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Death of the Academia 〜十二人の生徒達が紡ぎ世界を巡る英雄譚〜  作者: 鈴夜たね
あの日の真実と、青年を助けた英雄編
94/115

Curse Walker: Dark Divinity Awakening(カース・ウォーカー:ダーク・ディヴィニティ・アウェイクニング)

十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー


I組第二授業から、ずっと離れて戦っていた外部の冒険者達と、記憶持ちの生徒達。


そしてようやく語られる——彼等と別れた後、どんな激戦を繰り広げていたのか……


そして、ネリカが助かり記憶持ちに参加した真相も明らかに——


《Death of the Academia》をお楽しみください

「ここが、神々の眠る地……なのですか?」


黒々とした屋根。その両端から天を衝くように銀の角が二本聳え、入口では封印の結界が魔法陣となって脈動し、まるで生き物のように蠢いていた。


「ティオル様は、神々を封印した直後――その領域を丸ごと切り離し、この屋敷を創ったのです」


なるほど。

一度目は仮封印として運び出し、二度目は建物そのものを創り出して、そこに神を留めた……そういう仕組みか。


「龍脈もまた、暴走と同時に砕けたが……ここへ封印して、数週間のうちに、新たな龍脈が芽生え始めた。……おそらく神との共存によって」


——待てよ?

神との共存で龍脈が生まれるのなら、今の龍脈はもう——闇に侵食されかけているのではないか?


「ティオル。君は、一つ目の龍脈は砕けたと言った。そして、二つ目の龍脈が、あのピラミッドの中にあるとも……」


明らかな矛盾点。

それは世界を保つ要であると同時に、闇の侵食を許す養分へと化す——つまり選別で死んだ人間の血を吸収している可能性。


「今の龍脈が無事だっていう証拠はあるの? もしくは、二つ目の龍脈が今の世界を救ったという実例はある?」


視界の端で、数羽のカモメがピラミッドの頂で遊んでいた。

しかし僕等とティオル達との間に、和解の未来は——やはり見えない。


「…………ある。二つ目の龍脈が形を成した時――闇に戻りかけた世界を、創世神スズランが築いた世界へ戻していった」


「信じがたいけど、僕達がこの世界で生きていられるのが、何よりの証拠だね。――エラリア様、心の準備はよろしいですか?」


人間同士で言葉を交わしても意味がない。

ここへ来たのは、神同士の対話で白黒はっきりさせるため。


早く済ませないと、アラリック達が……


「ええ。いつでも構いません。――これで、決着をつけましょう」


屋敷の入り口に、張り巡らされる封印の陣。

ティオルが手をかざし、低く呪文を呟くと――音もなく溶けるように、空へ吸い込まれていった。


中へ踏み込むと、かつての豪勢さを誇るかのような廊下が、果てしなく続いている。


両壁には、橙色の扉が等間隔に並び、天井からはシャンデリアに揺れる蝋燭の灯が揺れていた。

白い大理石の床には、黒いカーペットに微かに滲む血痕が僕等を導いている。


どれほど歩いたのか、もはや分からない。

足音だけが反響し、時間の感覚はとっくに曖昧だ。


同じ歩幅、同じ風景を何度も繰り返している錯覚に、囚われていた——その時。


不意に、闇の奥から壁が姿を現した。


「屋敷の封印は俺が行い、神々の封印はクレヴァスの力を用いている……」


壁には、一枚の古びた札が貼られている。

墨で書かれた古代文字から、禍々しい気配を放っていた。

遥か昔の時代には、悪に染まった人間を何枚もの札で封じ込めるという風習があったらしい。


「――この先に神が眠っておられます。そして、人間は足を踏み入ることの出来ない空間……アーサーとリゼルドは、この廊下で待っていてください」


神と代行者のみ立ち入りが許されている地、か……

元々想定はしていたけど、何かあった時、彼女だけだったら——


「汝。我の願いを聞き届け、神々との対話の道を開きたまえ……!」


クレヴァスが長方形の板を掲げ、呪文を唱える。

水縹みはなだ色に輝く疾風が吹き、壁の札は板へ吸収されるように——彼の手に渡った。



次の瞬間、光の糸が壁に描かれた。

菊のように舞い踊るそれは、やがて華の実が覗かせる。


やがて咲き誇った華が形を変え——透明な扉が静かに姿を現した。

その奥には――巨大なガラス片に封じられた五人の神が、並び立っていた。


「それじゃあ、行くわ……」


扉の前に立つエラリア神は、クレヴァス達が肩を並べる。

僕はただ黙って見守るだけだったが、アーサーが思わず声を上げる。


「エラリア! 君に何かあったら、必ず助けに行くから。気を付けてっ!」


アーサーの声に、エラリア神は一瞬だけ眉を上げて驚いた顔をする。

けれど、すぐに柔らかく微笑み「安心して」というように、静かに頷いた。


神が待ち受ける空間へ、足を踏み出した三人。

僕も最初は大丈夫だと思っていたのに、——ただここで待っているだけというのは、むず痒い気持ちになっていた。


その時、アーサーが扉に手を伸ばす。

だが、指先が触れた瞬間――雷鳴のような衝撃が走り、焦げた匂いが漂った。


アーサーは呻き声を上げ、指先は黒く焼けただれている。


「我慢しよう、アーサー……きっと、あの方なら大丈夫。――君が一番分かってるでしょ?」


光の魔力で彼の傷を癒しながら、そう告げる。

本心は……心配で仕方がない。


それでも弱さを見せれば、彼女を迷わせ——敗北しかねない。


「そうだね……エラリアが頑張るなら、俺もがんばらないと……だね!」


無理をしているのは、僕達だけじゃない……

皆、等しく不幸を背負っているのだから。



ここから先は、エラリア神の口から直接語られた光景――


蒼く揺らめく魂のようなかがり火が、薄闇に漂い円形の闘技場を、淡く照らしている。


光の届かぬガラス片の中に、封じられし五柱の神々が鎮座していた。


左翼には——土属性の女神ティアリス

その隣には、火属性の男神フェルヴァーロ

そして、中央に眠るの闇の男神ノクトヴァール


彼を護るように、右翼には――水属性の女神ミルシェネア

そして、風属性の男神ウィリオールが封印されていた。


だが、その姿はかつての威容を失い、あの時のまま——封印の中で歪み果てた巨人の姿から、変わっていなかった。


神々とは言いがたい異形。

封印されてなお——その圧倒する気配にエラリア神は、震えた。


「本当に、ノクトヴァールと話が出来るのよね?」


震えを隠しきれぬ問いに、ティオルはただ無言で頷いた。

そして、ノクトヴァールが眠る巨大なガラス片へと、腕を差し伸べる。


指先をゆっくりと握りしめ――まるで見えざる鎖を砕くように、拳を固めた。


その瞬間——

鈍い破砕音が闘技場全体に響き、結界を縛っていた枷が弾け飛ぶ。

空気が裂けるような衝撃とともに、禍々しい魔力の暴風が渦を巻き、かがり火の光を激しく揺らした。



———来る。


誰もが直感で、そう悟ったその時。


「ほう……………」


低く濁った声が闇を突き破り、闘技場を震わせる。

封印の解けたノクトヴァールが、不気味に姿を現した。


「私の眠りを破るとは……ふむ。――何用である?」

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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