Death Game: Second Belletation(デスゲーム:セカンド・ベルテーション)
十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー
土、火、水、風の四属性をメインに、二つのクラスに振り分けられた彼等は、新たなる試練【対人戦】に向けた戦いに駒を進める——
生き残るのは真の才能がある人間のみ
誰が生きて誰が死ぬのか完全オリジナル作品
《Death of the Academia》をお楽しみください
時間は経ってソニントが脱落した翌朝。
招集が掛かり、教室の雰囲気がどよめく中、グランはI組第二授業の内容を話し始める——
「おはよう。お前達、昨日はよく眠れたか?」
脱落者が出た翌日——
やはり、思い入れがあるのか教室には言葉より先に、静寂が降りた。
——その沈黙が、答えだった。
「基本は誰しもそうか……でもいつかは、この日常が当たり前になる日も来るだろう」
続けてグランは、予想もしないことを言い始める。
「その為、次の授業までに俺達とは別の、冒険者の中でも熟練の者達を、特別教師として訓練を行ってもらう」
「特別教師の方々は、合流までに最低でも二日はかかると思いますので、その間に独自の特訓や技術磨きに励んで下さい」
フラーナが、ポケットから第一授業の時に言っていた、上三名の報酬をちらつかせた。
「——それと第一授業での上位三名はこの後、職員室まで来るように。ここまでで質問は?」
———アラリックが、すっと手を挙げる。
「貴様が質問とは、珍しいな。内容は?」
「そんなありきたりな説明で、冒険者達を信用できません。実績があるなら、しっかり伝えるべきではないでしょうか」
またしても、無意識に人を逆撫でするその物言い——
一瞬、グランの眉がぴくりと動く。
だが、言葉を飲み込むように呼吸を整え、低く返した。
「……相変わらず生意気なガキめ。気になる所だろうが……
極秘情報だ」
「……答えられないくらい弱いのか、ちゃんと契約していないのでは?」
「……はぁ。会えば分かる——」
大きなため息を吐きながら、グランは答えると、そのまま教室を後にした。
数十分後、招集が掛かっていたアラリック、レンリー、ゼフィリーの三人が職員室へ向かっていた。
「それにしても、アラリックは少し態度改めないと、またグラン先生を怒らせて……!」
まるで母親のように叱ったのは、第一授業《成績三位》のゼフィリーだった。
「ま、前にもグラン先生に水を、かけられてましたよね。大丈夫なんですか?」
「僕より下の奴らが気にする事じゃない。話の通じない大人に対しては、あれくらいは普通」
「容姿端麗、実力は本物なのに、その無慈悲な性格は誰を継いだことやら……」
「きっと、かっこいい家庭で育てられたに違いありませんね!」
二人が呆れながらも、尊敬するように会話していると、その言葉にアラリックは足を止めた。
窓から差し込む光を見つめながら静かに呟く。
「誰を継いで……」
立ち止まったアラリックを心配して、レンリーが振り返って、声を掛ける。
「アラリックさん? 早く行きましょう」
「——家庭……か」
何かを懐かしむような、優しい声で呟き再び、歩みを進めた——
「失礼します」
職員室の扉をノックして返事を待つ。
「どうぞ」
中からフラーナの声で応答があり、扉を開けて三人がフラーナの元まで赴いた。
「皆さん、お待ちしておりました。早速上位3名の貴方達に第一授業で獲得した報酬をお渡しします」
引き出しから、報酬を取り出して説明をしながらフラーナが
一人一人、報酬を手渡す。
「まずはアラリック・オーレル。貴方には一日外出券と、その腕輪です」
「……助かります」
感情のない感謝は、何か別のことを考えいるようだった。
「外出の際は、腕輪の着用を絶対に忘れないでくださいね」
“着用を忘れずに”という言葉は、アラリックにとっては、疑問であり核心にも近い、想像をさせていた。
軽く会釈をしたアラリックは職員室を後にした。
アズローラ以来と言えど、きちんと外に出て走り回るのは、アラリックにとっては、久しぶりのことだった。
「何処へ行く?」
学園の正門を出ようとした時、待機していたグランに話しかけられる。
それでもアラリックは冷静に答えた。
「街へ出ます。探し物を……見つけに」
そのままグランはアラリックの遠のく背中を見届けた——
アラリックの目的地は、自分の故郷。
しかし”学園の面接、トライアウトの時に”その名前も、何処にあるのかも、忘れてしまったアラリックは時折、語りかける謎の声を頼りに歩き続けた。
物音や人々の声も、不自然なまでに聞こえず静かだった。
徐々に霧が深くなり、アラリックは警戒する。
“アズローラで君を待ってる子供達がいる。次の角を右に曲がって、そのまま真っ直ぐに行けば着くよ”
優しい青年の声。
話し方や落ち着き方は、アラリックと変わらないほど似ていた。
「景色が明るくなってきた……もしかして本当に」
目の前には、授業で戦いの舞台になったアズローラが、輝きを放っていた——
「あっ!ヒーローの兄ちゃん、遊びに来てくれたの?」
「丁度、休みの日だったから」
アズローラへ足を運ぶと、第一授業で遊んだ子供達がアラリックの姿を見るなり、どんどん集まってくる。
「ごめんだけど、今日は少し急いでるから長居は出来ないんだ」
「そうなの〜 じゃあヒーローの兄ちゃん、これだけ受け取って!」
子供はポケットからアラリックの姿をした、ストラップを取り出してそれを手渡した。
「これをくれるの?」
「うん! 俺達から、兄ちゃんへのお礼。他の兄ちゃん達にも”ありがとう”って伝えといてくれよな」
子供達を撫でようとした時、突如知らない記憶が脳内を支配する。
左手で触れた猫と、自分の顔に返り血を浴びた光景。
咄嗟に左手を隠して、ぎこちない笑顔だけ見せるのだった。
こうしてアズローラを後にして、アラリックは目的地の故郷へ再び足を進める。
こめかみに手を当てて、声を聞く。
“ここアズローラから、ずっと東へ向かって”
声に従ってアラリックは東へ足を進める。
何分経っただろうか……気付けばポツリと建っている、図書館を見つけた。
アラリックは初めて見る筈の物に、何処か懐かしさを感じて——足は勝手に図書館へ向かっていた。
中に入ると、こじんまりとした雰囲気の室内、壁には全面びっしりと本が並べられていた。
右の本棚から調べる事にしたアラリックは、その場で立ち尽くすと、激しい頭痛に襲われた。
「———ッ」
再び脳内が見た事のない記憶が巡る——
今アラリックが立っているこの場所で幼き少年と、父親らしき人物。
「”うーんっ。ねぇ届かない〜”」
必死に背伸びをする少年は、訴えるように父親らしき人物へ告げる。
すると父親は、その少年を抱っこして目当ての本棚まで手を届かせてくれた——
「……今のは」
我に返ったアラリックは、記憶で見た少年が手に取った白い分厚い本を、じっと見つめる。
「親子同盟」
何処かで聞き覚えのある題名。
アラリックは構わず手に取りページをパラパラと、確認する。
「どうして……初めて読む本に覚えてる文章があるの?」
“父は騎士団団長の戦士で、少年は父の背中を追いつくのを夢見て、毎日辛い訓練を続けていました。
剣術、武術、それ以外にも勉強して頭を良くするのも勿論必要な事でした。
——そして八歳の頃。父親が戦死した事を告げられた少年は、その日から血反吐を吐く程の努力と、技術を身に付けて自分を強くしてくれる不思議な学園へと入学するのです”
「世界がおかしいのか、自分がおかしいのか分からない。
知らない物を知っていて……気味が悪い」
学園に戻ろうとしたアラリックは、いつもの語りかける声と今まで居た場所とは全く違う所へ飛ばされていた。
辺り一面に、色鮮やかな花畑が広がっており警戒心を強めた——
「——初めまして、かな」
語りかける声に振り向くと、白銀の緩く結んだ長い髪に宝石のように輝く、オレンジ色のトパーズの瞳。
白いロングコートに、橙色で作られた麦が交差する騎士団の紋章が胸に特徴的に存在感を示していた。
そして、凄く聞き覚えるのある声をしていたのだ。
「……誰です? この術を掛けたのも貴方の仕業なのですか」
周りをキョロキョロと確認して、再びアラリックに視線を向けると男は、衝撃な種明かしをした。
「因みにさっきまでの天の声は、私です。——折角実体も見せたことだし、貴方に次の道標を出します」
「要りませんよ。今から学園へ帰りますから」
聞く耳を持たないアラリックは、プイッと顔を逸らすと、男が彼を少し強い口調で止めた。
「——それは駄目だ」
「……は?」
優しい声色から、男は少し低い声で告げる。
「この図書館からずっと北東へ行けば、君の探し物が見つかるかもしれない。それで——浜辺の階段を登った秘密基地で君を待っている——」
返答する時間すら待ってくれなかった。
大きな風吹が起きて、次に目を開けた時には図書館の入り口へ立っていた。
「北東の大地、浜辺の秘密基地……そこに故郷も」
ぽっかり穴の空いた記憶に関係のあるものなら、行ってみたい。だけど罠の可能性も捨てきれないアラリックは、酷く悩んだ。
「もしも罠の可能性だとしても、行ってみる価値はある……か」
周りに、誰も居ない事を確認したアラリックは、足早に北東へ向かった——
段々と目的地へ近づくと煙が立っている街を見つけて、すぐに男の言っていた場所だと分かった。
——街に入ると案外小さな街で、向かい側の壁には大きな時計塔が設置されていた。
「ここが……」
「こんにちは冒険者さん、ここには観光目的かしら?」
突然声を掛けられたアラリックは、即座に臨戦態勢に入った。
その姿を見た女将のような女性は驚きながらも、敵意が無いことを必死に伝えた。
「お、落ち着いて冒険者さん。私達は貴方に危害を加えたりはしないわ」
「……す、すみません」
すぐに臨戦態勢を解き、女将も胸を撫で下ろした。
顔は見えない、アラリックは図書館に入る前に顔を隠す為にフード付きのローブを身に纏っていた。
「それで何か探し物があるのかしら?」
「ここに一番近い浜辺に、行きたくて……」
「うーん……あぁ、”あの子の秘密基地ね”。それなら一度街を出て、ぐるっと左周りすれば着けるはずよ」
少し悲しげで、不安そうな声で続ける。
「でもあそこは、少し前に”ある事件”をきっかけに、あんまり誰も立ち寄ってないのよ。貴方も違和感を感じたら、すぐに引き返してちょうだいね——」
女将の忠告を受けて、浜辺に訪れたアラリック。
海は本当にどこまでも綺麗で心が自然と落ち着いた。
辺りを見渡すと視線の端に、螺旋階段のような物を発見してアラリックはすぐに駆けつける。
「石の階段、それにこの術式は誰かがバリケードのように作った痕跡……」
階段を登ってすぐに鋭い土の刃が幾千もその先の道を封じていた。
しかしアラリックは容易に飛び越え、秘密基地と言われる場所に辿り着いた。
一番最初に目に入ってきたのは、大きい水溜まりサイズの血痕、右に視線を向ければ焼け落ちた木の幹が、不気味に存在を放っていた。
「誰か死んだ後、若しくは殺した後、ここで燃やした。と言った所か……」
異様な静寂と共に、アラリックは警戒心を解かず辺りを探索していると、秘密基地らしき小さな小屋を、発見した。
「……この小屋は、一体」
長く使われていなかった事もあり、腐敗した臭いが小屋の中を漂っていた。
「これは日記?」
机にポツンと置かれている日記を開き、再びページをめくると、掠れた字と子ども特有の字は解読が難しかった。
それでもアラリックは、昔の自分の字と全く同じ事に驚愕した。
記憶の片隅に字が綺麗になりたくて、手が疲れるまで文字を書き続けた記憶が微かに残っていたのだ。
「……どうして……どうして」
あまりの情報量の多さに、アラリックは体を預けるように 扉に寄りかかり、きっと弟の物だと言い聞かせて自分を、
落ち着かせた。
そして現実から目を逸らすように、アラリックは秘密基地を後にした。
あの男の真意も理解できぬまま——
「きっと弟のだろう……顔も声も思い出せない。だけど居たことは、ちゃんと覚えている」
そして——
浜辺に着いた辺りで殺気に満ち溢れる視線にアラリックは、驚いて振り返る。
「———っ」
レイピアに手を添えて、敵の攻撃を警戒する。
しかし次第に殺気の視線と、重苦しい雰囲気は姿を消して、アラリックは再び、学園へ引き返した——
それから二日の時が過ぎて、アラリックの疑念は晴れる事なく、対人戦特別講師が学園へ訪れる。
「——では。これから短い間だが世話になる、冒険者の教師達だ。皆無礼の無いように」
現れたのは四人と一匹のウサギの冒険者達。
II組との対人戦に向けた特別特訓が間も無く幕が上がる——
I組第二授業編スタートです!
宜しくお願いします




