Death Game: Irregular Duel Match(デスゲーム:イレギュラー・デュエル・マッチ)
十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー
土、火、水、風の四属性をメインに、二つのクラスに振り分けられた彼等は、”空白の入学前の記憶”を取り戻した、青年達の契約の下、対人戦に駒を運ぶ——
“何が真実”で”何が嘘”なのか、生徒達は真相を探るべく戦っていく——
《Death of the Academia》をお楽しみください
そして遂に対人戦本番までのタイムリミットが始まった。
作戦会議室では、最後の対戦相手の確認をしていた——
「まず、ゼフィリーはエニアルと……同じ魔法使いとして、手本になるものを見せてやれ。ただし、油断はするなよ」
「分かってる。なんとか勝てるように頑張るよ」
ゼフィリーは第二授業の時に杖を溶かして、クレヴァスに、即日新しく杖を作って貰ったと聞かされた、記憶の戻っているアラリック達は、嫌悪感を感じたが、そのまま遂行させることにした。
「僕は、病み上がりだから役に立たないと思うけど……サイラスが1番良いかな」
「でもこいつ、水属性だぞ……無属性で何とかやるのか?」
「うん。それに、確かに火属性は、水属性に弱い。
——だけど、勝てる戦だってあると思うから……」
「かっけぇんだな……ストリクス」
同じ記憶が戻った者同士、通じ合うように話す。
アラリックは、少し羨ましそうな遠い目で二人を見ていた。
「ではストリクスは、臨機応変に戦うように……次に、レンリーは——ネリカと戦ってもらう予定だ」
「が、頑張ります……!」
「残り第一授業の上位2名……僕とヴェイルは、”奴らと戦う……”それに、今回のペナルティは無し。気を重くしないでやるように——」
一方、II組では対人戦前から、イレギュラーが起こっていた。
「はぁぁぁぁ!?リオライズが辞退!?」
ゼオンの怒号にも近い声がII組の作戦会議で響き渡った。
「確定ではないけれど、部屋にも居なかったみたいで……この時間まで合流してないってことは。と思っただけよ」
「じゃあ、僕達四人でI組と……?」
II組の生徒達が、リオライズの失踪によりパニックを起こし始めていた。
彼等を諭すように、ヴァンティスが話す。
「遅刻や、迷子……作戦の可能性も捨てきれません。あまり焦っては本番で支障も出てしまいますし、落ち着いてください」
ヴァンティスの言葉と、リオライズの性格上、冷静に考えれば有り得ると感じたのか、大きいため息をつくだけで、収まった。
「まぁでも、倒すんだったら誰でも良いって言ってたし、片っ端から潰して行けば何とかなるかもな……」
II組のリーダーは、リオライズ。作戦は”属性が負けていようが、勝っていようが関係無く、倒して行け”という単純なものだった。
「そろそろ時間かしら……皆、校庭へ行きましょう——」
その頃、I組の生徒達もフラーナのアナウンスにより、動き出していた。
見えない存在に対して興奮と緊張が冷めやらぬ中、静かに優しい風が吹き抜ける。
そしてグランのアナウンスにより、彼等は初めて姿を見せる——
「これより、結界を解く。……この瞬間を忘れるな。これが、戦いの幕開けだ。——互いの姿を、その目に、心に、深く刻み込むと良い」
——静寂の中、結界が音もなく崩れ、まるで霧が晴れるようにII組の姿が現れた。微かに揺れる風が砂を巻き上げ、校庭に新たな緊張の匂いが漂う。
何分、沈黙したか分からない。ただ互いを見つめ合うことしか出来ず、固まっていたところを、レンリーが初めて声を上げる。
「は、初めまして! ぼ、僕はレンリー・ノア……です!きょ、今日はII組の皆さん、よろしくお願いします!」
レンリーの声が響き、場に一瞬だけ、張り詰めた空気に小さな綻びが生まれた。
——だがその微笑ましさも束の間、再び沈黙が支配する。
恥ずかしさで、顔を真っ赤にして、ずっと頭を下げている状態だったレンリーに、ネリカが返事をした。
「初めまして、レンリー……君。僕は、リノ・ネリカ。少し女の子っぽいけど、ちゃんと男で水属性を専門にしてます」
手を差し伸べながらネリカは、丁寧に挨拶を返した。
あまりの感動に、レンリーは手を強く握り、涙を流しながらお礼を言う。
「よろしくお願いします、ネリカさん!そう言えば今日、貴方とデュエルがしたかったんです!ありがとうございます!」
「まだ……何も言ってないけど……」
レンリーが、喜びに満ちている姿を見た他の生徒達は呆れ、ネリカは困惑した表情で対応する。
その時、ストリクスがII組の異変に気付いた。
「……アラリック。あのクラス二人居ない……もしかして脱落させられた?」
「……いや、まだ分からない。ただ聞いてみる価値はありそうだ」
ヴェイルと視線を交わして、軽く頷くと会話の中へ入り込むように探りを入れる。
「悪いな、皆。レンリーは交友関係が凄い好きみたいでよ。
ネリカって言ったか? 悪いな」
「……全然気にしないでください。慣れてますから」
ネリカのコミュ力の高さと、心の広さに確かに感動しながらヴェイルが問いかける。
「ところで四人しか居ねぇみたいだけど、参加人数に必要な一人はどうしたんだ?」
空気が一気に重くなる。ネリカは握られていた手を、すっと解いて、淡々と答え始めた。
「一人は、強制退学。もう一人”リオライズって子が居るんだけど、今朝は見たんだけど、対人戦が始まる直後に居なくなっちゃって……”」
「リオライズが消えたぁぁぁ!?」
「知ってる子なの……!?」
「いや……全然知らない人です。すみませんでした……」
ヴェイルが機転を効かせて、情報を得ることが出来た。
しかし、あまりの情けなさにアラリックが、動いた。
「実は、僕とこいつで上位2名と対戦すると決めていたんですが……居ないなら仕方ありませんね」
「第一授業ってことなら、俺が2位のゼオン様だが……?」
小さな身体からは信じられないような自信に満ちた声。その視線がアラリックを射抜く。
——だが、アラリックの目には、ただの子供の無邪気さにしか映らなかった。
「……早くお家に帰った方が良いと思うけど」
アラリックの純粋な回答が、ゼオンを煽るには十分すぎる内容だった。
「——っ。子供だからって舐めんなよ! お前なんかすぐに蹴散らしてやる」
「そうですか……」
納得が行ったように見えたが、次に顔を上げた時には、物凄い形相で言い放つ。
「——しかし。口を慎め、ゼオン・ルーゼ……貴様が言った言葉も、そっくり行動で返させて貰う……」
「あーあ。喧嘩売っちゃった……」
ストリクスが、気の毒そうに言ってみせると、ゼオンは少しだけ萎縮した。
「うーむ……困ったな。これでは一人、人数が余る……」
グランが顎に手を当てて、考える。
「——じゃあ、僕が待ちます」
「ストリクス……?」
「元々病み上がりで、少し準備運動が必要だし……このまま入ったところで、ルールは崩壊するし情けではありません」
アラリックと、ヴェイルの目を見て、自信に満ち溢れる表情で、ストリクスはグラン達へ告げる。
「リオライズは、きっと……来ると思います。今居ないだけで、必ず……!」
その声も瞳も、リオライズ・ニイタという人物は、”空白の入学前の記憶が戻っている”と確信しているような言い方だった——
「では、決まりだ」
〈アラリックvsゼオン〉〈ヴェイルvsサイラス〉
〈レンリーvsネリカ〉〈ゼフィリーvsエニアル〉
〈ストリクスvsリオライズ〉
「なんか、お前とは気が合いそうな気がするぜ!
よろしくな、サイラス」
「ふんっ!どうせ、俺の氷にすぐやられるザコが……気安く話しかけるなよ」
本当に気が強いという性格は、そっくりで……その中でも、ヴェイルは成長して、サイラスは、まだ少しだけ子供っぽいところもあり、いよいよ第二ラウンドが幕を開ける——
いよいよ、対人戦準備ストーリーでしたが、次回からは早速、バトル盛り盛り見せていきたいと思います。




