表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Death of the Academia 〜十二人の生徒達が紡ぎ世界を巡る英雄譚〜  作者: 鈴夜たね
水属性と記憶持ちの賭けバトル編【第二幕】
84/115

Aqua Hand in Joker: Rise of the Heroes(アクア・ハンド・イン・ジョーカー:ライズ・オブ・ザ・ヒーローズ)〈前編〉

十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー


カルテットデスゲームを利用し、脱落者を助ける作戦に乗り出したヴェイルとストリクス。


その中で選ばれたネリカは——

仲間を信じて、自分の信じた道を歩む為に、剣を向ける。


《Death of the Academia》をお楽しみください

フラーナの思わぬ登場により、コロシアムは混沌へと姿を変えていく。


「リノ・ネリカさん。貴方にひとつ忠告があります……」


冷ややかな声と、紅蓮のように染まる瞳。

その目で、こちらを鋭く見据えるフラーナ。


——ほんの一瞬、ネリカの背筋は冷たく震えた


「既に、マリーナ先生がアラリックさん達の元へ……そして、ヴィンティス先生の魔力により、ヴェイルさん達が戦っている魔獣を完全なる支配下にしました」


しかし、ネリカの表情は青ざめるどころか、微かな笑みを浮かべて冷静に言い返す。


「だったら何です? こちらも言っておきますが、降参も組織に入るつもりもありません」


フラーナは小さく息を吐くと、両手を器の形に組む。

やがて、掌から燃える魂のように無数の火の玉が舞い踊る。


「どうして貴方はそこまで、自身の意思を貫き通すのですか?」


何度も「ゴウッ」という火が灯るような音を立てながら、フラーナが波打つように歪んでいる。

結晶化のアーサーが、ネリカの前に立とうとした時、彼は制止するように、問いに答えた。


「先生達と同じです。何かを絶対に成し遂げなくてはならない……だから、選別をして犠牲者を出すのと同じように」


きっと全部間違ってる……

だから僕は、僕の信じる道を歩きたい!


「僕は、別のやり方で世界の調和を望むから、貴方達が間違っていると証明する為に、仲間と協力して戦い続ける! ただそれだけです」


どれだけ、刺客を送り込まれようと……僕の仲間は絶対に負けない!


そう信じているから……僕は。


「諦めろフラーナ。記憶に目覚めた者は……飴でも鞭でも裏切らない……」


グランは彼女を諭すように、告げる。

実際、I組の生徒達は誰も寝返ることなく戦っている。


しかし、誤った選択によって一人の生徒は、終わりを迎えている。


「それは残念です……では、早々の幕引きと行きましょう」


火の玉が一つに溶け合い、渦を巻きながら巨大な円を描いていく。

それは、太陽のように全てを焼き尽くすような、光と熱を帯びていた。


氷を全身にまとい、ネリカは死ぬ覚悟を決める。

轟音と空間の軋む音が、鳴り響く。

結晶化アーサーと背を合わせて、挟み討ちの形に追い込まれる。


その瞬間——

結界を通して、誰かが助けにくる気配を感じ取った。




一方その頃、ストリクスとヴェイルは、地下監獄の闇を裂くように、ケルベロスと死闘を繰り広げていた。


一匹のケルベロスは、三つの首のうち二つは既に落ち、残った中央の首が、血走った目でヴェイルを睨みつけている。


「アル・ヴァードフレイム!」


ヴェイルの叫びとともに、炎が鳥の形へ姿を変えてゆく。

突風を起こしながら、ケルベロスの体内へ潜り込む。


次の瞬間、「ボコッボコッ」と至る場所で膨れ始める。

やがて、皮膚から内側を突き破ると——


「そのままくたばりやがれ!」


体制を崩すケルベロス。

剣先から炎をまとい、刀身が赤く燃え上がると心臓めがけて、突き立てる。


肉の破裂する音と、金属の音が混ざり合う。

直後、爆炎が魔獣の体の内側から粉砕し、肉片と黒き煙が舞い上がった。


「はぁ……はぁ……はぁ……」


炎の火炎が、滴るように消えていく。

外傷こそ少ないが、カルテットデスゲームで放った必殺技ダイナマイト・イグニッションの反動が襲う。


膝から崩れるように力を失い、右手の握力も消え、剣が「するり」と抜けるように、地に転がりヴェイルは倒れ込んだ。


「悪い……ストリクス。あとは……頼ん……だ」


息はしてる……! だけど、今回の戦闘で使える体力は全部使い切った。


あとは僕が頼まれた……なんとかやってやる!


「ワォォォォォォォン!」


第二のケルベロスが、夜空を裂く遠吠えを放つ。

緑色に濁っていた三つの首は、ぐにゃりと動き、各々の片目にだけ異様に澄んだ人間のような瞳が現れる。


その瞳は生気ではなく、底なしの闇を写していた。

彼の中で、確実に誰かが裏で操っていると勘づいていた。


「不気味だ……実に気持ちが悪い」


ストリクスは低く身構え、地を蹴って瞬く間に背後へ回り込む。

一閃、中央の首へ鋭く剣を振るう。


――だがケルベロスの巨体が煙のようにかき消えた。


「…………は?」


振り抜いた剣は、何もない空間を切り裂く。


次の瞬間——

背後で気配が閃いた。

振り向く間もなく、牙が肉を貫く。


肩の骨が粉砕され、肉を抉られる。

腹部を裂く生々しい感触が全身を走る。


地面に叩きつけられ、衝撃と共に血が噴水のように舞い上がった。

視界が赤に染まり、耳に届くのは自分の断末魔だけ。


「ぐっ……あぁぁぁぁぁぁ!」


「ストリクス……!」


ヴェイルの声が遠くで響く。

必死に立ち上がろうとするが、動かぬ体が地面に縛りつけられる。

それでも手を伸ばし、仲間に縋る。


「俺と……戦え……!」


朦朧とする意識の中で、ストリクスも腕を伸ばす。

唇を震わせ、息を詰まらせながら名前を呼ぶ。


「ヴェ……イル…………」


こいつは、誰かに使役されて…………いる。

そして…………僕の培った戦術を……真似た。


あぁ………”もう死ぬのか”


――誰か………助けて。


その瞬間、暗い夜空を裂くように、風魔法の光が流れ星となってケルベロスの首めがけて降り注いだ。


「ギャァァァァァ!」


夜を切り裂くような悲鳴に、監獄ごと揺れる。

耳に届く声は、聞き慣れた声。


「少し遅れちゃいましたね。でももう大丈夫っす! あとは俺に任せて二人は休んでいてください」


その陽気で明るい声は、戦場での、絶望的な雰囲気を一瞬で吹き飛ばす。

崩れた岩壁の上に、籠手を装着した男が一人立っていた。


——リオライズ。


間一髪で、追憶の海底の試練を突破し、この学園に帰ってきた。

月明かりを背に、徐々に顔がしっかりと見え始める。


「”ヒーローは遅れてやってくる”でしたっけ? この夜は俺の物っす!」


リオライズとケルベロスの決戦。

そして、アラリックとネリカ達の戦いの行方は——

最後まで読んで頂きありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ