表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/115

Death Game: Little Fighter, The Skilled Mind(デスゲーム:リトル・ファイター、ザ・スキルド・マインド)

十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー

土、火、水、風の四属性をメインに、二つのクラスに振り分けられた彼等は、”空白の入学前の記憶”を取り戻した、青年達の契約の下、対人戦に駒を運ぶ——

“何が真実”で”何が嘘”なのか、生徒達は真相を探るべく戦っていく——

《Death of the Academia》をお楽しみください

結界内では、決闘前に喧嘩を売ったゼオンと、売られた喧嘩を買って出たアラリックだった。

ゼオンは、アラリックに視線を向けると、如何にも不機嫌そうな目つきで睨まれ、気まずい空気が結界内を覆った。

頭をくしゃっとして、ゼオンが思い切って声をかける。


「――さっきは……生意気言ってすみませんでした……」


会釈くらいで、頭を下げて謝罪する。その姿に、目を一瞬見開いたアラリック。しかし、すぐに普通の目つきに変わると、静かに話し始める。


「別に、気にしていませんよ……それにもう、勝敗は分かっていますから」


「……は?」


突然の宣言に、呆然とするゼオン。しかし不思議と説得力のある聞こえ方だった。


掛け声と同時……もしくは、少し早いと感じるほどの速さで、アラリックの攻撃が飛んできた。


水に変換された魔力が右手を払うように流れ、掌から閃光のように飛び出し、ゼオンの顔を勢いよく濡らす。


「うわっ――!」


不意を突かれ、目を閉じたその隙に、アラリックは地を踏みしめ、魔法陣を刻む。氷の刃がゼオンの真珠めがけて放たれた。


「ブレイド!」


冷気の気配に、ゼオンは叫び、大剣を構える。包丁サイズのナイフが一瞬で大剣に変わり、真珠を守る。

氷の砕ける音、衝撃で足が地を引きずる。ゼオンは目を拭い、アラリックを見据えた。


「なるほど……俺が風属性で、土属性じゃ無理だから、水属性で先制攻撃か……。本当は当たりたくなかったんじゃないのか?」


ゼオンの言葉に、きょとんとした顔を見せたアラリックが、嘲笑するように返す。


「何を言っているか全然理解できないんだけど、自分の立場――分かって言ってる?」


「はい、はい……そういう感じで来るならお好きにどうぞ。――じゃあ、俺の特大の一撃を受けてみろ……」


ゼオンが拳の中からビー玉サイズの風の玉を作り、そのまま大剣を強く握り、数十メートル離れたアラリックの突進するように地を駆ける。


「ただの遊びの産物か……それとも……」


距離を詰めて、風の玉を使い空を飛ぶ。そこから魔力の籠った大剣をアラリックめがけて振り下ろした。


「はぁぁぁぁぁ!」


アラリックは小さくため息をつき、幻滅したような目を向けた。

そのまま爆風の衝撃で結界内は白煙に包まれた。

一瞬にして、静寂が訪れる。


「有り得ない……この攻撃を――止めた……?」


煙が晴れ、アラリックの姿に、ゼオンは絶望と驚愕に目を見開く。


「やはり……子供のお遊びは疲れますね」


制服の袖は裂け、素肌があらわになっていた。それでもアラリックは、左手ひとつで大剣を止めていた。

そして、表情を変えることもなく淡々とゼオンを見据えて話していた。


「アル・ブリザード……」


アラリックの右手から冷気が渦を巻き、鋭い氷の雨がゼオンに向けて放たれた。


「――っ」


ゼオンは大剣を解除し、勢いよく地に足をつく。アラリックの放つ術を再び、弾きながら距離を詰めると、レイピアと大剣が重い鉄のような音を立てて交差し、火花が散った。


「俺の大剣に比べて、その細いレイピア……このままじゃ折れちまうんじゃねぇの?」


「君さ……子供で生意気な性格が一番嫌われるから、辞めた方が良いと思うけど……」


あまりの空振りなアラリックの発言に、思わずゼオンが、発狂する。


「あぁ!お前にだけは言われたくねぇ!」


「別に君みたいに、煽ってるつもりもないし、事実しか言ってないんだけど……?」


ゼオンは、悟った。“こいつは、無自覚で人の精神を平気で砕く人間だと……”

“人の心を持たない化け物だと”


「もういいかな……?子供のお遊びに付き合ってあげられる程、暇してないから」


相変わらずの、見下しっぷりに笑いすら込み上げて来るゼオン。

アラリックが宣言したその瞬間、ゼオンの足元に淡く土色の魔法陣が浮かび上がった。


大剣の重さを利用し、ゼオンは渾身の力でアラリックを押しのけ、後退する。直後、自分がいた場所の地面から鋭い土の刃が突き出し、空を裂いた。


「危ねぇな……そのまま終わるかと思ったぜ」


強がり言っても、接近戦に持ち込んでも地雷があるし、遠距離攻撃を仕掛けても、素手で止められる……他に何か方法は……


必死に頭を回転させ、これまでの戦いや決闘前の策を振り返る。そして――一つだけ、アラリックに勝てるかもしれない技が脳裏に蘇った。


「……これを受けたら、お前はただじゃ済まないかもな……」


「そう……何かやりたいことがあるなら、早くして。あんまり時間がないから……」


アラリックは異様に時間に対して、敏感だった。“子供のお遊びに付き合っている暇がない”とか少し焦りも感じていた。しかし、今のゼオンには真相を知る由もない――


「打ち放て……!風の閃光弾ウィンド・ライトスコール!」


大剣を掲げて、魔力がそこへ集中すると、結界内の天を覆うように、淡い緑色の魔法陣が展開された。

そこから幾千の閃光が地面に突き刺すように降り注ぐ。


「もう終わりだ。お前に勝ちはなくなったよ……」


白煙を突っ切ったゼオンの目に映ったのは、閃光を浴び、膝をついて蹲るアラリックの姿だった。


刹那――アラリックと視線が交わった瞬間、何かが弾けるように眩い光が視界を覆い、ゼオンは爆風に飲まれ遠くへ吹き飛ばされた。


「何だ……!いきなり……」


点滅するような目を、ゆっくりと開けて状況を確認すると、先程までの姿とは見違える程、温かく柔らかな光に包まれ、どこか神秘的な美しさを湛えた、アラリックが立っていた。


「閃光が……!」


そして――魔法陣も、閃光も、結界も、全てが消え去っていた。アラリック自身も、自分の身に何が起こったのか理解していない様子だった。


しかし、ゼオンはしっかりと見た。右目のブラウンの瞳が、オレンジ色のトパーズに輝く瞳の色に変わっていることを……


「これは、リゼルドの術……」


アラリックは、すぐに分析を始める。

窮地に立たされ、敗北寸前な自分を、助けてくれたのか。

それとも、何か向こうで新しい発見があったことを、伝える為なのか。


「分からない……どうして、今になってこんな力を……?」


綺麗な花畑に一人……まるでアラリックを見守るように、ルキウスは呟いた――


「いつ君に災難が起きても立ち向かって行ける、おまじない……まだ、卵の状態だけど、“その時が来れば必ず目覚める……だって君は――”」


何か最後に言いかけたルキウス。しかし、最後まで口にしたら、二度とアラリックと話せないかもという恐怖に狩られ、ぐっと喉を絞めて代わりにエールの言葉を贈る。


「頑張れ……アラリック――」


届くはずのない声が、アラリックに届いていた。“頑張れ”と言葉を聞いた彼は、レイピアを握り直してゼオンに向けた。


「こいつは、もしかして……本当に」


ゼオンは、思い当たる節があるように、意味深に感じていた。

そして――結界が解かれ、静寂の中に、ひとつの風が吹き抜けるのを合図に、大剣とレイピアは激しくぶつかった。


一撃、一撃に重さがあった。元から重かったのか、術しか受けていないゼオンには、分からなかった。

それでも、明らかに動きは早くなっていた。その証拠に、ゼオンの大剣は刃毀れを起こしていた。

ゼオンは一度距離を取って、深呼吸で自分を落ち着かせた。


「そろそろ限界かもな……でも多分、リオライズが……!」


自分のことを先輩と慕ってくれる、風属性の同じクラスの生徒の一人……ゼオンは、仲間を信じてアラリックを見据える。


「あのトパーズの瞳……リオライズが見たら大興奮するんだろうな……」


第一授業の時でさえ、あれだけ興奮していたリオライズを思い出した。

少し、元気をもらったゼオンは、一度大剣を元の大きさへ戻した。


「この距離なら、あと十、二十センチは欲しい所だな。――例え、ぶっ壊れても頼むぜ……」


剣に語りかけるように、話したらゆっくりとゼオンは、前進しながら風の魔力を使ってトップスピードでアラリックの元へ接近する。


「行けぇっ!!」


ゼオンは風を纏わせた剣を振り抜く。

大剣が牙のように伸び、アラリックを貫かんと疾る。


「その距離じゃ届かない。」


アラリックの冷たい声。


「届かせてやるよ……これが俺の切り札だっ!」


ゼオンの叫びとともに――


「ウィンド・ロングブレード!」


風の大剣が唸りを上げ、白き閃光爆ぜた。


「やった……のか……でも、手応えはあった」


結界が解かれたこともあり、倒したのかそうでないのか、分からなかった。

ただ、静寂の荒野の中で、時間が止まったように行く末を待っていた――




体感では長い時間が経過しているようだった。

――その時、大剣が再び、震え始めてゼオンは驚愕する。


「お前、まさか……!」


そして、大剣が大きく蹴り飛ばされて、アラリックは無慈悲に、ゼオンの首飾りの真珠を斬り裂いた。



そして、短い沈黙を置いた後、ゆっくりとゼオンが口を開く。


「お前も、無傷ってわけじゃなかったんだな……少し真珠が欠けているから」


アラリックを横顔を見上げて、少しだけ視界に入る真珠を見つめて話した。

そうすると、彼もしっかりと振り返り右目の色が元に戻っていた。


「君の大剣が伸びたのは、予想外だったけど第二授業で授かった力が、助けてくれたお陰で勝てた……」


続きを口にしようとした瞬間、何かに気付いたように空を見上げる。


「あれ、もう勘づかれてるんすか?」


「この声、リオライズ……!」


リオライズが空から降って来るように、華麗に着地を決めた。


「お疲れ様っす。ゼオン先輩……この人がそうなんすね」


「何がだ……それにしても、貴様がここにいるということは……」


「察しが良いっすね。その通り……今この時点で生き残っているのは――俺と貴方だけ……じゃあ早速ラストデュエルの幕を開けましょう!」


こうして、アラリックvsリオライズの記憶持ちであり、各クラスのランキング一位同志の激闘が始まる――!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ