Death Game: Last Life(デスゲーム:ラストライフ)
十二人の生徒が、命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー
土、火、水、風の四属性をメインに、街に群がるモンスター達を討伐し授業をクリアして自身の評価を上げていけ!
生き残るのは真の才能がある人間のみ
誰が生きて誰が死ぬのか完全オリジナル作品
《Death of the Academia》をお楽しみください
「では改めて。御二方の同意とソニントさんの同意が得られましたので、本日夕食後から一時間後を目処に、特別試験を行いたいと思います」
朝食後に職員室に呼び出された下位三名のヴェイル、ストリクス、ソニントは、改めてフラーナから特別試験の内容を伝えられていた。
「ルールは単純明快、1対1の試合を繰り返し最も勝ち点の少なかった者が脱落……簡単に言えば、二勝すればその時点で生き残りが確定する。それだけのことです」
特別試験トーナメント表
第一回戦:ヴェイル対ストリクス
第二回戦:ソニント対(第一回戦勝者)
第三回戦:勝ち点に応じたマッチアップに変動
「正直私は誰が勝ってもおかしくないと思いますし、誰が落ちても不思議では無いと考えています。
ですから……残された時間を無駄にすることなく、時間まで過ごして下さい——」
職員室を出ると上位三名のアラリック、レンリー、ゼフィリーが廊下で待機していた。
「ソニントの雰囲気が、別人のように変わった…貴様の差し金か? ヴェイル」
「悪いかよ。俺はお前に大口叩いて実力を残せなかった……必ず生き残ってやるから覚悟しとけよ」
「はい、はい。その度に僕が1位を取らせて貰いますけどね」
入学当時の、一位と二位の会話には重みがあった。普通に明るい雰囲気で話している筈なのに凄く説得力のある物だった。
「流石アラリックさん! かっこいい」
レンリーが、アラリックの余裕な態度に目を輝かせると、ストリクスが一つ問いかけるように口を開く。
「ねぇ一つ聞きたい事があるんだけど、レンリーは危ない状況に追い込まれた時、体が反射的に動くとか自分に何かを強く言い聞かせて、限界を超えたりっていう経験はある?」
実際にストリクスは、死の淵を見ている生徒の一人。
同じような経験をした人間と情報の共有は、今の彼にとって必要不可欠だった。
「グラン先生曰く、僕じゃないみたいだった。と仰っておりました。確かに、その時も記憶も曖昧で、それと近い状態だったのかもしれませんね」
「そっか、ありがとう。特別試験頑張るね」
「はい!応援してます」
勿論、自分が生き残れる保証など何処にもない。
だが、無意識の覚醒と意図的な覚醒では、戦いの有利さに明確な差が生まれる。
だからこそ、今この場でレンリーに“吐かせて”おく必要があった。
「あの、ゼフィリー。良かったらこの後、夕食の時間まで練習付き合ってくれない? 勿論、蹴落としあいの世界でルールなのは分かってるけど、第一授業で覚醒したって言ってたからお願いできないかなって」
ゼフィリーは少し考えた後、答え始める
「……まぁ、上位の僕達には何も言わなかったし、大丈夫だと思う。じゃあ早速鍛えに行こう——」
話を終えて各自寮へ戻ったり、試験までの間に一緒に鍛えて時間を共にしたりと時間を過ごした。
——コツ、コツ、コツ
まるで誰かの命数を数えているかのように。
昼食が配られた頃には時間の流れが、妙に速く感じられた。
このまま試験の時刻が来てしまえば、誰かが消えるという現実が確かにそこに待っている。
そして遂に、夕食を終えて”一時間後”その時はやってくる——
“I組第一授業で下位三名は、準備が出来次第教室へ移動をお願いします”
フラーナの案内がかかり、ヴェイル、ストリクス、ソニントの三人は言葉を交わす事もなく、ただ静かに教室へ向かった——
「来たか……では、早速試験会場へ向かう。場所はこの学園内にある五階のコロシアムだ——」
コロシアム入り口へ転送され、篝火が暗い洞窟の様な道を照らしていた。
「命の灯火みたいだ…」
ソニントが静かに呟くと、誰も言葉を返さぬまま目的地へ到着した。
重厚な扉を押し開けると、冷たく広がる石造りの半円形コロシアムが静かに待ち構えていた——
「ここが今からお前達が決闘する会場だ」
三人は一気に緊張と感動が押し寄せる、、鼓動が速くなり誰もいない筈のコロシアムは圧倒的な雰囲気で息を詰まらせる
「ここでやるのか…」
「状況が特別試験という事もあって誰もいないのに誰かに見られてる感じがする」
「……前何かに使われてたのかな?」
「どういう事?」
「少し傷があったからII組の人達が先に使ったのかなぁって」
確かに観客席には魔法の痕跡、会場自体にも傷はあった——
「思う所はあるだろうが、今は自分達の立場の事だけ考えろ」
「第一回戦は、ヴェイルさんとストリクスさんで、戦って頂きます。戦闘中のルールは円の外に出ても、どんな攻撃呪文も使用可能。勝敗の有無は、この首飾りの真珠を先に壊した者が勝者となります」
フラーナが再び、説明役として、淡々と話す。
そして、首飾りを受け取り二人は早速装着して近くで観察する。
「強度も変わりませんし、戦闘中に首飾りを意図的に隠す行為は禁止です。偶発的に、激しい動きで見えなくなったり反射的に防御してしまうのは、目を瞑ります」
グランは一拍置き二人の様子を見てから問いかける。
「——では二人とも心の準備は出来てるか?」
「はい」
「いつでも行けます」
中央の半円形に向かい合って2人は剣を構える。それを静かにソニントは見守っていた——
「——それでは第一回戦始め!」
まずは意図的に覚醒状態に持っていく事が僕の勝利条件……
例え想像でも良い、助走を付けて一気に踏み込む!
右足に重心を掛けてストリクスは地を蹴った。
その瞬間、疾風の様に駆け剣を振るう——
速い…!あの時レンリーに質問してたのは、覚醒のコントロールが可能かどうかの分析……!?
鋭い剣の交わる音がコロシアム一帯に響き渡った。
重い……!速さと連動して一撃の重さが増してる——次受けたら負ける。
「悪いねヴェイル。申し訳無いけど君の動きが止まって見えるよ——」
次の瞬間にはヴェイルの首飾りの真珠が破壊されていた。
何も出来ず、再びプライドを壊されたヴェイルは膝から崩れ落ちた……
「そんな……これが無属性ならではのスピードと重さを兼ね備えた戦い方……」
「第一回戦勝者——ストリクス・アルヴィオン」
ソニントは、圧倒的なまでのストリクスの戦い方を見て、
唖然としたが自分には勝機となる鍵を握っていた——
「それでは第二回戦ソニント対ストリクス——始め!」
やっぱり最初はトップスピードで来るよね……でも甘い! その動きがヴェイルに通じても俺には全く通じない…!
ソニントが、ストリクスのスピードに追いつく様に剣は交わり爆風がコロシアムを揺らした——
「二回も通用しないんだよ!」
「驚いた……! 僕の動きが見えて、更にこの一撃に耐えれるなんて」
「俺はこう見えて目が良いからね。試験が始まる前に、コロシアムの傷を誰も見つけられなくても俺は見つけた。それがお前のスピードに追いつける何よりの証拠だ」
「なるほど……」
ストリクスが一度距離を取る。
火花を散らした剣撃の応酬を断ち、観察者の顔に戻る。
動体視力が優れているソニントに、唯一の攻撃の手段が封じられた……なら一か八か”あの方法”を試すのも悪くないかもしれない——
そこからは、ストリクスの防戦一方な戦い方が目立ち始めた。それでも彼の表情は一切変わらず、何を待っているのかも読めない状況だった。
ソニントは構わず、自分で作り出した精神内攻撃の剣でストリクスを攻め続ける。
「戦術が消えたから、時間稼ぎでもしてるの?だったらもう負けを認めて!」
最後に突き出したストリクスの剣が、遂に精神内攻撃の術を発動させた——
ストリクスは精神内で、燃えるような熱さと、痛みの衝撃で円の外へ激しく叩き付けられた。
「今なら……!」
吹き飛ばされたストリクスを見て、一気に接近し最後に剣に念を込めて、丸見えになっている首飾りの真珠へ一撃を打ち込もうとしたその瞬間——
「人間は必ず最後の一撃は気を緩める……この瞬間しか僕に勝ち目は無い」
何かが割れる音が、ソニントの聴覚を覆った。
………えっ?
剣の振る音も耳に届かず、そのまま体制を崩して咄嗟に首飾りを確認したソニントは、壊れている現実に唇を噛み締め、驚きと悔しさの感情が滲み出た。
「くっそ……」
「第二回戦——勝者ストリクス・アルヴィオン!この時点でストリクスの生き残りは確定する」
第三回戦は、ヴェイル対ソニントという、マッチアップで決定し、互いにストリクスに負けた事は一旦切り替えて視線を交えた。
「俺はねヴェイル……君があの時食堂で助けてくれたりその後に言葉をかけてくれなかったら今の俺は居ない…改めてお礼を言わせて、ありがとう……」
昨日、食堂を強制送還された後、ヴェイルが根気強く自分の背中を押してくれたことを、全てが決まってしまう前にお礼を告げる。
「別に、礼をされる程の出来事じゃねぇよ……そっちこそ恩人みたいな感じで手抜くなよ」
少し嬉しそうな癖に、ムキになって変な風に返事をしてしまったヴェイル。
後に、後悔することを彼はまだ知らない。
「勿論!全力で行くからお互いに恨みっ子なし、本気でぶつかろう!」
「それでは第三回戦、負けた方は脱落確定のラストマッチ——始め!」
対戦開始の合図とともに、二人は言葉を捨てた。交わる剣の火花がその全てを物語っていた。双方狙いは首飾りの真珠、互いに剣を交わって、互角の戦いが繰り広げられた。楽しそうで良い勝負をしている二人の姿を見たグランが、ストリクスに問いかける——
「今の二人、お前から見てどう思う?」
「そうですね、切り替えの早さもそうですが、二人とも“今の自分を見てくれ”と剣で叫んでいる気がします。ソニントの方は、今までで一番良い表情をして心の底から”今ヴェイルと剣を交えている事が楽しい”と言っている風に見えます」
「ソニントの剣も元々は精神内への攻撃だったが、先程お前との対戦で念も込めていたようだし、開花する瞬間かもしれないな——」
剣と剣が高く鋭い音を残し、火花を撒き散らして離れた。
互いに一瞬の距離を取るも座り込んだのはソニントだった。
「はぁはぁ、、因果応報だな……こんなに早く疲れるなんて」
心臓に手を当てて剣を強く握り呼吸を整える。
限界か? ここで情に頼るのはお前にも失礼……だよな!
そう判断したヴェイルが一気に駆け出す。狙うは——首飾りの真珠だけ。
その瞬間——ソニントが掲げた剣を中心に、巨大な火の竜巻がコロシアムを包んだ。
吹き荒れる熱風と爆風に、ヴェイルの足が止まる。
炎の中心、立ち上がったソニントの剣が、黒く焼け焦げた刃から紅蓮の光を宿した“宝石剣”へと変わっていた——
「さぁヴェイルここから最終演舞を始めよう!」
「おう、望む所だ。全力で行く!」
ルビーの輝きを帯びた剣が閃く、合図など必要なかった。
次の瞬間二人は、互いの間合いに飛び込んだ。
素早く、鋭く、正確な剣撃の応酬と分析と直感、経験と進化が交差する。
まるで別人のように、ストリクス戦とは比べものにならない高度な剣術が繰り広げられていた——
ソニントが掲げた剣の輝きが一瞬膨れ上がり、そこから無数のルビーの結晶が花びらの様に空を舞って、ヴェイルへ向かって放たれた。
しかしヴェイルもまた、水晶のような爆炎で包み込み空が、赤く染まる大きな爆発が起きた。
「グラン先生、ソニントはもう”人を傷付ける”ということに、恐れていない。今あいつは本気で戦う意味を理解している」
「あぁ……遂に目覚めたか」
刹那、ルビーの剣がヴェイルの首飾りの真珠めがけて走る。
しかし上手く攻撃を交わしたヴェイルは深く頬に傷跡を作る。
「やるじゃんソニント。でも俺の勝ちだ——!」
振り返ったソニントが足掻きの一撃を入れる間もなく、ヴェイルの剣が真珠を砕いた——
「第三回戦勝者——ヴェイル•イグニス。そして脱落者は——ソニント・シープで確定する」
二人は息を上げて静かにアナウンスを聞いた。この時敗北して顔を伏せたソニントを見て、ヴェイルは情が戻る。
「ソニント……」
「……大丈夫だ。悔いは無いよ」
顔を上げて初めてソニントの感情が見えた。涙を浮かべながらも、笑っていてきっと嘘はついていないんだと——
「——全員含めて良い戦いを見させて貰った。ソニント、貴様が何故ヴェイルとストリクスに負けた理由が分かるか?」
「ストリクスの時は、一瞬の油断が彼を勝たせた……
そしてヴェイルとは、あの一撃が真珠に命中していれば勝ちでした。でも外した時点で負けが確定した」
ちゃんとした分析が出来ている……きっとこいつなら
「反省するべきポイントを明確に把握しているのは良い事だ。この学園では用済みとしても、外の世界に出てもっと鍛えれば必ず強くなれるだろう」
「ありがとうございます。最後に二人にも…」
きちんとヴェイルとストリクスの方を向き直して頭を下げてお礼を言う——
「二人との決闘は本当に色々な気付きが出来て、帰った後も必ず糧にして戦うよ。この熱が冷める事は絶対ないって、断言出来るから」
返事をする間もなく、ソニントはグランとともに、コロシアムを後にしようとした。
それでもヴェイルは何か言いたくて必死に呼び止めると、ソニントは驚いた表情で振り返る。
「待てソニント!——元気で、生きろよ」
「うん。ありがとう——」
こうして最弱王決定戦は幕を降ろした——
戦いの中で、覚醒し本気でぶつかり、消えない熱とともに、去っていく一人の生徒は自分の寮部屋と教室に頭を下げてグランの案内の元、学園を後にした——
「こんな場所に地下があるんですね」
ポータルで連れてこられた場所は、鉄臭い牢獄のような所だった。
少し興味深く周りを見渡しているとグランが静かに問いかける——
「なぁソニント。もしも仮に学園復帰を許されるならどうしたい……」
「そうですね……更に強化された自分と、皆で戦い合ってみたいです!」
「そうか……ではこの部屋で待機していてくれ」
重い鉄の扉を開けて言われるがまま足を踏み入れた。
「少ししたらポータルを出すから、ゆっくりしていると良い」
「は、はい……」
そういえば脱落=命に関わるって言ってたけど、どう言うことなんだろ……また厳しい試練でもあるのかな?
でも今の俺ならどんな敵でも倒せる気しかしない!
次第に瞼が重くなっていく。頭がクラクラとし始めて意識が遠のいていく感覚がした。
でもなんだか……凄く眠く体の力も入らなくなっちゃった……疲れたんだきっと。少し休めばまた先生が起こしてくれるよね….…
その場で倒れてゆっくり目を閉じる。この青年は永遠の眠りについた事も気付かずに、骨も残らず消えていくのだった——
暗闇の空が覆う中職員室で一人の聞き慣れた声とII組担当の女の声が不気味に響いていた。
「こちらは一人脱落者を出したぞ」
「なるほど……こっちはイレギュラーが一人。今後どうなるか楽しみね」
かくしてI組第一授業は終幕し、II組第一授業の全貌が明らかになる——
という事で次回からはII組第一授業編スタート!ここからまた盛り上がると思うので是非次回をお楽しみに!