Death Game: Judgement for Resolve(デスゲーム:ジャッジメント・フォー・リゾルヴ)
十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー
土、火、水、風の四属性をメインに、二つのクラスに振り分けられた彼等は、各自提示された課題をこなして”自分の価値を証明する戦い”を繰り広げる——!
生き残るのは真の才能がある人間のみ
誰が生きて誰が死ぬのか完全オリジナル作品
《Death of the Academia》をお楽しみください
「それで、緊急事態というから来てみたが話が全く見えん。詳しく話せ」
「あの青年、アイレン・セウリー……水と闇を自在に操る力、それに加えて、あの悍ましさ。正直、生徒の域を逸脱していたわ」
「今アイレンさんは、どちらにおられるのですか?」
「一度、生徒達の協力を得て、今は地下監獄で身柄を拘束しています」
アイレンの試験は突如の異変により中断された。
その夜——
闇を象徴するかのような静寂の中、学園内では緊急職員会議が開かれた。
グラン、フラーナ、試験の当事者マリーナ、そしてアイレンと同じ教室を担当するヴァンティス。
議題はもちろん、異常性を見せた生徒、アイレン・セウリーの正体と、その処分についてだった。
「正直私は、このまま学園にアイレンを置いておくのは許容出来ないわ」
「ですが、”我々四人の契約上……約束は守って頂かなくては”」
「ヴァンティス…! でも、そうね。本人が強く望んだ時の方針は貴方に任せるわ」
「結論は出たか?」
「一度、試験は終わり。生徒達にはこのままランキングを付けると言って、明日第一授業を終えるわ」
「では私達は、アズローラへ戻ります。ヴァンティス先生、こちらも第一授業が一通り終わったらアイレンさんの身元調査を行います。それまでは、お願いしますね」
「——では帰るぞ」
グランはポータルの魔法陣を展開すると、フラーナと一緒にアズローラへ飛び立って行った。
こうして翌朝まで不穏に包まれる時を過ごしたのだった——
——翌日、事情を聞かされている生徒達は”ランキングが決定したから、II組の教室へ集まるように”というアナウンスを受け、静かにマリーナとヴィンティスの到着を待っていた。
「——先生来たみたい」
ネリカが第一授業を始める前に言った時のように、再びマリーナの気配を察知した。
その瞬間、扉を開けて作り笑顔と振る舞いで、頑張って接しようとしているマリーナだった。
「皆、色々お騒がせしちゃってごめんなさいね。ランキングの集計を行って結果がしっかり出たので、今から発表したいと思います。皆さん一度後ろへ移動してちょうだい」
「ヴィンティス先生は居ないんすか?」
ふと気付いた疑問にリオライズは問いかける
「あの人にはアイレンの元へ、行って貰ってるから今回は私一人だわ。」
「了解っす——」
水属性の試験に振り分けられたネリカとサイラスは、既に状況が分かっていたが、突如として試験から戻ってきた水属性の三人とマリーナの姿を見て、風属性の三人はすぐに、ただならぬ事態だと悟った——
「では。まず1位の発表から——第一授業第1位は、リオライズ・ニイタ。前へ」
リオライズ・ニイタ。全体的な攻撃威力と正確さ、ラストスパートの精神力をヴィンティスから評価された。
「次回の対人戦”期待している”とヴィンティスが言っていたわ。頑張ってね」
「プレッシャーえげつないっすね〜 まぁこの学園で生き残る為にも頑張るっすよ」
「——それでは続いて第2位の発表よ。第2位は、ゼオン・ルーゼ。前へ」
「マジか先輩!やっぱり俺が見込んだだけはあるっす!」
「貴方は何もしてないわよ」
「どうして俺が2位なんですか? 負け越したし、他に成績良い人居なかったんですか?」
「折角2位になれたのに悲観しないの。でも理由はちゃんとあるわよ。”短時間での精神の成長、子供という点においてもとても価値がある”とヴィンティスが言っていたわ」
「分かりました」
「そんなに重圧として捉えないでちょうだい。次回の対人戦、私も期待しているわ」
その言葉に小さくゼオンが頷き、そのまま次の順位の発表がなされた——
「では続いて、第3位——リノ•ネリカ。前へ」
敵の攻撃に対する的確な対応は良かった。
——でも
「3位ですか……丁度真ん中の順位」
「貴方は同属性以外の探知が出来ないのは課題だけれど、
次の対人戦まで時間もあるし、ゆっくり強化していけば良いわ」
「必ず新しいスキルを習得してみます!」
「良い面構えだわ。それとあの時は助けてくれてありがとう」
静かにマリーナとネリカは握手を交わして、周りの生徒達もアイレンの事が気になるも少しだけ、安心した表情を浮かべていた。
「残り二人になったわね。ここからは一気に順位を発表するわ。まず第4位——エニアル•シゼロ。5位が、サイラス•エズルとなります」
四位でありながら、ほっと胸を撫で下ろすエニアルと、五位という実質最下位の位置にランキングを下げてしまい、苦虫を噛み潰したように顔を歪めるサイラス。
マリーナはそんな二人と向き合って言葉を届ける——
「まずはエニアルからだけれど、初めての属性攻撃と精霊の導きもあって、勝ち点を一回も譲らず勝ったことは、貴方だけで凄い事だと思うわ。だけど初心者という事実は変わらない以上、期待を込めてこの順位にしたわ」
「今の自分に、その評価は勿体無いくらいの御言葉です。ありがとうございます」
「——そしてサイラス。貴方は運要素の強い術者で、あまり戦闘でも目立った部分は無かったわ。個人的には剣技に転向しても良いんじゃ無いかと思うの」
「そりゃあ。剣術が良かったってことか……?」
「簡単に言えばそういう事。でも”決めるのは自分自身よ”——」
続けてマリーナは一呼吸置いて、話す。
「——それと本日の一件もあり、シークレットチャンスは延期とさせて貰うわ。リオライズには申し訳無い決断だけど、分かってちょうだい」
「心配しなくても大丈夫っすよ。気にしてねぇっすから——」
そして、ランキング発表と同時刻——
牢獄に拘束されたアイレンの元にヴィンティスが姿を現していた——
「具合は如何ですか?」
「……ごめんよ……今は……何も、分からない……」
授業前とは考えられない喪失感を放つアイレン。
瞳に光は無く、ただ何処か遠くのじっと見つめる姿はヴィンティスも恐怖を感じる程だった。
「私とマリーナ先生、グラン先生、フラーナ先生を含めた四人で貴方の処分に協議した結果、再試験は行わず脱落処分を下す事が決まりました」
「そう……ですか……」
「一度、陽の光でも浴びに行きましょうか——」
牢獄の鍵を開けてヴィンティスは、アイレンを外に連れ出そうとする。しかしアイレンは廃人のように、自分からは動こうとはしなかった。
「外に出たくないなら、貴方の過去でも教えてください」
遠い故郷を思い出すように、ゆっくりと途切れながらも言葉を紡いでいく。
「……ずっと昔に……”光と水”……でも最近その街が襲われて……”闇に”……」
この性格は闇属性による”侵食”だろうか……
「……もう救えない……なら……殺して……ほしい」
この学園で自ら落ちる道を選ぶ者は珍しくはない。
ヴィンティスは生かそうと思っていたが、本人の意向であるなら……
そう思い、アイレンに術を掛けようとしたその直後——
アイレンが言葉を続けた。
「……でも……やり直せるなら……もう一度強くなるチャンスをくれるなら……誰にだって……着いて行く」
アイレンが、闇に囚われながらも抗おうとする姿を見て、マリーナとの会話を思い出す。
「”ですが、我々四人の契約上……約束は守って頂かなくては”」
「”ヴァンティス…!でも、そうね。本人が強く望んだ時の方針は貴方に任せるわ”」
アイレンの言葉とマリーナの”方針は任せる”という言葉にヴィンティスの心は揺れる——
“清き自分の心に従って助けるか” “契約の元、利用するか”
こうして、ヴィンティスの心に葛藤を残したまま、学園の時間は静かに次の段階へと進む。
I組では、ソニントの脱落を経て、いよいよ「対人戦」に向けた新たな事前授業が始まろうとしていた——
II組第一授業編はこれにて幕引きです。
次回からはI組に戻って対人戦に向けたストーリーをどんどん展開して行きます!




