Death Game: The Final Duel(デスゲーム:ザ・ファイナル・デュエル)
十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー
土、火、水、風の四属性をメインに、二つのクラスに振り分けられた彼等は、”空白の入学前の記憶”を取り戻した、青年達の契約の下、対人戦に駒を運ぶ——
“何が真実”で”何が嘘”なのか、生徒達は真相を探るべく戦っていく——
《Death of the Academia》をお楽しみください
リオライズが、ラストデュエルを宣言するとアラリックは再び、右目の変化を試みようとした。
しかし、突然の頭痛と右目に激痛が走り、咄嗟に手で押さえて抑制した。
「――っ」
「だ、大丈夫っすか!?」
リオライズが驚いた表情で、アラリックを気にかける。
「問題ない……気にするな」
目を瞑って一呼吸置くアラリック。その姿に、リオライズは問いかける。
「このデュエルって本当に意味、あるんでしょうかね……?」
「ないと思う……絶望的に」
傍から見ていたゼオンは、何故か通じ合っている二人を不思議そうに見つめる。
一方でリオライズは、安心と柔らかな瞳で結論づけた。
「やっぱ……そうっすよね」
その言葉を合図に、二人は剣と籠手を交差させる。
激しい爆風と、火花が散り、ゼオンは体を吹き飛ばれそうになり、咄嗟に大剣を地面に刺して耐えていたが、あっという間に宙に舞ってしまった。
「クソ後輩……何回俺を吹き飛ばそうとすれば、気が済むんだ!」
しかし、ゼオンの声は届かない。遠くから見えたのは真剣であり、共通の人間と親しくするような瞳で見合っていた。
「――彼らは各クラスの1位の生徒です」
後ろから突然、誰かに捕まえられ、振り返ると空を飛んで助けてくれたヴィンティスだった。
「貴方が感じたように、彼らは共通点が多く存在する……」
「いや、ドヤ顔で心を読むの、やめろって……」
突然の登場に、少し引くような顔でヴィンティスを見ると、すぐに戦況に目を向けながら、疑問に思うことを口にする。
「それに共通点って、性格は微妙に違うし、持ってる属性も違うよな……? 一体、どこが似てるってんだ」
今のゼオンには分からない……ヴィンティスは、ほっと胸を撫で下ろし、リオライズを見る目は殺意にも近しい目をしていた――
そして、アラリックとリオライズは、激しい戦闘を繰り広げながら、対話を始める。
「凄いっすね、Ⅰ組の生徒は。記憶持ちが三人もいるんすから」
「その感じ、呪いの解除と、貴様も記憶を取り戻したのか」
「呪い……? でも、昔のことはさっぱり。思い出したのは、学園に入る前の面接ん時の記憶だけっす」
籠手を一突きするたびに、大きな風が吹き、それを避けるたびに、新しい攻撃の術が生成されていく。
アラリックの踏んだ足跡から、魔法陣が次々と出現し、刺々しい土と、澄んだ透明な水が編まれ、淡い光の螺旋が鋭い槍のように渦を巻き、リオライズの背を一直線に貫かんと迫る。
「……記憶だけ戻って呪いはそのまま……か。どういう、つもりなのでしょう……」
鈍い音と共に、螺旋の先端がリオライズの右肩を抉った。
膝をつくと、腕を伝って血が流れた。
右腕が、動かなくなる感覚を味わいながらも、左手につけた籠手で、螺旋を何とか破壊した。
リオライズは、ヒシヒシと痛む右腕を抑えながら、苦笑いでアラリックに問う。
「流石に可笑しくないっすか~? 同じ境遇の人間って、聞いたはずなんすけど。しかも地味に痛てぇ……」
アラリックの瞳が鋭く光り、まるで目の前の何かを排除すべき“敵”として捉えたようだった。
「まじで、落ち着いてくださいっす!俺は――」
必死に弁明しようと、焦る口調でアラリックを諭す。しかしアラリックは、リオライズの言葉と被せるように、言葉を紡いだ。
「それ以上喋るなよ……奴の攻撃が、また飛んでくる」
視線を左に映して、そのまま上空を見上げるアラリック。そこには、禍々しい雰囲気を宿して、こちらに手を伸ばしているヴィンティスだった。
「先輩は……? しかも何か良くない感じがする」
「……リオライズ・ニイタ。貴様に一つ問う……」
「な、なんですか……?」
再び、鋭い目つきと、形相でリオライズを睨みながら、アラリックが問いかけた。
「記憶が戻った時――呪いの解除はしていたか?」
沈黙の中、リオライズがヴィンティスをじっと見据えると、絶望の瞳へ変わっていく。
「そうだ……呪いの解除なんて、自分では出来たと思っていた。ヴェイルさんの、最初の怒りと、俺に抱いてた不信感は、記憶持ちじゃない可能性があったから……」
リオライズの中で、ひとつの線と線が繫がった。洗脳が解けていない、つまりは断片的に疑問に思っただけで、あの夜は呪いの発動まで届いてなかった。
その瞬間――体の奥から熱を帯びて、激しい頭痛と吐血が襲った。
「な……んだ……これ」
身体の奥底から燃えるような熱が這い上がり、胸を締め付けられるような感覚が襲い、膝が崩れ、喉が空気を求めて喘ぎ出す。
「ヴィンティス……貴方達にとって、大事な授業に手を出さないと言ったはずです。――それとも、口約束ではなく、契約書にして残すべきだったでしょうか……」
「やはり、グラン先生達が可笑しくなったのは、貴方達の仕業でしたか」
捨て台詞を吐いて、ヴィンティスはそのまま遠くへ飛んで姿を消した。
そして、リオライズは直感で、自分の属性魔力を体内に送り、ゆっくりと呼吸をしながら立ち上がった。
「なるほど……これが呪いっすか。お陰で、ちゃんと正気に戻れたっす……」
リオライズは、自ら抑制を施したことで、大事には至らなかった。
そしてアラリックは、剣を向けながら、リオライズに宣言する。
「リオライズ。貴様は自分の力で呪いを抑制したが、まだ少しだけ残り香を感じる……」
一瞬、言葉を探すように息を潜めた。
「なので、今から“粛清を行う“」
暖かい光の柱に体を包まれ、アラリックの右目は再び、オレンジ色のトパーズに輝く瞳へ変化した。
「温かい……これだけで、呪いが浄化されるような気がする……」
Ⅱ組との全ての決戦に幕を下ろしたら、リゼルド。貴方の話が聞きたい……向こうで何があったのか、そして、この力が何なのか……
光の影響なのか、リオライズの右肩の傷は癒え、軽く指を動かして感覚を確かめると、深く息を吐き、籠手を構えた。
「じゃあ、体も元に戻してもらったし、最後に手合わせして幕を閉じましょうかね……」
呪いの真実、アラリックの光の謎。
そして、II組担当教師の陰謀と、その狙いとは——
次回遂に、イレギュラーデュエルマッチ決着!
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