「今だよ、レイ!」
「ラジャ、まぶしくてもごめんねっ!」
レイホワイトの杖が光を放つと、シャドウブラックがその背後の闇を裂いて一閃。
無言の怪人は、抵抗も虚しく、光と影に焼かれて空へと吹き飛ばされ、夜空に星のように散った。
静まり返った街に、再び七色の光が差し込む。
クリムゾンレッドが、ゆっくりと空を見上げた。
「……うん、今日も、街は無事」
「この街が好きだもんね」
「うん、みんなが笑ってるとこ、ちゃんと守らなきゃ」
「まったく……夕日に酔ってるのね」
「でも、わかるよ」
「……うん」
「それじゃあ、また明日もがんばろー!」
そう言って、セブンレイディアントは空に跳び上がり、七つの光の尾を残して、夜の空へと消えていった――
――これは、まだ誰も疑わなかった時の話。
――魔法少女が、本当に「正義」と呼ばれていた時の話。