Death Game: Battle Coursework(デスゲーム:バトル・コースワーク)
十二人の生徒が、命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー
土、火、水、風の四属性をメインに、街に群がるモンスター達を討伐し授業をクリアして自身の評価を上げていけ!
生き残るのは真の才能がある人間のみ
誰が生きて誰が死ぬのか完全オリジナル作品
《Death of the Academia》をお楽しみください
こうして——アラリックを先頭に、子供達の避難と地形の確認、予め分かっていたのかヴェイル組は、モンスターの住処を探して飛び回っていた。
そして気づけば日は暮れ始めて、綺麗な夜空が広がっていた——
「アラリック殿、遅くまで子供たちと遊んで頂き、感謝ですぞ」
「当然の事をしたまでですよ。この後、都市に戻って他の生徒達と合流します。ここは、外から目立つので二重の壁を作り、必ず避難所は責任を持って私がお守り致します」
こくりと、ゆっくり頷き、長老は柔らかい表情でアラリックを見た。
「都市内にある施設や食料は、好きにお使い下さいですじゃ」
避難所を出たアラリックは、腰に預けていたレイピアを抜き左手に宿った魔力を注いだ。
「これで知性があっても、なくても自然な石の形を作り出せるはず」
レイピアを掲げて、至る所に欠けている大きな石で、アズローラの民を隠してアラリックは都市の方へ走って行った。
それにしても子供の世話は大変過ぎた……遊び相手になるだけでここまで疲労が溜まるとは——
「アラリックさん、帰ってきました」
「ようやく合流か」
先に帰っていたヴェイル組が、アラリックの姿を見て最初に声を上げたのはレンリーだった。
アズローラへ無事に帰ってきたアラリックは、『ただいま』も言う事なく本題へ入る。
「——それで、そちらはどうだった」
「特に異変は無し。他の街の人に聞いても『そんな物見ていない』の答えだけだったよ」
「それらしい群れの巣も無かった」
「やはり……か」
「心当たりでもあるの?」
「いや何でもない。取り敢えず見張りは、交代制で、僕は疲れたから一番最初に寝させてもらう」
「んだよ……それ」
それから下の順位のソニントを先頭に、ローテーションで夜が明けるまで見張りを続けた——
“皆さ〜ん!おはようございます。いい朝ですね〜支度が整った者から広場の外壁まで集合する事”
集合時間はいつも通り八時にかかり、生徒全員、速やかに広場へ集まった。
「さぁ、早速授業の詳しいルールを説明するぞ」
「今回の授業の内容は、六つのエリアに分かれて、自分達のエリアのモンスターを討伐することだ……」
「一つ嬉しい情報をお届けするとなると、今回襲撃してきたモンスターはそこまで強くないってことだ」
「ちょっと待ってください……!グラン先生達はモンスターの姿を目視したって事ですか?僕達があれだけ探しても見つからなかったのに……!」
声を大きくして、驚いたようにゼフィリーは、グランに言葉をぶつけた。
「気持ちは分かるが今は抑えてくれ。そして、いち早くモンスターの討伐に成功した者には、シークレットチャンスが与えられる」
「シークレットチャンス?」
「”シークレットチャンスとは”II組専門の風と水属性の力を持つ先生の、弟子的存在と対峙して、その人に勝利する事が出来れば力の源が譲渡されるというルールです」
「負けたら減点って事ですか?」
「いやその時は白紙になるだけで、シークレットだからいつでもチャンスは巡ってくる。周りの頑張り次第では、もしかしたら——」
不気味な笑みを浮かべるグラン。でも、生徒達はこの時どんな意図があるのかを知る由も無い——
「全員の出席を確認。こちらはいつでも準備万端です」
「ではこれよりI組初の授業を始める。西がゼフィリー、レンリー、ソニントの三人のエリア。
そして東がヴェイル、アラリック、ストリクス、三人のエリアとする。
ここで脱落者や、死人を出すつもりは無いので、俺が危険だと感じたら、すぐ助けに入るから安心しろ。それではお待ちかね、お前達の実力を存分に見せてみよ!」
生徒達の足元にポータルの白い魔法陣が現れて、それぞれの六等分されたエリアに転送された。
“そして今回不正が起きないように、特殊な結界で他の奴らのエリアには侵入出来ないようにしている。俺の結界は入れたい者を入れて、入れたく無い者はとにかく除外する。でもそうしたらモンスターが現れないって? 大丈夫、君達の隣にちゃんといるから”
「キェェェ!!!」
「——ッ」
ゼフィリー単独部隊では、緑色の大きな翼に黄色の爪、空を舞う大きな鷲が、くちばしを開けて喉の奥から、光を纏った竜巻のような、閃光が放たれた。
ゼフィリーは負けじと自分も魔法を放ち、互いにぶつかった術は、白濁した煙で包まれた。
「……このままやっても、魔力切れでやられる。何か方法を、考えないと」
必死に思考を巡らせるゼフィリー。
そして、静かに分析を始める。
「昔、僕たちの一族は皆、火属性の家族だった。そして、このモンスターも同属性だ。
II組ではなく、I組に振り分けられた理由……」
杖の先端が、小さい炎が舞い上がる。そして、ゼフィリーの考えは確信へと変わった——
「やっぱり、僕も火属性の力を秘めていたんだ」
ゆっくりと空へ飛び、杖を構えて風と火の魔法を、臨機応変に使って戦う自分の姿を、頭の中で繰り広げる。
「キェェェェェ!!」
——その時、鷲は大きな咆哮を上げて爪を立てながら、ゼフィリーへ突進してきた。
しかし、ゼフィリーが風の閃光魔法を放ち、鷲の体は遠くへ飛ばされる。
「この魔法は、君も初めて見るでしょう?」
杖に巻かれていた、布の色が緑から赤色へと変化して、そのまま閃光が放たれた。
赤く燃え上がる閃光は、まだ荒削りで威力や手応えも、そこまで感じられなかった。
「少し浅いか……でも魔力の消費も少ない。時間が掛かっても自分の成長の為に、しっかり倒さないと——」
そしてレンリー単独部隊では、水色の大きな体に、鋭い牙を持った虎の魔獣が立ちはだかっていた。
気配に気づかなかったレンリーは、グランの話を聞いた直後、自分とは違う影がある事に気付いて初めて存在を認識した。恐る恐る上を見上げると、ヨダレを垂らしてお腹を空かせている様だった。
「あ、あの……僕を食べても、お、美味しく無いですよ……」
「グルル…ガゥッ!」
レンリーの言葉も虚しく、虎は問答無用で捕食しようとした
その時——音もなく、虎の前脚は輪切り状態で血の海が一瞬にして広がる。
「言ったはずだぞ。人間を食べても美味しく無いと……どうやら、躾が必要なようだ」
大人びた、レンリーの声がエリアの中で冷たく響く。
顔には黒い紋様が現れて、まるで別人のような目つき、人格、戦闘スタイルだった。
「ギギ……ッ、ガルル……!」
虎の魔獣は、輪切りにされた自分の前脚を再生し始める。
「はぁ……面倒くせぇな。折角すぐ終わると思ったのに…!
まぁ良い、主人の意思とならば従うまでだ——」
遂に実戦へと駒を進めたI組生徒。モンスターを目の前にした彼等は、真っ向勝負や頭脳を使った慎重な戦い方で、成績上位を目指していく。その中でも一人の生徒が、圧倒的な強さを奮っていた——
次回はある人物、ラストにも言った1人の視点を当ててお届け予定です