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Death Game: Light of Salvation(デスゲーム:ライト・オブ・サルヴェイション)

十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー

土、火、水、風の四属性をメインに、二つのクラスに振り分けられた彼等は、”空白の入学前の記憶”を取り戻した、青年達の契約の下、対人戦に駒を運ぶ——

“何が真実”で”何が嘘”なのか、生徒達は真相を探るべく戦っていく——

《Death of the Academia》をお楽しみください

アラリックの体を眩い光が纏い、リオライズの体を淡い緑色の風が纏った。そのオーラは次第に大きくなり、二つのオーラが重なる瞬間を合図に、最後の粛清の手合わせが始まった。


大地を抉る衝撃が荒野を突き抜け、爆風が岩肌を引き裂き、土煙が空を覆った。

地面は裂け、砕けた岩片と土砂が激流のように足元を攫い、二人の武器が白い閃光を放ちながら火花を散らした。


長く戦っていたからか、他の生徒達もアラリック達のエリアへ集まって来ていた。ヴェイルはゼフィリーを背に担ぎながら、アラリックの雰囲気の変化に驚愕した。


「なぁ……アラリックの、あの姿ってよ……」


レンリーに抱えながら、戦況を見届けていたストリクスも、同時に気付く。


「そうだね……あの感じ、普通の生徒の域を超えてる魔力だ……」


レンリーが好奇心で、紋章を顔に宿すと星屑のような光が舞い、術の発動を止められた。


「す、凄いです……アラリックさん。俺もほしいなぁ」


しかし、記憶持ちの二人にとっては、最悪な状況とも捉えていた。

ここまでの魔力の保持者を、契約があるとは言え、奴らが消さないわけがない……。

内心、鼓動が早くなり焦る様子で顔を見合わせていた。


右目の瞳が、更に強く輝き、光を纏わせたレイピアが三連撃を繰り出した。


「クッソ。流石に分が悪いっすかね……」


右肩、左の脇腹、とどめの真珠をなんとか、籠手で防御した。

焼け焦げるような鈍い音が響き、籠手の隙間から白い蒸気が吹き上がった。しかし、リオライズは、どことなくアラリックとの手合わせを楽しんでいる様子だった。


そして、負けじとアラリックの連撃技を真似るように、風のスピードを巧みに使い、五連撃を繰り出した。


金属がぶつかり合う鋭い音が、五度、荒野を切り裂いた。

アラリックは、リオライズのスピードに追いつくように、籠手が出されるタイミングと場所を読んで全て弾き返した。


「うっそ……!全部抑えるんすか!?」


弾かれた衝撃に体勢を崩したリオライズの胸元。無防備に晒された真珠へ、アラリックの一閃が稲妻のように突き刺さった。


バキバキと真珠が音を立てて、光を纏うレイピアの大きな閃光に体を包まれ、大きな爆発音とともに、宙に舞うリオライズは、体が軽くなり温かく感じた。


本当に感謝してもしきれない程の恩を貰ったっすね……学園に入った時は、Ⅰ組の人達と仲良くできるなんて考えてなかったっすもん。この学園は間違ってる……それに抗おうとする俺達は、“何も間違ってない”


そのまま、リオライズは気を失って、物凄いスピードへ地面に落ちていく。

アラリックが、彼に向かって手をかざすと、光の大きな華がクッションのように、リオライズの体を預けた。


リオライズの体の傷は、全て消えていた。上半身の制服は完全に破け、素肌をあらわにして、残っているのは壊れた真珠の首飾りだけだった。


そして、アラリックも再び右目の瞳を元に戻すと、魔力が小さくなり、暫くの沈黙のが流れた後、グランの声が荒野に響いた。


「この勝負をもって《イレギュラーデュエルマッチ》は――Ⅰ組の勝利だ!」


レンリーが助走をつけて、アラリックに抱きついてきた。


「凄いっす!アラリックさん。本当に勝っちゃうなんて……! 皆さんもやりましたね!」


純粋無垢なままでいるレンリーが、こちらを向いて満面の笑みで見据えていた。今まで、重く受け止めていた二人も、こういう時だけは笑っても良いと感じ顔を見合わせて輪の中へ入った。


「レンリー、あんまりはしゃぐと、アラリックに嫌われちまうぞ」


「そう、そう。アラリックは短気だからね」


ヴェイルが背に担いでいた、ゼフィリーも目を覚まし、状況を尋ねる。


「デュエルマッチは……終わったの?」


「おう!起きたか、ゼフィリー。勝ったぜ、俺達のリーダーが!」


アラリックは鼻先で笑い、レイピアを静かに鞘に収めると、グランの方へと鋭い視線を送った。


一方遠くから、結末を見届けていたゼオンと、エニアル、ネリカは悔しそうな表情を浮かべながら、歓喜に包まれるⅠ組の姿を羨ましそうに見つめていた。


「まだ、第二戦がある。だから、次もきっとチャンスは巡るよ」


「……そうだな」


「次の進化の欠片を早く見つけたい――」


ネリカが二人を激励するように、ゼオンとエニアルは前を向いて、教師達とともにいる、サイラスの元へ合流していくのだった——





かくして、一戦目の決闘は幕を下ろし、生徒達は学園へと帰還した。


「ではこの後、次の決闘の準備を行う。各々好きなことをして、過ごすと良い……。リノ・ネリカは、リオライズを部屋へ置いといてやれ」


「分かりました――」


そして、Ⅰ組とⅡ組の生徒達はそれぞれ反対の方向へ歩き出した。

水浴びをしたり、デュエル戦を振り返ったりと、それぞれ部屋で次の指示を待っていた。

数時間後――記憶持ちのⅠ組三人が集まり、新しい情報の交換を行っていた。


「今日は、特別に俺の部屋で情報を確認する!」


「何を張り切っているのやら……」


アラリックが、ヴェイルの謎の興奮に呆れる様子を見せる中、ストリクスは、死人のような瞳をして、まるで未来でも見ているかのように、遠くを見据えていた。


「おーい、ストリクス。大丈夫か?」


ヴェイルが、ストリクスの顔の前で小さく手を振ると、我に返ったように、瞳に光が宿った。


「あ……ごめん。大丈夫だよ」


「ほんとかよ……まぁ、疲れたら横になって聞いても良いからな。お前が一番呪いに苦労しているわけだし……」


ヴェイルは腕を組んで、少しでも場の空気を盛り上げようとしていた。

互いに顔を見合わせると、和やかな雰囲気から一変――真剣な眼差しでアラリックが、口を開いた。


「では、初めにリオライズについてだが――」


「記憶に目覚めていたのは、あの子だけだったみたいだね。帰った時に全員の顔色を、ちゃんと見たけど誰一人、僕らと同じ気配の人間はいなかった……」


ストリクスが、陰で気配の察知と、リオライズやアラリックと同じく、呪いの発動がないだけで、学園の闇に、気付いている人間もいるかもしれないと観察していたのだ。


「でも問題は他にもあるぜ……アラリック。お前、“このままじゃ真っ先に殺されちまう”ってことだ」


リゼルドの加護のお陰なのか、ゼオンとのデュエルの最中、とてつもない魔力がアラリックを纏っていたのを、生徒や教師達を含めて全員目撃している。


「マリーナとヴィンティスだったか……? あいつらにも、早いとこ契約書を突き付けて脅しにかからねぇと……」


「……そうしたいのは激しく同意する。だけど、緊急事態だ」


勢いよく立ち上がり、そのまま飛び出してしまいそうなヴェイルを制止するように、アラリックが止めた。


「悠長にしてる時間はねぇぞ……!このままじゃ、お前は――」


「話を聞け……ヴェイル・イグニス」


鋭い目つきで睨まれ、ヴェイルは少し萎縮してしまった。そして、次に語られるアラリックの一言で、その場は一瞬で凍りついた。


「契約書に伴う、証人についてだが――“先程、水浴びから帰った際リゼルドとの連絡が途絶えた”」




「「…………は?……………」」


アラリックの言葉に、二人の顔色は、青ざめていった。


「どういう……ことだよ……」


「そのままの意味だ……契約書を作った際、視界の端で微かに揺れていた光が、忽然と姿を消した。つまり――」


アラリックの、言葉に続くようにストリクスが、現実を突きつける。


「ティオルとクレヴァスが動き出し、アーサー達は死ぬまではないとしても、刺客の手が迫る中で、記憶持ちのことは手に負えなくなった可能性があるってこと……」


ヴェイルは、ストリクスの言葉を受けて、明らかな矛盾点があるのに気が付いた。


「嘘だ……!もし本当にそうなら、時系列が合わない」


ヴェイルの声は震えた。それでも、必死に反論を続けた。


「ティオル達が、アーサー達を殺すなら俺達と別れてすぐ、攻撃を仕掛けるはずだ……!でもあれから、何度も俺達の前にリゼルドは姿を現してた!」


しかし、アラリック達の表情は険しく、ヴェイルは、その姿に膝から崩れ落ちた。


「そんな………ふざけんなよ、俺達を助けて勝手に逝くなんて……!必ず俺が、止めてやる」


アーサー達の身に何が起こっているのか――

そして、ヴィンティス達の陰謀に、リオライズが迫る。

これにて一度【疑惑と真実への対人バトル編 】は閉幕します。

次回、新章【一筋の光と降りかかる絶望編】を公開!

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