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Death of the Academia 〜十二人の生徒達が紡ぎ世界を巡る英雄譚〜  作者: 鈴夜たね
水属性と記憶持ちの賭けバトル編【第二幕】
83/115

Aqua Hand in Joker: Duo of Blade(アクア・ハンド・イン・ジョーカー:デュオ・オブ・ブレイド)

十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー


カルテットデスゲームを利用し、脱落者を助ける作戦に乗り出したヴェイルとストリクス。


その中で選ばれたネリカは——

仲間を信じて、自分の信じた道を歩む為に、剣を向ける。


《Death of the Academia》をお楽しみください

『初めまして。アタクシは、マリーナ様直々の眷属……“マリゲータ“と申します』


アラリックとリオライズの前に立ちはだかる、タコの化け物。

マリーナと似た妖艶の声と、深海から響くような低い声が重なり、鼓膜を震わせた。


「やっぱり、どことなく水属性の魔力と、水に関係する容姿。マリーナ先生の差し金っすか……」


呆れたように拳を握り、籠手に視線を落とす。

それは自分の名が刻まれた——あの日のプレゼント。


「これからも力をお貸しください……ベルティリナさん、お母様」


そう呟くと、大きく飛躍し籠手の牙を向ける。

月明かりに照らされるマリゲータへ、風属性の魔力をまとい拳を突きつけた。


『良いですね! でもアナタの攻撃がアタクシに届くのは、夢物語ッテモンです!』


一本のタコ足のスカート足に絡み付け、軽くステップを踏み始めるマリゲータ。


まるで、墨を吐くように水飛沫とともに、タコ足が矢を放つような速さで、リオライズへ迫る。


絶体絶命を迎えた瞬間――


それは英雄のように現れる。

今だって、俺を助けてくれる剣術は――月明かりよりも美しかった。


月光を裂く剣閃が走り、タコ足は瞬く間に細切れとなって宙を舞った。


そう……リオライズを助けたのは——アラリックだ。

そして、すぐにマリゲータの断末魔が響き渡る。


『キャアァァァァ!』


「貴様の弱点は、視野が狭いこと……」


マリゲータは怒り狂ったように、アラリックに体の方向を変えた。

そして、吸盤から取り込んだ子犬の死骸を、激しい水流に乗って弾丸のように放たれた。


「ほら……今も見えてない。その“欠点”が治らない限り、貴様に勝機はない」


水柱とともに、流れ込む子犬たちに向けて右手を差し出す。

すると、一瞬にして水柱が凍り付く。

子犬も、死骸となる骨や肉も、氷塊となって砕け散った。


「……っ最高っす。アラリックさん!」


リオライズの興奮が、最高潮に辿り着く。

目の前に迫ったタコ足が消えた彼は、拳を握り直した。


骨を砕く鈍い音と、風属性の魔力をを帯びる拳は、マリゲータの右腕を粉砕した。

それに続くように、全身が無数の風魔法で切り刻まれ、マリゲータは土煙を起こしながら、膝をつく。


「終わりだ。マリーナの眷属よ」


アラリックが戦況を見守っていた最中、ようやく口を開いた。

マリゲータは、負けじとアラリックの過去を掘り出すように、罵倒を始める。


『図に乗るナァッ! キサマは、恩人もコロすようなハァ……ハァ……外道な人間ダ!』


アラリックの眉が、微かに動く。

怒りを滲ませながらも、その瞳は氷のように冷たかった。


『まずは、その両腕ヲ切断シ、そのあとで体を串刺シテ、キサマの故郷で見せしめにシテヤル!』


しかし、マリゲータが瞬きをした瞬間――

視界から、アラリックが消えた。


そして、雷鳴のような破裂音が鼓膜を覆うと、体が粉々に崩れ落ちる感覚が走った。


『は……? ドウシテ?』


リオライズは全てを見ていた。


マリゲータが罵倒を吐いている時、アラリックさんは微動だにせず、自分の持つ全ての属性魔力をレイピアに込めた。

足元から集まる土属性の魔力、彼の周りを回っている水属性の魔力。


そして——

右目から放たれる、温かい光属性の魔力がレイピアに集うと、目が追いつかないほどの、無数の連撃が奔った。


「くどい……それに言ったはずだ……“秒で終わらせる”と――」


光の星屑と小さな氷の結晶。

今までの記憶を写すような、輝かしい土の欠片が舞い上がり、アラリックさんはレイピアを鞘に納めた。


粉微塵となり、三つの属性に包まれるように跡形もなく、マリゲータとの戦いは幕を降ろした。


「大丈夫ですか? アラリックさん」


「…………問題ない。先を急ぐぞ」


返答が遅かった。

やっぱり、アラリックさん過去を見たあの時から、少しずつ感情が芽生え始めているのかも……俺も、頑張らないとな。


こうして――アラリックとリオライズは森を抜けて、学園を目指して走り続ける。

波乱を呼ぶネリカ達の戦いに、彼等は辿り着けるのか――

今日は短めですが、たまにはこういう日があっても良いじゃない。と思いました。

いつも2000字とかで、皆さまも読むの大変になると申し訳ないですし、本日は戦いを描きつつも休憩回として、お楽しみください。


次回もお楽しみに!

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