Deathgame: Verity Stands Before You(デスゲーム:ヴェリティ・スタンズ・ビフォーユー)
十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー
土、火、水、風の四属性をメインに、二つのクラスに振り分けられた彼等は、”空白の入学前の記憶”を取り戻した、青年達の契約の下、対人戦に駒を運ぶ——
“何が真実”で”何が嘘”なのか、生徒達は真相を探るべく戦っていく——
《Death of the Academia》をお楽しみください
「……なんで、お前がここにいる……!ストリクスはどうしたっ!」
怒りに満ちて、震える声でヴェイルはリオライズに問う。
しかし、リオライズは嘲笑するように答える。
「あ~ あのお兄さんっすか? あの人は呪いの代償を全然緩和出来てなかったみたいで、“話になりませんでしたね”」
――物語の針は戻る。リオライズが学園を抜け出した、あの決意の夜へ。
結界が解かれ、Ⅰ組との接触が出来るようになったリオライズは、早速行動に出た。明るい日差しが差し込む窓を眺めながら、Ⅰ組の寮を通り過ぎると、ヴェイルが扉を守るように立っていた。
その目はまるで、復讐相手を見るような目で、リオライズをじっと睨んでいた。
「——初めまして、お初にお目に掛かります。——私、II組第一授業1位ランクイン……”リオライズ•ニイタ”と申します」
「……何しに来た。結界は? ……今まで一度も顔を見せなかったのに、どうして……」
明らかな動揺を見せながらも、威嚇するようにヴェイルは口を動かす。
「対人戦が始まる日が近くなってきたから、結界を解いたそうっすね。折角なので、I組のご尊顔でもと思い……」
「……そうか、随分と余裕そうだな」
リオライズは、ヴェイルが、まるで自分と同じ境遇の人間だと思うほど、呪いの気配はなく、普通の体だった。驚きと、喜びでリオライズは問いかける。
「もしかして、貴方は……?」
「……なんだ? 言いたいことがあるなら、はっきり言え!」
でも違った場合、何が起きるか分からない。数分の沈黙を経て、リオライズは撤退を考えた。
「いいえ……貴方と対戦できることを、楽しみにしてるっす……」
こうして、Ⅰ組との接触を終え、記憶の戻った人間が、Ⅱ組に居ないかを一日中、探し続けた。
自分から、オブラートに包んで言ってみるのも良いかもしれない……でも、自信はないっすよ。あの人が、もしも一緒のクラスだったら――
「”就寝時刻は二十二時で、それ以降は寮から出る事は禁止します“」
ふっと、ヴァンティスの言葉が脳裏を過った。
しかし、リオライズの答えはたったひとつ——
学園の外に出て、真実を知ると……
時計の針は、約束の時間を超えていた。それでもリオライズは迷わず、姿を隠すローブを纏い、手帳を手に学園の外へ向かった。そして結界を出るため、地を蹴り、籠手で力強く叩きつけた。
「マジっすか……この学園。あんな謎めいたことやってる癖に、色々緩いっすね~ ……それじゃあ、手始めに、人の意見を聞いてみましょうかね……」
——夜の街はどこも静かだった。戸を叩いて、目を覚ました大人達に問いを繰り返す。『学園で蹴落とし合いみたいなことをどう思う?』その言葉に、皆一様に同じ目を向けた。
哀れむ目、絶望する視線を向けられながら、夜明けるまでリオライズは聞き続けた。
そして日が完全に昇り、情報が書かれた手帳を読み返しながら、分析を始める。
「皆、同じ反応っすね……。年齢が十八だと答えたら、酷く肩を落として“残り二年待てば分かる”って……しかも、答えたくなさそうな雰囲気だった……」
リオライズは小さく息を吐いた。
「やっぱりあの人達、何か企んでるのは確定っすね」
聞き込み中に、可哀想と思われたのか、食料も少し貰っていたリオライズは、空腹だったお腹を満たすように、大きなパンを一口運ぶと、何かが近づいてくる気配を感じ取った。
そして気づいた時には、両手を掴まれ、空を飛んでいた——
「な、なんすか……!いきなり」
見上げると、残酷に紫色に光るヴィンティスの目と合った。
「――っ。ヴィンティス……!」
リオライズの言い訳も、聞くことなくヴィンティスは、急かすように告げる。
「遅刻も、既定の時間外に外に出るのも、校則違反です。
すぐに、ストリクス・アルヴィオンと対人戦を行ってもらいます」
「ここまでか……」と、諦めの瞳に変わるリオライズ。それでも、まるで宣戦布告をするように、ヴィンティスに対して言葉を紡ぐ。
「あんたたちの、意図は分かったっす……ここから、線と線を繋ぎ合わせてどんな手段を使っても、勝ちに行くっすから……」
リオライズの言葉が、ヴィンティスに届いたかは分からなかった。そして数十分が経った頃、気付けば一人の青年ストリクス・アルヴィオンが待つ荒野のエリアへ降ろされた。
「来たか……リオライズ・ニイタ――」
言葉は交わさない……一瞬で記憶の戻った人間だと理解する。安堵と喜びを感じながら、籠手を身に着けて構えを取る。ストリクスも同様、剣を抜いて荒野の結界内は静寂に、包まれた――
「ウィンドファング……」
リオライズの籠手が風を裂き、刃のような衝撃がストリクスへと駆けた。
が、疾風のように身を捻ったストリクスの剣が間に入り、鋭い金属音が結界を震わせた。
火花が散り、二人の間に一瞬の静寂が走る。
「やっぱり、本気な奴は違うっすね……今の攻撃も受けきれるんすから」
「いや……そうでもない」
リオライズの言葉を、静かに否定したストリクスは振り返ると、こめかみから血が流れ、防御として使った剣先が折れてしまい、地面に落ちた。
「病み上がりだから……正直勝てると思ってやってないよ」
「じゃあ、何のために……今ここで戦ってるんすか?」
ストリクスは、俯き目を瞑って考える……
そして決意の瞳になった彼は、答え始めた。
「……仲間の為、自分の為、“この世界の――未来の為に“」
その瞬間――リオライズは、新しい扉を開いて新しい風が、吹き込んだような気持になった。
しかし、ストリクスの剣はリオライズを静かに捉え、こちらに迫った。
「待って、待ってくれ!」
自分も同じ境遇で、仲間なんだと、必死に伝える為にストリクスを制止しようと声を張る。
しかしストリクスには届かない……剣と籠手の交わる鉄の音が、何度も鳴り響く。
「待ってください……話を――聞いて」
リオライズは、涙目になりながら声を震わせて、懇願する。
互いの武器が交差した瞬間、ストリクスが初めて、言葉を話す。
「僕は、呪いの反動でそんなに役に立てない……だけど、不幸中の幸いで教師達との契約を他二人の生徒の力を借りて、成立させることができた」
「じゃあ、貴方達は、殆ど目覚めている……?」
頷く前に、ストリクスは吐血し、その場に力なく倒れ込む。
「ストリクスさんっ……!」
その場に膝をついて、ストリクスの容態を確かめる。しかし、既に彼は自分の用いる属性魔力を体内に送り込んでいた。ゆっくり、小さな声でリオライズに呼びかける。
「僕は一人でも大丈夫だ……だからっ早く……真珠を壊して、探し出せ……!リオライズ」
その一言で、背中を押されたリオライズは、躊躇いなく真珠を破壊した。
壊れた真珠を見たストリクスは、微笑み最後のエールを送る。
「じゃあ、後は頑張れ……それと、今の話し方より、最初の話し方のほうが、僕は個性的で良いと思いました」
「……どうもっす。貴方の言っている二人と必ず会ってきますから、ストリクスさんは、少し休んでると良いっすよ」
そう言い残して、崩れた結界を飛び出した。その姿を見たストリクスは静かに自分に言い聞かせる。
「まだ、死ぬのは後にしろ……ストリクス・アルヴィオン。万が一会えなかった時の保険を作らなきゃいけないんだから――」
そして結界の上から、それぞれの状況を見ていく。
「――っ……あの人は、扉の前に立っていた火属性の生徒……それにサイラスさんは、やられたのか……? もう一人いる」
ヴェイル達の結界に入ることを決めたリオライズは、念の為に剣を抜いて反対側から侵入する。
そして、時間は戻りリオライズは、ヴェイルと再び相対した。
「……なんで、お前がここにいる……!ストリクスはどうしたっ!」
ストリクスの名前が出たこと、そしてヴェイルという、決戦前に相まみえた人間。話したこともあり、ストリクスの言葉を思い出したリオライズは、キャラと性格の無慈悲さを壊さず話始める。
「あ~ あのお兄さんっすか? あの人は呪いの代償を全然緩和出来てなかったみたいで、“話になりませんでしたね”」
本当は、言ってしまいたい……声を大にして真実を。
でも隣にいる人は、まだ呪いの気配が残っているから、安易に言うことは出来ないんだ……ごめんなさい。
「――っ! リオライズーーーー!」
逆上するヴェイルは、炎を全身に纏って、ストリクスに迫る。
もう仕方ない……力を交えて、真実に気付かせる以外、方法はないと悟った。
サイラスを結界の外に投げ飛ばす。まだ、記憶の戻っていない人間が巻き込まれないように……そして、記憶持ち同志の対決が幕を開ける――
最後までご覧頂きありがとうございます。
次回もお楽しみに!




