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Death Game: The Mysterious Boy(デスゲーム:ザ・ミステリアス・ボーイ)

十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー

土、火、水、風の四属性をメインに、二つのクラスに振り分けられた彼等は、”空白の入学前の記憶”を取り戻した、青年達の契約の下、対人戦に駒を運ぶ——

“何が真実”で”何が嘘”なのか、生徒達は真相を探るべく戦っていく——

《Death of the Academia》をお楽しみください

ゼフィリーが、エニアルとの魔法使い同士の戦いを繰り広げている中、レンリーとネリカとの意外な特徴を持つ者がぶつかっていた――


「土属性か……どんな戦いが出来るか、凄く楽しみ!よろしくね」


「は、はい!自分頑張ります」


「また固くなってるよ」


小さな笑い声が荒野に響き、グランの声が聞こえれば、やる気満々の楽しもうと前を向く二人が視線を交えた。


「——では、《イレギュラーデュエルマッチ》始め!」


レンリーは、黒い紋章を左頬に宿して、剣を鎖のムチに変形させる。


「さぁ!全力で行きますよ、ネリカさん」


鎖を振り回し、助走をつけてネリカめがけてムチの刃が襲う。


ネリカは剣を取り出して、氷を纏わせると、薙ぎ払うように一閃を描いた――

そして綺麗な氷結の斬撃が、星屑のように輝きを放った。

鎖ムチの鉄製部分と、斬撃で舞う氷の音が、耳鳴りのように響く。


「ちょっと、重いかな……? ——抑制はわざとか……“あまりにも力が強大すぎて、能力底上げの訓練をしたってとこかな”」


レンリーの放った一撃が明らかに、普通ではないことを悟ったネリカは、即座に的確な分析に入った。


鎖ムチが、再び剣へと姿を変えると、土の魔力が集まっていった。ネリカも同じく、氷を再び剣に纏わせて二人の剣が、ぶつかり合う。

大地が揺れ、氷の砕ける衝撃音とともに、足元にひびが入った。


「抑制術を習得したのが、いつかは知らないけど、短時間でこの破壊的な威力なら、尊敬しちゃうかな」


「こんな危機的状況下で、褒めて下さるなんて寛大なお方ですね」


「……僕は至って、本気なんだけどな」


ネリカの純粋な尊敬と、レンリーの覚醒後の余裕な口ぶり。二人が剣を弾いて距離を取ると、自らの属性魔力を纏うと、剣と剣は再び言葉を交わすように舞い、荒野に音色を響かせた。


今にも結界が壊れそうなほど、一撃一撃が大地を揺らす。その光景は、混沌に見える一方で、美しくも見えていた。

そして――何かを思い出したかのように、剣を交えながらレンリーは呟いた。


「そういえば、アラリックさんが言ってました。”土属性は水属性の全てを呑み込めるって“」


ネリカの剣を包み込むように、土の魔力が滲み出し、じわじわと氷を侵食していく。


「大地の抱擁ガイア・エンブレイズ


静かに唱えると、氷の刃が土へと変わり始めた。だが、ネリカは揺るがない。


「アル・プリズンロック……」


氷の鳥籠がレンリーを封じ、その中央で宝石の鍵が砕けた刹那、冷たさが全身を締め上げる。


「奥の手を、こんなに早く使わせられるなんて……でも、このまま武器が土に変わるのも嫌だったし」


ネリカの吐息に剣の氷が煌めき、土の術が打ち消された。


「僕の奥義は、誰であろうと、どんな加護を受けていようと全てを凍らす……ここから君が打開できる確率は、絶望的かな」


だが、レンリーは微笑んだままだった。


「絶好のチャンスに話すくらいなら、早く止めを刺した方がいいのでは……?」


「そうだね……じゃあ遠慮なく――」


ネリカが、言葉一つで真珠に、剣を一閃――

ただ手応えが無く、レンリーを見ると、凍結した体に罅が入り、剥がれ落ちるように、元の姿に戻っていく――


「――っ」


ネリカはすかさず水の膜で身を守る。


――バリィィィィィン


氷の牢獄を砕き脱したレンリー。その力に、ネリカは初めて悟る。

その光景に、膜を解いたネリカは初めて認識する。


「抑制は、あくまで一時的なもの……“その気になれば、再び悪魔に手を借りる。”――戦闘しながら成長しないと、勝てない相手かもね……」


左の顔半分が紋章に覆われたが、やがて静かに、元の小ささへと戻った。


――静寂が訪れた。

荒野を駆けた土属性の残響も、水属性の氷の残響も消えていった。

そして今は静かに、風の靡く音が聞こえていた――


「……そこだ」


レンリーの瞳が突如、妖しく光る。次の瞬間――鎖のムチが地を滑るように奔り、ネリカの首元の真珠めがけて飛んでいく。

音さえ置き去りにする一撃。

ネリカは反射的に鎖を素手で掴んでいた――


「っ……!」


金属の素手に食い込むような鈍い音。ネリカの左手が鎖を握りしめて、鉄の冷たさと、滴る血液……それでもネリカは鎖を離そうとは、しなかった。


「形を変える暇も与えない……凍れ」


ネリカが低く呟くと、鎖が氷の鎖へと変わり、音を立てて軋んだ。

レンリーは剣へ戻す隙を奪われ、そのまま鎖ごと宙へと引きずり上げられた。


土煙が舞う。衝撃に術が一瞬だけ途切れ、レンリーの紋章の輝きがわずかに曇る。


目を開ければ、眼前に巨大な氷の結晶。


「……マジですか」


答えを待たず、ネリカは氷を落とした。


ドォォォォォォン!


勿論、レンリーは氷を切り刻んで、何事も無かったように立ち上がった。


氷の塊を斬り裂き、レンリーは土埃の中から姿を現す。


「……学ばないのは、ただの無謀です。それに、攻撃にバリエーションが無いから――“飽きました”」


「――っ」


ネリカの表情に微かな影が落ちる。

それでもレンリーは煽りを止めない。


「同じパターンの氷ばかり……貴方はもう少し、“工夫“出来ないんですか?」


沈黙が荒野を支配する。

結界の空気が冷気に侵されていくのをレンリーは感じ取った。


「……そんなに、そんなに死に急ぎたいなら、お望みどおりに――」


大地が一面、氷のスケート場のように変わり果て、結界の鏡を映して、全体が青白く輝いていた。


レンリーの足元は、氷に絡め取られ、既に膝から下は機能しなかった。

剣も一緒に凍り付き、レンリーは為す術がなく、その場に留まることしか出来なかった。

しかしレンリーの瞳は、絶望や諦めた瞳では無く、最後まで獲物捉える目つきで、勝負の決着を見据えていた。


「ごめんね。結局氷しか用意出来なかったけど、今までとは違う感触でしょ?」


ネリカは、自分の周囲の空気を水の粒子へと変えて、蜘蛛の巣のように編まれていく。やがて一本の鋭利な糸へと姿を変えた。


「最後に、水属性ならではの攻撃で、幕を下ろそう――」


その糸は水のまま、氷のような冷たさと、稲妻のような速さを宿していた。

その先端――水の閃光の牙が、レンリーの首元の真珠を正確に捉え迫っていく――


「――僕の、勝ちだ……!」


ネリカの放つ閃光が奔り、レンリーは絶体絶命の状況を迎える。

——刹那、レンリーの瞳が見開かれた。

左頬を覆う紋章が、ふたたび黒く宿り、大きく脈動する。


氷に閉ざされていた右腕が、紋章の魔力と共に震え、亀裂が走る。

バキバキッ、と氷が弾ける音。

凍傷で感覚の無くなりかけた手が、血を滲ませながらも、鎖のムチに変える


「………まだだ……っ!」


震える指が、最後の力でムチを振るう。

その先は、ネリカの真珠――水の閃光が迫るその瞬間を正確に狙っていた。


――そして、互いの首飾りの真珠を貫くと……


バリィィィィィン!


グランの結界が全て崩れ落ちる音とともに、氷の術は解け、レンリーの体は自由を取り戻す。


「……はぁ……はぁ……これは、相打ち?」


ネリカが上手く状況を理解できずに戸惑っていた。そして、レンリーも覚醒を解いて、いつもの人格へ戻っていった。


刹那——遠くから聞こえる、爆発音に目を向ける。


「もう、誰か結界を解いた……?」


「――お疲れ様!いい勝負だったわね」


突然、マリーナの呼ぶ声が聞こえて2人は驚いた表情で見ていた。


「け、結果はどうなったのでしょう」


レンリーが焦るように、マリーナに問いかける。少し頬を緩めると、柔らかく答える。


「結論から言えば、貴方達は相打ち。なので乱入は出来ないわ。――そして今、ヴェイルvsサイラスの戦闘にゼフィリーが加わった。というところね……」


ネリカの表情は、険しくなり、レンリーは、ほっと胸を撫で下ろした。

こうして、イレギュラーデュエルマッチの真の姿が現れるのだ――


最近サブタイトルがデュエル続きだったので、一旦ここで区切らせて頂きます。近いうちに改編の可能性もあり

最後までご覧頂きありがとうございました

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