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Death Game: Memory Veil Mind(デスゲーム:メモリー・ヴェール・マインド)アラリック・オーレル編

十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー

土、火、水、風の四属性をメインに、二つのクラスに振り分けられた彼等は、新たなる試練【対人戦】に向けた戦いに駒を進める——

生き残るのは真の才能がある人間のみ

誰が生きて誰が死ぬのか完全オリジナル作品

《Death of the Academia》をお楽しみください

ずっと引っ掛かることがある。

第一授業で得た権利で外に出たあの日。

突如現れた、不思議な雰囲気を持つ謎の紳士の男。

そして第二授業で、霊的存在に教えてもらう前から、僕を訝しげに見ていた青年と、今対峙している———


「訓練を始める前に、聞いても良いかな〜」


「……何です?」


「”君の剣術は———誰に教えてもらったの?”」


その言葉に、アラリックは喉を締め付けられるような感覚が襲い、鼓動が速くなる。


「では、質問を変える。”君は、白銀の長い髪をした騎士団の男に会った?”」


「———それなら、第一授業が終わった時に一度、会いました。道標として守っていたと言ってましたけど……実際は、何が目的かは……」


アラリックは喉の締め付けから解放され、リゼルドの問いかけに答えた。


「そっか……長話も時間の無駄になるし、一旦普通に武器を交えようか〜」


何処か安心した表情を浮かべるリゼルド。どうして、そんな表情をするのか分からなかったアラリックは、背を向けて配置についた。

その背中を静かに見ながらリゼルドは一人呟く——


「……この子は記憶が無く、真っ暗闇の中でも戦い続けている強い子です。貴方が懸念していたことは、全て私に任せてください。”……ルキウス様”——」


「じゃあ、始めよっか〜」


アラリックはレイピアを構える。

リゼルドはスティックを再び握り、洞窟の扉を開いたときと同じように——黒い杖へと変化させた。

長い静寂の中、リゼルドが先制攻撃を仕掛ける——


「奈落から縛る物(アビス•バインド)」


リゼルドの杖の先端から魔法陣が出現し、その言葉と共に、空気が軋むような音が響き、漆黒の魔法陣が展開される。

そこから幾千の包帯がアラリックに迫った。


「全てを凍らし守る盾(ブリザード•シールド)」


アラリックのウエストコートが、土属性の色から水属性の色へ変換され、レイピアを包帯へ差し出すと、一瞬で氷の結晶へ変わり、溶けるように消え失せた。


「元々、水属性を使った実戦をやりたかったんです。感謝致します……リゼルド•グレイアス」


そのまま、続く包帯を全て凍結させて、微塵切りにしながら距離を詰めて、リゼルドの首へ一閃——レイピアを振り抜いた。


ガキィィィィィン!


氷が砕ける音と、剣がぶつかり合う音が洞窟に響き渡る。

リゼルドも咄嗟に杖から剣へ、武器を変換させて身をも守ったのだ。


「スピード、正確さ、剣の威力……どれを取っても、”周りから見れば天才だ”——だけどね、アラリック•オーレル。僕にとっては、足元にも及ばない存在だよ……」


剣圧に押されて、アラリックは一歩、後ずさった。

火花が散る中、リゼルドは冷たく呟いた。


「亡骸の光(ネクロ•ルーメン)」


交わるリゼルドの剣から、鈍く軋むような音とともに、

剣の中心から淡く青白い閃光がアラリックを襲った——


「———な……ッ!」


響き渡る光の衝撃に、アラリックの体が宙を舞い、背中から壁に叩きつけられる。

傷を受けたアラリックの制服の袖は焼け焦げ、露わになった素肌からは、黒い煙が微かに立ち上っていた。


「今から、親譲りの図太い精神を砕いてあげる。生温い状態じゃ、真っ先に死んでしまうからね」


冷徹なリゼルドの姿は、いつもの自分のようだった。

アラリックは屈辱を味わいながら立ち上がり、鋭い目つきでリゼルドを見据えた。


「その目つきも、そっくりさんだ……」


何かを悲しみ、懐かしむように、呟くリゼルド。

挑発めいた言葉をかけてもアラリックには、強くなってほしい。ただその一心で、訓練を再開する。


「——行くよ。アラリック」


アラリックも構えて、何度も互いの剣が激しくぶつかり合う音が鳴り響く。

どちらも譲らない剣捌きは、5分にも及ぶ——美しい戦いだった。


「もう終わりにしましょう」


「……何を言っている?」


しかしアラリックにリゼルドの言葉は、届かない——

そのまま容赦無く腹部に蹴りを入れられて、叩きつけられた壁の破片を、水と土の融合で鋭利な礫へと変え、一斉にリゼルドへと撃ち放つ


「貴方は気付いていたみたいですけど、一度行動にストップを掛ければ、分かっていても避けることは不可能になる」


土と水で作った氷の石飛礫は、何かが刺さるような音を立てて冷気の煙を上げた。


「無駄だよ、アラリック。君のその攻撃も想定内だ」


煙の帳を裂くように、鋭く尖ったスピアヘッドが飛び出した。——でもアラリックは、落ち着いていた。

冷静に足で地面に押さえつけて、晴れゆく煙の狭間から現れたリゼルドの腹部に、アラリックは迷いなくレイピアを突き立てた。


「そういう攻撃をしてくるのも、僕の想定内……貴方は——ここまで読めていたんでしょうか?」


「……人は誰しも、プライドを傷付けられると強くなる生き物だ。君も周り人間で、似た子は居なかったかい?」


アラリックは、学園での出来事を思い出しながら、ヴェイルとグランのことをリゼルドに語った。


「1人は確かに、成長出来るかもしれないと思いました。

しかし——もう1人はプライドを傷付けられたら、水をかけてきたので弱い人間だと思います」


「優しい言葉から、辛辣に変わるのも君らしいね」


「……奈落にでも、送って差し上げましょうか?」


「なんでそうなるの〜?! しかも目が全然笑ってない…!」


刺された後の会話とは思えないほど、和やかな雰囲気が洞窟を包み込んだ。

しかし一呼吸置いて、真剣な雰囲気へ一瞬で変わる——


「それじゃあ最後に——君がこれから進む道で、きっと役に立つ”力”を授ける。それが、この訓練の締めくくりだ——」


白銀の髪に、トパーズの瞳をした1人の男性が色鮮やかな花畑の真ん中で静かに祈っていた。


「……アラリック、君は私とは違う。だから、リゼルドの試験を受けて、”またあの家に”帰ってきてね……」


全てを見通しているかのように、願いを込めて静かに、空を見上げていた——


「それじゃあ、一旦属性を手放してくれる?」


「……分かりました」


アラリックはポケットから白手袋を取り出すと、土属性を纏う左手にはめた。

深く息を吸い込み、水属性の四角い結晶を静かに掌に現す。


「これで良いですか?」


「充分だよ。今君は、無属性状態だ。この形で一戦交えてもらう」


「……構いません。ただ属性無しの僕では、相手にならないと思いますけど」


「それで良いんだ。でもよく覚えていたね。”無属性状態の自分の実力”」


「———っ」


再び、すごい形相で睨みつけてくる、アラリックに急いでリゼルドが諭す。


「ごめん、ごめん!そういうつもりで言ったんじゃ無いんだ。——すまないよ」


ぷいっと怒った顔をして再び、背を向けるアラリックを見て、「やってしまった」と感じたリゼルドは深くため息をついて、気まずい雰囲気の中で最後の戦いを迎える——


「いつでもかかっておいで」


地を蹴って、アラリックの振り抜くレイピアを、リゼルドが真っ向で受け止める。


——チャキィィィィィィン!


金属がぶつかり合う甲高い音を立てて、再び剣を交えながら、リゼルドは分析する。


やっぱり、無属性になるとアラリックは、ただの男の子にしかなり得ない。

——でも、どうやって勝つかを考えてる動きだ。最初から負けだと思わないで、必死に戦っている。


——ジャキィィィィィィン!


金属の火花が散ると同時に、アラリックのレイピアは跳ね飛ばされ、空中で数度回転しながら壁際へと落ちていった。


——握りの感触を失った一瞬の隙を、リゼルドは見逃さない。剣に淡い光を纏わせ、一直線にアラリックの元へと踏み込んだ——!


——しかし、アラリックは違った。まるで、その動きを見抜いていたかのように動く。

迫る剣を避けず、リゼルドの剣を握る腕を思い切り掴み、そのまま体ごと放り投げた。


——ズシャァァァ


しかし、反撃の目処は乏しい。体勢をすぐに立て直した、リゼルドはその剣に再び光を纏わせると、容赦なく一撃を放った。

——アラリックは、成す術もなくその剣撃を受け、気を失って倒れ込む。

次第に斬った跡は光に変わり、それを閉じ込めるように傷が修復した。


「これで……言われた事はやりましたよ……」


まるで、誰かに訴えるようにリゼルドは声を絞った。

そして、震える声で、ぽろぽろと涙を流しながら言葉を継いだ。


「アラリックに、昔の記憶は……ありません。だけど、体がちゃんと覚えていた。あの時、放り投げる手段を取ったのは

あのお方の教えを守ったからです……きっとこの子は強くなれます——」


眠り続けるアラリックの体内が、優しく温かい光を宿して、

謎を残したまま、ストリクスとアーサーによる試験が

——静かに幕を開けた。

アラリックは、結構考察するには良い感じのキャラだと思うので、これからも楽しんでくれたら嬉しいです。

次回もお楽しみに!

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