Death Game: The Codex Chronicle(デスゲーム:ザ・コーデックス・クロニクル)中編
十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー
土、火、水、風の四属性をメインに、学園の闇に気付いた四人の生徒達。
外部の仲間との連絡は途絶え、絶望しながらも自分達で道を切り拓いていく。
そして、世界そのものに異変を感じた彼等は、歴史が全て眠る図書館へ赴き、三百年前の真実を知る——
《Death of the Academia》をお楽しみください
「まず初めに、この世界で神という存在がいつ出来たのかについて……お話しします」
すると、おそらく話す場所を指し示すように、淡く光り始めた。
「かつて人類は滅び、灰となり闇に包まれた世界を、綺麗な緑と満開の青空、気持ちのいい大地と、命が炎のように灯す。そんな素晴らしい、光で照らす世界にしようと、私は突如目覚めました」
古代文字には綴られている。
“かつて一人の少女が、この世界へ降り立った時――
灰となった何も残らない闇の世界で、誰の力も借りず生き抜いたと言われている。
地面につくような黄色の長い髪に青い瞳。
ボロボロのワンピースを纏った彼女は、訳も分からないまま人を探す。
目覚めてすぐは、腐りきった食材や瓦礫の破片を口にして、何とか時を過ごしていた。
歩いても、歩いても全てを失った大地しか残されていなかった。
人間なども存在すらしていない、ただ骨が幾千と転がっているだけだった。
そして、何日歩き続けたか分からない。
気が付けば、足から大量に流血し、その場に勢いよく倒れ込んでしまった。
重い瞼を必死に開けて、辺りを見渡す。
それでも、ただ灰色の世界しか映らなかった。
少女が諦めかけた、その時――
目線の端で、輝きを失うことなく靡いている一輪のスズランだった。
静かに、自由に揺れるスズランに、体を這って手を伸ばした。
菊に人差し指が触れて、そのまま抱きしめるように、ぎゅっと握る。
そして、今まで発さなかった言葉を初めて紡いだ。
『貴方の名前は何て言うの? 私も同じ名前が良いな……』
いつか自分に、光と希望をくれた花と同じ名前をつけれるように願いながら、少女は再び歩き始めた。”
古代文字を一通り読み終えたアラリックが、天を見つめて彼女の声を待っていた。
「それから、気付かぬ間に足の傷が治っていたり、喉が渇いて水が欲しくなった時。私の隣にいてくれたスズランと、一緒に綺麗な水を復活させて飲んでみたり……」
彼女の中で思い出されるのは、スズランを拾った帰り道に足が元通り綺麗になっていたこと。
喉が渇いて近くの川へいくと、殆ど干上がった状態から一枚の花びらが落ちると、水が噴水のように、噴き出して一気に綺麗な水が広がっていった。
「こうして、少しずつではありましたが、毎日地道な復興を続けて私達は、人類を復活させられる地点まで到達したのです」
“灰の大地に、仲間のスズランの種を一つ植えて、水やりをした日々。
廃墟となった街を歩き回り、三日三晩食料の種や、生活に使えそうな材料をかき集めた日々。
そして、何年かの月日が経った。
少女スズランは、魔力に目覚め水を持ってくるのも、指で円を描くように動かすと、大きな水の玉がその場で形を成して、意思を持つように自分について来てくれていた。
いつしか木々も復活し、今までまともにお腹を満たせなかった食料も、栗や胡桃といった木の実類が復活し、一口何か食べたいと思ったときに、食べやすかった。”
「そして、世界に青空を復活させたことで、人間にも同じ術を施してみようという考えに至ったのです」
再び文面が一部光り、アラリックとストリクスは少女スズランの歴史を除くように、続きを読みあげる。
“世界の歴史を作るように、緑は穏やかに靡き、青空と海は共鳴するように、綺麗に美しく、輝いていた。
そして少女スズランは、一つの骨となった人間の頭に手をかざして、静かに唱える。
『どうか、この者に新たな命をお与えください……』
骨が眩い光に照らされて少女は目を細めた。
しかし、現実は非情で簡単には行かなかった。
光は徐々に力を失い、しっかりと見るも変わらぬ骨が一つ残されていただけだった。
少女スズランは、毎日試行錯誤を続けた。
何千、何万と術を施し、時には諦めて魔力向上の鍛錬に、一日を費やした日もあった。
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かくして、彼女は数え切れないほどの魔力を手に入れて、その日はやってくる——
『失われし命よ。スズランの名の下に、全ての願いを聞き届け、新たな生命を与えよう……《——ヴァナリス・スエリオル》
骨を中心に、淡い光の魔法陣が出現し、幾千の蛍のような輝きを放つ小さな玉が宙を舞い、頭の骨を包み込むように、全身の形を創り出した。
そして、新しい扉が開かれるように、衝撃的な光景が飛び込んでくる。
麹色の短い髪に、小さく吐息を立てて眠る、自分と同じ少女の姿だった。
その姿を見た少女スズランは、口元を抑えて感動して涙を流す。
『ようやく……二人目の人類がこの世界へ降りっ立ったのね』
古代文字の光が消え、再び番人スズランは、あの日を語る。
「そして、目覚めた少女を“エラリア”と名付けました。それから二人で遺骨を探して、最終的に私を合わせた七人の少年少女を創り出したのです」
六属性の神についてのページが開かれて、文字が光り綴られていた。
“少女スズランは、膨大な時間をかけて六人の人間を復活させた。
しかし、生き返った人間には記憶も名前も無く、一人一人の名前を彼女が差し出した。
今、神として伝えられている彼女等の名前。
光属性の女神闇属性の男神土属性の女神
火属性の男神水属性の女神風属性の男神
そして、名前を付けるときも、本人の意見を取り入れながら、少女スズランは名付けた。
そして、一輪のスズランと過ごした年月で積み重ねた、各属性の魔力を六人に譲渡して、この世界で属性の物語が始まった“
「そこから発展は早かった。光の力で、灰色だった世界に色を戻し、大地の力で土地を復活させ街を作った。そして、自然と舞い降りてくる命。私はそこで六人の代行者を創ろうと思ったのです」
古代文字には綴られていた。
“体の年齢が十歳くらいになった頃、少年少女の七人の他にも、一つ、また一つと命が自然と咲いてくる。
少女スズランは、そこで六人に一つ提案をした。
『皆聞いて! 最近新しい命が降りてきている。そして、貴方達もいつ事故が起きて死んじゃったりするか分からない……』
こうして彼女は、自分の考えが届くように、必死に声を上げる。
『だから、代行者を創って、貴方達の身に何が起きても大丈夫なように“選別をしましょう!”』
しかし、この選別が後に絶望を招き、外側の世界が綺麗でも内側の見られざる世界は闇に覆われることになってしまうなんて、この時はまだ知る由もなかった。“
そして、明かされる六属性の行く末……
選別に最後まで残った六人の正体と、他の人間の結末とは――
次回後編でラストの歴史を飾ります。よろしくお願いします




