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Death Game: Curse in Blizzard(デスゲーム:カース・イン・ブリザード)サイラス・エズル編

十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー

土、火、水、風の四属性をメインに、二つのクラスに振り分けられた彼等は、各自提示された課題をこなして”自分の価値を証明する戦い”を繰り広げる——!

生き残るのは真の才能がある人間のみ

誰が生きて誰が死ぬのか完全オリジナル作品

《Death of the Academia》をお楽しみください

攻撃を受けたマリーナは、傷の回復を行いながらネリカが如何に素晴らしかったのかを、語る——


「……あの時、剣をそのまま握らせておかなければ私に勝機があったけれど、そもそも貴方は剣が離れないように自分の手を凍らせて固定させていた。と言ったところかしら」


「そうですね……あの合図で、もしも剣がぶつかり合う事無く、マリーナ先生の刀の重さに対応出来なかったら、絶対に負けていました」


「あの瞬間に、貴方の勝ちが確定したという訳ね——」


互いに反省点を出し合いながら、ネリカは模擬戦の勝利を胸に刻み、更なる進化を求めてアリーナを降りる。


ふっと前を向くと、死神のように恐ろしい、だけど何処か美しい笑みを浮かべて次なる挑戦者、サイラスがアリーナへ足を運んだ。


「では。サイラス・エズル、次は貴方との試験を始めましょう——」


アリーナに立った二人の視線は絡み、サイラスが口角を少し上げると一本の八重歯が存在感を放つ——


しかし次の瞬間、サイラスの言った言葉が思わぬ形で波乱を呼ぶ。


「おいババア、俺は本気でこの勝負勝ちに来てんだよ。女だからって手加減しねぇぞ」


その言葉にマリーナの表情は凍りついた。

衝撃を受けるようにマリーナは俯きコロシアムは一瞬にして、静寂が訪れた。





「……ざけるな……」


「あん?」


マリーナが顔を上げた瞬間、先程の静寂とは真逆の、凄まじい怒号がコロシアムを包んだ。


「ふざけるなぁぁぁぁぁ!!」


耳を劈くような怒号に全員萎縮する。続けてマリーナは、怒号のような声で文句を言い放つ。


「確かに……! 確かに、貴方達よりもお姉さんなのも認める! フラーナから見てもちょっぴりお姉さんよ!

だけど貴方達とは、五歳くらいしか変わらない姉弟(きょうだい)みたいなものでしょうが!

それをババア呼ばわりなんてして! ……許さないわ、貴方は必ず地獄へ送ってあげる!」


興奮状態のマリーナと、何故怒ったのか分からないような顔をしているサイラスを観客席から見下ろす、ネリカとアイレン。


「女性にとって年齢の話題は、最も触れてはいけない地雷だ。サイラスは、それをわかっていて言ったのか——それとも、ただの無神経か」


「流石。見た目女の子ってだけはある分析力だね」


アイレンもサイラスに乗るかのように、ネリカを意図的に煽る。すると、彼は物凄い剣幕でアイレンを睨んだ。


「喧嘩売ってるの? 君はまだ試練すら受けていないのに、ここで僕と戦おうって言うの?」


「……そんな怒るかよ、普通」


ネリカがじっと睨みつけ、アイレンも流石に悪いと思ったのか、謝罪の言葉を口にした。


「……ごめんって。もう言わないよ——」


気まずい雰囲気が観客席に流れる中、アリーナではとんでもない状況が広がっていた。


「へぇ、そんなに怒んのか。女ってのはよ」


「……この際、成績関係無く落としてあげようかしら……!

容姿端麗の割に、喋ると残念って言うのはこの事だったのね」


マリーナは怒りの反動なのか、今までに無い規模の大海原を作り出した。


「水属性なんて関係無い……そのまま水底に沈みなさい!

氷結の眠り(コールド・スリープ)——!」


マリーナが刀を大海原へと振り下ろすと、刹那——

水面に覆われたコロシアムは氷の大地へ姿を変えた。


マリーナの瞳に光はなかった。ただ一直線にサイラスが凍っている場所へ足を進めて、刀を突き刺そうとしたその時——

氷にひびが入り何か蠢く挙動を見せる。


「……まさか」


その瞬間——



氷が完全に砕かれ、サイラスの左腕には、氷が焼け付くような痕が走っていた。


肌は不自然な白さを帯び、指先は紫に変色している。

少し動かすたび、凍てついた皮膚が裂け、白い皮の下からじわりと血が滲み出た——


「取られたらすぐ、取り返す!」


既に戦闘不能に近い状態で、戦うサイラスを憐れむような目で見つめるマリーナは、深いため息をついて静かに呟く。


「”蒼潮解放(アビリティキャンセル)”……」


その声と共に、氷の大地が音を立てて溶け始める。

凍てついた世界が波紋に飲まれ、再び“海”へと帰還していく。


水は怒りを溶かし、静かにすべてを抱く。

だが、優しさを与えるとは限らない。



大きな水飛沫を上げて雨のように降り注ぐ。

マリーナが大海原も解除すると、膝をつき咳き込むサイラスの姿だった。

マリーナは今まで見せた事ない鬼のような表情でサイラスへ詰め寄り問いかける。


「分かったかしら? 女って生き物は怒らせると、凄ーく怖いのよ……?」


鋭い目で見下される感覚が襲い恐怖で体が震えているのか、寒さで震えているのかサイラスには分からなかった。

でも咄嗟に”駄目な事をやった”と認識する。


「わ、分かった…! 酷い事言って、すまなかった」


サイラスが必死に謝罪をすると、再び緊張が纏わり付く静寂が訪れる。


「まぁ、分かれば良いのよ。次から発言には気をつけなさい」


あの緊張と恐怖は、嘘のようにマリーナの雰囲気が戻った。

その場にいる者も、自然と胸を撫で下ろして安堵した。


「じゃあ。私が勝ち点1からリスタートね」


「お、おう……」


あまりの豹変っぷりに、サイラスは恐怖なのか安心なのか分からない感情を抱いた。


そして傷を回復して貰い、その場は一件落着となった——


「合図してくれれば、いつでも行けるぜ」


「そうね。では、この氷の花が砕け散ったらスタートの合図よ」


マリーナの掌から生まれた氷の花は、風もないはずの空中をゆっくりと舞った。


その花びらに、冷たいひびが一本ずつ刻まれる——

そして静寂を裂くように、鋭く砕け散る。


——バキッ パリィィィィィン


氷の花が割れた瞬間——サイラスは、術を発動した。


「壊死ルーレット、《第一の吹雪、ネクロ・ブリザリア》」


サイラスが天を仰ぎ、両手を広げた瞬間。

空が、まるで死者の息吹のような白銀で満たされる。

禍々しくも美しい吹雪が、静かに、だが確実にコロシアムを包み込んでいった。


「俺の吹雪は、ルーレットって形だが外れの吹雪に当たると、その体の一部は——破壊される」


「なるほど、少し動きも鈍っているように感じるのだけれど、これも吹雪の影響なのかしら?」


「おう。さっきは悪い事しちゃったし、本気を出すのが礼儀ってもんだ」


この短時間で社会を知り、礼儀作法まで習得するとは……

子供とは本当に、生意気な生き物ね。


「良いわ。カラクリが分かってしまえば、子供のお遊びくらいの術だもの。このまま再開しましょう」


「お前等も! 危険だと思ったら、屋根のある場所へ避難しろよ」


ネリカとアイレンに注意喚起を促して、サイラスが抜いた片手剣は、雪のように白い刀身と、毒のように黒紫の縞が交差した異形の武器だった。


吹き荒れるコロシアムの中、剣がぶつかるのは一瞬でそこから一進一退の攻防が続いた。


「流石に良く出来た剣だけど、私の大太刀には勝てないのではなくて?」


「正直、あんたがそこまで動けるのは、誤算っちゃ誤算だが、このままの形で行けば必ず同点へ追いつける」


マリーナとの激しいぶつかり合いが起こる中、サイラスは再び八重歯を見せる程の笑みを不気味に浮かべた。


再び交差する剣——

サイラスの剣が、ねじれるように形を変える。

そして、紫の縞と純白の縞が動き出した。


——ギュウゥン……


剣の先端が解け、鞭のように伸びたかと思えば、マリーナの全身を一瞬で包み込む。


——ジャキィィィィィン!


響いた破裂音。

黒い玉がひび割れ、中からマリーナがサイラスが凍傷を受けた時のような凍傷の傷を受けて姿を現した。


袖の布は裂け、その下の肌は死人のように白く、血色を失っている。肘のあたりには凍りついた裂傷が走り、うっすらと赤黒い血がにじんでいる。


「………まさか、吹雪が保険で本命が、剣術勝負だったなんて……少し見くびっていたけど成長……してるのね」


「あんたの言う通り、壊死ルーレットの吹雪じゃカラクリを知られるのも、時間の問題。これで同点……だな」


サイラスが指を鳴らすと、吹雪は去りマリーナの傷も何事も無かったように修復した。


「まさか、回復役を担ってもらっちゃうなんて、どうもありがとう。ラストマッチの合図は私に任せておいて」


サイラスとマリーナが互いの剣をしっかりと構えて、花の合図を待つ。


コロシアムは静寂に広がった——


割れたのを合図にマリーナは大太刀を一直線に、サイラスに突き付ける。


風を斬るような音と共にサイラスは純白に戻していた剣で上手く受け流しマリーナの首を目掛けて一閃を描いた。 


しかし鈍い音は聞こえずに、何かが弾かれる音が聞こえた。

よく目を向けるとマリーナ自ら体の一部を凍結して、致命傷を避けていた。


驚いて動きが止まっているとマリーナは、すかさず大太刀を振り下ろそうとした。

——しかし次の瞬間、大太刀の剣先は氷が崩れ落ちるように形を失った。


「予想通りだ。俺が何の考えも無しに、受け流すなんて絶対しないからな」


「……してやられたわね」


「じゃあ。ラストスパート、これで決めさせて貰う!

第二の吹雪、凍てつく吹雪と誓い(フローズン・サブジュゲイション)!」


サイラスが術を唱えると足元に水色の魔法陣が現れて、コロシアムの大地全体を包むように、凍結していく


「攻撃の術を無くした先生殿は、そのまま凍りつくと良い」


どんどん凍結していくマリーナの体。しかし凍りながらも、彼女はふっと口角をあげて笑みを浮かべていた……


「はぁぁぁぁぁぁぁ!」


ラスト一撃を打ち込もうと、サイラスは駆けていた。

一閃が届く——その瞬間、凍結が砕かれサイラスは、衝撃で後方へ軽く飛ばされた。


「……お姉さん、言ったわよね。”二度も同じ攻撃は通用しない”って」


「ッ———」


「チェックメイトね」


凍結解除に使った僅かの水を、槍に変換して一閃——サイラスは肩を貫通して、その場に血を流して倒れ込んだ。




「……負けた」


「あと一歩ってところだったかしらね」


こうしてサイラスは激しい模擬戦の末敗北した。

そして水属性第一授業、ラストの挑戦者——アイレン・セウリーが試験に挑む——

次回で、水と風の模擬戦第一授業は終了となります!

皆さんお楽しみに!

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