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Death of the Academia 〜十二人の生徒達が紡ぎ世界を巡る英雄譚〜  作者: 鈴夜たね
あの日の真実と、青年を助けた英雄編
95/115

Curse Walker: Evil God and Zealots(カース・ウォーカー:イーヴィル・ゴッド・アンド・ジーラッツ)

十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー


I組第二授業から、ずっと離れて戦っていた外部の冒険者達と、記憶持ちの生徒達。


そしてようやく語られる——彼等と別れた後、どんな激戦を繰り広げていたのか……


そして、ネリカが助かり記憶持ちに参加した真相も明らかに——


《Death of the Academia》をお楽しみください

これが、今のノクトヴァールなの………?


封印の時とは比べ物にならない魔力と威圧が、肌を突き刺していく。

瞼がゆっくりと開かれると、底知れぬ闇の色が私を射抜いた。


その身は黒衣に包まれ、胸元には紫の結び。

かつて、スズラン様から頂いた学生服は影を失い、悪しき王のような姿へと変わり果てていた。


——変わり果てても、変わらないものがある。

そう感じた時、涙が溢れそうになった。


それでも私には、やるべきことが残っているから。


ノクトヴァールの姿が顕れるや否や、ティオルとクレヴァスは即座に片膝をついた。


「ノクトヴァール様。本日は……隣にいるこの者が、話を望んでおります……」


低く報告する声を受け、ノクトヴァールは金属音を響かせて顔を近づけてくる。

幾つもの指輪が擦れ合い、耳障りな響きが闘技場に渡っていく。


巨大な瞳に映るのは、ルルナとしての仮初の姿。


「貴様、我を前にして平伏さないとは…………猪口才な小娘よ……」


威圧に押し潰されそうになりながらも、私は心を鎮める。

落ち着くのよ、私は――神エラリアなのだから。


ノクトヴァールは目を細め、じっくりと観察した。

やがて何かを思い出したように顔を引き、重い口を開いた。


「ふむ……貴様はフェルヴァーロの眷属であったな。名は確か——ルルナと言ったかのう」


封印で長らく眠っていたからなのか——私の正体を見抜けていない。


「貴様が一番に信仰する神でなくとも………敬意を欠くとは、傲慢な態度よな」


もう我慢の限界…………あの時の優しい声色も、話し方もどこか遠くへ消えてしまったみたい。

だからこそ、私は恐怖と悲しみが込み上げてくる。


こんなこと考えていたら、アーサーに怒られちゃうかしら……?


「貴方は、人々の魂を消すことが出来ても――その魂が誰の物なのか識ることは出来ない……」


私は光を呼び、ルルナの長い髪を包み込む。

淡い輝きが一筋一筋を染め替え、やがて全体が金に近い麹色へと変わっていく。


最後に閃光が弾けると、長髪は跡形もなく散り——

かつての私、短いボブの姿へ変身を遂げた。


「この姿に、覚えがあるでしょう? そして今、放った光――あれはスズラン様より賜った、確かに私の証たる光属性の魔力よ!」


「……なるほど、エラリアか。確かに、その魔力と姿は――かつて我らと肩を並べた神々を思い起こさせる」


ノクトヴァールが指を鳴らすと、どこからともなく玉座が現れる。


黄金の縁をまといながら、頂には錆びの浮いた二本の角が突き出ていた。

それは気高き王を示すものではなく——魔王の冠そのもの。


腰を下ろす座面には、鮮烈な赤が敷かれるはずが、漆黒の布が広がり、光を拒絶して影を呑み込んでいた。


「そこに立つ部外者は……新たなる代行者か? それとも、我の贄となる者か?」


私は、咄嗟に闘技場の入口へと振り返る。

そこに、微かに見えたアーサーの影―― 声を発するより早く、漆黒の巨腕が空を裂き、扉へと奔っていた。


「辞めなさい、ノクトヴァール! 私の話を聞いて!」


巨大な腕が影となって覆いかぶさった、その刹那――

私の体から迸る光が爆ぜると、闇を裂いてノクトヴァールの右腕を吹き飛ばした。


「我が腕を斬り落とすとは……やはり、貴様の従者どもが我を討ちに差し向けられたというわけか」


「違うわ! ……そう思っても構わないけど……私が、来た理由はたったひとつよ!」


もはや堪えられない――私は魂の底から声を張り上げ、遂にノクトヴァールに問いただした。


「何故……! 民の幸せな暮らしと、穏やかな世界を守らず――選別という名の殺戮へ、理を変えてしまったのですか!?」



「フフフ……ハァーハッハッハッ!」


大地を震わせるような嘲笑が、闘技場の空気を凍りつかせた。

本当に、私や人類が間違った認識をしているかのように――


「何がおかしいの!」


「簡単な話よ……六属性に偏りが生じれば――暴力や戦争の火種になり得るからだ」


そんな言い訳……通じるわけない!

だって私達、同じ空の下で誰一人欠けることなく……楽しく日々を過ごしていたものっ!


「貴方の言い分は、こじつけに過ぎない! 欲しい属性を得られずに、戦争を起こそうとする者がいるなら——私が、私達が必ず食い止める!」


「我は思った。人も神も信用できぬ存在。――だからこそ、代行者を……傀儡へと変えたのだ」


ノクトヴァールは、堂々と宣言をする。


もしかして貴方は、あの神が創られた日………もしくは、この世界へ降り立った時点で、私達を疑っていたの?


「それで、自分にとっての怪しい人間。調和を乱すかもしれない人間を、代行者に選別させ、処分してきたと………?」



「――無論だ」


その瞬間、私は我慢することを諦めた。

光の大剣を作り出し、ただ真っすぐに――ノクトヴァールへ一閃を描いた。


甲高い金属の擦れる音が、闘技場へ響き渡る。

そう。目の前に立ちはだかったのは――闇の神を信仰し、守護者として代行者として剣を振るう――ティオルだった。


「何故、貴方が彼を庇うの! 貴方だって、被害者なのよ。ノクトヴァールの自白を聞いたでしょ!?」


「では、ノクトヴァール様に言ってもらうのですね………」


ティオルの唇が、妖しく狐を描く。

そして、ノクトヴァールに絶対的な忠誠心を誓う彼は――こう言った。


「“選別を辞め、別の方法で世界の調和を保とう。と」


腐ってる……それは絶対、信仰心じゃない。

ただ利用されて、洗脳されてるだけ………


「クレヴァス、貴様との同行もこれで終わりだ。――光と闇の神は、分かり合えない」



ティオルの真剣で鋭い表情に、クレヴァスは委縮した。


クレヴァスの胸を、鋭い刃が両側から突き立てる。

信仰を裏切るか——仲間を裏切るか。

最後まで読んで下さり、ありがとうございます。

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