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Cursewalker: First Step of the Oath(カースウォーカー:ファースト・ステップ・オブ・ザ・オース)

十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー


土、火、水、風の四属性をメインに、戦う生徒達と対峙する冒険者達。

アーサー達の視点から語られる、”あの日の真相”とは……

そして、記憶持ちの生徒が懸念している、事態の真実も明かされる――


《Death of the Academia》をお楽しみください

アーサー達が教壇に立つと、グラン達は残りを彼らに託すように、フラーナと教室を後にした。

教室に漂う、どこか冷たく張り詰めた空気。

アーサーは、生徒達に悟られぬように、明るい声を張った。


「じゃあ、まずは挨拶からかな。——初めまして私は{アーサー・ヴァレンティス}よろしくね!」


……返事はない。生徒達は、固く沈黙したまま、警戒しているようだった。

異様な空気に胸をざわつかせた。だが、リゼルドの言葉を信じて、アーサーはアラリックの席の元へ向かう。


「初めまして!君がランキング一位の生徒さん?」


「……それが何か」


彼の話す声は、とても冷たく不安を抱えて戦っているように思えた。

少しでも早く、打ち解けられるように一つの飴をポケットから取り出した。


「いやずっと、こっちを見てたから、どうしたのかな〜って。良かったら飴ちゃんとかいる?」


「……要らないですけど」


その瞬間、肌で脳で直感的に、彼から悍ましい殺気を感じた。

空気が張り詰めた瞬間、飴を持っていた手を強く払われ、左肩に乗っているルルナにレイピアが突き出された。


即座に、左肩を守るようにして、アーサーも剣を抜く。金属がぶつかり合う鈍い音が、教室を響き渡り、窓ガラスは震えた。


この子、やっぱりリゼルドの言った通り、少し変だ……まだ、信用できないのは分かるけど、よりによって、どうしてルルナを……!?


怒りが込み上げ、声が少し荒くなる。


「……ごめんだけど、それだけは許容できない」


アラリックの瞳が、光るように鋭く睨み、座ったままレイピアを突き立てていた。

その瞳は、何かを訴える目で見つめて――


「……では何故、この生き物は人間でありながら、その姿を見せないのです……?」


教室に、一瞬、氷のような沈黙が落ちた。


アーサーは、ルルナの本当の姿に誰も気づかなったことで、絶望していた。誰に言っても分かってくれなくて、理解されなくて……。でも、この子は、全てを知っているかもしれない……微かな希望を胸に、思い切って問いかける。


「——っ。君は……君は、この子の正体が分かるの?」


「……は? 分かるも何も、その子の首飾りに違和感があったから」


あまりにもあっさりとした答え。アーサーは心の底から嬉しかった。

そして、彼が確実に異変に気付いていると確信したのは、第二授業での、ペアの振り分けの時――


リゼルドが、アラリックという呼び名を口にして、名前が分かった。

最初のペアが組まれる時の確認で、その言葉を放った。


「大丈夫です。面白そうなのは変わりありませんし、”二人を除けば他は誰でも同じ”ですから」


その言葉に、ペアを決定する時点で、今まで真っ暗だった自分達の未来に、光が差したようだった。

一方、ティオルとクレヴァスは、一瞬、眉を細めて鋭い目つきに変わっていた。


そして、リゼルドは無事にアラリックと第二授業のペアになり、俺はストリクスという、無属性の青年と第二授業を行うことに決定した。


自分は、ティオルの汚染の呪いで無属性扱いになり、彼は節目の年に属性に目覚めず、無属性が当たり前として生きてきた生徒だった。

似たもの同志かは分からなくても、全てを打ち明けられるもう一人の存在だと、そんな気がしていた――


第二授業は、表向きにはⅡ組との対人戦に向けた強化の為の手合わせとして、伝えられている。しかし、実際のティオル達の目的は、選別のことしか頭にないのだ。だから、外の人間の本当の思想を伝えて気付かせる。

例え――どんな罰や呪いが、再び襲い掛かろうとも……


ストリクスとの鍛錬は、属性への目覚めを目的とした手合わせ決定した。

昔どこかで手にした、属性の蝶を出し彼に預けた。宝石のように輝きながら、舞うルビー色とオレンジ色の二匹の蝶を、手渡した。


そして、希望に向かって最初の一歩を踏み出すように、そこから剣を交えた実戦を行った。

顔に出過ぎていたのか、ストリクスにも案外早く何か隠していると勘づかれた。


「アーサー。どうして君はそんなに、不安そうな目をしているの? “何か隠してる?”」


「……もし君に属性が目覚めたら、その時に話そう」


「不安になる程、悩みがあるのは否定しないんだね」


そんな他愛もない雰囲気で話していた時、土属性の蝶がストリクスに力を貸すように、レイピアと融合した。


リゼルドの、どこにでも繋がる扉で、洞窟のフィールドで手合わせをしていた。そして、稀に現れるギミックを利用しながら戦うという戦法も、覚えていたストリクスは、地面から黒いラインが走り、目で追うと一つの紋章が現れていることに気付く。


ストリクスが、目にも止まらぬ速さでレイピアを一閃――

かすり傷を負ったアーサーは、そのまま土属性となったストリクスの術に落ちてしまった。


「これは……」


砂薔薇のような術に体を包まれ、中で花びらが巻き付くように両腕を拘束されたが、ストリクスの術が荒削りだったこともあり、冷静に剣を躍らせて砂薔薇から脱した。


そして、土属性としての一撃が失敗したことにより、ストリクスは酷く落胆し、土の蝶は割れるように砕け散った。


絶望して膝をつくストリクスに、自分が“属性持ちの夢”を壊しながらも諦めてほしくなくて、立ち上がってほしい一心で、声を張った。


「――諦めるな!まだ諦めちゃ駄目だよ。確かに、土属性は違ったかもしれない、でも火属性の子はまだ生きている。最後まで諦めずに立ち続ければ、必ず良い事が起きるから」


そして、ストリクスの方へゆっくりと羽を広げて飛んでくるルビー色の蝶を見た瞬間、彼は少し涙ぐみ再び剣を取る。


「無属性のまま終わりたくない——!」


その決意は、しっかりと形になり洞窟内は熱を帯び、ストリクスの体を炎が纏い、青い瞳も火を象徴する赤色へ変わった。


ストリクスの進化した姿に、アーサーは感動した。一つ一つの動き、威力も無属性の時とは比べ物にならない程、美しく舞うように剣を振るっていた。


「……良かった。君は本当に”素晴らしいよ”」


無属性だった時の過去を焼き払い、新しい自分としての決意の一撃をアーサーは真っ直ぐに受け止めた。


そして、アーサーは青白い光を纏わせながら、傷を回復すると、自分の過去を話す約束をしていたことを思い出し、一呼吸おいて自分も覚悟を決めるのだった――

最後までご覧頂きありがとうございました

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