Death Game: First Dispatch(デスゲーム ファースト・ディスパッチ)
十二人の生徒が、命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー
土、火、水、風の四属性をメインに、街に群がるモンスター達を討伐し授業をクリアして自身の評価を上げていけ!
生き残るのは真の才能がある人間のみ
誰が生きて誰が死ぬのか完全オリジナル作品
《Death of the Academia》をお楽しみください
翌日朝八時(身支度終了)
「皆さんおはようございます。全員身支度が済んでいる者から学園内I組の教室まで来てください」
皆、時間はバラバラではあったが誤差程度で、アナウンス後すぐに全員席に着いた。
「はーい、皆遅刻して無いかな〜!」
生徒達がしっかり出席しているのを見たグランは、満面の笑みで小さく頷いた。
「では早速授業を始める。内容は、”堕ちた街を救え”
——これからモンスターの襲撃を受けている街へ行き、先手を打って始末する」
「現地へ行くってこと? それでどう評価するつもりなの?」
「良い質問だソニント。現地に着いたら改めてちゃんと説明をするつもりだが、今簡単に言えば、各エリアに分かれてモンスターを少しでも早く倒すことが評価基準だ。でも戦いにおいて長期戦を強いられる事も当然、少しでも進化する者や強くなった者も評価する。予定だ」
「初授業で初遠征……」
「己の性格や力を分析して最大限自分の出来る事を成し遂げ俺達に存在を証明してみせよ——」
こうして、入学二日目にして実戦が行われる。
二匹の大きい馬車に乗り、ただ到着するのを待っていた——
「着いたぞ。此処が授業会場ともなる、都市アズローラだ」
{都市アズローラ}
朝は最高の青空、夜は星が綺麗に鮮明に見える都市。雨の降らない都市とされているが、現在アズローラはモンスターの襲撃を受けており、その討伐を依頼されたのが、今回の授業内容となる。
「実は数ヶ月前にも、ある騎士団がアズローラの救援に駆けつけたらしいんだけど”壊滅した”って言われてる」
「その……騎士団の名前は?」
問いかけたのは驚愕しながらも、殺意にも近しい目をしたアラリックだった。
「えーっと何だったっけ、確か……ルキウス」
「それは団長の名前です。騎士団の名は”ヴィジル・レックス”」
「ルキウス……ヴィジル・レックス」
深く考えようとすると頭痛を引き起こして、思い出せそうで思い出せない名前にアラリックは酷く落胆した。
「知ってる名前だったの?」
「いや……大丈夫だ」
不思議そうな目でゼフィリーが問いかけたが、アラリックはすぐにいつも通りの冷静を装う返事をした——
「あとこれから始める授業にとっても役に立つ物を皆さんに配りたいと思いま〜す」
「皆さん手を前に出してください」
全員言われた通り手を前に出すと、ヘッドセットマイクの様な物が現れた。
「これは緊急時、俺達と連絡が取り合える必需品だ。勿論他のことにも使えるが悪用は許さん。以上」
「ここから、目標が姿を現すまでは自由行動です。子供達と遊ぶも良し、地形の把握も忘れなくやると良いでしょう」
「それじゃあ、俺達はエリア分けがあるから一旦失礼する」
白い魔法陣が現れて、そのまま二人は姿を消した
「ポータルも使えるんだね——」
早速都市に足を踏み入れて辺りを見渡す。しかし青空の下に立っているのはI組生徒達六人だけ……あまりの静寂に間に合わなかったと考えた時、杖の付く音で全員その方向を振り返ると、一人の老婆が立っていた。
「初めまして学生の皆さん、グラン先生からお話は聞いておりますじゃ……わしがアズローラの長老ですじゃ」
小さな杖で背は深く曲がり、頭布を被っており話し方から既に、生徒達の事は知っていて、突如出現するモンスターについても知っている様な目をしていた
長老の姿を確認するや、否や、アラリックは少し急かすように問いかける。
「早速ですがお話を聞かせて頂けますか? いち早く討伐して、美しい都市を取り戻さないと…」
「アラリック、いきなり失礼だろうが……!」
「——事実を言っているだけだ。では聞くが貴様は、情報0の状態で、この都市を救えると?」
ぐいっと肩を引っ張るヴェイルに対して、アラリックは冷静に言い返してみせた。
「ふぉっふぉっふぉっ、お気になさらずとも大丈夫ですじゃ。貴方方は、わしらを救ってくださる英雄様ですとも、知っている事は全てお話し致しますじゃ。ではこちらへ——」
招かれたのは、よく見る会議室のような部屋だった。ロングテーブルにホワイトボードも用意されており、何よりも驚きだったのは、部屋に明かりがないのにも関わらず、この都市は空の青さが部屋の中を照らしていた。
「さぁ皆さんお座りくださいですじゃ…今お茶の用意を」
「気にしないで長老様。僕たちは話を聞きに来ただけだから気持ちだけ受け取っておくよ」
「お心遣い感謝致しますじゃ……えーっと」
「ストリクス・アルヴィオンと申します——」
再び、ゆっくりと椅子に座り、長老は話し始める。
「わしは昔から千里眼という能力を持っておりまして、あのモンスター達も微かですが、見ることが出来ましたのですじゃ。そのモンスターの正体は魔獣。
凶暴とした顔と大きな体、一番良く見えたのは犬と狼の魔獣、そして魔獣ではないモンスターも一匹、鳥のような姿をしていたのを見たのですじゃ」
「なるほど……私から質問なのですが、色や行動パターンなどは見る事は出来ましたか?」
「行動パターンの目視は出来ず、色は緑と水色の魔獣だった……気がしますが、実際どうだったかは、この婆にははっきりとは……申し訳ない」
「じ、実際、犠牲者は出ているんですか? 例えば最近目立ってた子が居なくなったとか…」
「ここ最近八人の少年少女が、姿を消しておりますのじゃ。わしも昔なら探し出せたかもですが今は……」
「情報提供感謝致します。大体目標の特徴は理解出来たので、私アラリック・オーレルから、もう一つお聞きしたい事があります——」
「この階段の先が外壁になっていて、アズローラ都市一番の見晴らしの良いと言われています」
「なんでまた……」
「フラーナに言われただろう。”自由時間にはなるが地形の把握がおすすめだ”って。早めにやっても損はない」
「流石アラリックさん……!尊敬します」
「えぇ……マジか、レンリー」
「ついて来ても良いし、来たくないならお前達に仕事を渡すからそれを遂行しろ——」
結局外壁に一人でしか来なかったアラリックは、都市アズローラを見下ろして、地形とエリア分けされた時の場面予測を行っていた。
都市自体は円状に近いものがある。
仮に六等分でエリア分けされるとなるなら……いやその前に、どうやって敵が来るかも分からない以上、考えても的が外れる可能性が高いか……あとは——
何かを決断するような瞳で、アラリックはある人物へ連絡を入れる。
“はーい、ご連絡ありがとうございます!アラリック・オーレル様。こちらグラン先生のお悩み相談室でございます!本日はどの様なご用件でしょうか?”
「茶番に付き合うつもりはありません……単刀直入にアズローラの避難状況を……知っていますか?」
“ふーん……釣れないなぁ。まぁこの前長老から聞いた話なら、大人達は避難してるらしいけど、子供達にどうやって伝えて避難させるかで困ってる様子だったよ”
「ではその子供達、私達がどうにかする事は許されますか……?」
グランは不適な笑みを浮かべて、アラリックは静かに風が吹く外壁の上で回答を待つ。
“許す。自分の成績の為に、囮に使うも良し助かるも良し、好きにすると良い……”
「了解しました——」
一方その頃、ヴェイル達はアラリック言いつけ通り、都市の広場に子供達を集めて待機していた。
「ついて来ても良いし来たくないならお前達に仕事を渡すからそれを遂行しろ。この広場に子供達を全員連れて来てもらうことだ……やりたい事がある」
「でもどうやって……」
「皆さん、わしにお任せくださいですじゃ——」
長老の巧みな言動で、難なくアラリックに言われたミッションを成功させた。『これから外壁の上にヒーローが登場するから見に行こう』とだけ言い興味を持たせたのだ。
「ねぇヒーローまだ?」
「それよりもどんな人なのかな!」
子供達の期待が高まる中一人のヒーローと呼ばれる青年の声に、全員が外壁を見上げた。
“良い子の皆〜注目!”
子供達はヒーローに興味深々で見つめる中、同年代の青年達は、鳥肌が止まらず凍りついていた
「なぁアラリックってさ……」
「キャラ変わりすぎだね…普段”貴様は僕より弱いだろう”とか言ってる人なのに……」
「まぁ、親が先生に見せる態度と、実の子供に見せる態度が変わるみたいな感覚なんでしょ」
「何の目的であんな事……」
「流石アラリックさん素敵!」
各々恐怖と感動を示しつつ、アラリックは外壁を飛び降りて子供達に声を掛ける。
“今からヒーローのお兄さんと遊ぶ人この指止〜まれ”
「ヒーローの兄ちゃん……遊ぶ!」
「私も混ぜて!」
長老と、他の生徒達と一緒に固まっていた子供達は、一斉にアラリックの元へ集まって行った。そして一度マイクを外して子供達と同じ背丈までしゃがんで話しかける。
「今日は折角だし、外に出て遊んでみる?」
「でも長老は、お外危ないって言ってた」
「そうだね。でも別のお家を建てて、その中で遊べば安全だとは思わない? 凄ーく大きい家を建ててあげる」
「ほんと?じゃあ長老様良いですか?」
「良いぞ。今日はそのお兄さんと沢山遊んでくると良い」
「「「「「やった〜!」」」」」
子供達は長老の許可が下りた事で盛大に喜び、早速アラリックの手を引っ張って外に出ようとするが、また別の人間が、声をかけた。
「……ちょっと待て、アラリック」
「何だ?」
「こいつら全員、どうするつもりだ……!」
「安全な場所に避難させて、授業の邪魔や犠牲にならないように隔離する」
「そうなのか……」
「それに僕がこうしたのは、貴様らが外壁の上から都市を見る時間を作る為でもある。何より僕は、貴様より成績が下だった事に納得していない……この授業で必ず貴様より上だという事を証明してやる——」
アラリックの自信と言葉には、説得力と勝ちを思わせた。
その光景を遠くから、でも確実に見ていたグランは静かに呟く。
「アラリック・オーレルか……今回の授業ゲームで一番化ける存在になるかもしれない」
アラリックの行動により都市に残った住人を全員避難させる事が出来た。それでも彼にとって心残りである”騎士団の存在”自分の強さや、容姿に恵まれたのも、誰から貰った物なのか覚えていない、思い出せない……
心に闇を抱えたまま授業ゲームに挑む——
前回のキャラ紹介は番外編みたいなもので、こちらが第2話という形になります