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Death Game: The Codex Chronicle(デスゲーム:ザ・コーデックス・クロニクル)後編

十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー


土、火、水、風の四属性をメインに、学園の闇に気付いた四人の生徒達。

外部の仲間との連絡は途絶え、絶望しながらも自分達で道を切り拓いていく。

そして、世界そのものに異変を感じた彼等は、歴史が全て眠る図書館へ赴き、三百年前の真実を知る——


《Death of the Academia》をお楽しみください

『“選別”って言っても、どう決めるの?』


青く長い髪を、ポニーテールにしたミルシェネアが、不思議そうに首を傾げた。

白を基調とする、水色のフリルのついた長袖ワンピースを身にまとった、今は水属性の神と謳われし聖女。


『それぞれが、持ちたい属性を選んでもらって、私達の魔力と同等の力を出せた人を、代行者に選びたいって思ってる』


『でも、他の人々が簡単に受け入れてくれるとは、思わないけれど……』


少女スズランの言葉に、懸念をぶつけたティアリス。

丁子色――赤みのある淡い茶色の髪におさげの一つ結びで、麦模様の半袖のティアードワンピースをまとった彼女は、土属性の女神と謳われる存在の一人だ。


『もちろん、強制はさせないわ。希望者を探して、その中から決めようと思ってる』


スズランは遠くを見つめるように言った。

自分たちがこの世界からいなくなった未来を思い描きながら——


『だから、折角なら……他の皆にも名前をつけてあげたいの。いつかこの世界が、美しいものだと気付いてくれるように』


そして数週間の時を経て、芽生えた命に一人一人、名が与えられていった。


運命の日は、確かに近づいていた——


選別を翌日に控えた夜、闇の神と呼ばれる《ノクトヴァール》は、一人静かに少女スズランのもとへ訪れた。


月のない夜空に、光を放つ流れ星が一つ。

二人は草原の小高い丘に並び、心地の良い風が吹き抜けて、ノクトヴァールが静寂の中、言葉を紡ぐ。


『なぁ、やっぱり”闇の神”って響き、悪役っぽいよな……もっと他に呼び方なかったのか? それに……闇属性って実際、何の役に立ってるか分かんねぇし』


柔らかく整えられたマッシュシルエットの髪。

その上部は、帷を閉じ込めるような漆黒に、下へと向かうにつれて深い紫が闇を象徴して広がっていた。

まるで世界の境界線を示すかのように——


瞳は宝石を宿すような、パープル色。

服は、少女スズランが新調してくれた時から、気に入って身に着けている、黒を基調とした淡い紫色の学園生徒の制服をまとっていた。


『確かに属性をくれた、お姫さんには感謝してるぜ? けど、実際復興には殆ど役に立たなかったし、いるのかなって不安になって……』


周りからの認識や、世界そのものから拒まれる闇。

しかし、少女スズランの考えは一味違った。


『確かに闇属性は、不遇な扱いを受けてしまうかもしれません。けれど、時代が進めば、闇属性でも優しい人間がいるという考えになって善悪が変わるかもしれない……』


『じゃあ。初代闇属性の俺が、優しい存在になれば良いってことか……』


『そう。期待しています』


【図書館最上階にて】

鮮明に綴られる古代文字の会話の一文。

図書館の番人である少女スズランが、世界が復活するまでの時の中で忘れないように、歴史がずっと語り継がれるように全てを書き残して逝ったのだ。


「そして、選別に参加した人間は、五十人ほど……恨みっこなしの選別が始まりました」


【選別が始まる大地にて】

"豊かな大地の広い草原で、五十人の少年少女が、神の代行者希望として、なりたい属性の列に並んでいた。


土属性に希望を出した者は九人。

火属性と水属性には、それぞれ八人ずつ。

風属性には土と同じく九人が集まり、闇属性を選んだのは僅か六人。

そして光属性には、最多となる十人が列を成していた。


年齢は、六歳から十歳にかけての参加者達が集まっていた。


『では、各属性を司りし者達よ……自身の代行者を見つけるべく、属性魔力を参加者に譲渡するのです……!』


少女スズランが、六人の神達に告げる。

新たな世界の誕生と、更なる素晴らしさを生み出すことを祝福するように。


チャンスは一度きり。

参加者は、自らが選んだ属性の神と向き合い、魔力をぶつけ合う。神が「心」と「力」を認めた者が、代行者として選ばれるのだ。


人数が一番多かった属性から選別が始まった。

光属性から行われた代行者決めは、一人一人眩い光の術を、テラリアに全力でぶつけて、その度に空が、更なる明るさを瞬間的に創り出していた。


きっと世界は明るい方向で進んでいくと、楽観的ながらも希望を持って選別を見守っていた少女スズラン。


選別が終わる頃には、空は茜色に染まり、草原の影が長く伸びていた。

スズランは小さく頭を下げ、全員に向かって静かに礼を述べた。


『皆、参加してくれてありがとう。今から七人で話し合って、選ばれし六人を明日のお昼には発表したいと思います』


しかし、選別が終わっても、誰一人笑っていなかった。

やがてざわつく声が風に混じり、草原は静かな緊張に包まれていく。


『どうしたの皆?』


少女スズランも、徐々に不安と恐怖に追いやられる。

そこに――火属性のフェルヴァーロと、風属性のウィリオールが、参加者達の心を落ち着かせるように一つの劇を始めた。


『選別で代行者になれなかった人は、燃やされる……のか……? 風の僕では、火に対抗できない』


深い緑色の長い髪に、細い三つ編みが両肩に二本ずつ下げている。

少女スズランが新調した衣は、風を纏うように軽やかだった。

淡い緑色を基調とした白い着物風な装いで、魔力を帯びながら演じる度に、ふわりと袖口が揺れ、美しく見えた。


『よっ! ウィリオール、選別の結果どうだった?』


次に現れたのは、火属性の神フェルヴァーロ。

黒く腰の長さまである髪、所々に赤く輝く髪の束が特徴的だった。


『まさか……君は僕を……僕を燃やしに!?』


迫真とも言えるウィリオールの言葉は、参加者達の不安を煽っていく。

意図に気付いていたフェルヴァーロは、そのまま構わず劇を続けた。


『フッフッフ……そうだ、選別に残れなかった貴様は燃やされる運命に……!』


そして、最後の言葉を言い切る前にフェルヴァーロは息を止める。

その光景に、参加者達は目を伏せる者、今にも逃げ出してしまいそうな者もいた。


しかし、次に聞かされた言葉で、一瞬にして安心が蘇る。



『あるわけが……ない!』


そして参加者達は一斉に目を見開く。

「どうして」「私達死ななくて済むの?」そんな声が、草原を包んだ。

劇を終えた二人は、真剣な表情で全員の目を見るように伝える。


『俺達は別に、選ばれないから失敗作とか、死んで罪を償ってもらう。なんてことは絶対しないし、させない』


『ここで、手を挙げてくれたことだけでも、十分素晴らしいことを成し遂げた。だから、誇りを持って生きてほしいと願ってるよ』


こうして、参加者五十人の不安は完全に消え去った。

風に揺れる草の香りの中で、少女スズランは自然と笑みをこぼした。

こんな風に、誰かが支えられる世界ならきっと——"


【図書館最上階にて】

アラリックが、古代文字を読み進めていると、“ある一文に目が留まる”


「ねぇスズランさん……」


「なんでしょう……?」


「予想はしていたけど、初代代行者の名前に、“ティオルとクレヴァスがいる。これは、どういうつもりだ……」


光る天井に向かって、鋭くアラリックが睨みを利かせる。

驚愕したストリクスが、覗き込むと更なる衝撃が目に映る。


「それだけじゃない……アラリック。この名前があるということは……“」


指差す文字を読むと、《ルルナ・キュリア》という文字が並んでいた。

まだ、アーサーと結婚する前の性として記されていた。


二人の反応から、番人スズランは接触したことがあることを指し示していた。


「……おかしい……ルルナは、あの時死んで二代目の代行者が結成されたと聞いています。一体どういうことなの……?」


図書館の番人スズランも、困惑する出来事だった。

しかし心当たりのあったアラリックは、推測するように語り始める。


「僕の読みでは、ルルナ・キュリアという魂は死んだが、別の魂がルルナの体に宿り、活動している可能性はある……」


「もしそうなら、凄く良い人の魂が宿っていると思う。属性に目覚めて、呪いが発動し、何も出来なかった僕に手を貸してくれた」


ストリクスは、第二授業後に治療を施してくれた張本人で、恩人と呼べる人でもあった。


「ルルナが死んですぐ、別の魂が宿ったなら、現在のルルナの体が存在しているのにも納得が出来る」


「それに関してもしっかりと残しました。御二人には余すことなく打ち明けます」


古代文字が再び光始める。そして、本にはこう書かれている


【平和の大地にて】

“代行者の六人が決まり、その者達は側近として働き、世界を守る為、素晴らしい物に変えて行く為に奮闘していた。

光属性の代行者クレヴァス・リュエン闇属性代行者ティオル・マキリス

土属性の代行者リーテ・ドゥラン火属性代行者ルルナ・キュリア

水属性代行者ウルリナ・ミオラ風属性代行者ミトナツ・ヒナリ


この六名も、最初は全然笑わなかった。選ばれた時や、劇を見ていた時は柔らかったはずの顔も、硬くなってしまっていた。


そして事件は起きる――


代行者が決まってから、数日後。

選ばれた六人も、選ばれなかった人達も徐々に打ち解け、穏やかな日々を送り始めていた。


少女スズランが、緑をゆっくりと歩き芽生えた命を見て、絶望から一輪の花とここまで発展したことに感動していた。

温かな太陽、気持ちの良い風。

嬉しさを体現しようと、舞のステップを踏んだ瞬間、焦る声が聞こえた。


『大丈夫ですか!? ノクトヴァール様、しっかりしてください!』


ティオルの声だと分かった瞬間――無我夢中で聞こえた場所を目指して走り始めた。


「何も起きないで」「無事であって」と、ひたすら願いながら足を動かす。

息が上がって、涙が出そうになりながら森の中へ入ると、座り込むノクトヴァールの姿と、背中をさすって、顔を覗き込むティオルの姿があった。


『どうしたの!?』


『ノクトヴァール様が、急に体調を崩されて……』


『貸して!』


少女スズランは、幾千とある魔力の中から、全てを浄化する魔法をノクトヴァールにかける。


『ティオルは、民の避難を最優先に、他の神と代行者を連れてきて!』


『わ、分かりました……!』


指示を出す間も、術を送り届けて緩和されるどころか、苦しむ一方だった。

そして、途切れながらも、ノクトヴァールは必死に声を振り絞る。


『なぁ……姫……さん。俺はこの世界に生まれて……あんたに属性魔力を分けて……もらって……幸せだったぜ……』


「諦めろ……」と言われているように聞こえて、涙が頬を伝った。

そしてノクトヴァールは、闇のオーラに包まれ、禍々しい爆発とともに、衝撃で木々に思いっきりぶつかった。



意識をそのまま失い、目が覚めた時には、代行者と五人の神達がノクトヴァールを助けようと戦っていた。


『ノクト……ヴァール…………皆……』


痛む体を堪えながら、ティオル達の元へ歩みを進める。

全ての責任を、押し付けてしまった罪。長い時を生きていたのに、異変にすら気付かず呪われた姿に変えてしまった罪。

全てを償う為に近づくと、ティオルが何かを叫んでいた。


そして、目の前に大きな太刀が振られて、そのまま為す術なく命を落とした。“


古代文字の光が収まり、図書館の番人スズランは、呪われし姿となったノクトヴァールの容姿を語り始める。


「変わり果てた彼の姿は、山のように大きく、巨大な禍々しい太刀を持っていました。次に目覚めたときには、体はなく魂としてこの場所に……」


アラリック達の善悪の見方は、話し終わる頃には全て変わっていた。

そして、少女スズランが死んだ後の世界を誰かが描き、残された書物が存在し、二人は目にすることになる——

最後までご覧頂きありがとうございました

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