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Death Game: Magic Duel (デスゲーム:マジック・デュエル)

十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー

土、火、水、風の四属性をメインに、二つのクラスに振り分けられた彼等は、”空白の入学前の記憶”を取り戻した、青年達の契約の下、対人戦に駒を運ぶ——

“何が真実”で”何が嘘”なのか、生徒達は真相を探るべく戦っていく——

《Death of the Academia》をお楽しみください

「では、これより《イレギュラーデュエルマッチ》を行うフィールドへ向かう。リオライズに関してはヴィンティスが捜索にあたる。安心して戦いに集中すると良い……」


生徒達の足元に、第一授業の時と同じ白い魔法陣が輝き、静かに広がった。目を閉じると、白い光の余韻が瞼の裏に滲んだ。


——そして次に目を開けた時


視界いっぱいに広がったのは、残酷さを物語る荒野だった。赤茶けた大地がどこまでも続き、草木は遠い昔に命を絶たれたまま、白く、黒く、干からびた幹だけを突き立てていた。

足を踏み出すと、靴底が乾いた土を噛み、ジャリ……と硬い音を響かせる。


「ここは元々、緑が豊かな大地とされていた。しかし……大規模な戦争が一瞬で飲み込み、今は”カルガノ荒野”と呼ばれている……」


風が吹くだけで、重く(いびつ)な空気を呼び起こす。

乾いた砂埃が舞い、視界を少しだけ掠めた——


「そして、お前達には結界を張った状態で戦ってもらう」


グランが指を鳴らすと、首元に真珠の飾りがついた首飾りがふわりと現れ、生徒たちへ装着された。

ゆっくりと結界が生まれ、鏡のように彼らの姿を映し出す。向かい合った生徒達は、無言のまま武器を構えた。


鏡の結界の中から反響するように、グランの声が聞こえた。


「——では、《イレギュラーデュエルマッチ》始め!」


〈ゼフィリーvsエニアル〉

グランの掛け声と同時に、互いに風の魔法がぶつかり合い、衝撃で白い煙と、砂埃が舞い上がった。


「君、もしかして精霊の使い手? 驚いた……!中々珍しい種族に恵まれたね」


ゼフィリーが、白煙を突っ切るように空を飛び、エニアルを見下ろして口を開く。


「君だって、風属性なのに、どうしてI組に振り分けられているの?」


ゼフィリーを見上げながら、エニアルが、大量の魔法陣を作り出すと、そこから幾千の風魔法が飛び交った。


「もしかして……隠していることに気付いてない? 思ったよりも、本当に新米魔法使いだったか……」


ゼフィリーが静かに呟くと、エニアルの放つ魔法を空を駆けて、全て交わしていく。

最後の二つの魔法斬撃は、華麗に背と顔を通り過ぎ、その瞬間——ゼフィリーは、反撃するように風魔法を撃ち返した。


機械的で、まるで剣が交わるような音を立てながら、美しく、エニアルを襲う。


「ウィンド・シンフォニア……」


結界は解かれない……ゼフィリーは、空を飛びながらゆっくり視線を動かすと、自分の姿を映していた。


「流石に、こんなに早くやられちゃっても困るけど……」


白い煙が晴れると、既にエニアルの姿は消えていた。

ふっと視線を真っ直ぐ向けると、エニアルが杖を構えて空を飛んでいた。


「やっぱり魔法使い同士なら、空中戦が1番かっこいいよね……!」


エニアルの構える杖の先端から、魔力が集まっていくのを感じた。ゼフィリーは、すぐに防御魔法を用意して、エニアルの閃光魔法を空へと受け流した。


淡い緑色の魔法陣を出して防御し、流した閃光魔法はグランの結界により、吸収されるように静かに消えていった——


エニアルの周囲に再び風が集い、二人は宙で静かに対峙した。杖を振って、周りに集った風たちは鋭利な刃へ姿を変えて、幾度となく空を裂いてゼフィリーへ迫る。


「スティブレイド・ウィンド!」


「ヴェール・カウンター……」


ゼフィリーは、冷静に放たれた風の軌道をエニアルに、向けて撃ち返す。

しかし撃ち返した魔法は、溶けるように、消えていく——


「さっきより、少し工夫したみたいだけど……精霊の加護のお陰もあって、自分の攻撃は無効化する魔法を身につけたんだ」


「へぇ……そういうのも出来るんだ。でも、まだ本気じゃないよね?」


「よく言っている意味が分からないけど、精霊使いの僕の前では全てが平伏す……」


エニアルの周りが三重の緑色の魔法陣が展開された。

全ての魔法陣に、とてつもない魔力を感じ取った。


「もう必殺技を放ってしまうの? 多分それじゃ勝てないと思うけど……」


「ちゃんと考えて。これが本当に奥の手だと思う? 残念だけど君に勝ち目は無い……

——皆、あいつを倒すために力を貸して!」


地上へ一度足をついてゼフィリーは、嘲笑うようにエニアルを挑発する。


「奥の手じゃない……か。そろそろ僕も動き出さないとな……

それにしても、残念なのは、こっちだよ……

だって僕が、エニアル……君に、倒される未来より、君が、僕に倒される姿以外想像出来ないから……」


「世迷言を……——全てを打ち砕く風の裁きを…… アル・ウィンドランス!」


魔法陣から放たれたのは、鋭い風の槍、高速で、何度も、

撃ち込んで、ゼフィリーを追い込む。

それに負けじと、ぜフィリーも低い位置から浮遊しつつ、

風魔法をぶつけ合った。


ひとつひとつの魔力が、交差するたびに、白い煙と大地を軋むような音が響く。

そしてゼフィリーは、術が放たれる瞬間を見計らって、隠していた、火属性を纏わせる炎の形をした、結晶を強く握り締めていた——


ぜフィリーを、精霊の力を借りながら煙の中から探し出して、軌道を合わせていく。

その時、杖の宝石が脈動してエニアルに訴える。


「——分かってるよ……これはあくまで実力を見せつけるものであり、”殺しじゃないから”」


次第に、魔法陣は力を使い切りゆっくりと、その姿を消した。ゼフィリーの”風属性の魔力”も消えていたが、結界は解かれなかった。


「何故なの……? 本当に倒してないって、言いたいつもりか……!」


空の上で、動揺を見せるエニアル。

荒野は風の吹き抜ける微かな音だけが、耳に残る。

風の魔力は完全に消えたはずなのに、胸が騒ついて”ある異変”に気付いた。


「ま……さか……いや、普通に考えたらそうだ……こんな簡単なトリックに気付けない……とは」


その時、第一授業のランキング発表の時に言われた、マリーナの言葉を思い出した。


「”だけど初心者という事実は変わらない以上、期待を込めてこの順位にしたわ”」


「…………あっ………」


忘れていた記憶が埋まるような、感覚がエニアルを襲った。

自分はまだ、初心者で相手の”真の属性にも気付けない”のに”精霊がいるから”と調子に乗ってしまっていた。


「———ハリケーン•フレイム」


煙の中から、風と火が融合した竜巻がエニアルを襲い、必死に防御に魔力を回したが、風属性であり新米のエニアルには、火属性の魔法を打ち消すことは出来ず、竜巻の中で焼かれる感覚と、切り傷の痛みがエニアルを襲った。


「……真珠……だけでも——」


負けるかもしれない恐怖を感じながらも、一部の魔力を攻撃魔力に変換した。


その瞬間——属性が目覚めた時のように、竜巻が体を纏い、ゼフィリーの火の竜巻を消し飛ばした。


「はぁ……はぁ………はぁ……」


体が黒く煤け、ところどころから煙が立ち上る。

風で受けた腕の切り傷から、鮮血が一滴、また一滴と零れ落ちた。


「君が、I組へ振り分けられた理由……そして、対戦相手に僕を選んだ理由が分かったよ……」


「エニアル、君はこれから、もっと大きな存在になる貴重な逸材だと思う……だから、今日はありがとう」


最後の足掻きで、エニアルは風の閃光魔法をゼフィリーに放った。

だがその反撃は乏しく、ゼフィリーの頬にかすかな切り傷を残しただけだった。

ゼフィリーは火属性を杖に纏い、自ら編み出した閃光を放つ。


「——アル・フレイムライト」


赤く輝く、閃光がエニアルの首飾りの真珠を一点に狙って、

砕かれた。


———パリィィィィィィィン


その瞬間——真珠と連動するように、結界が砕かれ、一瞬にして静寂が訪れた。

——そしてエニアルはゼフィリーの閃光を受けて、改めて痛感した。


“一瞬の油断だけではない。最初の分析に綻びが出た時点で、人を殺すのだと……”


ゼフィリーの風魔法で、ふわりと体を倒したエニアル。

そして結界の、解除とともに、ゼフィリーは次の舞台へ動き出そうとしていた。


「……ふぅ。相手が初心者で運が良かった……これで結界は開かれた——助けて欲しい人の場所へ、行かなくては」


そして、舞台は〈レンリーvsネリカ〉へ移る。

二人のちょっと特殊同士の戦いが始まる——

本日も最後まで読んで頂きありがとうございました。

次回もお楽しみに!

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